10/13 やっぱりフカセはおもしろい 川内沖堤防

10月13日(水)、夢の平日釣行が実現した。土曜日出張のためその代休措置として、水曜日を休みにしたのだ。今回は、上野さんと休みを合わせることができず、1人での釣行となった。昨年は9月に秋磯開幕だったのだが、今年は、この10月になってやっと開幕にこぎ着けた。

対流圏に住む我々は秋になったと勝手に意味づけているが、海の中は実はまだまだ残暑厳しい状況だ。水温は依然高く。餌取りの活性が高いため、よく知られた沖磯へ出ても小さいサイズのメジナしか望めないことが多い。だから、この時期は本当は本命場所へ行くよりは、内海の磯などで足裏サイズのメジナたちと冬場の本格シーズンに備えて練習するのが望ましい。

どこにいこうかなと考えながら、携帯サイト釣りナビを見ていると、「クロ1kg〜2kg釣る人1〜2匹、チヌ1kg〜2kg釣る人1〜2枚」という文字が飛び込んできた。さっきは、秋磯は小さいサイズしか望めないといったが、訂正しましょう。10月でもデカ版を釣ることができる場所がある。確か昨年も平日に釣行した川内沖堤防である。ここは沖磯ではないが、沖磯よりも釣れる堤防として有名。釣れる魚はほとんどが1キロ以上。1年中四季折々の魚が釣り人を楽しませてくれる。10月のこの時期に、2キロクラスのクロやチヌが望める堤防なんて日本中探してもここだけだろう。魚影の濃さはただものではない。

沖堤は、川内港沖渡船でわずか10分ほどの位置にあり、潮通しがよく、堤防自身が人工の漁礁になっているため、たくさんの魚が居着いている。巨大な軍艦を彷彿させる南北に広大な堤防。ところが、堤防ということでプレッシャーはきつく、すれた魚が多い。でかいのがいるからと言って、太仕掛けでは魚は見向きもしない。食わないから細くすれば今度は切られるというジレンマに多くの釣り人は悩まされる。

前回の釣行で思ったのだが、ここの釣りは結構難しい。堤防ということで軽く考えているとひどい目に遭う。潮は刻々と変わり、2枚潮、3枚潮は当たり前という状況で釣らなければならない。ウスバハギも多く、ウキを取られるという苦い思い出もある。しかし、堤防でありながら沖磯よりもデカ版が釣れる堤防の魅力は計り知れない。また、気がつくと川内港の各堤防や鴨の瀬での釣りをサポートしてくれる若潮丸に電話していた。「クロもチヌもいいですよ。北の風が強いですね。5時半出航です。」さあ、いよいよ1年ぶりに沖堤との再会だ。また、秋磯開幕はならなかったものの、実に4ヶ月ぶりに昼釣りでフカセ釣りができることにうれしさがこみあげてくるのだった。


はっきり言ってやばい?大荒れの沖堤

午前2時半に自宅を出発。途中で買い物をしながら、午前5時10分頃に川内港に到着した。渡船で10分なので楽ちんと考えていると、沖堤についた途端にびっくり。未だ薄暗い堤防から沖向きの海を見ると暗闇の中でもがちゃがちゃしているのがわかるくらい海は荒れていた。

北風は益々強く釣り人に吹き付け、釣りをするのが困難な条件を形作っていた。他の釣り人が次々に釣り座を確保する中、風と大波という最悪のコンディションの中で呆然と立ちつくしていた。夜が明けると海の悪況がますます明らかになってきた。

ここ沖堤は、まるで飛行場の滑走路のような長いコンクリートの延べ棒すべてがチヌのポイントといわれる。ほぼ南北に位置する堤防の沖向きがクロのポイント。内向きは一般的にチヌのポイント。特に南側の先端付近の一番高いところに台風で壊れた堤防のコンクリートの残骸が魚にとって格好の魚礁になっていて、クロが居着いている。

しかし、そこにはすでに先客が。私はしかたなく下の段におり、やさしそうなオジサンの近くに釣り座を構えた。沖堤の釣りを難しくするもう一つの要因は、堤防の高さである。強い波を抑えるためには、堤防にやはり高さが要求される。ここ沖堤は、干潮時には、私が持ってきた720の玉網も届かなくなるくらいの高さになる。落とし玉網が必須アイテムなのだ。落とし玉網を持たない私はしかたなく隣のおじさんに挨拶して魚をかけたら救ってもらおうと下準備を行った。

すっかり明るくなったので、仕掛け作りに入った。しかし、この時折突風を伴う10メートル以上の強風。小物を吹っ飛ばしたり、少し自重のあるものはくるくると回転し、すぐにお祭りを誘発する。仕掛け作りはいつもの倍時間がかかった。もうこの風何とかしてくれよ。竿は久しぶりの登場メガドライM2、1.5号53。リールはダイワのプレイソ2500LB。道糸ダイヤフィッシング誘い2号。ハリスは朝まずめということで太めのサンラインパワーストリーム1.75号。ハリはがまかつ層グレ5号。ウキは昨年と同じ、釣研エキスパートグレSP0号で全遊動にし、グレハリスウキ00号をセットした。餌は、オキアミ2角にグレパワーV102袋に、マルキューの液体起爆剤グレにはこれだを混ぜた。

12メートルの強風に向けて第1投。竿先をすぐに真下にに向けるも、強風にあおられて道糸はあっという間に風下へ向かって大きなアーチを描いていた。当然この仕掛けでは魚の口元に届くはずもなく、仕掛けを釣研のトリプルセンサー5Bに変えた。これはー5Bの水中ウキ兼潮受けと5Bの下ウキに全誘動の小粒の当たりウキの3つのアイテムが一つになっている。仕掛けを投げるときに一体となって飛んでくれるので仕掛けの絡みもなく、ポイントへと運んでくれる。また、こんなガチャガチャの海況でも5Bという重さで餌を魚の口元に運んでくれるし、浮き止めは下ウキに引っかかるようになっていて、当たりは浮き止めのない小粒の当たりウキでとるので、魚にとっての違和感を抑えてくれる。いつかは、試してみたいと思っていたアイテムだった。

しかし、魚からの反応は全く感じられない。他の釣り人の竿も全く曲がる気配なし。それどころか、風波ともに益々強くなるばかりで、堤防の壁に当たってはしぶきが釣り人の頭上を越えるようになってきた。これではいつまで釣りができるかわからない。

あーあ、御所の浦のノサバあたりの方がよかったかなと後悔していると、ウキが一気に海中に消えるとともに竿に強烈な引力がかかってきた。なんだこいつは。堤防の際に突っ込もうとする敵の動きを何とか竿の強さで粘っていると、少しずつ浮き始めた。下ウキが見えてきた。竿1本半のタナで食った相手との対面はもうすぐだ。ところがはやる気持ちが裏目に出た。強引にリールを巻き取りにかかったところで、やつは、最後の抵抗を試みた。一気の堤防際へのつっこみで耐えきれずバラシ。ガックリ。仕掛けをチェックすると、ハリのちもとがやられていた。

「ウスバだね。」隣のオジサンがつぶやいたが、ウスバの引きとは違うし、何よりパワーがすごい。しかし、いくら能書きを言ったところで魚は戻ってこない。次なる獲物をめがけて釣りを始めていた。時計を見ると8時半。もう朝まずめは終わってしまうのに、どこの釣り座も当たりすらない。釣り人すべてが沖向きで釣り初めていたのに、1人また1人と内向きのチヌねらいに切り替えて半分以上の釣り人が移動していった。頼りの隣のオジサンも私の願いむなしく、内向きのかご釣りへと切り替えていた。私も一度は内向きで試してみたが、風の影響を受けるのは同じで魚の反応もなく、やや餌取りやウスバの動きがある沖向きに戻った。

満潮が7時頃。どんどん水位は下がり、ものすごい激流の下げ潮が南向きの先端へと流れている中、度重なるライントラブルに集中力も消えかかった午前11時前だった。リールが巻きにくいのでまたライントラブルかと思いきや竿先に生命反応が。あわせを入れると本格的に当たりが竿全体に伝わってきた。恥ずかしながら向こう合わせでかかっちゃったのだ。またまた、やつは堤防の際に突っ込み始めた。さっきと同じ引きだが、今度はわりとあっさりと浮いてきた。

おっ、グレや!思いがけない獲物に思わず心の中で関西弁になってしまった。浮かせたものの、落とし玉網はないしどうしよう。サイズは33、4センチくらいか。ええい、竿の力を信じて振りあげた。上がってきたのは見事なエメラルドグリーンの口太メジナ。やけくそで結んでいたチヌバリ3号が見事に上顎を貫通していた。

今まであれだけ苦労していたのに釣れるときはこんなに適当で釣れるんだね。拍子抜けしながらもうれしさは隠せない。久しぶりのクロちゃんですなあ。ええと、いつ以来だろう。えっ、もしかして2月の野間池以来のまともなクロちゃん?うれしはずかし、私は、エメラルドグリーンの瞳を持つ恋人をやさしくスカリにいれて生かしておくことにした。

それからは、さっきまでの悪状況は嘘のよう。一投ごとに魚からの返事が返ってきた。魚は堤防の際にいる。速い流れを避けて釣り人が与えてくれている餌をぱくぱく食っているらしかった。パターンはわかってきた。アゲンストの風に向かって、仕掛けを投げ、仕掛けと一緒に歩きながらうまくなじむように調整しながら当たりを待つと食ってくる。しかし、腕が未熟な上にハリス1.5号におとしており、また魚が大きいので、3連続バラシ。悔しさと面白さで頭がいっぱいになってきた。

4回目の当たりを取ると今度は4度目の正直。何とか魚を浮かせることに成功した。けっこうでかい。10メートル以上も流しながら慎重に元の釣り座に魚を移動しようとしていたところに助け船参上!度重なるバラシを目の当たりにした近くの釣り人が玉網ですくいに来てくれたのだ。しかし、潮が引いていて中々救えない。よしっ、すくったぞ。いやすくってもらったぞ。上がって来


やっとで食った 42センチのクロ

た魚はまるまる太った見事な口太42センチ。「すごい精神力ですね。」釣りをするには最悪のコンディションの中であきらめずに竿を打ち振り続けたことを救ってくれた釣り師はこんな言葉で評価してくれた。

「ハリスは何号だったんですか。」「1.5号ですよ。タナは竿1本。際にいますよ。がんばってください。」「わかりました。でもいいなあ。」立て続けに会話が弾んだ。まったくの見ず知らずの人なのにまるで親しい友達のような関係になる。釣りのもう一つの魅力は人と人とをつなぐことにあるとこの時強く思った。

やっぱりフカセは面白いね。自分で釣りを組み立てながら、魚の状況に合わせて釣る。ありったけの想像力を働かせて、魚との真剣勝負を挑む。夏から秋にかけてのオフシーズンに船釣り、筏釣り、堤防釣り、サビキ釣りといろいろやってきたがやはりフカセが一番面白い。

そんなことを考えながら、度重なる当たりに魚を浮かせることができず、オナガを1枚追加したところで当たりがなくなり、隣の釣り人が竿を曲げだした。遠くからやり取りを見ていたが中々上がってこない。堤防が高いためか玉網入れも苦労しているようす。釣れたみたい。見に行くと、48センチくらいの2キロ近いクロがご用となっていた。さっき私の魚を玉網入れしてくれた人の相棒らしい。

再び玉網入れをすることになった彼は、「もう2回もバラシちゃったんですよ。しゃれにならんですわ。」と話しかけてきた。僕はもう7,8回バラシてんだけどな。その後、10分後にその彼がやっとでキロオーバーのクロをあげた。祝福にいくと、「やっぱり竿一本でした。」と笑顔が返ってきた。本当は競争相手のはずだけど、みんなが釣れると本当にうれしいものだ。その後、相棒の人が精一杯のやり取りの後、42センチほどの見事なオナガをゲットし、釣り場のボルテージは最高潮に達した。しかし、これを最後にクロの連チャンは終了。向こうはボラ、こっちはバリを釣ったところで確変が終わった。


本日の釣果 地グロ2枚、オナガ1枚


ありがとう 川内沖堤

帰りの渡船で釣り談義に花が咲いていた。釣りをする前は、悪条件に不安いっぱいだったが、裏を返せば、この時化は、クロ釣りにとっては最高の条件ということになる。正直言って、この時期で40オーバーが釣れるとは思わなかった。

しかし、課題も山積みだ。たくさんの当たりを拾ったにもかかわらず、魚をあげることができなかった。その中にはキロオーバーのオナガもあったはず。これだけばらしてしまえば、魚は警戒して、よそへ行ってしまうのも無理はない。いかにかけた魚をあげるか。これからも修行が必要だ。

さて、家に帰って、翌日、魚を調理した。ものすごく脂がのっている。腹パンパンの口太の内臓にはものすごい量の油が巻き付いていた。こいつは、釣り人の餌で内臓に脂肪を持った肥満グレだったようだ。しかし、食味は脂がのっていて最高。刺身でもしゃぶしゃぶでもやすしやかあちゃんにも好評だった。釣り人が養殖した魚の甘い味を楽しみながら心はいつものように次回の釣行へと向かっているのだった。


自然の恵み しゃぶしゃぶで いただきまーす

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