10/3 秋は青物 川内沖堤防

10月に入った。10月2日はわが学校の運動会。10月とは思えないじりじり照りつける太陽にみんな困惑ぎみだ。人吉市の9月の平均気温は、24.9度で観測史上最高となったそうだ。また、今年も直撃は免れたものの台風がたくさんやってきてくれた。運動会を延期させるかと注目されていた台風19号は、この時期としては異例の西向きの進路を取り、台湾へと去っていった。この台風の動きはまるで夏の季節のそれだ。無理もない。水温が27度もあるのだ。これでは、台風がまたいつ発生して、大きく発達するかわからない。当然、クロ釣りは、この水温で餌盗りの猛攻で成果をあげられないのは目に見えている。

「この時期は、釣りに行って良かったためしはないもんなあ。」uenoさんが、クロ釣り師にとって中途半端な時期であることをこう表現していた。でも、10月3日(月)は、運動会の翌日の休日だ。サラリーマン釣り師にとってこの平日釣行は夢の舞台なのだ。だから、せっかくのこの日に何とか成果を上げたいと強く思う。こんな時、携帯の釣りサイト「釣りナビ」を見ることにしている。すると、各地で秋の到来を告げる青物の回遊が始まっていた。宮崎県北の門川ではハマチの3〜4kgが釣る人2〜3本。長島海峡でもハマチの回遊。佐潟鼻では、シマアジやネリゴ(カンパチの幼魚)が等々。やっぱり秋は青物かな、と「堤防・筏」情報をのぞくと、何と鹿児島県川内沖堤防では、9月26日にはかご釣りでサバの入れ食いと、ルアーでサゴシ(サワラの幼魚)がかなり釣れたという情報が飛び込んできた。よしっ、ここに決めた。青物ねらいと、かご釣り修行のために今回の釣行は川内沖堤防にしたのだった。

川内港から渡船で8分のところにある川内沖堤防は、潮通しが良く、四季折々の魚が釣り人を迎えてくれる。ほぼ南北に延びたコンクリートの巨大なのべ棒の周りには無数のテトラポットが入れられており、これが魚たちにとっては格好のすみかとなり、大きな食物連鎖を内包した天然の魚礁となっているのだ。その天然の魚礁の中及び周辺には、クロ、チヌ、ガラカブ、バリ、サンノジ、ブダイ、石鯛、そして、伊勢エビも大量に生息しているというから驚きだ。それに、夏頃から回遊魚として、シイラ、ネリゴ、ヤズ、太刀魚、サバ、アジなどの回遊魚がその魚礁に花を添えてくれる。もちろんそれらの回遊魚がお目当てとしてる小魚も豊富に命の賛歌を謳歌してる。その地にいるだけで、もう魚とのふれあいが約束されている気がする。

だから、そんな沖堤防との相性は抜群だ。今まで3打数3安打でボウズなし。せっかくの平日釣行なのだから、一番相性のいいところで勝負したいという想いも手伝って、思わず川内港へと誘ってくれる「若潮丸」に電話を入れた。「1番船は5時半です。」で交渉成立だ。職員との運動会の打ち上げをノンアルコールで乗り切り、午前1時過ぎに人吉を出発。九七トンネルを過ぎて、阿久根で3号線に入り、そこから若潮丸の待つ川内港へとひた走った。午前4時ごろに港へ到着。まだ他に客はいないようだ。5時半出航だから、一眠りしようとうとうとしていると、自動車のエンジン音で目が覚めた。若潮丸下川船長が軽トラックに乗ってやってきたのだ。時計を見ると午前5時前。

早速挨拶すると、「まだ、他の客が来てから出ますから。」と軽くジャブがきた。マスクをしている。どうやら体調が思わしくないようだ。暗闇の中から一人の客がやってきた。しゃべりを聞いているとすぐに、そのおじさんが八代の人ということがわかった。「フカセですか。」「はい、でも今日は天気が心配ですねえ。」八代弁を流暢に操るおじさんは、クロねらいのようだ。あまりしゃべりたがらない船長の横で、何気ない会話をしながら、情報収集に励んだ。

午前5時を過ぎるとようやく船長が会話に加わり始めた。「クロはね水温が高いから、大きいのがあがらないね。」「この前、サバが入れ食いだったようですね。」と私もすかさずジャブを入れると、船長がじゃべりだした。「昨日はね、メッキアジが入れ食いだったよ。良く釣った人で20枚くらい釣った人がいたよ。かごでもフカセでもくるよ。」「へー、サバはもう釣れなかったんですか?」「どういうわけだか、サバはぼちぼちだったね。メッキアジは引くからおもしろいよ。食べても癖があるけどおいしいしね。」

サバねらいに来たのに、今日はどうやらメッキアジ釣りに変更したほうがよさそうだ。そして大事なポイントについてアドヴァイスをもとめた。「堤防の内側がかご釣りのポイント。タナは竿2本から竿1本半。灯台のある方の船付けのところの隣で良く釣れたよ。サゴシはね、灯台周りがいいね。メタルジグで50gとかの重いやつはだめだよ。浅いからすぐに底につくからね。」しゃべり出すと止まらない船長は今度は、釣りには関係ないことまでしゃべりだした。「最近、客が少なくなったよ。去年の半分。聞いてみるとね、パチンコにいってお金がないそうだよ。月に4回くらい来てくれていたお客さんが1回しか来てくれなくなったからね。」とついにはパチンコの話に発展。

「この前ね、鹿児島の○○という店が不正をやったことがわかってね。そこは客が少ないけどね。○○は客が多いみたいだけど、あまり出さないよね。」「どうして不正したとわかったのですか。」「だってね、(海物語で)サムが出てはずれたそうなんだよ。」(注:海物語というパチンコの機種では、スーパーリーチの時「サム」という人物が出ると大当たり確定する)ああこの会話をしながら、つくづくパチンコをやめて良かったと思った。人間がつくったものなんてそんなもんだ。行き着く先は不正、人間による操作だ。機械に操られるなんてまっぴらごめん。私は本物の海物語に向かうため荷物を船に積み、後から来た5名の客と一緒に午前5時半川内港を離れた。

10月3日(月)、大潮で満潮が午前6時59分。天気予報は、正午までは30%だが、それ以降は60%と雨が心配された。台風の影響があると思いきや海況はべた凪だ。夜明けを迎える沖堤防で、無事に渡礁を済ませ、すぐにメッキアジが釣れたと思われるポイントへ荷物を置いた。かご釣りは私だけのようで、3人組の若者はルアーマン、残りの3人はクロねらいのウキフカセ釣りだ。


お世話になります 若潮丸

早速仕掛け作りに入った。竿は、新調したダイワのマークドライ遠投3号、道糸5号にハリス2号。ウキは10号の棒ウキタイプで、かごは8号おもりの反転かごを使用した。ハリはグレバリ7号を中心にした。それから、もう一つ仕掛けをつくった。4号の遠投竿に道糸4号にメタルジグ21gのレッドヘッドをチョイス。朝まずめはもちろんチャンスタイム。私の反対側でジグを投げているルアーマンは、早くもタチウオ、サゴシをあげている。こりゃ負けてられないぞと、慣れないルアーを投げるが、一向に魚からの反応がなかった。堤防の周りで青物らしきナブラがいたるところででているというのに。彼らは、ソレ専門の人たちだ。

しかたがない、ルアーに見切りをつけてかご釣りに切り替えた。大潮というのに潮は緩い。満潮の潮止まりのようだった。だんだん日が高くなってきた。午前も8時を回っていた。未だに釣果なし。おい、メッキアジはいったいどこに行ったんだよう。餌がどうも餌盗りの猛攻でもたない。おかしいなあ、と視線を沖へと移すと、何とまあ漁船が今正に一網打尽にお魚さんを捕獲中であった。おいおい、これじゃあお魚さんが警戒してしまうではないですか。でも、向こうは生活がかかっているのだから仕方がない。


今日はかき入れ時 一網打尽

それにしても釣れないなあ、かご釣りでまた成果なしではしゃれにならんとぼやいていたときだった。ウキが一気に海中に消えた。よっしゃ本日初めての当たりだ、と合わせるが、残念ハリののらなかったようだ。タナが合ってないと感じ、1ヒロほど浅くして、再びトライ。またもやウキの消し込みが。あわてて合わせるがこれでものらない。更に浅くしてトライ。今度はのったようだ。手前によってきた魚を見ると黄色いしっぽが見えた。ぶりあげると、堤防にピチピチはねたのは、メッキアジではなくサバだった。まるまる太った35cmの良型だ。良かった。何とかボウズ脱出だ。

とりあえずほっとし、時合い到来とさっき釣れたポイントへ投げ続けて、2本同サイズのサバをゲット。いい気分で釣りを続けていると、トラブル発生。8号おもりのかごに道糸が悲鳴を上げたのか、高切れしてしまいウキごとロスト。その後は、5号おもりのかごで対処したが、その後はさっぱりだった。良くないことが続き始めた。下げ潮が強く流れ出すと、川内川からの汽水を伴った潮が沖堤防まで当たってきた。その潮が沖にある海水とぶつかり巨大な潮目ができている。やがてその潮目は、河口に向かって左へと動いていく。ということは、当然私の釣り座では手前に潮がやってくる当たり潮ということだ。どう考えてもかご釣りに当たり潮はきつい。

いつかは潮が変わってくれるさとクーラーに腰を下ろしてバナナを食べたり、水分を取ったりして休んでいたが、一向に潮は変わる気配がない。フカセ釣りなら、瀬際にいるお魚さんとコンタクトが取れるのに。かご釣りには絶望的な状況で、諦めたところ視線の先にさっきのメタルジグを伴った竿が飛び込んできた。「しかたがない。潮が変わるまでこれで遊んでいるとするか。」


初めまして サゴシ(サワラの幼魚)くん

外側はルアーマンがいるので、内側のポイントでメタルジグを投げた。ある程度遠くへ投げて、底につくところを計算してリトリーヴする。時々休んではまたリトリーヴするの繰り返し。こんなんで釣れるわけない、ルアーロッドでもないのにと考えていた時、竿先までぐんと魚からの反応があったかと思うと竿を絞り込み始めた。すかさず合わせを入れた。4号竿なので、寄せるまでそれほど苦労しなかったけどね。何がアタックしてくれたのだろうと水面を凝視していると、細長い魚が浮いてきた。てっきりメッキアジがアタックしてきたと思っていたのだが、ぶりあげてピチピチはねていたのは、50cm近いサゴシ(サワラの幼魚)だった。

初めての魚だ。もちろん、ルアーで釣った初めてのまともな魚にうれし恥ずかしの私。磯竿4号でメタルジグを投げる釣り師なんて自分だけだろうなあと考えながら、更なる獲物を求めてジグを投入していった。やつは瀬際で食ったよねと瀬際にポイントを絞るともう1匹ゲット。レッドヘッドでの釣果だった。ルアーで釣ると、魚が暴れるのでどうしてもしばらくの間は魚からの反応が消えてしまう。根掛かりしてせっかくパターンにはまりそうだったレッドヘッドを失った後、少し休んでイワシカラーに変えて再びジグを投げた。深いポイントでいきなり竿をひったくるような当たりが来た。前の2匹と比べると格段に強い引きに期待いっぱいで振りあげると本日最大の50オーバーのサゴシがあがってきた。これで、3匹目。私の釣果を見て休んでいたルアーマンも再び動き出した。11時前にもう1匹追加して4本目。しかし、残念ながらその魚を最後に、ぱたりと魚からの反応は消えてしまった。


釣り人の活性低い 沖堤防

今日は大潮であるにもかかわらず、全体的にあまり釣れていないようだった。フカセ釣りも散発的にクロとチヌがあがったのみで、バリやサンノジなどの外道に苦しめられたという。対流圏は秋の気配だが、海の中はまだまだサマータイムであることが確認された。午後2時45分に若潮丸は回収にやってきた。川内港について、船長が声を掛けてきた。「だめだったですか。」これで4回目になる客にいつもの台詞で話しかけてきた。私ってそんなに釣りがへたくそにみえるのかな。「サバとサゴシで7本」と一応報告してあげた。あまり釣れなかったが、青物の気配を十二分に楽しんだ釣行だった。


疲れました 川内港に到着


本日の釣果(サゴシ4本 サバ3本)

そこで一言。

秋は青物 よふよふ近くなりゆくナブラに 紫だちたる潮目の長くたなびきたるも いとをかし

やっぱり秋は青物だね。


高級感漂う サワラ料理
焼き魚★★★★★
アラのみそ汁★★★
刺身★★

焼き魚は風味 食味ともに◎。母ちゃん思わず「料亭の味ね。」だって
みそ汁はまずまず
ただ 刺身は身が柔らかくあまりおすすめできませんでした。

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