7/16 真夏の夜の恋人 硫黄島

梅雨が明けた。梅雨が明けると日中の照り込みによりある魚が浅場へと回遊してくる。水温の上昇とともに動きが活発になり、盛んに捕食活動を行う。しかし、その活動の多くは夜のために、夏期の夜釣りでしかお目にかかれない。南日本にしかいないので、全国的にはあまり知られていない魚だ。また、数が少ないのか、生息場所の条件なのかわからないが、漁の対象とはなりえない。ということは、当然市場で取引されることは少ない。ところが、この魚は、大変美味で食通から珍重されているためか、捕れたら即料亭行きという。当然、魚屋さんの店頭に並ぶことはない。脂ののった甘みのある淡白は食味は、一度食したら忘れられない。刺身、塩焼き、フライ、煮付けに何でも来いの食材に変身する。その魚の名前を、シブダイ(標準和名 フエダイ)という。

この魚に出会うためには、磯釣り(夜釣り)が最も一般的だ。シブダイに初めて出会ったのは、忘れもしない、2002年夏だった。枕崎沖堤防でのこと。「夏は暑うしてやっとられんもんなあ。夜釣りに行くバイ」こうuenoさんから誘われて枕崎へと向かったものの、台風の接近で沖磯にのることができずに沖堤防に。イサキねらいの道具を持ち込んで船に乗り込むと、同じ年齢ぐらいの地元釣り師のおじさんとその息子さんらしい方とご一緒させていただくことに。その時、その地元釣り師の道具を見て驚いた。クーラー一つに、竿のみの軽装。こっちは、餌のオキアミボイルの入ったバッカンだの、竿ケース、磯バッグ、クーラー、焼き肉のセットなど一体何しに行くのという重装備。堤防に渡ると、その方は、ベテランらしくすぐに釣り座を立神側の先端へ移動。我々は、初めてということもあり、何処へ行けばいいのかわからずうろうろ。結局、帰りが楽という訳の分からぬ理由で、中央付近に落ちついた。もうこの時点で勝負は決していた。我々はアタリすらないボウズ。地元釣り師は、本命をゲットした模様。回収後、クーラーを覗かせてもらった。当日は潮が動かず厳しい状況だったにもかかわらず、潮が動いた僅かな時間帯に本命のシブダイを釣り上げておられた。見たこともない魚だ。ピンク色の魚体に黄色のヒレ。不思議なことに背中の部分に白い点がある。体長全体に対する頭の部分の割合が高い。フィッシュイーターであることを証明するように口は大きく鋭い歯も確認できた。そして、その時初めてその魚がシブダイであると教えてもらった。「引きが強いですよ。ハリスは24号を使ってます。」1.5kgくらいの魚なのにそれ程のファイトをするなんて。私は一気にシブダイに逢いたくなってしまった。それからというもの、夏場はシブダイを求めて南九州の磯に通う日々が続くことになるのだった。正に「真夏の夜の恋人」に会いに行くように。


真夏の夜の夢への旅立ち 枕崎港

さて、2006年のシーズンも早くからシブダイ釣りの計画を立てていた。ところが、今年は天候に恵まれない。6月は悪天候続きだった。集中豪雨は日本列島に甚大なる被害の爪痕と恵みの雨をもたらした。梅雨前線が北上したかと思うと今度は台風だ。7月前半に3号が日本列島に接近かと思われていたが、東シナ海を北上していった。よしっ、それなら7月15日からの3連休は大丈夫だろうと、硫黄島への釣りを快適にサポートしてくれる黒潮丸のI船長にр入れた。「7月1日以来で出てないよ。今はハシリの時期だからね釣れるよ。」早速こう言われてやる気モード全開に。15日からの夜釣りの予約を入れた。

台風3号が中国大陸へと去っていき、安心しきっていたところに、とんでもないニュースが飛び込んできた。台風3号がまだ中国大陸に上陸するかしないかの冷めらやぬ時期に台風4号が発生。東シナ海へと向かって進んでいるではありませんか。思わず天を仰いだ。やっと巡ってきたシブダイ釣りの開幕戦なのに、ポセイドンは我に釣りの許可を与えてくれないのか。数日間もんもんとした日々を過ごすと台風4号は思いの外西よりの進路を通ってくれ、もしかすると行けるかもと波予報を見ると14日3m、15日3mとある。なにい!何が原因なのか分からないけれども、うねりの影響か波が落ちない。14日の夕方、黒潮丸に電話すると当然のごとく、「中止しますわ。波3mと言っとるからね。せっかく言ってものれるポイントがなかったらしょうがないしね。来週あたりどうですかね。」この日のために仕掛けを12本ほど作って準備していたというのに。

落胆している暇はない。釣行先を変更しなければならないのだ。残された選択肢は豊予海峡での船釣りの関アジ釣りか、南西の風うねりに強い大隅半島の磯だ。uenoさんの意見はやはり、内之浦のかご釣りだ。2.5mの予報でも場所によってはできるところがあるのではないか。予感的中。内之浦港から出る由佳丸は出航するという。良かった。本命場所ではないものの釣りができることにホッと胸をなで下ろし、イメージトレーニングをしながら眠りの床についた。翌15日になった。内之浦港の出航が2番船の午後5時ということなので、のんびりと準備をしていると、午前10時前、携帯が鳴った。「もしもし、カマタさん?あのね、あれから予報が変わってね。2mと言うとります。それでね、硫黄島の知っている人に聞いてみたんですよ。そしたら、平瀬あたりには乗れそうだというんですよ。今からでもどうですか。」ここまで船長に言われちゃあもう行くしかない。相撲で言えば土俵際のうっちゃり。もう少し船長からの連絡が遅れていたら、我々は今回硫黄島へは行けなかっただろう。何という幸運。早速、uenoさんにもこの状況を伝えて3時集合ということであわててかご釣りにブッコミ釣りの道具を磯バッグに詰めて、午前11時半に人吉を出発した。


先陣は「デカバンの巣」平瀬の高場へ

九州自動車道を通り、指宿スカイラインを経由して、川辺ICで降りて枕崎港についたのが午後3時15分前だった。船長があわただしく出航の準備をしている。船長にあいさつを済ませると我々も出船準備に取りかかった。平瀬が大丈夫ということは、鵜瀬も大丈夫なはず。南西からのうねりとこの風ではおそらく西磯やタジロや浅瀬がある南の磯はだめだろう。「おら、新島はいやバイ。新島で良かったためしのなかもん。」南西からのうねりがある場合は、風裏となる硫黄島本島から北東側に位置する新島に乗せられることがあるが、我々は新島との相性が悪すぎて苦手イメージができあがってしまっていた。本日の釣り師は10名ほどで渡礁ポイントが限られそうな今回の釣りでも乗れる磯は十分ありそうだ。だんだん心は戦闘モードに変わっていく。船長が氷の配給を始めた。

どういうわけだか船は出航予定より10分遅れの午後3時40分に枕崎港を離れた。黒潮丸のキャビン内はとても快適だ。絨毯で敷き詰められた床と壁にクーラーががんがん効いた快適な船内で備え付けの枕と毛布を被って仮眠しようと横になった。7月1日振りの出航だから2週間ほど餌が入っていないことになる。潮回りは下り中潮4日目でさほど悪くはない。潮さえ悪くなければ釣れるはずだ。釣りのイメージをすればするほど目はさえわたり、仮眠どころか螺旋的興奮が次々に襲ってくる。船の揺れ方からも心配されたうねりもそれ程でもないようだ。そんなことを考えいるとあっというまにエンジンがスローとなり、午後5時過ぎ思ったよりも早く硫黄島周辺に到着した。

あわただしく準備をし、キャビンの外へ出た。からっとした空気にさわやかな風が吹いている。船はゆっくりとあまり高くないごつごつした巌の固まりにつけようとしていた。今回は平瀬からの渡礁のようだ。平瀬には2カ所ポイントがあるがその高い方(平瀬の高場)だ。2人の釣り人と道具が瀬に渡った後、今度は撒き餌であるキビナゴのトロ箱を船付けから反対側の釣り座に運んでいる。そこが本来の夜釣りのポイントなのかもしれない。更に船は平瀬のワンドを過ぎ反対側に突き出た平瀬の低場に2人の釣り師を渡礁させた。「カマタさん、今日は南からのうねりがあるからね。ポイントが限られるんだよ。鵜瀬と鵜瀬のハナレとどっちがいいですか。」何という幸運。究極の選択だ。どちらともシブダイやアカジョウなどが釣れるA級ポイントではありませんか。我々は短い協議の後、憧れの名礁「鵜瀬」に渡礁することになった。船長がくわしくポイントを説明し始めた。手の甲をつきだして、「上げ潮の時は左から右へこう流れるから潮に流していって、下げ潮の時はここのところに(釣り座の左手前に沈み瀬がある)餌がたまるからそこをねらって」とくわしくレクチャーしてくれたのだ。我々がHETAであることをいち早く見抜いている船長は釣果を出すために的確なアドバイスを行ったのだった。


思惑通り 鵜瀬の南の先端に渡礁

干潮が午後5時過ぎで潮が一番引いている中、我々は速やかに渡礁を済ませた。船長がとどめのアドバイスを。「そこの真上から釣って」そう言い残してもう1人の釣り人を平瀬のハナレに渡礁すべく船を反転させた。渡礁した地点は潮が満ちてくると波を被るようなので、早速上の段にまず荷物を乗せることにした。上の段は高さ2.5mくらいあり、まっすぐは上れそうにない。横から回り込んで上の段に上った。上に上ると鵜瀬の全景が見える。鵜の首にあたる部分がそびえ立っていた。その付け根が冬期の尾長のポイントだ。夏期の夜釣りは尾長のポイントではないようだ。ここは鵜瀬の南の先端部分。南からの涼しい風に当たりながら、荷物を上の段にあげることにした。荷物をあげる作業をしなければならないので、1人では無理だね。やっとこさで、荷物をあげて、まずは釣り場の全体像をつかむ作業に入った。

「カマタさん、おらこっちで良かな。竿先の届かんもん。」早くもuenoさんは釣り座を決定させた。ピトンのあとは右と左とあり、uenoさんの言うとおり左側は張り出し根があり、魚を掛けても取り込めるのか心配な形状になっている。おいおいuenoさんが届かないなら自分にも届くはずはないんだけど。釣りで最も大切な釣り座の確保で早くも先を越されてしまった格好になった。ポイントとなるところを見ると浅く沈み瀬が点在していて根掛かりが多発しそうだ。ウキ釣り仕掛けも準備するとするか。船長の言う通り左には巨大な沈み瀬があり、左流れになれば撒き餌がたまるというのは納得できる状況だった。

竿受けピトンを左側の釣り座に打ち込み、つけ餌である冷凍サンマをチルド状態のうちに親指大に短冊切りにし、撒き餌のキビナゴを細かく刻んだ。餌盗りが多いときのために、小型ケンサキイカと鰹の腹側も準備。次に、仕掛けの準備に入る。ブッコミは石鯛竿に両軸リール。おもりは20号〜30号の中通しで、スクリューサルカンの先にはワイヤーハリスを矢引ほどとりムツバリを取り付け準備完了だ。ウキ釣りは5号竿に道糸、ハリス10号。カゴ釣りなのでウキは12号の発砲ウキにおもり8号の反転カゴを準備。

さあ、準備が終わったところで、uenoさんは試し釣りに入っている。時を同じくして魚の状況を見るために餌を撒いているとすごいのなんのって、おびただしいイスズミが餌を追ってナブラを立ててるではありませんか。平瀬、鵜瀬一帯は潮通しが良く、シブダイ、アカジョウの宝庫だが、イスズミが多いという問題もある。夕まずめに青物でも喰ってこないかなと淡い期待を持っていたが、これだけのイスズミがいてはどうにもならないだろう。現にuenoさんがフカセ釣りで魚を掛けたが、上がってきたのは予想通りイスズミだった。でも、魚の活性は高いことを確認し、パック詰めの冷やしそばと缶ビールで夕食をとり、高まる興奮を抑えつつ静かに夜の帳が降りるのを待った。


上げ潮は順調 3枚目は1.1kg

「当たりあるね。」とuenoさんが聞いてくる。暗くなってさあシブよ勝負だ、と力が入ってるのに、餌が取られない時間が続いている。撒き餌を切らさないようにしているのだが、まだ魚の動きが鈍いのだろうか。帰ってくるつけ餌をさわるが心なしか冷たい感じがする。(この日の水温は25度だったらしい)そんなんで午後も9時を回った。上げ潮が入り、潮は右へと流れるはずなのに今だふらふらしている。餌が溜まっている沈み瀬地点をねらおうとカゴ釣りに切り替えた。ウキをもってはいくのだが、食い込みには至らない。そこで、餌をイカの目とゲソの部分をつけて投げてみた。ケミ75をつけたウキはゆらゆらと沈み瀬付近で漂うだけ。魚はどこにおるんじゃいとおもったところ、ウキがゆらゆらと前当たりのあと一気に海中へと引き込まれた。糸ふけをとりながら豪快に合わせると竿にのってきた。よしよし、あまり大きくないがまともな魚だろう。振りあげると35cm程のシブがはねていた。早くも本命ゲット、ボウズ脱出。「よかなあ」と上野さんも祝福してくれた。

さあ更なる獲物をとカゴを投げるが、潮がやっとで上げ潮の右流れが始まった。よし、ここはブッコミで勝負と再び石鯛竿を握った。餌が取られ始めた。竿先を見つけていると小刻みな当たりで中々魚が走らず、ウツボかいなと思っていると、ジージーッと道糸が走った。間違いないシブのアタリだ。すかさず合わせを入れて確実に魚を掛けた。今度はキロ近いシブだ。サイズアップ。uenoさんはこの釣果を見てブッコミに切り替えた。


ウツボのイタズラ

時計を見ると午後9時半を回っていた。明らかに時合い到来のようだ。頻繁に魚からの応答があった。uenoさんもシブのアタリをとらえまずは1枚ゲット。そのすぐ後、私の竿先が一気に海中に向かってお辞儀した。道糸が走った。レバーを返し魚の疾走を止めた。今度のは本日一番の手応え。かなり抵抗するが石鯛竿の力には及ばない。振りあげると、引きの強さに見合わないサイズのシブダイ1.1kgが横たわった。ハリを飲み込んでいたので仕掛けを作っているうちにuenoさんもう1匹追加。入れ食いの様相だ。このチャンス逃してなるものかと再び仕掛けを打ち返す。ところが潮が変わったのか根掛かりが多発するようになった。どうやら潮が手前に当たってきて、uenoさんが恐れていたように手前の張り出し根に引っかかるようになってしまったのだ。10時頃、uenoさんが、 11時過ぎに私が、こぶりのシブを釣り上げて以来、潮が止まり魚信は完全に途絶えてしまった。丁度、満潮の潮止まりを迎えていたので、休憩することにした。

夜中の0時を過ぎた。いよいよ下げ潮が動き出した。程よい速さだった上げ潮に比べ、下げ潮は激流だった。川のように流れていく。これではウキ釣りは釣りにならない。2人ともブッコミをするが、魚信はますます途絶えてしまった。下げ潮になれば自分の釣り座が有利になると期待したが、この激流ではどうしようもない。平瀬、鵜瀬は激流が走ることで有名だが、ここまでだとは。アタリがないと今度は猛烈な睡魔が襲ってきた。午前1時半頃横になっているといつの間にか眠ってしまったようで、再び目が覚めると時計は午前2時半を指していた。


激流と化した下げ潮に困惑のuenoさん

下げ潮は激流だけではない。根掛かりを誘発させた。どうも釣り座の左側は浅いところが多く、また海底も複雑になっていてすぐに根掛かりとなってしまうのだ。だから本当はウキ釣りの方がいいのではと考えるのだが、この激流ではううむ。uenoさんも重たいおもりを使ったり色々工夫していたようだが、魚を捕らえきれない。おそらく撒き餌が効かなくなったのだろう。この激流は我々の技術ではどうしようもない。魚の気配なく朝を迎えることになるのであった。


なすすべなく 干潮潮止まり そして夜明け

朝まずめになり、やっとで激流は収まってきた。あきらめきれないuenoさんはウキ釣りを始めていた。私はすでにあきらめて片付けに入っていた。釣れそうな雰囲気が感じられなかったからだ。美しい朝の情景を楽しみながら、のんびりと片付けることにした。uenoさん魚を掛けた。でたああ、イスズミだああ。だからやめといた方がいいといったのに。それでも釣り続けるuenoさん。この辺は見習わなければならないかもしれない。隣のハナレの釣り師は、佐々木小次郎かよといいたい竿2本でのようだった。やはり、上げ潮の時間帯は魚との格闘をされていたようだったが、後半戦は釣りにならなかったのではないか。それを証拠に竿が沖向きだったが、最後の方では鵜瀬の本島向きに変えていたからだ。


エイに苦しめられたという 鵜瀬のハナレの釣り師


また腕を磨いておいでと 硫黄島が語りかけてくる


6時半 回収で〜す 釣れましたかあ

朝6時前になるとさすがにuenoさんもあきらめたらしく片付けを始めた。今日は一日快適だった。風が程よい強さだったので涼しかった。蚊もいなかったし、虫といえばはさみ虫のようなものしかいなかった。釣り人のおこぼれ餌で生き延びているのだろう。ものすごい生命力だと思った。釣りを欲張ったので、片付けも30分程時間がかかった。ようやく6時20分ごろ道具を下の段に下ろして船を待つことにした。6時半きっかりに黒潮丸は回収にやってきた。ポーターのおじさんに荷物を受け渡し、船に乗り込んだ。「鎌田さん、釣れましたか。」はーいととりあえず7本の指を立てた。次の回収は、ハナレの釣り師だ。「どうでしたか。」船長がたずねると、「小さいのが4枚」と答えておられた。その方は、残念そうに「でかいエイがいて取り込むのが大変だったよ。」と独り言。やはり速い潮にしてやられたようだ。やれやれとキャビン内の下の段にいくと、船釣りの方がすでに寝息を立てていた。さあこれから90分の帰りの船旅だ。自分にお疲れ様と言い横になった。


本日の竿頭 平瀬の高場 シブ9枚 バラハタ1枚

午前8時過ぎにエンジンがスローになった。枕崎港へ帰還。あっという間だった。離島なのに関アジ釣りより早い帰還だ。10ほどの客なのであっという間に道具類を港にあげて、今回の釣行を振り返った。まず、クーラーを開けたのが、船釣り師らだった。クーラーに入っていたのは、シブが2,3まいと南方系のあじであるメアジが5,6匹ほどご用となっていた。離島の船釣りとしてはもう一歩のようだ。平瀬の低場の釣り師のクーラーはシブが4,5枚ってところか。竿頭は、平瀬の高場の釣り師でシブとバラハタあわせて2桁釣り。すごい、よほどの腕の持ち主なのだろう。「カマタさん、おみやげはできましたか。」船長が声を掛けてきた。自分としてはまずますの釣果だったので、「はいっ」と答えた。「潮が速かったですねえ。」とuenoさんが船長に話しかけ情報収集を行う。「潮が速かったしおかしかったからね。小さいのばっかりだよ。鵜瀬は逃げられるところがあるけど、ハナレは逃げるところがないから大変だったろう。」なるほど、鵜瀬を選択して間違いなかったようだ。またお願いしますと料金を払って港を離れた。そして、離島夜釣り恒例の温泉タイムだ。枕崎には海沿いに「なぎさ温泉」という温泉施設がある。いつもここで釣りの疲れを癒し心も体もリフレッシュさせて帰路につくというのが我々の夏の夜釣りコースなのだ。

高級食材をクーラーに入れて家に持ち帰って、早速調理にかかった。2枚は用務員さんにお裾分けしてのこりの2枚でシブの姿作りに素揚げしたものをトマトソースで絡める定番の料理で夕食を家族に振る舞った。今年も逢えた夏の恋人「シブダイ」。その食味の素晴らしさは釣った本人でしか分からないだろう。シブダイの刺身を口に運びながら、心の中はすでに次回のシブダイとの出会いのイメージトレーニングが始まっていた。このように、釣り師は釣りという業を前回の釣りが終わった時点から次の釣りが始まるととらえている。つまり釣りに行く計画思い立った時点から釣りを終えたこのときまでが「釣り」なのだ。海に仕掛けを入れているときだけが釣りではない。ここに、釣りという道楽のすばらしさがあると思う。いよいよ盛期入りしたシブダイ釣り。さあ行けるのはいつのことになるのだろう。また、ワクワクドキドキしながらカレンダーと天気予報とのにらめっこの日々が始まるのだった。


本日の釣果 シブダイ41〜33cmを4枚

本日の料理

シブダイの姿造り
シブダイのトマトソースあんかけ
シブダイのカマ焼き
シブダイのにぎり寿司

TOP BACK