8/14惨敗記録更新中 硫黄島

文章に題名をつけるとき、作者は読者に興味を持ってもらうための仕掛けを入れる。しかし、今回の日記ではその仕掛けを入れる気持ちにもなれなかった。堂々と言おう。はい、そうです。今回も惨敗したんです。

1月31日にデカ尾長に出会って以来、ずっと惨敗が続いているのでした。今回でついに磯釣り10連敗。もう、いいわけができないよね。台風が次々に発生する今シーズン。うちのかあちゃんの実家に行く日をずらしてまで計画したってのに。

台風のうねりがおさまった8月14日、大潮。連敗を止めるためについに考え得る最後のカードを切ることに。1月の夜釣りで尾長と出会って縁起のいい硫黄島に再び行くことにした。黒潮丸の泉船長に連絡をとる。「でかいのがいるよ。仕掛けは太くしてきて。ワイヤーハリスがあればいいね。水温が高いから青物も回ってるよ。付けえさはサンマでいいかな。撒き餌もこちらで準備します。イカも準備しておいてね。」とても丁寧に話をしてくれる。今回はこの船で勝負しよう。

午前11時半、人吉を出発。お盆でのラッシュの中、午後3時に枕崎港に到着。予約しておいたえさの他に抱卵ボイル1角。付けえさにキビナゴ、松イカなどを買い込み準備万端。3時25分に港を離れた。枕崎港を出てすぐは波があったがすぐにおさまった。とにかくこの船は速い。みるみるうちに九州を離れていく。80分ほど過ぎたところで硫黄島が見えてきた。相変わらず白い噴煙を上げている。今日は南西の風と南からのうねりで北側からの瀬付けである。断崖の壁のようなところにアラねらいの男衆たちが次々に乗っていく。


硫黄島 白い噴煙でお出迎え

のこりは、宮崎からのおっさん2人と我々2組だ。今度はかなり遠くまで走った。硫黄島の港を過ぎ、噴煙を上げる山のすぐしたまできた。その地磯に宮崎組は乗った。

えらく潮が濁ってる。「潮が濁ってるね。こんなところでつれるんかな。」すかさず、ポーターのおじさんが答えた。「ここは、海底から温泉が湧き出しているので、濁ってるんです。」へえー、と感心していると、今度は我々の番だ。

船長が「今日はうねりが入ってるから、いいところに行かれんとよ。シブが釣りたいんなら新島。青物が釣りたいんなら浅瀬だけど、今日はうねりがあるからね。」我々は安全策に出た。硫黄島から少し離れたところにある新島というところにきた。南側のポイントは1月にきたときに惨敗を食らった場所だ。今回はその裏側に乗った。

「上げ潮に入ったら、潮が右に動くから、そのときがチャンス。シブやアカジョウが当たってくるよ。その潮になったら必ず何かつれるから。」そう言い残して船長は去っ


新島から開聞岳を望

ていった。今回の我々の釣りの対象魚は、シブとタバメ。あわよくば、アカジョウ、ハタ系のお魚さんたちである。この釣り座は右の先端部分が一番のポイントで、そこから右は浅く、左が急に深くなっているそうだ。

私は、すかさずそこにピトンを打ち込んだ。今回はブッコミをやりながら、フカセ釣りをやる作戦なのだ。uenoさんも私のすぐ隣にピトンを打ち込み、そこでフカセ釣りをするようだ。場所がなくなったので、左の引っ込んだところからフカセをすることにした。釣り始めが午後6時半頃となった。「おっ、でかいイカがおる。」uenoさんがイカをかけたらしい。い


ウミガメを釣ってしまったuenoさん

きなりやり取りをしている。おかしいな普通のマダイバリにイカがかかるはずが。よく見ると彼の上物最強のカンパチ竿がものすごい弧を描いている。3,4キロクラスはありそうな引きである。よかったねuenoさんいきなりの大物ゲットで。

ところがようやく浮いてきたのはイカでもなく、シブでもない、ウミガメであった。「ウミガメの引きは強ええ。」と訳のわからないことをいいながらやり取りをしている。何でこんなところにウミガメがいるのだろう。というより、何で人間がこんなところで釣りをしておるんじゃと亀は言いたげだった。亀が浮いているということは、そこ潮があまりいい状態ではないと聞いたことがある。この突然の訪問者は、海の神ポセイドンの使者だろうか。

腕のところにハリが掛かっているのでハリスを切って海へお帰り願った。こうやって、邪悪な釣り人から亀を守ってあげた。うん、どこかで聞いた話だな。さしずめ、僕は浦島太郎かも。これから助けた亀につれられて魚の入れ食いという竜宮城に連れて行ってもらえるかも。しかし、もし、ポセイドンの使者だったらどうしよう。この後我々に災難が降りかからなければいいのだが。

さて、夜の帳が降りて、夜釣り開始。午後7時過ぎが満潮だから、下げ潮に変われば、右に行く本命潮になるはず。わくわくしながら待っているが、潮は相変わらず左へと流れている。3ヒロのタナを基本とし、上下させながら釣っているが、釣れてくるのはイスズミばかり。付けえさのサンマにイスズミが食ってくるのには参った。イカに変えたり、抱卵ボイルに変えてもイスズミがじゃまをした。

夜中の12時頃、uenoさんにシブがヒット。船長の話だと、タナは1ヒロ半とも2ヒロともという話だったが、uenoさんによれば、竿1本半くらいだったという。この時期にタナの深さはどういう訳だ。釣り雑誌にも今年の梅雨グロはタナが深いとあった。また、今が最盛期であるはずのアジゴ釣りのタナもそういえば深かったけ。そう考えてタナを深くするもえさ取りだらけでどうしようもない。

そうこうやっているうちに夜が明けた。私はえさづりをあきらめ、ルアーを引いて見た。もうやけくそである。すると、エバの親戚みたいな魚をゲット、アンドリリース。朝まずめには、イスズミとソウシハギの楽園となっていたので、ルアーを近づけてみるとソウシハギがルアーを追っている。ルアーもなかなか面白いねとぼーっとしていると訳のわからないでかい魚がルアーに食いついてきた。

体長1メートルは優に越しているダツの親戚のような魚だった。魚の名前はわからない。誰か教えて。このバケモノにルアーのフックを曲げられたところで釣りを終了した。またもや、ボウズ。潮は最後まで本命潮になることなく終わった。ところで、ウミガメはポセイドンの使者だろうか。読者の方々に検証してもらいたい。その1。夜中に突然uenoさんが雄叫びとともに視界から消えた。あ


眼鏡を失いながらもゲットしたシブダイ

わてて見に行くと岩に足を滑らせて落ちてしまったらしい。腕をけがしてしまった。

その2。釣りを終えて片づけていると再びuenoさんの雄叫びがこだました。何と岩から岩への飛び移りをしているときに、その衝撃で眼鏡を海の中へ落としてしまったそうだ。がっくりするuenoさん。これらの2つの事件から、ウミガメは我々に何を伝えたかったのだろう。「海を汚さないでくれ」と釣り師的感が働いた我々は、いつもより丹念に磯の掃除をした。きれいにし


ルアーで釣った訳のわからないお魚さん

ておけば、ポセイドンはまた笑顔で我々を迎えてくれるに違いない。きれいになった磯を後にし、すがすがしい気持ちで回収の船に乗り込んだ。

「どうやった。」と船長が訪ねる。惨敗を告げると。「水温が高いからね。30度もあるんよ。」と慰めてくれた。「本とはね。タジロ瀬の横に乗せてあげたかったんやがね。」タジロ瀬とは、宮崎のおっさんたちが乗った濁っている瀬だ。「あそこの釣果を見てから、船の中に入ったら?」そんなにつれるんかな。

半信半疑で、宮崎組の釣果を見てみると驚いた。二人ともイグロクーラー満タン。アラ、シブダイ、メアジ、ハタ、タバメ、オジサンなどのおいしい魚や高級魚が30匹ほど入っていた。「あそこはね。海底から温泉が沸いていて、水温があまり変わらないんだよ。だから、魚がすごく多いところなんだよ。今日はうねりがあったからね、あそこの隣に乗せてあげたかったけどできなかったんだよ。冬にはクロが釣れるよ。今度くるときは乗せてあげるよ。」とて


さようなら硫黄島

も、親切な船長さんだね。

惨敗してもこのすがすがしさはいったい何だろう。魚は得ることができなかったが、きっと、目に見えない物を得たような気がする。そして、またまた、魚釣りに行きたくなった私であった。こうなりゃ惨敗記録をいつまでも更新してやる。そんな訳のわからないことを口にしながら硫黄島を後にした。

TOP BACK