1/14 回り道でも 甑島手打

1月13日鹿島での釣りを終えて、帰路へといいたいところだが、今回はちょっと事情があり変則2日釣りだ。家に帰るのではなく、串木野あたりでぶらぶら時間を過ごし、14日の釣りに備えるのだ。14日はFナポレオン隼ならおそらく午後11時頃の出航だろうから、民宿に泊まるの必要はないが、できれば温泉にでも入って疲れを癒し、仮眠くらいはしたいものだ。

我々は串木野港を後にし、餌や釣り小物を買う必要があるので、串木野で唯一知っている釣具店「釣好」に立ち寄った。おばちゃんが相変わらずの笑顔で相手をしてくれる。「餌ですか?どうぞどうぞ」念のため餌を買う前にFナポレオン隼に電話した。何とこれが意外にも「7時に電話ください」だった。「出ると思いますよ。」とおばちゃんが心配してくれるが、冬の天候は油断できない。餌のキープをおばちゃんに申し出て、7時の天気予報を待つことにした。3号線を南に下り、羽島にある白浜温泉におじゃまするためだ。ところが中々目的地に着かない。もうすぐ川内というところでやっとで海側の海岸道路に出た。釣好から20分もかかってやっとで温泉センターに到着。ようやく疲れを癒すことができた。温泉を堪能して、串木野に戻ろうと海岸道路伝いに車を走らせるとしばらくして愕然とした。串木野から20分かかってたどり着いたこの場所は、何と串木野新港と目と鼻の先にあるではないか。灯台下暗し・・・。散々苦労して探したのにその場所はすぐ近くにあるなんて。何か明日の2人の釣り師の釣行を暗示するかのような出来事だった。

焼き肉「なべしま」での夕食後、7時になったので、隼に電話を入れる。「出ます。5時集合です。3時回収になりますけどいいですか?」隼は通常この時期は11時頃に出航することが多いので戸惑ってしまった。釣好にもどり、民宿を紹介してもらうことにした。すると、串木野漁港のすぐ近くに民宿が一軒あることがわかり、そこで3000円の素泊まりをお願いすることに。暖かい布団で眠る幸せは何事にも代え難くうれしいものだ。民宿のおばちゃんのご好意に甘えながら、魚の夢を見つつ爆睡した。

どれくらい時間がたったろう。目覚ましを止めて寝てしまったことに気づきあわてて飛び起きた。午前4時35分をまわったところだった。やばい、急いで師匠をたたき起こし、車で港へ到着。車で1分の場所だから間に合ったけどね。もうすでにみんな荷物を積み終え、出航を待つばかりとなっていた。こうして、2日連続で釣り道具などを他のお客さんに積んでもらうという失態を演じながら、予定通り午前5時にFナポレオン隼は串木野港を離れた。

予想通り、船は串木野沖の水道でがっぱんがっぱん揺れた。しかし、甑島に近づくにつれて揺れは収まってきた。狭い船内で静かに到着を待ち続けていると、1時間40分ほどでエンジンがスローに変わった。船内の釣り師たちに緊張が走る。今回は手打港以東の東磯からの渡礁だ。2回目の渡礁を終えると、奥さんに呼ばれた。デッキに出て、道具を1カ所にまとめた。ここは地磯のようだ。右手に船客の磯マンがいた。よく見るとただの壁のような所だ。おいおい勘弁してくれよ。こんな斜面で釣りをしなさいってことなの?ホースヘッドが磯に張り付いた。渡礁するしかない。すると斜面を上ったところにたたみ2畳分のやや平らなスペースを発見。すぐさまそこに道具を置いた。荷物をすべて受け取り、船長のアドバイスに聞き入る。「そこの(船着け)手前と右に降りたところと、裏もいいよ。」こう言って隼は去っていった。



手打 三つ穴の裏の釣り座

船着けは高い場所のため、1つ下の段に降りての釣りになりそうだ。手前からドン深な場所で、おそらく瀬際からクロをおびき出して釣れという場所であると予想。右下の釣り座は、張り出し根がきつく、釣り座がほとんどない。取り込みが難しそうで上級者向きだろう。裏は高いところから飛び降りて行かなければならないが、わずかだがワンドにサラシがあり、何となくいい雰囲気。先んずれば人を制すとuenoさんはすでにバッカンを置いている。私も定置網のブイが気になるが、ワンドの反対側で釣らせてもらうことにした。遠くに手打港沖の堤防が見えている。


マキエは、集魚材1袋、パン粉2kgをオキアミ生半角と混ぜ合わせた。竿はがま磯アテンダー2号53に道糸3号ハリス3号。ウキは競VR・3Bの2ヒロから始めることにした。マキエをしながら海の状況を見る。魚は全く見えない。冬磯はこんなもの。気にせず30分ほどマキエを続ける。左の鼻ではuenoさんが釣りを始めている。着け餌がそのまま帰ってくるそうだ。潮は右から左へと動いている。まずい、こちらは潮上だ。

1月14日(日)若潮。満潮が午前4時58分、午後15時37分で、干潮が午前10時06分。時計を見ると午前8時をまわっていた。40分ほど撒き餌を続けた後、第1投。uenoさんの方の釣り座は、左に張り出し根があり取り込みが厳しそうだが、こちらは張り出し根はない。しかし、ブイからロープがたれており、瀬際釣りが基本となりそうだ。潮はいい感じでながれており、魚がいれば釣れるはずだ。午前9時頃、uenoさんが魚のアタリをとらえた。やりとりするuenoさん。魚を浮かせにかかる。端から見ていても良型のクロであることは間違いない。しかし、魚は生きながらえるために渾身の力を振り絞って一番助かる可能性の高い釣り座左手前の張り出し根に突っ込んだ。魚の思惑は成功。浮かせられる一歩手前でハリスは張り出し根に触れ飛んだ。命拾いした魚は、命からがら自分のすみかである磯の割れ目やオーバーハングなどに帰って行くのであった。地上では、師匠uenoさんが地団駄ふんで悔しがる。タナを聞くと全遊動でかなり深くまで入れたそうである。こんなに張り出し根がきついうえに、鼻が突き出している釣り座では深いタナで魚を掛けたとても取り込むことは至難の業だ。おまけにこれから干潮の潮止まり後、潮が上がってきたらここは波を被って釣りどころではなくなる。仕方がないので、崖をよじ上って船付けの釣り座に戻ることにした。

さあ、このポイントはどうだろう。手前からドン深。サラシもなく潮も動いていない。隣の釣り人も竿が曲がる気配がなく魚と同様釣り人の活性も低かった。干潮付近だからしょうがないけど、魚の気配が感じられない。uenoさんは向こうで2回バラしたそうだがタナは竿1本半から2本近くで当たるらしい。これだけタナが深いなら幾分魚の反応があったとしても型を見るのも難しいのでは。早くも瀬変わりに心は動いていた。「uenoさん瀬変わりしますか?」「でくっとな」「わかりません」こんな会話をしているとどこからともなく、船のエンジン音が聞こえてきた。これぞ助け船。ナポレオン隼よ何とタイミングのいいことか。船が近づき奥さんが声をかけてくれた。「釣れましたか。」両手を顔の前でクロスさせダメのサインを送ると、「瀬変わりしますか」の一声に二つ返事で答える私たち。

午前11時過ぎに瀬変わりとなり、我々は道具を片付け船に乗り込んだ。「アタリはあったんですけど、タナが深くて取り込むのがムリでした。」「水温がさがっちょるよ。2度さがっとるもん。16.5度。」船長が厳しい一言を。どこも釣れてない状況とのこと。よりによってついてないなあ。隼は航路を東へととり、次々に釣り人を回収しては、瀬変わりをさせている。良さそうな独立礁で3人の釣り人が乗ってきた。「手前にでかいのがいるよ。朝方ものすごいアタリがあって、魚が手前に突っ込んでバラシがあったよ」北九州から来られた釣り人が目を丸くして船長に話しかけていた。「ここにおれば?この後絶対釣れるって。」船長はこのポイントをその遠征組に勧めているのだが、この二人は変わりたいの一点張りだ。船は仕方がないので一人の釣り人を上礁させた。更に東へと進み再び独立礁を船は目指した。比較的大きな巌の前で船はエンジンをスローにした。「ここですか?」うなずく船長。「タナの浅いところ」とだって。

双子瀬裏の水道側の釣り座
速やかに渡礁を済ませ、船長のアドバイスをと耳をダンボに。「裏で釣って。右側の裏とその反対側もいいよ。こっち(沖側)はダメだからね。」とアドバイス。船は去っていった。時計を見ると11時15分。比較的新しいマキエの後があるので瀬変わりで釣り人が去っていったところだな。裏がポイントということなので、まずは裏へと回った。最初に言われた右側の裏は沈み瀬があるようだが底が見えるほど浅いポイントだ。あまりメジナがいそうな雰囲気が感じられない。次に、左の斜面になっている釣り座の方にも行くことにした。滑り台のようになっていて注意しないとバッカンや人間も転がり落ちそうなところだ。ここもさっきのポイントとつながる水道が通っていてやはり浅く底が見えている。船長の「浅い」はタナではなく水深が浅いので必然的に浅いということではなかろうなあ。一番右の壁際にマキエの跡があり、ちょうど日陰になっている。よしっ、ここにしよう。先んずれば人を制す。新しく作り直した餌を入れたバッカンを置いた。実は、uenoさんが私よりも早くこの釣り座を物色しており、私が仕掛けを作っている間に撒き餌をしていたが、赤いスズメダイがわんさかいるということで、ここにはすでに見切りをつけていたのだった。右の壁で東からの強い風が遮られ釣りやすそうなところだ。

しかし、ここはどこかで見たことがあるぞ。磯場は季節によって違った表情を見せるから中々気づかなかったが、ここは2003年6月14日に八代のK氏と一緒に乗った思い出の磯だった。後で聞いたがここは「双子瀬」というらしい。梅雨グロの時期だった前回の釣りでは、突風を伴った激しい東風が吹き、コッパ尾長1匹に終わりそそくさと西磯方面へと瀬変わりしたという苦い経験がよみがえった。さあマキエだとしばらく餌を撒いて海を観察する。uenoさんの言ったとおり赤いスズメダイが見えている。でも、魚がまったく見えない状況ではないのでここは期待が持てるのではと思った。さっきの釣り人が餌を撒いてくれているだろうから、そんなに長くマキエをする必要もないと早速釣り始めた。左手前には張り出し根があり、オーバーハングになっていてそこに魚が潜んでいるのではという仮説をたて検証することにした。

潮の流れはそれほどでもなく、サラシもないので、喰い渋り対策として小粒の3Bのウキで2ヒロから釣り始めた。水道の真ん中に弱い本流が西向きに流れ、その潮に引かれる潮に乗せようと左の張り出し根の際から仕掛けを流していった。ところが意外にもすぐにウキにわずかなアタリが出た。しかし、消し込みには至らない。仕掛けを回収すると餌の一部が盗られていた。第2投でも同じだった。餌盗りのアタリだろうと思うが、もしかするとクロかも知れないと思い。浅いタナという船長の言葉を信じてさらにウキの浮力を抑えるため、また、着け餌をできるだけ自然に落とし込むために00号の全遊動で攻めることにした。ハリスは2.5号に落としていった。ハリも食い込み重視の浅ダナグレ5号を結んだ。さあこれでどうだ、と仕掛けを流していくと、仕掛けが馴染んだころすぐに同じようなアタリがあった。しかし、今度は一度沈んだウキは再び水面に出て来ることはなかった。ゆっくりとウキが消し込まれ途中から勢いよく走った。竿を立ててやりとりをはじめた。どうせ、餌とりだろうと思いきや結構ひくねえ。水面を割った魚は餌盗りではない灰青色の魚だった。



喰い渋る手打のクロ キロサイズ

30cmを少し超えたサイズのようなので振りあげた。今日初めての釣果にホッとする。師匠にも報告した。「uenoさん釣れましたよ。」これを見たuenoさんはこちらへやってきた。「あっちは、ぜんぜん釣れる気がせん。」と私の左隣へ釣り座を構えた。水道の本流はあまり強い流れではなく、引かれる潮が釣りの中心となるようだ。そこを釣るならば今の釣り座は合わせるときに角度がよくないと、uenoさんの釣り座から更に右へ移動した。最初の魚の時だけは勢いよく消し込んだものの、次の魚からは中々厳しかった。ウキを沈めるが途中から止まったりする。また、クロが餌をあまがみしているようで、早合わせをしてもスバリの連続だ。そこで、ウキが消し込んでも決して合わせずにとにかく我慢して待つ作戦だ。クロは餌をあまがみしながら自分のすみかである安全な底近い割れ目へとゆっくり泳いでいく。クロだって命は大事だけど餌を食べて産卵前に体力をつけたいはず。どちらが先に行動を仕掛けるか、あるいは我慢するか、心理戦が始まった。

ウキが沈みだしてから5分くらい経って待っていると、突然道糸が走った。しまった!一瞬対応が遅れた。ブチッとやつは道糸を打ち切って逃げていった。こちらは道糸から高切れし、ウキは還らぬものとなった。やられたな。苦笑すると同時にめらめらと闘争心が湧いてくる。仕掛けが入りすぎたようだ。仕掛けを張りすぎたかなあ?さっきのウキは全遊動専用のウキだったので、同じ00号でも今度はウキの穴の直径が小さめ目のものをチョイス。再び戦闘に入った。今度は仕掛けが入りすぎずいい感じだ。例によっての我慢比べの後、ようやく魚の動きをとらえた。中々のサイズ。左手前には張り出し根があり、底へ魚は突っ込んだ。根の上の段にのせたと思いきや計算違いだった。ハリのチモトの部分が根に触れた。悔しいバラシ。隣では、アタリが拾えないuenosさんがいらだっていた。

再びハリを結びかえ、また我慢比べだ。今度も魚をうまくとらえた。いかにもクロというツッコミ。手前には張り出し根があるためとにかくごりごりリールを巻かなければならない。今度は何とか浮かせたぞ。40cmクラスだ。uenoさんに玉網を借りて無事ゲット。これで2枚目。時間とともにだんだん魚の活性が上がってきたようだ。魚の食うポイントが限られていたが、午後1時を過ぎると広範囲にわたって魚のアタリが出始めた。アタリはあるのだが、喰わせるのがとても難しかった。3枚目は早かった。40弱。この後、餌盗りを釣るばかりだったuenoさんだったが、パターンをつかんだのか1枚目をゲット。今日一番のサイズ、45cmの口太だった。ボウズを脱出しホッと胸をなで下ろすuenoさん。




本日の最大魚 口太45cm

魚はたくさんいるのだが、とにかく食いが悪い。やさしくやさしくゆっくり着け餌を落としていけば、そして、あわてずに我慢しているとうまくいけば魚は口を使ってくれる。しかし、対応が遅れると根に仕掛けを持っていかれてバラシとなる。硫黄島のロケット弾のようなギューンというウキの消し込みや、尾長とのスリリングなやりとりも面白いと思うけど、この繊細な口太との勝負も中々どうして面白いではないか。その後2枚のクロを追加し、2時30分を迎えた。「もうやめんばんな。」同じく4枚釣り上げているuenoさんももう納得の表情だった。この水温の下がった中で、これだけの釣りができたんだもの。釣果は今一歩だがこの腕じゃあしょうがない。これで最後にしようと、仕掛けを入れた。久しぶりのゆっくりとしたウキの消し込み。後ろ髪引かれるようなウキの動きに最後の勝負と楽しんでいると、ウキは更に深場へと沈み見えなくなった。緩めた道糸を巻き取りながら張りをつくって我慢比べだ。すると今度は早めに道糸がズドンと走った。竿のトルクを利用し、糸を信じてグッと浮かせにかかる。水面を割ったのは何と今日一番のサイズ45cmの口太だった。いろいろ遠回りの釣りだったが、甑島手打は、最後の最後に私にすばらしいプレゼントを用意してくれていたのだった。


無事帰港 お疲れ様でした

予定より5分早くナポレオン隼は回収にやってきた。船に乗り込むと、「どうだった?」に「二人で10枚」と答えると、「へー、そこで10枚よう釣ったなあ」とねぎらいの言葉をいただいた。運が良かったね。今度こそボウズを覚悟したのに。そして、さっき船長が粘れば絶対釣れるというのに瀬変わりした北九州の釣り人は、「後半、ポツポツ釣れた」そうである。しかし、残念ながら、船長の絶対釣れるからの言葉を信じて残った釣り人は、残念ながらボウズに終わったようだった。
午後5時頃、串木野港へ戻ると、クーラーを開ける釣り人はいなかった。魚を持ち帰ってもこの時間では、もらってもらう人もいないので、奥さんに魚はいらないかと持ちかけた。すると、「ボウズのお客さんがいるので、その人に分けてください。」ということで、魚をあげてすがすがしい気持ちで港を後にした。喰い渋って回り道の釣りだったが最後には魚を釣らせてくれた。甑島はやっぱり釣り人の心を癒してくれるね。甑島の好調もしばらくは続くだろう。再び磯に立てる日を夢見て自宅へと車を走らせるのであった。


本日の料理

寒グロの刺身
寒グロのしゃぶしゃぶ

甘くてうま〜い 息子yasuの評価

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