11/20ジンクスは存在するのか 川内沖堤防

ついてない。この一言がぴったりくる11月20日(木)にueno氏と秋磯釣行を計画した。この日は、我々サラリーマン釣り師にとっては、夢の平日釣行である。日曜日の出張の代休をueno氏と相談の上揃えた。このために最高のモチベーションで仕事を済ませ、いよいよどこに行くのか相談した結果、我々と最も相性のいい宮崎県北浦に決定。あゆ丸に予約して、あとは天気ということになったのだが。まったく不運としか言いようがない。

9月は台風のうねり、11月は雨と、今までのueno氏との釣行では天気の不運に見まわれたのだが、今回も20日は悪天候。あゆ丸に電話したが、「明日はだめのごたる。」で北浦をあきらめることに。さてどこへ行こうか。東の風が強く九州の東側はアウトだった。甑はお金がかかるので今回は断念することに。

そこで、我々が選んだポイントは、川内沖堤防だった。先週、1キロから2キロのメジナが20枚釣れたという情報があった。これは、九州の西側のどの磯にもない好釣果だった。沖磯より釣れる堤防、それが川内沖堤である。

ueno氏は過去に2回ほどトライしているがいずれも好釣果をあげている。数はそれほどでもないが、良型が多く、チヌ、クロ、アジさらには青物まで回遊してくるというすごい堤防なのだ。早速、若潮丸の下川船長に電話。「雨がどれだけふるかわからないけど、出てみましょうかね。」天気予報は北東後西の風やや強く雨後曇りであった。雨がひどいと手前の一文字堤または導流堤と、メジナの良型が釣れないところに不本意ながら乗ることになる。

我々は祈るような気持ちで人吉を午前3時に出発。アオキでえさを買い、川内へと上野号は走った。川内港まで後少しのところで何とたぬきに遭遇。さあこれが吉と出るか凶と出るか。

午前5時30分に港に到着。下川船長を発見した後、何と平日にもかかわらず6人ほどの釣り客が乗船準備を始めていた。出航まじかになると、下川船長はポイントを説明し始めた。「クロのポイントは、沖側の上の段の高くなったところがいいね。台風で堤防が壊れて下に残骸が落ちたところが漁礁になってクロがいついとるよ。

先週は、20枚釣った人がいたよ。タナは竿1本半。エサはキスゴ虫、またはオキアミ。キスゴの場合は少し当たりが渋いよ。ウキが少ししもっても合わせちゃだめ。ウキがしもったら道糸を張りながら誘いをいれるとスーッとウキにあたりが出るよ。防波堤だからね、魚はスレとるから難しいよ。2キロくらいのがいるからね。ハリスは1.75号かな。元気のいい尾長もいるからね。まあ、がんばってくださいな。」と船長は詳しく説明しながら我々のモチベーションを高めてくれた。

「年に数回しかできない平日釣行だもん。絶対釣ってやる。」と深呼吸をしながら、船に乗りこみ、暗闇の川内港を午前6時に出発した。空を見ると星が鮮やかに見えた。天気は大丈夫だ。潮まわりは若潮の次ぎの中潮。9時半頃干潮を迎えるというコンディション。

船が走ること15分、あっという間に沖堤防に到着した。爽やかな風が釣り人を包む。夜が明け始める。我々の釣りを歓迎するかのように明るくなっていく。1人はイカねらいで一文字堤防へ、残りの5人が沖堤防へとあがった。するとものすごく巨大な防波堤の膚があらわになっ


 川内沖堤防南向き

ていた。南北に伸びた巨大なコンクリートの塊の上を我々は言われたとおりのポイントへと荷物を持って移動した。一段高くなった場所に南側から他の3人が陣取り、北側に私、1番北側にueno氏が釣り座を構えた。10人は釣りができるという上の段は、広々として釣りやすく、潮もよく動いており期待が持てた。撒き餌をしても魚が見えなかったが、でかい魚が突然食ってきそうなそんな期待を持たせてくれる堤防だ。

クロのポイントは沖側。ちなみにチヌのポイントは内側だそうだ。今日は東風なので、いつもと反対に沖側が凪で、内側が波立っていた。

uenoさんも「こんな沖堤は初めてバイ。」とつぶやいていた。水深はおそらく15メートルくらい。沖に行くほど深くなっているようだ。いつものようにメガドライ1.5号、道糸2.5号、ハリス1.75号。ウキはグレディアG2に潮受けハリス。ハリはがまかつの刺さりがすごいひねくれぐれ6号をつけ、第1投。

魚は見えない。潮が速い。あっという間に仕掛けが流されていく。仕掛けが速い潮のために入っていっていないようだ。ジンタンをたしてとにかく深いタナまで仕掛けを入れようと努力した。すると、おやっ、ウキにアタリらしき波紋が。仕掛けを回収すると「あれっ、ハリがない。」これは一体誰の仕業か?予想されるのは、鋭い歯を持つ魚である。フグかウスバハギであろう。

ハリをつけなおして再びトライ。しかし、またまた、ハリを取られてしまった。だれだふざけた野郎だ。正体を見せろ。と思うかいなや撒き餌に浮いてきたのはウスバの大群であった。これじゃだめだ。皆さんもご存知だと思うが、ウスバハギは色のついたものを見つけると噛むという癖がある。こいつのおかげで、私はたくさんのウキを流しているし、竿も折られている。

自分にとっては天敵に近い相手だが、同時に今までの経験によると、そのウスバが去っていった後は高確率でクロを釣っている。いわゆるジンクスというやつである。昨年12月の枕崎、今年1月の北浦、5月の手打、6月の里とウスバに悩まされた後は必ずと言っていいほどクロ釣り上げているのだ。朝のたぬきと同様、ウスバとの遭遇もジンクスを検証するにはもってこいの釣りになりそうだ。しかし、このウスバの数は半端ではない。私の足元はいつのまにかウスバだらけになってしまった。潮受けハリスを透明のに変え、ウキゴムをクロに変えて道糸をかじられないように備えた。

そうこうしているうちに1番潮下にいたおじさんがチヌらしき魚を釣り上げていた。午前8時を過ぎていた。こっちは当たりがないよねえとボーッとしていると、いきなりueno氏の竿が海へ引きずりこまれようとしていた。のされそうになるuenoさん。戦況を見守っていると残念、ばらしてしまったようだ。

「太かったバイ。」やる気モードに変わるueno氏。しかし、またまたバラシ。私の足元当たりで食っている様で、自然と私はueno氏側に寄り添いながら仕掛けを流すようになっていた。遠投したり、堤防の際をねらったりしたが、沖堤防の難しさを痛感することになる。水深があるところはどこもそうだが、2枚潮になりやすい。ウキから一直線に深いところまで仕掛けがはいるということはまれで、表層だけ動いて下はあまり動いてなかったり、表層と下が逆に流れていることもしばしばであった。風も吹いておりラインコントロールがとても難しかった。

ウスバにBMウキを流された後は、釣研のエキスパートグレSP0号とグレハリスウキ00号の2段ウキしかけで深いタナと2枚潮に対応することにした。干潮の後しばらくすると、潮は反対方向に流れていった。ueno氏はここでの釣りをあきらめ、下の段に降りウスバのいないところに移動していった。実は、後からきた二人連れの客が下の段でチヌをあげていたのである。私は船長の言ったことを信じてここで粘ることにした。

すると、ueno氏にヒット。上がってきた魚はチヌであった。35センチくらいのサイズで型は少々不満が残るものの準本命を釣り上げてほっとした表情に変わっていた。さて、こちらは今だに当たりすらない。3月の水島以来の完全ボーズかと思ったその時、沖に遠投したウキが不自然な動きの後、いきなり消しこんだ。魚信は1キロくらいに感じた。なんだいこいつは。最初の当たりのわり


  歓迎されぬ外道 リールを葬ったブダイくん

にはあっさりと浮きはじめた。クロじゃないな思いきややはりそうだった。あがってきたのはブダイ。「沖堤にもブダイがいるのかよ。」すぐさま海へお帰り願った。

がっかりしたが、このころになると海の状況がつかめたようで、撒きエサとつけエサの同調が何となくでき始めた。あるいは魚の活性が上がってきたといいほうに解釈して釣りつづけた。

再び、11時半ごろウキが堤防の際で一気に消しこんだ。必死になって魚の突っ込みに耐えていると信じられない出来事が襲った。なんとリールが根元から折れてしまったのだ。その後どうやって魚を上げたのかあまりよく覚えていない。リールを失うにはあまりにも犠牲が大きすぎる魚、ブダイくんが上がってきた。アレックスのさようなら。永遠の安息をあたえたまえ。

アレックスの後を継いだのが、同じシマノのナビである。しかし、ナビも巻くのが精一杯というくらいに性能が落ちていた。魚との格闘というよりは、リールとの格闘といったほうがふさわしい状態になった。しかし、何度でも言おう。折角の平日釣行なのにボーズで帰るわけにはいかない。何とかしなくては。ハリスを1.5号に落とした。

12時を過ぎたころから、潮があたり気味に緩やかに流れていった。潮目が堤防から竿1本のところにでき始めていた。その潮目にそって、丁度ueno氏のいた釣り座で仕掛けがなじむように流していると、ウキがやはり不自然な動きの後、いきなり消しこまれた。満を持してあわせを入れる。

しかし、またもやクロの引きではない。竿を少し叩くこの魚は何だろう。意外とあっさりと浮いてきた魚は、2度あることは3度あるブダイかと思いきや、予想に反してチヌであった。720の玉網でも届かなかったので、となりのおじさんにすくってもらって上がってきた魚は銀鱗にかがやく37センチのチヌであった。何とかお土産をゲットしほっとするが、納得がいかない。

いったいクロはどこにおるんやろう。向こうでもueno氏はブダイをあげたり、ばらしたり、さらに向こうの常連客がチヌを数枚ゲットしていた。地合到来だ。1日粘っていると実績あるフィールドなら1度はチャンスがくるもの。それを逃さず釣りのが上級者といえる。ここだと思い、気合を入れて仕掛けを流していると再びヒット。上がってきたのは、残念、1.5キロほどの磯釣りの税金ボラであった。

そして、数投後、再びさっきの場所でウキが消しこんだ。さっきと同じ引きだ。今度はすぐにチヌとわかった。38センチのチヌであった。再びトライと手返しも速くと釣り始めるもののここから潮がまったく止まってしまった。潮は刻々と変わっていった。そこも川内沖堤の釣りの難しいところである。

3時前に迎えにきたので、残念ながら回収の船に乗りこんだ。ueno氏チヌ1枚、私2枚。1番南の端で釣っていた人がチヌ2枚。後から来た常連客がチヌを4、5枚あげた模様。後は、ボーズ。しかし、だれもクロを釣ったものはいなかった。昨日までは釣れたのにね。いつもながら悔しさを胸に秘め、川内港を後にした。

9月以来会えないでいる、エメラルドグリーンの恋人にいつになったら会えるのだろう。そんなことを考えながら、たぬきはだめというジンクスと、ウスバの裏切りを確認して、いよいよ本格シーズンの12月の釣行計画を夢に描いて帰路についたのであった。


回の釣果(チヌ37センチ、38センチ)

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