5/29 釣りは安全第一 下甑手打

「釣りに行きましょうや。」「いいねえ。行こうか。」釣り師にこれ以上の会話はいらない。先週は夜釣りで頑張ったが、5月29日のスケジュールが空くとわかると、再び釣りの虫が騒ぎ出した。夜釣りにいきたかったが、uenoさんが、元同僚の校長の退職祝賀会か何かに参加しなければならないため、離島は断念。甑への1日釣りに切り替えた。ところが、釣り大会などが入っていたりして、船は満杯状態。中甑の誠芳丸、上甑里の蝶栄丸、そして、瀬々野浦の永福丸に至っては1人だけ空いてるとのこと。困った我々は祈る気持ちでFナポレオン隼に連絡。「空いてますよ。午後10時出航です。」何とか甑に行けるのでホッとするも十時出航だって。となると、人吉インターを8時には出なければならないことになる。退職祝賀会は、T町であるから、そこからインターまで30分。つまり、uenoさんはその退職祝賀会に1時間半しか参加できないことになる。それでも、釣りを選ぶ上野さんはやはり相当な釣りバカである。先日、30万負けていたパチンコをこの4,5回で40万円勝って負けを取り戻したそうだ。パチンコで張り合おうとは思わないが、その勝負根性はやはり見習うべき所がある。いつかは越えなければならない師匠であり、ライバルである。

5月29日(日)小潮。5月は近年まれにみる小雨ではなかったか。雨が降っても長続きせず、晴天続き。今回も予報は晴天問題なし。問題があるとすれば、べた凪でサラシがなく、クロの活性が心配されるくらい。今回の対象魚はクロの他にもある。十時出航なら夜中の渡礁だから、当然夜釣りには十分な時間がある。私は、夜釣りでのイサキも視野に入れ、かご釣りの仕掛けも準備した。1日釣りだが、夜釣り、昼釣りもできるというお得なナポレオン隼だ。


瀬付けトップバッター野崎の地磯

午後7時40分、ほろ酔い加減のuenoさんを乗せて、九州自動車道から南九州自動車道を通り、串木野インターで下り、串木野港に着いたのが午後9時45分。もうすでにほとんどの客が荷物を積み終えていて出航を待つばかりとなっていた。背広から釣りのユニフォームに着替えた我々は、午後十時丁度に港を離れた。仕事の疲れか我々はすぐに熟睡に入った。エンジン音が緩やかになった。もう着いたらしい。さあ、憧れの手打西磯へ行けるのかな。興奮のボルテージは最高潮に達した。

暗闇の中から突然大地の壁が出現した。船は野崎の地磯に付けたらしい。ということは憧れの西磯ではないですか。さすが、隼。どこよりも早く出航するので、西磯も空いていたようだ。さすがに、早崎、大介、上の村瀬、下の村瀬などの超がつくA級ポイントは空いていないのだろう。しかし、この野崎一帯も大変潮通しがよく、クロの宝庫と言われている。案の定、「kamataさん準備してください。」船長の奥さんらしき女性が渡礁の準備を勧めてくれた。乗った瀬は野島というらしい。足場が悪い。ブロック塀のような細長い足場が斜めに走っており、裏側は低くなっていて足場がよいのだが、駆け上がりになっていて浅く釣りにならないようだ。uenoさんはブッコミの用意と昼釣りの仕掛けを用意していた。用意がいいなあ、uenoさんは。

ところが、このことがuenoさんにとっては命取りになってしまうとは、この時点では知るよしもなかったのでありました。「北斗七星が見えるバイ。沖の方角は北バイな。」数年前までは、理科の専科をしていたuenoさん。早速、その経験を生かした。私は、そんな上野さんをほっといてかご釣りの仕掛けをセット。いよいよ第1投。道糸10号にウキはダイワの12号、ヤマシタの10号シャトルかごにハリスはアンバランスだが5号。ハリはグレバリ9号を結んだ。浮き止めを竿2本にセットした。ブレイゾン遠投5号を力強く振り抜くとビューンという心地よい音を残して30メートル先に着水した。さて、イサキは釣れるのか、わくわくしながら道糸を出していると、道糸の出が中々止まらない。おかしいなと思って回収しようとすると、何と根掛かりだ。おかしいな、もしかして。そう、浮き止めが緩くなっていて、2つつけるのを忘れていて、タナぼけしたらしい。なんでまた、困ったなあ。第1投からこれじゃしょうがないなあとぼやいていると、いきなり急を告げる隼がやってきた。渡礁して1時間も経たないうちに何でだろう。奥さんが大声で何やら叫んでいる。おっ、思い出した。渡礁の時あわてていたので、ウエストポーチを忘れてしまったことを。早速、そのことを伝えようと必死で声を出した。しかし、向こうもこっちの話を聞かずに叫んでる。わたしたちは未だその状況がわからずにいた。やっとで聞こえた。どうやら、瀬替わりをするらしい。渡礁して、1時間もたたない内に瀬替わりなんて聞いたことがない。でも、仕方がないので我々は言われるままに、船に乗り込んだ。


赤鼻の船付け

船に乗ると船長が状況を説明してくれた。「風が吹いて時化てくるから、場所を変わります。」へえ、今日の予報は1.5mだったはずなのに。船は、野崎から南へ向かって進んだ。他の客の回収しながらの瀬替わりで時間がかかった。おそらく北からの風が強烈に吹いてくるんだろう。客を次々に南向きの場所に降ろしていく。我々も野崎から結構走っていくと灯台が見えてきた。釣り掛崎あたりでエンジン音が緩くなり、その白瀬に渡礁した。「向こう側の方へ行って真ん中ぐらいのところで」と言い残し隼は去っていった。右手前にはハナレ瀬があり、先客がいた。船長お薦めの場所へ行ってみたが、愕然とした。滑り台のような斜めに傾いた平らな岩板が斜めに海面に向かって走っており、これは危険と判断。とにかく今は夜なので船付けからは動かないようにした。

再びかご釣りの準備をしていたところ、uenoさんの悲鳴ににた声が聞こえた。「あーあ、折れとる。」ぶっ込み用に持ってきていたカンパチ竿の穂先が折れていたのだ。カバーを付けずに瀬替わりしそのまま磯においていたのが敗因だったようだ。また、同じくカバーを付けずに竿ケースにしまっていた上物竿も穂先が折れてしまった。がっくりのuenoさん。それでも、用意がいい彼は、何やら強い竿を持ってきてフカセをやっていた。「こりゃ釣りにならん。」潮がその斜めの岩盤方面へと走っていたので、uenoさんは危険を顧みずにその滑り台へと下りていった。私はかご釣りなので、そこには行かずに船付けで頑張ったが、当たりすらない状況で朝まずめを迎えた。uenoさんは朝まずめに何やらでかいのをばらしたらしく悔しそうに船付けに上がってきて、昼釣りの仕掛けに変え、今度はもっと先の滑り台へと釣り座を変えた。私もそこへ行きたかったが、滑り台が結構危険で、船付けでも潮も動いているし勝負になるのではと朝まずめからそこで勝負した。


すべり台で奮闘中のuenoさん

しかし、朝一番は、潮が走っていて尾長の気配もあったものの、その後少し緩んだころ小長(尾長の30cmクラス)2枚と32cm位の口太1枚釣ったところで、潮が止まった。日も照りだし、船付けは明らかに期待薄になっていた。uenoさんの方は、9時くらいまでに6枚ほど釣っていた。uenoさんの釣り座をのぞいてみると根だらけで取り込みは容易ではない。3枚くらいばらしたというのもうなずける。このまま終わってはいけないと考えていると、瀬替わりの客数数人を乗せた隼がやってきた。「あそこで(uenoさんの釣り座)2人で釣んないよ。」船長にここまで言われたらしょうがない。危険な滑り台にロープを取り付けて下におり、uenoさんの隣で釣らせてもらうことにした。

「タナはどれくらいですか。」と聞いたが、魚の喰うタナは一定していないようで、撒き餌とつけエサを長く合わせられる全遊動が有利と考えた。uenoさん釣っていた釣り座に入ってすぐに感じたが、いかにもクロが釣れそうな雰囲気がする。4年くらいクロ釣りに没頭すれば、さすがにクロがつれそうかどうか判断できるようになってきた。複雑に根が入りくんでおり、この凪の日でもサラシが常に出来ている。−イオンがさわやかだ。釣り座に入って、いきなりウキが消し込まれていった。合わせるといきなり本命らしき魚との格闘が始まった。釣り座付近はすり鉢状になっており、取り込み場所はその深くなった一カ所しかない。そこに魚を遊動し、2号竿にものを言わせて強引に浮かせた。綺麗な700gの口太だった。


元気な手打のクロちゃん

その後は喰い渋り状態が続き魚からの反応はあるもののハリ掛かりできない状態か続いた。仕掛けは、釣研の全遊動XAの0号に−0号の水中をセットし、感度重視でいったが、それでも中々釣れなかった。そこで、当たりの取り方を色々と工夫した。まずは、魚が喰って、ウキを深く持って行き、ウキが見えなくなるまで糸を張らずに合わせないようにして、魚が走るのを待って合わせた。次に魚が学習すると、今度は、最初から仕掛けを張り気味にして始めから仕掛けの重量感をクロに覚えさせるようにすると、相手は走り出し、ウキが気持ちよく消し込んだ。これも単発で、今度は、誘いを2回くらいいれて喰わせた。uenoさんがとっさに「うまい。」とほめてくれた。これで6枚目。夢中になっていると、午後0時30分となり、回収の時間が近づいてきた。時間がなくなるにつれ潮が良くなってきた感じがした。回収のため隼が近づいてくるのが見えたため、そろそろやめなんとウキを見ていると、ゆっくりとしたスピードで消し込んでいった。魚がかるくエサをくわえているのがよくわかった。ウキが見えなくなるまでじっと我慢していると、道糸に変化が現れたのでゆっくり合わせるとぎゅーんと竿にのってきた。これも700gの口太だった。この口太を合図に急いで道具を片づけて船に飛び乗った。合計7枚。uenoさんは合計8枚に終わった。

ピーカンの日で厳しい状況を予想していたので、我々としてはまずまずの釣果だった。本日は、クロはあんまり芳しくなかったようで、他の上物師はそそくさと片づけていた。良く釣った釣り師はなぜか自分でクーラーを開けるからだ。この日クーラーを自ら開けた釣り師は少なかった。4.5kgの石鯛を釣った底物師に、アラを1匹、そして、タバメの50cmクラスを釣った人が目立った釣果だったようだ。「今日は、風が強くなる予報で時化てきたからなあ。」「始めに乗ったところは良かところだったんでしょう?」「あそこ(野島)はずっと釣れちょったとよ。でも、しけてくるからねえ。」いきなりの瀬替わりについて客の理解を求めようと船長の意図がよくわかった。始めは何で?と思ったが、でもよく考えると客の安全を第一に考えてくれるこの船長の判断はとても有り難い、感謝ものと受けとらねばならない。私は船長に「また来ます。」と軽く会釈をし港を後にした。予報に反して串木野港では雨がぱらついていた。悔いが残るとすれば、あーあ、始めからすべり台で釣れば良かったということくらいかな。

赤鼻の向こう側が白鼻

今回の釣果

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