2/23 春の予感 天草維和島

いよいよ私にとってのGWがやってきた。仕事の都合上、平日に釣りに行くことが困難な私にとって、学校行事の振替で休日となる今年の2月23日と26日は待ちに待ったゴールデンウイークというわけなのだ。行き先は、磯釣りでの2連続の惨敗で傷ついた心のケアにと、船釣りか、はたまた磯でのリベンジかと悩んでいた。ふと、日課になっている釣船HPのチェックでべっぷ丸の情報を見て関アジ釣りに即決まり。1月からずっと大型の関アジが関鯖混じりで釣る人3桁だそうだ。釣れない私のような人でも最低40匹は釣れるという。おまけに23日は朝まずめに太刀魚のリレーもやるから驚きだ。気がつくと衝動的にべっぷ丸に電話を入れていた。「はーい、わかりました。入れておきます。」相変わらず丁寧な電話の船長と契約成立だ。このべっぷ丸は仕掛けからなにやらレンタルしてくれるので安心だ。おまけにへたっぴな自分にも釣れるように釣り方までレクチャーしてくれる。遠くても通う理由がここにある。

2月23日(金)中潮4日目。今年は暖冬であることを裏付けるように雨が降ってはやんで晴れるというパターン。2,3日前熊本にも黄砂を確認。平年より20日ほど早い訪問だそうだ。人間の見える世界の気象の変化は、当然人間の見えない世界である海の中も然りで、寒グロも終盤戦に突入していた。春は駆け足でもうそこまでやってきているのだ。3日前の天気予報では、22日が雨で、23日は晴れだった。雨のあとは決まって北西が吹くから、大分はべた凪のはず。いい感じだったのに2日前になると22日の午後から23日の朝方にかけて雨が降るという予報に変わっていた。釣りに暗雲が立ちこめた。午後6時頃べっぷ丸から電話が入る。受験の合格発表を聞く面持ちでいると、「23日は、風が強くて波が高いようなので、中止します。」残念。サクラチル。アドレナリンが久しぶりに体を駆け抜けた。携帯サイトから波の予報を見ると、大分方面は東風の影響を受け、2mという。ならば、鹿児島薩摩地方はというと、2mのち2.5m。最強船蝶栄丸へ電話を入れると、「23日は中止しましたよ」だそうだ。蝶栄丸がでないなら他も出るはずがない。22日の午後からやってくる雨雲はかなりの威力があり、雷注意報まで出ている。しかたがない。今回は釣りはあきらめよう。

23日の朝を迎えた。あわただしく仕事に出かける準備を進めるカミさん。学校へ行く準備をする息子。自分とは違う時間が流れている二人を見ていると無性にそわそわする自分に気がついた。再び釣りへの情熱が心の奥底からわき上がってくるのがわかった。よしっ、行くぞ!道具を車に積み込み通勤車とは反対の方向に車を走らせた。人吉ICに入ったのが午前7時半。行く当てのない釣行?すぐに分岐点だ。鹿児島か熊本か。自然とハンドルを左へときっていた。わかった自分は天草に寒チヌ釣りに行きたいのだな。ここでようやく自分の意志を確認。山江PAでこの時期なら一発ねらいの維和島だろうと、去年もお世話になった第2むつ丸に電話した。


苦い思い出の 橋脚下

「いいですよ。維和の橋に来たら電話ください」で契約成立だ。ヤマツリで餌を購入。今回の撒き餌は、山本チヌファイトのふかせ用を10kgにオキアミ1角。この店では、餌を混ぜてバッカンに入れてくるサービスを行ってくれる。この釣具店の黒板に維和島の情報が記されていた。「40〜50cmクラスを1人0〜3匹」さて、天草の海はこの釣り人に一体どんな釣果を用意してくれているのだろう。

維和の橋を渡り、船長に電話する。橋を渡り終えると懐かしい情景が目に飛び込んできた。去年、やはりこの寒チヌの時期にトライして、2連続ボウズを喰らった橋脚下のポイントだ。確かあの橋脚のかどに船が沈んでいてそこにチヌが居付いているんだったよな。午前9時40分ごろ維和の鷺の浦港に到着。第2むつ丸が私の訪問を静かに待ってくれていた。ほどなく船長が登場。いよいよ寒チヌとの決戦場へと向かうことになった。


第二むつ丸さん  お世話になります

エンジンに命が吹き込まれ、むつ丸は静かに鷺の浦港を離れた。さあ、情報収拾だと、船長に話しかける。「ことしも結構釣れているようですね。」「去年と同じくらいあがっとっとですよ」「もう春のようですよね。」「ですねえ。」「水温はどうですか」「13度くらいまであがっとっとですよ。だから釣れだしとるとですよ。14,5度まであがるともう乗っ込みになるからですね。」水温から今回の釣りは結構期待できるのでは、と考えているうちに急にエンジンがスローに変わった。あれっ、今港を出たばかりなのに。私の心の準備を待たないうちに、いきなり船長が説明を始めた。「ここは、水曜日に53cmがあがったところです。それ以来乗せとらんから、今日はチャンスですよ。」そこは石積み堤防で近くに養殖生け簀がある。「ここのそこは砂地ですか」「ですよ。あの石が下に入っていてここらあたりは砂地ですよ」喰わないときに仕掛けをはわせることができるか確かめるためだ。「沖へ潮が動くときがいいんでしょう?」と船長にそれとなくポイントを聞くと、「そこの藻が見えるでしょう。そこの際で喰いますよ。潮はあまり動かんときがいいです。タナは竿1本と少しです」「今日は時間があるので最後まで粘ります。」「頑張ってください」と激励され無事渡礁。今回乗せられた磯は、何と港から30秒と今までで一番近いポイントだった。


今回のポイント 石積み

時計を見るとすでに10時前。こうしちゃおれぬ。早速、仕掛け作りだ。竿はダイコー強豪1号ー53、道糸2号にハリスは、とりあえず1.5号、ハリはチヌバリ3号。ウキは、Lets0号の全遊動。餌盗りも少ないようだからゆっくり探っても大丈夫かな。撒き餌を20分続けてみる。魚の姿は見えない。潮は手前に緩やかに当たってきているようだ。期待の第1投。J6のJクッションが馴染んでどんどん沈んでいく。仕掛けが入り過ぎか。潮は左手前に流れていき何回か藻に触れて根掛かりが多発する。船長が根掛かりするところがポイントといっていたが、ここはいくら何でもポイントではないだろう。

そこで、遠投ときた。Jクッションを外し、潮受けゴムを装着し、更にゆっくり攻めることにした。すると、もぞもぞとした前アタリの後、ウキがゆっくりと消し込まれた。何だろうと思ってあわせを入れるとククッとした軽い引き。最初の訪問客は、海草に身をまとったコッパグロ。もっと大きくなってからおいでと海へお帰り願い、仕掛けを打ち返す。今度はメバル。3,4匹とメバルが続く。更にアイナメ、再びコッパグロと餌盗りの猛攻。これだけ餌とりが釣れるということは、今日は魚の活性は悪くないぞ。夕方まで粘ればそのうちチヌがよってくるのでは。


最初の訪問客はコッパグロ


春告げ魚 メバル


ねらうと中々釣れないサヨリ

昼頃になると、今度はサヨリがお目見え。チヌバリ3号にオキアミのLサイズに喰ってくるというからたいしたものだ。夏は、ハリス0.8号で極小刺しアミで釣る魚だが。どうやらサヨリがかなりの数寄っているようだ。入れ食い状態に。しかし、9匹釣ったところで、自分はチヌ釣りに来たことを思い出し、ウキを3Bの半遊動に切りかえサヨリなどの餌盗りを交わす作戦だ。しかし、それでも何者かが餌を盗りどうにもならない。しばらく磯を休ませ、昼食をとる。


アタリ潮が続く 仕方がないので藻の際をねらう


風が強くなってきました

しばらく磯を休ませた後、再びトライ。しかし、さっきまでサヨリを入れ食いさせていた沖へと動く潮は変わり、再び手前のアタリ潮に変わった。再び根掛かりが多発。手を変え品を変えするが一向に本命らしきアタリはなし。そうこうしているうちに夕まずめを迎えた。隣の釣り人と船長とが話している。今日の納竿は6時過ぎとのこと。今はもうすでに4時過ぎ。風が強くなってきた。気持ちばかりが焦る。ウキをキザクラLets00号の全遊動沈め釣りに変え風対策を。すると、午後5時過ぎに潮が沖へと動き出した。この日初めての潮だ。更に風が強くなってきたので、仕掛けが入らない。ハリスに2段打ちしていたが、更にスイベル近くにG1を打つとなじみがよくなった。ウキは完全に沈んで見えない。道糸でアタリをとることにした。時計をみると午後5時46分。もうこれで最後の1投かもと竿2本先に仕掛けを入れた。いい感じの潮に流していくと、穂先の先の道糸に前アタリが。反射的にあわせを入れると、軽い引きが伝わった。餌とりかなとリール3回転ほど巻くと、やつはガツンと一気に走った。強豪1号が容赦なく「つ」の字に曲がる。穂先をコンコンと叩いている。間違いないチヌと確信。慎重にやりとりするとやつは浮き始めた。ばしゃばしゃと浮いたのは紛れもない今日の本命、銀鱗のチヌであった。8時間釣り続けてようやく訪れたチャンス。バラしてなるものか。慎重に玉網をかけると、引きの割には小さめの46.5cmのチヌであった。


デカ版のバラシになすすべなかったという隣の釣り人


最後の最後に会いに来てくれた 銀鱗の彼女

あまりのうれしさに何と道具を片付け始めている自分に気がつき苦笑した。もう仕事終わり。そんな感じだった。最後の最後の釣果。これまでの努力が報われた瞬間だった。正に価値ある1尾。だからチヌ釣りは人々を魅了するんでしょうね。


46.5cm もう腹パンパン


港に帰って、船長に検量してもらった。今日は6匹のチヌが出て、自分のが最大魚だったそうだ。また、私の隣の釣り人は、マダイかデカ版チヌのアタリになすすべなくぶち切られたとのこと。「ここは、3kg級がいるからハリスは2号くらいは必要」と船長。良かった。夕まずめに2号に上げていて。「遠くから来た甲斐がありました。また来ます」こういって船長に別れを告げ、チヌから春の予感を受け取り、いい気分で人吉盆地へ帰っていった。


焼き鳥七論さんにお世話になることに


サヨリの刺身と釣り談義を肴に


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