8/2 ○メの入れ食い? 硫黄島

夏真っ盛り。筋書きのないドラマである高校野球も始まろうとしている。同じく筋書きのないドラマである夜釣りにと没頭しようとする私。今回も性懲りもなく硫黄島での大物釣りを計画することにした。8月2日上り中潮2日目。この日は、7月末に大雨を降らせた前線が去り、南海上に発生した台風をにらみながらここしかないという日だった。「1時半に来れる?」の黒潮丸泉船長の電話で午前10時過ぎに人吉を出発。九州自動車道を南下。枕崎に到着するとフィッシングおがわで仕掛けや抱卵ボイルを購入。「今日はどこへ?」「硫黄島です。」「黒潮丸さん出るんだねえ。」店の人が意外な反応。えっつ、だって今日は波高予想1mなのに。釣具店を出て枕崎の海を見た。すると愕然とした。予報とちがうねん。うねりで立神などの磯際がサラシで真っ白になっているではないか。不安が胸をよぎった。いつものスーパーで水、食料、餌を購入。うだる暑さだ。アスファルトの上は優に40度は超えているだろう。今日は我慢の釣りになりそうだ。午後1時頃、枕崎港へ到着。先客が2名。今日は少ないのだろうか。やがて、船長、ポーターの口ひげおじさん登場。氷をたっぷりクーラーに入れてもらって、さあ出発と張り切ったが、何と客は6名だった。なのに「下の段に寝てな。」と船長。このときは意味がわからなかった。

午後1時45分出航。港を出るとがっぱんがっぱん揺れた。黒潮丸に乗って今まで冬の時期でさえこんなに揺れる船内を経験したことがない。uenoさんと顔を見合わせ「やばいかも。」と唾を飲み込んだ。「種子島の0.9mの予報はいったいどうなったんだ。」uenoさんが吐き捨てるように呟く。これまで、船の進行中に気持ち悪くなったことはないが、今回はちょっとやばかった。はっきり言って時化のため普段よりやや遅れて2時間後の午後3時45分にやっとでエンジン音が緩やかになった。どうやら硫黄島港に着いたらしい。すると、Yシャツを着た方々がどやどやと船から硫黄島港の岸壁に降り立っていった。この人たちは黒潮丸をチャーターしたらしかった。鹿児島港からならフェリーで4時間だから料金はわからないが、こんな渡船の使い方があるのかと感心させられた。人口100人足らず。野生のクジャクが住む島。小中学校あり、温泉もあるという。観光するほどの施設はないようで、そのことが、魚の楽園を維持している理由であるのかもしれない。渡船で2時間かからない距離にこんな手つかずの魚の楽園があるなんて。どうかお金儲けの愚かな人間どもに開発されませんようにと願わずにはいられない。

ところで、このうねりはいったい何だ。台風が近づいているのは間違いないが、これは台風の波長の長いそれとは明らかにちがうぞ。チャーター客を降ろしたが相変わらず船は揺れている。真南に位置しているこの港の周辺がこれでは、南東側に位置する「タジロ」への渡礁は不可能だろう。南側は、ヤクロ瀬、洞窟、ハルマなどのA級ポイントが目白押しなのに。「今日は乗れるところしか乗せられんからね。」と船長。ガクッ。まず始めに北西側の奥まった壁のような狭いところに2人が乗った。足下から水深があり、アラや石鯛のポイントらしい。船はさらに北東側にやってきた。幾分うねりは小さくなっている。このことからして、南西からのうねりらしい。平瀬や鵜瀬を観察している。2人組の一人に声を掛ける。「Kさん、平瀬はだめだよ。満潮は6時半だからね。鵜瀬もこの時間でこれじゃあ。」この2人組、あこがれの鵜瀬を予約していたらしい。このおじさんがっくりと肩を落としている。「新島なら安全だからね。潮によってはでかいのもくるから。」と船長がなだめる。「AとBとどっちがいい?」AとBと言われたってね。「最初にKさんの2人行こうか。」どこかで見たことがあるぞ。昨年8月13日に見事に惨敗を食らった場所だった。よかったとこのときはほっと胸をなで下ろした。2人組を下ろした後、更に竹島方面に100m位進んだところに瀬付け。安全に渡礁完了。「そこに(左側)根があるでしょう。そこは浅いから釣りにならんからね。その横から深くなっているから、そこをぶっ込みがダメなら浮き釣りをしてみてよ。」はーいと手を挙げてアドバイスに応え、磯の全体像をつかむ作業に入った。

ここはA地点より足場はいいがぶっ込みするならあまりに浅く根だらけでやりにくそうだ。「足場はよかバイ。」と喜んでいるuenoさんを横に、私には早くもつれないのではという予感がしていた。まず、ぶっ込みしかけを作り、おもりを浮かせて宙づり状態にして、イカの1匹掛けをして竿受けに置き竿にした。その間に浮き釣りのしかけを作っていると、何とぶっ込み仕掛けの竿が海面に向かってつっこんでいるではありませんか。アカジョウだったらどうしよう。何て言いながら、合わせを入れると心地よい竿の曲がりと思いきやあっさりと浮いてしまったのであります。


第2投で釣れたシブ

33cm程の小シブをつり上げ、まずは坊主脱出。幸先いいと思われたが、この後がいけない。餌を蒔くとカメの登場。カメの登場に不安を覚える。これまで、カメがいるとろくなことがない。ジンクスだけでなく、底潮がよくない時はカメが浮いてくるそうだ。夕まずめに7,8キロクラスを2回掛けて腕はぱんぱんに。潮は緩やかに左へ動いている。根がきついところに当たりながら動いている。「左の根のところで喰うからな。」の船長のアドバイスを信じ左側の釣り座でぶっ込み開始。7時から7時半にかけてが時合いだったようで、uenoさんは、アカハタ、ガラカブ、メアジ、クロシブの小さいのをそれぞれ1匹ずつゲット。私はそのとき度重なる根掛かりにぶっ込み釣りを諦めの最中だった。船長の「ぶっ込みがダメなときは浮き釣りな」の意味がここでよくわかった。浮き釣りに変えたときはすでに遅し。午後8時以降は、ダツ、イスズミ、アカマツカサなど外道のオンパレード。カメを3回ほどかけてuenoさんも大苦戦。2人でカメを合計7匹掛けたのであった。


根だらけ浅い 新島Bの釣り座

向こうのA地点も夜中を迎える頃には、明かりがつく気配がなかった。蠍座、天の川など満天の星空を堪能。あれが夏の大三角形、いやいやいかん。星を眺めなければならないほど本命のあたりは遠のいたのであった。我々が本命潮と考えていた右への潮は1回も流れることなく、回収の朝を迎えた。


釣れんなあとぼやくuenoさん


回収です 新島Aのポイント

まず、A地点から回収。次に我々だ。A地点の鵜瀬ねらいのK氏はボウズ。K氏の連れの方が40cm弱のシブを一枚。奇しくも我々が昨年の8月に同じ瀬に渡礁し、偶然にも2人で40cmのシブ1枚に終わったのを思いだした。「波は大丈夫だったみたいだな。」と船長が声をかければ、「夜中に電話しようと思ったよ。『船長、あたりがないよ』ってね。」とK氏はつぶやいた。最初に、乗った組は、2人でシブ7枚。ほとんど同じ地点から釣っていたにもかかわらず、一人が7枚、一人はボウズという奇妙な結果に終わったとのこと。

港に着くと、みんなクーラーを開けずにそそくさと退散。なぜか、ボウズだったK氏はみんなのクーラーをのぞいて回ってる。「どんぐりのせいくらべやな。」と溜息。すると、そこへ船長がやってきて、魚を披露した。3キロオーバーのシブではなさそうな謎の魚が1匹と白点シブがキロ前後を5匹だった。船長とポーターのおじさん2人は、鵜瀬のとなりにアンカーを入れ、夜釣りをしていたというので、おいおい客を新島に追いやっておいてずるいぞ。でも、腕前の差は歴然だ。正体不明の3.3kgの魚はアオシブというらしく、白点同様においしいらしい。船長はまず、K氏におしげもなくアオシブをプレゼント。そして、6名の客に1匹ずつシブをプレゼントしてくれたのであった。「南西からの時化のこりの波があって、4,5カ所しか乗せるところがなかったんよ。もし台風のうねりなら、南東からのはずだからタジロにものせられたのにね。」久しぶりの出航だったのに思うような釣果が出なかったのは船長にとっても痛いようだ。帰ってから、携帯の釣りナビを見ていると、黒潮丸のところに新着情報が来ていた。開くと、「南西からのうねりで渡礁ポイントが限られた。アオシブ3.3kg、シブ1kg前後釣る人5〜6匹。」おいおいそれって全部船長の釣果じゃないですか?携帯の画面に向かってリベンジを誓うのであった。


釣り人のロマンをかなえる基地 枕崎港

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