3/21 チヌに逢いたくて 川内沖堤防
わが家の庭の桜が咲き始めた。この桜の木は、今の家に引っ越したときに母親から送ってもらったものだ。昔から日本人は、子どもの誕生と共に庭に木を植える習慣がある。母親からのありがたい心遣いに感謝しながら、毎年この桜の開花を息子の成長と共に楽しみにしてる。今年の我が家の開花は3月20日。昨年よりも1週間も早い開花である。いよいよ春爛漫の季節を迎えることを知らせてくれる。中国で生まれた暦「二十四節気」によると、3月21日頃を春分という。この日は、太陽が真東から昇って真西に入り、昼夜の長さはほぼ等しくなる。この日を境に北半球では、夜よりも昼の時間が長くなる。また、日本生まれの暦「雑節」によると、春分の日とその前後3日の7日間を「春彼岸」という。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉通り、この日を境に寒さも和らぐとされている。
若い頃は、暦なんぞに全く興味を持てなかった。ただ仕事が学校が休みになる祭日という意識しかなかった。しかし、40を過ぎると四季の移り変わりを眺める楽しみを覚えてきた。梨農家の方に台風接近による被害を心配する一言が言えるようになってきた。つまり、四季や暦をはっきりと意識できるようになってきたのだ。なぜ、四季をはっきりと意識できるようになってきたのかというと、それは釣りのおかげによるところが大きいのだ。釣りこそが、人間らしい心を失いかけている現代人に四季の変化というすばらしい地球からの贈り物を体感させてくれるものだと思う。
先日、組合の仲間であるK支部のN書記長が過労で入院されたそうだ。入院するときにNさんが注目すべき言葉を残していった。なぜ、入院するはめになったのかを分析すると、このところ学校の仕事も組合の仕事もいわゆるテンパッていて、頭の中は左脳ばかりが動いている状態が続いていたからだそうだ。やはり、何事もバランスが大事だなあと考えさせられるのだった。当然やるべきことはきちんとやらなければならないが、右脳も働かせないといけない。人生においては楽しみも必要だ。釣りに行く費用がもったいないとおっしゃるうちのかみさんに、釣りの費用はかさむが、入院するよりはマシだろうと、長い目で見ると安く済むんだよ、と訳の分からないいいわけをするのだった。
さて、釣り師に四季のすばらしさを感じさせてくれるアイドルと言えば、チヌでしょう。桜の開花が始まり、あたたかい南風が吹き始める頃になると産卵のために浅場に「のっこん」でくる。産卵に備えて体力を蓄えるために餌を荒食いするのだ。チヌ釣り師ならば、1年中で最もデカバンチヌに逢える可能性が高いこの時期をだれもが待ち望んでいたに違いない。かくいう私も四季の変化にかこつけて、クロ釣りを小休止し、チヌ釣りへと浮気心が出てしまうのだ。2005年の釣行を調べていると、何とチヌは1匹しか釣っていないことに気がついた。3月20日に松島で釣った1匹である。(でもチヌ釣りは2回しかいけてなかったけどね)つまり、私はこの1年間チヌに逢っていないことになる。チヌと言えば、数ある対象魚の中で最も人間の生活圏に近いお魚さんではないですか。なのにこんなにも逢えないでいるとは。2月の維和島の磯での惨敗も払拭したいことだし、よしっ、今回は近くて遠い恋人チヌねらいでいこう。
釣行予定は3月21日(火)春分の日に決定。潮回りは小潮の第1日。uenoさんにチヌ釣りに行かないかと電話で誘うが、通知票付けなどで忙しく今回は行けないとのこと。しかたがないので、今回は1人での釣行となった。お継ぎは、釣り場選択。これが一番重要だ。クロ釣りならこの時期行けるところは限られてくるが、チヌ釣り場は結構多く、迷うところだ。まず思いつくのは、前回惨敗を喰らった維和島西磯。ここは小潮の初日がいいと言っていたのを思い出した。天草と言えば、御所浦などもあるが、湯島の沖堤防にも興味がある。獅子島でもそろそろ釣れてもいい頃だし、水俣の堤防や恋路島も捨てがたい。一発の一辺島もある。「やっぱりチヌは夕まずめバイ」と上野さんがアドバイスしてくれるが、21日の天気予報は晴れ後雨という予報が出ている。今回は朝まずめ勝負でいこう。2月に2回もボウズを喰らってるだけに今回は絶対にチヌに逢いたい。やはり確実に釣果を得ることができる釣り場を選ばなくてはいけない。ということで、川内沖堤防へと誘ってくれる若潮丸に予約を入れた。「6時に出ます。」で商談成立だ。
このところの川内沖堤防の釣況は情報がない。情報がないのになぜ沖堤防なのかというと、私にとって最も相性のいい釣り場だからだ。魚影の濃さは折り紙付きで、今までそこに釣りにきてボウズなし。爆釣はなかったものの、最悪の結果は逃れてきたのだ。磯であれば、チヌが回遊してこなければ当たり前だが釣果は望めない。もし魚が居着いているならば、魚が居るわけだから可能性は0%ではなくなる。沖堤防には確実に50を越えるデカバンチヌが居着いており、釣り人を警戒しながらも彼らの与える餌を喰いながら産卵に備えてるはず。乗っ込みチヌ釣りは1日に数回あるかないかという当たりをいかにものにするかというシビアな釣りなので、そこに魚がいないとやはりモチベーションは下がってしまう。すれた堤防の魚と勝負するのも中々面白いもの。早速、道具をそろえ、午前3時過ぎに自宅を出発した。
本日の客30名 多すぎ! 3回に分けて出航 遠矢名人も乗船
川内港の満潮は午前10時35分。朝まずめは上げ潮を釣ることになり、後半戦は下げ潮で勝負ということになりそうだ。午前5時過ぎに港へ到着。港についてびっくり。まるで中古車センターのようにとんでもない数の自動車が並んでいる。そして、すでに10名程の釣り客が乗り込んで今正にに出航しようとしていた。いつものようにワゴン車の後部座席に無造作に置いてある乗船名簿に名前を書こうとすると、凍り付いてしまった。「沖堤防・一文字」の欄にはすでに25名の名前が書き連ねられていた。遠矢国利の名前も見つけた。更に、「鴨の瀬」の欄にはすでに3名の名前が。今日は絶対魚の数より釣り人の方が多いよね。
どうしよう。この競争率の高さに、鴨の瀬への浮気心が起きて、1番船の客を降ろした後戻ってきた船長に鴨の瀬への変更を告げに2番船に乗り込んだ。「鴨の瀬は4人でね。5人だと厳しいよ。乗せてもいいけど釣るところがないかもね。」わかりやした。やっぱり浮気心はダメだ。沖堤防で初志貫徹!と荷物を船に乗せようと岸壁に戻ろうとすると何と船が港を離れているではありませんか。おいおい俺はまだ荷物を乗せていないんだよ。船長はそんな私の状況に気づくはずもなく船を沖堤防へ向けて速度を上げていった。しかたがない。一文字堤防・沖堤防への早朝クルーズを楽しむことにするか。ポーター(※釣り人の荷物の世話をしてくれる乗務員)の役をかってでて時間をつぶし、船長に事情を話して再び港へ戻った。ようやく荷物を積み3番船でめでたく出航。一文字に2名の釣り人を運んだ後、船は沖堤防へと走った。ここでも事件は起こった。みんなの荷物の世話をしようと一番初めにおりて堤防の階段をかけ上がったり降りたりしていると、船はまた堤防から離れているではありませんか。見ると自分の荷物を下ろしてくれていないではないか。「おーい!まだ荷物をおろしていないんだよお」他の釣り人もいっしょになって叫んでくれている。しかし、一向に船長は気づく気配がない。それどころか、鴨の瀬方面へと走ろうとしている。おいおい、仕方がないので携帯電話で呼び出すことにした。
堤防北向き 遠くに遠矢名人一行が見える
南向きの灯台周り 北東からの風強いしぃ
やっとで荷物を受け取り、無事沖堤防南端の灯台付近へと上陸を果たした。灯台周りにはすでに9名の釣り客が陣取っている。そのうち半分以上はルアーマンのようだ。聞くところによると、スズキや青物が回ってきているとのこと。もちろんチヌねらいも4名ほどいた。先週、灯台周りでマダイもあがったらしく、この灯台周りを予定していたのだが、この状況では無理だ。
北向きに目をやると、遠くの堤防の中間地点に遠矢名人の一行が釣り座を構えている模様。取材かもしれないね。じゃましちゃ悪いとそちら方面での釣りは断念することにした。一昨年3枚のチヌを釣った良いイメージの釣り座にもすでに先客が。そこで、みんなで撒き餌していて魚がいくら多くいたとしても、人間の多いところは魚が警戒するのではと思い、灯台周りから50メートルほど離れた地点の沖向きから竿を出すことにした。
竿は、北東からの強風に備えて、メガドライ1.5ー53。道糸2号にハリスは掛けたら絶対とりたいというコンセプトで太めの1.75号。堤防の近くでも竿2本半から竿3本の水深があるということで、また、餌盗りが少ない時期、魚がスレている堤防ということで、できるだけ魚に違和感を与えない仕掛けをと、釣研トリプルセンサー5Bをチョイスした。餌は、オキアミ1角にマルキューのチヌパワー2袋、おからダンゴ1袋、ムギパワー1袋を混ぜ、風が強いため堅めに仕上げた。
タナは、一番実績が高い竿2本と1ヒロに浮き止めをし、そこから中ウキがゆっくりしもって全遊動で竿2本半ほどまでを探れるように設定した。風が強いのお。午前7時ごろようやく第1投。竿3本先をポイントにした。予報に反して北東からの強風で道糸が大きな弧を描いている。潮は左手前へと当たってきている。この潮はクロ釣りにうってつけなんだが、今日はチヌ釣り。堤防と平行に左(南)へと流れていってほしいのだが。風がまだまだ強く仕掛けが入っていっていないように感じたので、Bのガン玉、ハリスにG3〜G5を3段うちにしてやっと馴染みが良くなった。
がらかぶくん大活躍
馴染みが良くなってから第2投。中ウキが全遊動のシモリ方とは少し速い速度で入っていった。合わせると、ただの仕掛けの回収にしては重たい感じを受けながら道糸を巻いていくと、ガラカブくんがついているといった具合だ。上野さんがこの時期ガラカブが良く釣れることを教えてくれていたので、チヌが釣れないときのおみやげにと一応キープすることにした。潮は相変わらず左手前へと流れていて、灯台付近へと当たり沖へと払い出している。小潮にしては中々良い流れだ。一昨年のこのあたりの釣りでは左へ動く潮が本命潮のようだったので、この流れが平行になったときがチャンスのはず。潮の変化に気をつけながらしばらくの間はがらかぶくんと戯れることにした。
1時間が経過。7,8まいになるとガラカブ釣りも飽きてきた。キープはやめてリリース。まだチヌが寄っている気配がないが、これだけガラカブの活性が高いということは、魚全体の活性は悪くないということなので、当たりすらないという最悪のシナリオだけは避けられそうだ。2時間経過。今だ本命らしきアタリなし。灯台周りの釣り人も全く竿が曲がる気配がない。ルアーマンたちも黙々とルアーを投げているが、魚の顔を拝めないようだ。どうなってるんだよお。いつの間にか潮が左へと平行に流れ出したので、チャンス到来のはずなんだが。と視線を灯台付近へと移すと。ついに1人のフカセ釣り師の若者が魚とのやりとりをしている。竿が容赦なく「つ」の字に曲がっている。その魚は何度も突っ込みを見せているらしく、やりとりも長期戦になっている。ようやく玉網が入った。どんな魚が釣れたのだろう。興味津々。カメラを持ってその若者に近づいた。しかし、その男の表情は苦笑い。玉網に収まった獲物は、50cmオーバーのボラだったのだ。ずっこけて、Uターンする。他の釣り人もなんだという雰囲気。だが、水色のウエアのおっさんはスカリを入れてる。何かが釣れているようだ。
魚はいる。いれば釣れる。そう信じて、仕掛けを打ち返した。午前9時半すぎのことだった。中ウキの動きが左ではなく右へと変化していた。表層の潮はまだ左へと滑っている。あれっ、潮が変わったかな、と上ウキを右へと動かし、仕掛けが一直線になるようにしながら流していると、中ウキが深紺色の暗闇の世界へと旅立ちを始めた。すぐに、蛍光朱赤色の上ウキが沈み始めた。誰が見てもそれと分かる当たりだった。迷うことなくベールを返して鋭く合わせを入れた。ドスンと重々しい引きがメガドライを襲った。ググッと竿を絞り込む。ハリスは1.75号だ。チヌなら大丈夫。やつの力が弱まったときに糸をまけばいい。コンコンとチヌ特有の首を振る動作。間違いない。チヌだ。そいつは底の方で3回ほど突っ込みを見せたが、次第に浮いてきた。ウキが見えてきた。もうすぐだ。ばしゃばしゃはねている魚は、紛れもなくシルバー色に輝くチヌだった。沖堤防のために用意した720の玉網で何とか1回でキャッチ。魚を手前に引きよせた。45cmはある良型。何とかボウズ脱出。ホッと胸をなで下ろした。
起死回生の一発 366日ぶりのチヌ 45cm
チヌ鈎2号が地獄の位置に皮1枚で何とか掛かっていた。タナは竿2本半と少しで、やはり竿3本先のポイントで喰ってきたようだった。うれしい。何と366日振りに見たチヌであった。ようやく食いが立ってきたかと更なる獲物を求めて釣り始めるが、ガラカブくんにじゃまされることになった。そうこうしているうちに、潮は再び左へと流れ始め、午前10時を過ぎると潮は完全に止まってしまった。風もやんでべた凪になりチヌ釣りとしては絶好の条件なったにもかかわらず、潮が止まってしまった。アンラッキー。
潮が止まっている間に腹ごしらえ。釣りを再開するが、潮は全く動かず、カラカブさえも口を使わなくなってしまった。これは下げ潮に入ったときに期待するしかない。隣の釣り師はもう寝転がっている。午前11時過ぎ、ようやく止まっていた潮が少しではあるが動き出した。手前にはガラカブがいるが、少し沖竿3本先にはいないようなので、そこを集中的にねらっていく。しかし、今度はガラカブではない新たな敵が現れた。僅かな当たりを見逃さずに合わせを入れるが素バリ。あれっと仕掛けをチャックするが、何とハリがない。おかしいなあ。フグはいないはずだが。次もハリがない。誰の仕業だ。たぶんウスバハギだろう。手前に仕掛けを入れてみるが、手前にはガラカブがいる。偏光グラスで除いても見えないが、明らかに自分の作ったポイントは餌盗り天国になってしまっているようだ。
ゆっくり沈めていく釣りでは、チヌの口元に餌が届く前にガラカブやウスバハギにやられてしまう。そこで、餌盗りの層をいち早く突破できる遠矢ウキで竿3本の釣りダナで勝負。1目盛の僅かな当たりを見逃さないように合わせるがここでもハリがなかった。おいおい、いいかげんにしろよな。竿3本近くでもウスバがいるとは。1時間ほどして、仕掛けを再びトリプルセンサーに戻し、ポイントをしばらく休ませることにした。
ペットボトルの水を飲みながら、視線を灯台周りに移すと、水色のウエアのおっさんが魚とのやりとりをしている。キーンと糸なりがこっちまで聞こえてくる。結構なサイズの魚のようだ。長期戦のやりとりの後、玉網が入った。あがってきた魚は本命のチヌ。50はありそうな良型だ。午後1時ごろだった。再び闘志が戻ってきた。潮も少しではあるが動き出した。
ポイントを休ませたが、今度は魚からの反応が全くなくなってしまった。餌盗りもいなくなったが、本命のチヌも寄りつかなくなってしまったようだ。残念。午後2時15分頃、釣りをさせてくれた沖堤防に感謝しなっがら納竿することにした。
お世話になりました 若潮丸
港について釣果を確認した。灯台周りは私と水色のウエアのおっさんの50クラスのチヌが2匹が目立った釣果。ルアーマンは早々と退散していった。遠矢名人一行の方々が何枚か釣っておられたようだ。また、堤防の中央付近で、ヒラマサも1本と単発だがあがっていたとのこと。潮が片潮で昼頃は潮がほとんど動かずにみんな苦戦を強いられたようである。チヌにどうしても逢いたくて決めた今回の釣行。何とか型見はできたものの沖堤防の釣りの難しさを改めて痛感させられたのだった。
本日の釣果
本日の料理
チヌのお造り★★★★
がらかぶのみそ汁★★★
ガラカブのあんかけ★★★
チヌのカマ焼き★★★★★
料理を焦って作ったので失敗!チヌのカマ焼きはやはり絶品でした。
生の魚が嫌いなうちのかあちゃんだがクロよりもチヌがうまいと刺身をぱくぱく食べていたとさ。