1/5今年のメジナを占う・・・2004初釣り 北浦

2003年は一体どういう年だったのだろう。気になる現象を上げてみたいと思う。まず、海水温が異常に高かった。冬になってもなかなか水温が下がらず、困惑する漁業関係者の話をかなり聞かされた。もともと、メジナは南方系の魚なので、冬に海水温が低くならないので活性が高く、いわゆる寒クロの時期には各地で好釣果が聞かれていた。異常高水温による好釣果は、同時に環境に対する不安を良識のある釣り師なら覚えることであろう。

人間は自然に遊ばせてもらっているという意識をもたなければならない。自分の子どもの世代、孫の世代いやこれからずっと海の環境を守っていかなければならない。守っていくとは、自然界の掟からすると大変横柄な考え方だと自分も自覚している。しかし、人類は環境を作り変えて生きてきた生物なので、今更原始時代の生活に戻ることはできない。だから、我々人類は自然から一方的に恵みをもらって、ほかの生物の命をもらいながらも全くお返しができない生き物であるという自覚を1人1人が持つ必要があると思う。この哲学を忘れないように今後も釣りに没頭していきたい。

 さて、2004年の初釣りを昨年いい思いをした北浦で行うことにした。2004年の釣果を占う意味でも大変大切な1戦である。1月5日(月)大潮初日。2003年はメジナの当たり年なら、2004年は絶好調というべきか。特に九州の東側の磯では、ここ数年来経験したことのない好釣果が出ている。鶴見、米水津、蒲江、北浦、門川と連日良型の連発。40オーバーは当たり前、45以上、そして、口太なら間違いなく魚拓サイズである48センチ、2キロアップも各地ででている。こんな当たり年はめったにない。

ueno氏と私は毛穴からアドレナリンが分泌を始めとまらない状況になっていた。これは行くしかない。ueno氏と連絡を取り合ったり、釣具店にオキアミを予約したりと忙しく準備をしていると、かあちゃんが皮肉を込めて、「まるで恋人に会いに行くようね。」なんとぴったしの表現をするのであろう。うちのかあちゃんはえらい。皮肉をプラスに変えるほど自分の病気は進行していた。

 午前1時45分ueno氏宅集合。6時半出航の北浦古江港を目指してかまちゃん号で出発した。「おら、もうドリンク剤ば飲んできたバイ。」ueno氏は知る人ぞ知る栄養ドリンクマニアである。栄養ドリンクをこよなく愛し釣行の際


北浦名物エボシじゃんけん

には必ず一本飲んで気合を入れるのだ。一口飲んだだけでその銘柄を当てるというすごさ。また、マニアともなるとドリンクがきれる時間もわかっていて、薬がきれると間髪いれずに次のドリンクを飲むのであった。もしかして、ヒロポン中毒に近いのかも?なんて心配もしたくなるくらいなのだ。また、今日はuenoさんはやけに気合が入ってる。無理もない。一年間でめったにない平日釣行が出きるからだ。北浦では、この寒クロの本格シーズンで大量の釣り人が入っている。土日ではとてもお目当ての磯には上がれないほどにぎわっていた。平日なら客も少ないだろうから、A級磯に上がれるかも。こんな時って決して悪い方向には考えないのが釣り師である。パチンコに負けたことはすぐに記憶喪失になり、たまたま勝った時のことだけおぼえているという心理と同じである。

港につくと我々のもくろみは外れた。平日にもかかわらず多くの磯釣り師でにぎわっていた。あゆ丸の客だけでも10名。北浦の渡船は7はいあるから単純に計算しても70人は磯に上がることになる。「こりゃじゃんけんに勝たないと、こまったことになるかも。」あゆ丸の代表はMさん。真っ暗な海へじゃんけんの舞台になるエボシへと出発。烏帽子に近づくと、緑色のほのかな明かりをつけた黒い船影がいくつも見えた。「1、2,3・・・・6、あやっぱり全部出てきている。」北浦では、平日では、各瀬渡し船の客の代表がじゃんけんをし勝った船から上がりたい磯を決めるという方法をとっている。いよいよ上がる磯を決めるじゃんけんだ。真っ暗な中、船のライトに照らされたエボシに7人の侍たちが降り立った。スポットライトを浴びたいい年こいたおっさんたちが「じゃんけんぽ、あいこでしょ。」と必死になってじゃんけんをしている。じゃんけんがおわってMさんがもどってきた。

結果は何と3番。昨年の初釣りと同じ結果にほくそえむuenoさんと私。中のハエと高島のハナには先客の夜釣りがいるということで一番は喜福丸でシバエへ一直線。2番は沖の二つに。そして、わがあゆ丸は最近好釣果が出ている横バエに。海の異常の影響か、北浦では異変が起きていた。A級磯である中のハエ、青バエ、沖の二つが絶不調。それよりも地方に近い例年はB級磯に甘んじてるところが爆釣してる。横バエもその例にもれず、連日40オーバーの良型が上がっていた。あゆ丸のホームページから発せられている情報からuenoサンもよく知っていた。その横バエに北向きに3人、真中に2人、南側に1人と下ろしていく。

「あれっ、横バエには乗れないのか。」いったいどこに乗せられるのだろう。横バエは島野浦に隣接した場所にあり、この近くにはA級磯はないはずだが。我々の不安を菊地船長が一気に吹き飛ばした。「かまちゃん、昨日一番釣れたところにいくよ。」我々がへたであることをいち早く見ぬいている菊地船長は遠くから来ているこの客に何とか釣らせようと考えているようだ。ありがたいことである。「きのうね、二人で50枚あがったよ。クーラーに入りきれんで、バッカンにいれてもってかえったよ。」涙が出そうになった。

横バエから百メートル南に下ったやはり島野浦に隣接しているかけあがり状の小さな磯に降り立った。その爆釣磯の名は「大平バエ」という。昨日の日曜日にあふれかえるお客サンを何とか全員つりをさせようと普段あまり乗せない磯に客を下ろしたようで、ところが、それが予想に反して爆釣してしまったらしい。「数日前までは釣れたんですけどね。」つれんかった後に浴びせられるどこかの船長のいつもの台詞よりも今回はかなり説得力があった。何せ爆釣したのは昨日だからだ。「ウキ下は2ヒロから始めてみて。」ちゃんと魚の食ったタナまで教えてくれる親切ぶり。

よっぽど我々はHETAと思われているみたい。いいじゃないそれでも釣れれば。釣れない磯に釣れていかれるよりいいよ。「それでもクロは〜クロ〜♪」松山千春の歌が一瞬頭に浮かぶ。磯に降りたって最初にする仕事は、磯全体の状況を把握することから始まる。船をつけたことろを中心とすれば右ははりだし根があり、とても取り込みができそうもない。左側はサラシが出ているがこれも浅く竿一本先から深くなっているもののかけたら一直


北浦の穴場 大平バエ

線に根に突っ込む習性を持っているクロをとりこむことは困難を極める。釣り座はこの船付のところしかない。ほんまに昨日50枚つれたんかいなとおもうような見た目はパッとしない磯である。私はすぐにそこにバッカンを置いた。2人とも急いでしかけ作りにはいった。あせる上野氏にトラブル発生。前日からしかけを作って竿に取り付けていたのが、絡んでしまい、もう一度はじめからしかけづくりをやりなおす羽目に。ueno氏大ピンチ。しかし、これも釣り師の性か。そんなueno氏をほっといて、わたしはさっそく朝マズメの釣りに入った。

5時37分満潮で下げ潮に入っている。潮はゆっくりと左へと流れている。前回の北浦釣行では下り潮に悩まされ食い渋る魚を満足にかけることができなかった。今回はいわゆる上り潮で期待が持てる。撒き餌をしばらくうった後、午前7時半期待の第1投。エサはとられない。マズメにやってくる大型グレに備えてハリスは2.5号をつないでいた。トラブルを解消したueno氏も釣りを始める。撒き餌をしても魚は見えない。しばらくすると、「ハリがない。」とueno氏が困惑顔で独り言を。どうやらキタマクラがたくさんいる模様。釣り師を悩ますエサとりの代表選手であるキタマクラはやっかいな存在だ。

彼らは個体数が多い上に大好物はガン玉である。ハリスや道糸についているガン玉をかじるというとんでもないくせがあるのだ。また、エサをハリごと食べてしまうという習性も持ち合わせているというから困ったものだ。ポイントが数ある釣り座なら泳ぎが苦手なキタマクラを撒き餌で瀬際に足止めさせ、本命は沖側を釣るということもできるのだが、この狭い大平バエではそれは困難だ。昨日50枚釣れたこの場所でキタマクラと遊んでいるひまはないぞ。昨日50枚釣れた場所で仮にボーズをくらったらどうするんだ。昨日の竿頭の磯に降りたことが今はプレッシャーとなって我々に襲いかかってくる。

ところで、不思議なことにueno氏は何度もハリを取られるのだが、私はほとんどキタマクラの被害にあわないですんだ。撒き餌の集魚材の違いかなと考えていると、寒のメジナ釣りで現在最も信頼を寄せているウキ、釣研トーナメント弾丸0号がゆっくりとしもっていった。ビユーンとウキが入らないということは食い渋っているなと判断。やつが本格的に走り始めるまで道糸を送りこんで大事に育ててからあわせると、グーンとハリにのってきた。

間違いないクロだ。左右にはりだし根があるため少々強引にはりだし根の上の段に浮かせた。500グラムほどのメジナだった。玉網ですくうまでもないかと思いぶりあげるとお魚さんはあばれハリはずれとなる。いきなりのオートリリース。グレはいる。グレはいるぞ。俄然やる気になり、さっきメジナが食った場所にしかけを投入。予定通り、もぞもぞとした前当たりの後、ゆっくりしもりはじめる。道糸をおくると今度はさっきより早めに道糸が走りドンと強烈な引きがダイワのメガドライ1.5号を襲った。強烈な引きのため一瞬レバーをもつ左人差し指がゆるんだそのすきに一気に敵は突っ込んでブチッと道糸を切って逃走した。

あれ道糸からということはおいおいお気に入りのウキ弾丸が制御を失い、悠々とクルーズのたびを始めていた。頭に血が上った。さっきの同じ場所を攻めるが反応なし。そこで、気になっていて予め撒き餌を入れていたサラシのはけだしにしかけを投入。すると、同じような渋いウキのゆっくりとした消しこみが始まった。これは、キタマクラのようなエサとりのアタリではないぞ。慎重に育ててあわせるとやはりギューンとのってきた。今度は慎重に浮かせると40センチのメジナくんだった。やったぜ。この最初の1枚目を釣るまでほんとに神経を遣う。同じ1枚でも、ボーズと1枚ではえらい違いだからだ。連続して26センチのこの時期にしては珍しく小型のメジナを釣り上げたところで、全く反応がなくなった。

9時半頃船長が弁当を持って状況を聞きにやってきた。「かまちゃんどうね。」昨日50枚とは信じられないほどの不調ぶりを話すと、「今日は何処も釣れとらん。潮がよくないみたい。中のハエもまったくだめ。横バエもだめ。でもまあがんばってここでねばって。」とねぎらってくれた。北浦は昼頃からつれだすことが多いから、この時点ではまだ期待を持っていた。ところが、ここからバラシの連発7連続の最高記録を樹立。上がってくる魚は、サンノジ、バリ、イスズミなどの外道のオンパレード。冬なのになんでバリ島で釣りをせないかんのかいな。

uenoサンもバラシ多発警報が鳴りっぱなし。釣った魚もバリであった。そんな中でクロの30センチを何とか1枚釣り上げ時間は刻々とすぎすでに夕マズメを迎えていた。明日はK氏とT氏の家族を招待してメジナ料理を振舞う約束をしているのにこの釣果でははっきり言ってやばい状況だ。「こら、愛するメジナちゃんくえ。えさを食いなさい。おいしいよ。ほら!」すると奇跡が起こった。ウキが朝と同じようにゆっくりとしもっていった。落ち着いて合わせを軽く入れるとのってきた。納竿30分前に34センチと37センチのクロを何とか釣り上げて合計5枚の釣果に終わった。何とかおかずを確保しほっとした。ueno氏は何とボーズ。昨日50枚、今日は10分の1の5枚という何ともさみしい釣果に終わった。波瀾に富んだ2004年の幕開けとなったこの釣行。これからの我々の波瀾含みの釣りを占うのに十分な結果となった。


   今年の初メジナ 40センチ


今年の初釣果

 
今年もよろしくね

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