6/14オナガパワー炸裂 手打

2003年のシーズンも6月に入り、梅雨グロの季節がやってきた。磯釣り師ならば、夏本番前にやれる最後のチャンスと心躍らせるはず。私も不治の病が進行しどうにもならない。症状はこうである。

その@、竿ケースを何度となく開き溜息をつく。

そのA、釣り雑誌を何度も読みふけ溜息をつく。

そのB、意味もなく天気予報をチェックする。買い物の予定がないのに釣具店に立ち寄りつい小物を買ってしまう。

こんな症状が出たら、はいっ!あなた、あなたはりっぱな釣りバカです。もう不治の病にかかってしまったわけです。私も不治の病を治療すべく下甑病院に1泊2日入院することにした。女房子どももそんな私の惨状を哀れに思ったのかあっさりと釣行を許可してくれたのだ。

さて、今回は下甑、しかも4月に解禁になったばかりの手打へレッツゴー!釣友のueno氏は、東京動員のため無念の欠席。一人では淋しいので、下甑のエキスパートと言われている八代在住のK氏を誘うとあっさりO.K。2人は、早速、6月14日、15日に照準を合わせて2日釣りを計画した。天気予報は芳しくない。梅雨本番のようそうであった。またもや近海に電話で断られるという事件が我々を益々不安に陥れていた。

おそるおそる最後の選択肢である「さゆり」に電話するとあっさりO.K。かくしてつりバカ2人組みは、深夜の国道3号線を南へ下った。えさなどを購入し、阿久根港に午前1時に到着。小雨の降る中、シーエキスプレスさゆりは阿久根港を後にした。外海へ出ると結構うねりがあった。特に、鹿島を過ぎたあたりからかなり船は揺れた。「こりゃ、やばいかも。」とK氏も不安顔。うねりが大きい時は、当然船は安全走行となる。つまり、目的地まで遅れるということを意味していた。

ようやく、5時過ぎに手打港に到着。乗り換えの準備をしようとすると、なんと我々が乗る予定の久丸が今正に13、4名の釣り客を乗せて手打港を出航しようとしていた。最近就航したばかりの天草からくるクイーンパートナーに先陣を切られた格好となった。K氏ががっくりと肩を落とす。下甑に精通している彼は、それがどういうことを意味しているかよく分かっていた。

好ポイントが目白押しの手打湾西側の名礁はすべて押さえられてしまうということであった。二つ張り、早崎、野崎、釣掛崎、シモオサン瀬、中のオサン瀬、地のオサン瀬などの名礁はおそらくすべて押さえられたしまったに違いない。絶望感とともに岸壁で撒き餌を作っているとやっとで久丸が帰ってきた。荷物を積んで出発。船の進路はやはり東側だ。K氏によると、東側はアウトらしい。北西風の強い時やお客が多いときなどしか乗せないところらしい。

しかたなく、我々は船長の言う通り、双子瀬に上礁。釣を始めようとするとアクシデント発生。ベテラン釣り師であるはずのK氏であるが、なんと釣り道具を入れているバッグを船においてきたというのだ。携帯で船を呼ぼうとするもエリア外。万事休す。がっくり肩を落とすK氏。彼はさゆりから他船に乗りかえる時イグロクーラーを間違えて持っていかれており、ダブルパンチとなってしまった。彼は完全にモチベーションを失ってしまった。

私は彼に気遣いながらもそこは釣り師の性。早速、釣りに入った。状況は最悪に近い。うねりはあるは、突風に近い東っ気の風が吹き荒れ、雨は容赦なく釣り人を消耗させていった。船長がポイントといっていた場所は、沖向きでよさそうなのだが、風の影響をまともに受け釣りづらい。よって水道側のポイントに移った。

釣りを始めるもいるはいるはえさ取軍団が。黄色のスズメダイ系の魚がわんさかいた。また、私と相性のいいオヤビッチャくんも健在。ハリ掛かりしては得意の超高速ウキの消しこみの術を見せてくれた。潮がいかないところでは何をやっても同じ。時々オナガの子があたってくるもののえさとりを20枚くらい釣ったところで一休み。

すると天の助けか、向こうから船が近づいてくるではないか。やったあ!瀬替わりだあ。釣りバカ2人と底物師1人は迷うことなく船に乗りこんだ。向かった先は、恋焦がれていた西側ではないか。手打港、手打湾を過ぎ、野崎と来て、灯台下と長瀬の間の無名瀬に渡礁した。小さい瀬で2人が精一杯。満潮時には乗れないために西側でも残っていたのだろう。早速釣り再開。本命ポイントをK氏に譲り、裏の水道を探った。しかけは、3週間の入院から帰っ

           
      てきたメガドライ1.5ー50、道糸1.7号、ハリス1.5号、2段ウキ。タナを2ヒロにするとえさだけ取られていたので、、1ヒロ半に替えるといきなり25センチのオナガが食ってきた。初めてのまともな魚に俄然やる気モードに。

その後同サイズを2尾追加したところで当て潮に変わったため、釣り座を変更。潮もひいてきて本命ポイントの隣に釣り座を構えた。釣り師にとって釣り座の選択は重要である。シマノのインストラクターのエド山口氏はこう言っている。「釣りは、@に場所、Aに潮、Bに腕で、Cに運」つまり、釣において最も重要なファクターは釣り座選びということになる。

K氏の釣り座は本命の沖側でいいサラシができている。一方、私の釣り座はサラシもなく、右に左にどっちつかずの潮。「明日があるさ」と歌を口ずさみ出したその時、釣研のあたりウキが消しこまれ、親ウキまで水面から姿を消した。半信半疑で合わせてみるとえさとりでないこの重量感。慎重に寄せて浮かせると30センチオーバーのオナガであった。こんな浅いところでよく食ってくるなあと感心していると、ばたばたと5、6枚のオナガをゲット。干潮を過ぎたあたりから今度は口太が入れ食いに。釣るたびに型がよくなり、最後には37センチのグッドサイズを釣り上げ11枚目をクーラーに入れた。

そして、潮が左に向かってはっきり流れ出すと、オナガの25センチが釣れて確変終了となる。さあ、もっと釣るぞとかまえていると、瀬替わりにやってくる久丸。マイクで「どうですか。」O.K!という合図を出したつもりが、「だめ、じゃあ次行こうか。」おいおい俺はここでいいんだよ。K氏も 

              

口太の型のいいのを数枚上げていたというのに。まあいいか。せっかく手打に来たのだから、いろいろまわるのも悪くないな。3回目の磯は、名礁シモオサン瀬であった。この瀬は、手打湾の出口付近にあり、潮通しがよく、メジナ、オナガ、石鯛の好ポイントである。1日釣りの客は2時で上がってしまうので、これからの夕マズ目は2人だけの世界である。

張りきって釣り始めるもののえさは取られない。たまにハリ掛かりするのはオヤビッチャくんとイスズミくんだった。雨は激しくなり、我々の心も終了モードに。名礁はその実力を発揮することなくジ・エンド。1日目の釣りを終えた。

一睡もせずに11時間も釣りをしたのは初めてだった。披露困憊。後は、予約していた民宿に飛び込み、風呂、食事の後、われわれは泥のように眠った。気がつくと朝4時前。4時半の出航のため、そそくさと荷物を持ち手打港へと向かう。そこに久丸が停泊しているはず。おや!いない。よく見るとクイーンパートナーっ 

         

とまっている。もしかして、昨日と同じく先を越されたのでは。

案の定、30分以上も遅れて久丸到着。どこに降ろされるのか、期待より不安のほうが先に立った。今日も、天気は梅雨模様。大雨洪水注意報が薩摩地方に出されていた。60%、50%という予報であった。小雨の中我々がのせられた瀬は、黒瀬。地のオサン瀬のある津口鼻の隣の鼻のような瀬であった。

えさを入れてみるといるわいるわスズメダイ、コッパ、イスズミ、オヤビッチャの大群が。こんなにえさ取りがいたら釣りになりませんがな。悲しいかなこのよそうは大当たり。竿1本内に入れるとエサは3秒と持たず。遠投しても結果は同じであった。「昨日、いい型が上がったからね。」という船長のことばはガセネタでは?と疑ってしまうほどの状態だ。

瀬替わりをひたすら待ちつづけているとやっと久丸登場。飛び乗った我々は、ついに名礁中のオサン瀬に上がることに。今度は、私が西向きの本来は石鯛のポイントをいただき、K氏は沖のオサン瀬との水道側に釣り座を構えた。ここで、私は自分のふがいなさに閉口してしまった。実は、この時の道糸は1.7号だったのだ。離島に来てなんだその細仕掛けはと言われそうだ。前回の瀬々野浦でハリスを細くせにゃ食わんと言われていて、そのままにしていたのだ。ここは、手打。6月。オナガがいるのだ。それを忘れていた。釣り師として恥ずべき初歩的なミスである。

私たちが釣りのターゲットとしているメジナには大きく分けて2種類いる。口太とオナガである。正式には、口太はメジナ。オナガはクロメジナという。また、スーパーではメジナはなぜか黒鯛という名で流通している。釣り師としては納得がいかない。それはさておき、基本的に口太とオナガは違う種類の魚と認識すべきである。口太は基本的には居付きの魚でオナガは基本的には回遊魚である。よって、オナガは口太に比べて数段引きが強く、それにより釣り師をとりこにする。オナガも1キロを越えると引きが強いので仕掛けを切られることもしばしば。それを完全に忘れていた私は、とんでもない目に。オナガらしきあたり3回連続で仕掛けを切られた。しかもすべて道糸からいってしまった。ウキが掛けた魚といっしょに海中に消えた。しかも2枚目は、40センチを越える良型が上から見えていた。紛れもなくオナガだった。ハリ掛かりして寄せてくる時はあっさりと寄って来るので小さいかなと思っていると、やつは手前にくると一気の突込みを見せる。何とか耐えるが、道糸からいってしまうのだ。ウキの損害額は、6000円を超えていた。オナガパワーに翻弄されたが、どうにかオナガの小型24センチから33センチ3枚をゲットし、釣りを終えた。オナガパワーをまざまざと見せつけられた釣行だった。美しい自然と豊穣の海に別れを告げ、オナガリベンジを誓いつつさゆりに乗り換え、阿久根港に帰っていった。

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