6/13好きになるのに理由なんてない? 宇治群島

忙しい、忙しい。4月から組合の書記長になって、わかってはいたがこれほど忙しいとは。5時半まで学校で働いて、6時からは組合の仕事が始まる。毎日大体10時まで働く。毎日12時間労働ということになる。10時半に帰宅し、風呂に入り、12時くらいから学校の残りの仕事をする。土日もほとんど会議や動員でつぶれた。

当然釣りにもいけず、竿を握れない日が続いた。その間、私の心を慰めてくれたのが、「冬のソナタ」である。釣りにいけない傷心の私をユジンさんは最高の演技で慰めてくれた。「好きになるのに理由なんてない。」ユジンさん(主人公の女性の名)の名台詞。「私のどこが好き?」かみさんと付き合っていた頃、よく言われていた言葉だが、そんなのユジンさんの言う通りだ。「何でそんなに釣りがすきなの?」そんなことをいう人には、これから、このユジンさんの名せりふで返してあげよう。「好きになるのに理由なんてないんです。」

6月13日(日)。若潮。ついに待ちに待った休みが取れた。uenoさんと梅雨グロねらいにいくことにした。甑に良く予定だったが、行ったことがない未知なる世界を見たくて、つい出来心で川内港発の第8恵比寿丸に電話してしまった。釣りナビの情報に惑わされてしまった。「kamataさん釣りナビの情報に頼らん方が良いよ。その時良くても、おいどんが行く時は、悪くなっている時が多いから。」全くその通りだ。釣りナビの情報に翻弄され出してから今年は、惨敗が続いている.。惨敗の理由はもう一つある。天気である。テレビのお天気キャスターの森田さんが、ブラウン管から不吉な予報を伝えていた。「週末は台風で大荒れです。」

気分が悪くなり即座にテレビを切った。そんなバカな。この日のために多忙な中でも頑張ってきたのに。これで、4連続悪天候かと思いきや。天は我々を見放さなかった。台風4号は、金曜日に九州の東側を通り抜けた。やった。すぐに恵比寿丸に電話した。「出ますよ。昨日はでませんでした。人数が集まらないから宇治はだめね。鷹島に行こうと思うとります。11時出航です。」

12日(土)に定期大会を終えて、そのままueno氏宅へと午後8時に集合。いざ人吉を出発。最近開通したばかりの大口へのトンネルを通り、川内港に10時30分に到着。荷物を積み、午前10時50分に川内港を離れた。しかしでかい船だ。船室は広く、後部はまるで寝台列車のように2段ベッドが置かれている。中央の船室では3人の底物師による宴会が始まっていた。

出航して、しばらくして船長の声がした。「津倉に行きます。」津倉瀬は、甑島の南約20km沖にある鷹島よりも更に約17km南に位置する孤島である。島自体がかけ上がり状になっているため、凪の日にしか乗れないA級ポイントである。最近上物で実績が高い津倉に乗れればかなり期待できるかも。と考えていたら、「泰真丸が津倉に行ったげな。宇治で良いですか。」常連さんが船内の客を取しきっている。こうして、我々は南九州で草垣群島に並ぶ離島の宇治群島に始めて乗りこむことになった。今日のポセイドンは我々にどんな答えを用意してくれるのだろう。

2時間半ほどの長い船旅の後、エンジン音が緩やかに。宇治群島の北の端から渡礁開始である。まず、2人の底物師がガラン瀬近くのチヨジ瀬に渡礁。更に底物2人が小さなハナレ瀬である名礁双子瀬に渡礁。今日は客が少ないからA級ポイントが選び放題である。船は、黒瀬へと向かった。ここで我々ははたと気づいた。何と宇治群島行きの客の中で上物は我々だけでということに。出航前には確かにいた上物師は我々を裏切って津倉へ行ってしまったらしい。

なぜ、こんなに上物師が少ないのだろう。もしかして、釣れないのでは。そうこうしているうちに、黒瀬1番に底物師1人が降りた。「上物の方」船長の声で我々は準備をはじめた。降りた磯は黒瀬の3番。沈み根が点在し、いかにもクロがいそうな雰囲気が伝わってくる。時計を見ると午前3時。いよいよ夜釣りが始まる。

ところが、仕掛けを作る最中にとんでもないことに。数々のイスズミをかけつづけた愛竿シマノ遠投BVに中通しワイヤーが絡んでしまい、修復不可能に。仕方がないのでダイコーの強豪2号で勝負だ。道糸4号、ハリス3号。はっきり言ってもしタバメでも来たらジ・エンドだ。ウキはナショナルの電気ウキ0.8号にガンダマを追加できるように、またエサをキビナゴにかえても大丈夫なように水中ウキ0.5号にして、浮力を若干残した。

さて、第一投、ウキが消しこむ。この消しこみはどう考えてもえさ取りだ。仕掛けの先についていたのは、マツカサだった。uenoさんもマツカサの入れ食いに困惑気味。本命が来たらえさとりは去って行くさ。我々はそう信じて地合いを待った。えさが取られないようになった。浅いタナでは食わないことを感じていた私は、竿1本のタナで攻めていたが、一向に反応なし。

そこで、ウキ下を1本半にして根掛かり覚悟で夜釣りの一つのセオリーである瀬際を攻めることにした。すると、変化が起きた。ウキに前当たりが出たかと思うと、一気に海中に消えていった。すかさず合わせを入れるとえさ取り出ない重量感。浮いてきたのは、30センチ前後のシブダイであった。時計を見ると午前4時半。いよいよ地合い到来だ。

やはりここか。さっきと同じところをウキ下を少し深くしてトライ。すると同じようなウキの消しこみが。浮いてきたのは、シブダイとはちょっと違う、クロホシフエダイのような魚だった。どうやら、この下にシブダイが潜んでいて地合いともに食い出したらしい。

今がチャンスだ。すると再びウキが消しこむ。浮かせてぶりあげたもののハリが外れてオートリリースに。uenoさんにはなぜか当たりすらない。あせるuenoさんに「これ使ってください。」と、マルキューのキビナゴをあげた。すると、すぐに40オーバーのシブをゲット。良かったね、uenoさん。このあと、私も700グラムのシブを追加して、夜が明けた。

空が明るくなると今度はえさ取が出現。釣りが難しい。イスズミが多くなるだろうと予想していたが、その通りに。遠矢グレを消しこむのは800gのイスのみとなっていた。しかし、良い感じの潮が流れていて、釣り師的感によるとうまくいけば何枚か口太が拾えるのではと考えていたのだが、午前6時半に早くも第八恵比寿丸登場。「釣れましたか。」駄目のサインを送ると、「瀬変わりしますか」この場所がいいかどうか未だわからないというのにもう瀬替わりの選択を迫られることに。uenoさんとの協議の上瀬替わりすることに。我々は、荷物を片付けて次の瀬へ移動した。


避難港横 いい感じの潮だが活性がない

船の上で船長が首をかしげた。「釣れんかった?おかしいなあ。あそこは堅いところなのに」船は北に向かって進んだ。有名なガラン瀬あたりに来たが、「潮が流れてないね。」と逆もどり。我々は、これも有名な避難港横に瀬替わり。ここは、エサ取りのイスもいない変わりに魚の活性が全くない。3時間ほど粘ったが変化なし。いい潮なんだけどね。


ガラン瀬のハナレに瀬替わり

今度は、有名な超A級ポイントのガラン瀬のハナレに渡礁した。潮は船長のいうようにあまり動いていない。まずは表の船付けでトライ。撒き餌をうつとなんと魚がライズしているではないか。興奮のボルテージは最高潮に達した。良かった瀬替わりしてきて。uenoさん超期待の第1投。予定通りライズしていた魚がかかったらしく、喜びの中


ガックリ ライズしてたのはオヤビッチャくんでした

でやり取りをしてる。やったねuenoさん。ところが期待とともにあがってきた魚はオヤビッチャ。2人でおお笑い。竿1本先にはえさ取が群れている。高いところに上って観察すると、尻尾の黒い時折ギラリとひかる魚影が見えている。どうやらここもえさ取の竜宮城であった。オヤビッチャやイスズミの舞い踊りを見て溜息が。30メートルほど遠投しても、超瀬際釣法でもだめ。

私はこの船付けをあきらめ裏の山を上りワンドで釣り始めた。北西の風が吹き始めたためか、うねりがでて、このワンドはサラシで真っ白だった。もしかしてここなら勝負になるかも。第1投で早くも当たりが。あがってきた魚は、錦江湾によくいるコトヒキに似たギンユゴイだった。もうそこはギンユゴイだらけだった。8匹ほど入れ食いした後、そこをあきらめ、ガラン瀬本島との水道で竿を出したが、ここもオヤビッチャ軍団が取しきっていた。もう打つ手なし。最後の極め付けは、イスズミをかけ、ぶり上げようとしたら、なんと穂先を折ってしまった。もう完全に戦意喪失だ。残り1時間あったが後片付けを始めた。こんな時はなかなか船は迎え


シブとオナガを手にした上野さん

にこないものだ。海の中はすでに梅雨グロシーズンは終わり、夜釣りシーズンへと入っている。そう感じながら迎えの船に飛び乗った。2時間半の船旅で川内港に帰ってきた。道具を車に積んで恵比寿丸の船小屋でお茶をの


右はもしかしてバラフエ?シガテラ毒がこわい

んでいると、「どうでしたか。」とおばちゃんが聞く。「2人でオナガ1枚」と正直に報告すると、ヒャーと悲鳴にも似た声で「なんでえ。」そんなこと知るかいな。「黒瀬の3番はずっと釣れよったんやがねえ。」

つまり、本日我々が乗った瀬は宇治群島での上物ベスト3の瀬すべて乗ったということだったらしい。またまた、我々がHETAであることが証明されたことになる。これだけ頑張っても一向に魚は応えてくれない。悲しみに打ちひしがれながら、冬ソナのチュンサンのように視線を下に落とし、溜息をついた。しかし、帰りの車の中では、また次の釣行をどうするかで話が盛り上がった。こんな目にあっても釣りはやめられない。魚に「会いに行くのに理由なんてないんです。」(ユジンさん)

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