4/14 春の離島で新たな目標 硫黄島

新学期が始まった。プロ野球開幕、会社では入社式、農家では米作りの準備に大忙し。わが職場は県下でも有数の梨の産地にあるので、この頃満開になった梨の花を楽しみながら通勤することができる。ごつごつした枝に可憐についている白い花。その花に誘われて昆虫たちが活動を始める。梨にとっては受粉を促してくれる格好の相棒だ。その昆虫を求めて鳥たちも活発にさえずっている。億万々もの生物が生命の謳歌を唱い、躍動する四月。今年もこの壮大な弱肉強食と共進化の矛盾をはらんだ食物連鎖のドラマが繰り広げられるに違いない


春の離島 何が起こるかわからないから

さて、4月になると動きが活発になる釣り師たちがいる。3月頃から始まったチヌの乗っ込みにあわせて「のっこむ」チヌ師。船釣りのおじさんたちもマダイその他の魚種が豊富になることで活発に。堤防でもコノシロ、チヌ、ガラカブ、メバル、アイナメ、キス、セイゴ・・・と数限りなくたくさんのお魚さんたちが釣り師を待ってくれている。4月になって一気に人口が減ったクロ釣り師も甑島を中心にこれから梅雨グロの時期まで楽しめる。さて、離島の釣りはというと、乗っ込み石鯛がこれから活発になる。私は、石鯛はやらないから、離島へ行ってもすることがないのではないか?と考えて今までこの時期には離島には行かなかった。

ところが、ネット友だちの関ちゃんから私の釣りスタイルをかえる情報が飛び込んできた。「アカジョウの3キロ、4キロがあがった」というものだった。釣り方は、おそらくイスズミの切り身を使ったブッコミ釣りだろう。5時半すぎには夜が明けてしまうこの時期に夜釣りは時間がなさ過ぎるねと考えていると、後で聞いてみるとアカジョウは夜行性ではなく、朝方に釣れる魚であるとのこと。根回りを回遊しながら、あるいは磯の割れ目に隠れて餌となる魚が現れると活発に捕食をおこなう。実は私はまだ本物を見たことがない。わかっているのは体色が赤いというだけ。その食味は、刺身、鍋物、焼き物、煮付け何でも絶品とのこと。イメージだけが先行してしまっている。よしっ、春の離島のねらいは決まった。アカジョウをいう未だ見ぬ兵にあいさつすることだ。そして、その釣りがダメなときの保険として青物釣りということで黒潮丸に電話を入れた。「2時半集合です」で契約成立だ。何が起こるかわからない離島の釣り。初めてのパターンなので、頭の中が混乱し準備する仕掛け類が支離滅裂になってしまい苦笑しながら、午後11時に自宅を出発した。


午前2時半だよ 全員集合!

枕崎港に午前1時半頃到着。仮眠していると、暗闇の中でがやがやとした人の声で目が覚めた。時計を見ると2時15分。こりゃいそがなくっちゃと戦闘服に着替え、釣り道具を運び始めた。エンジンがつけられた。釣り師の動きがにわかに激しくなる。「おはようございます」と船長にあいさつ。今日の私の青物釣りという要求にキビナゴとカツオの腹皮のパックを準備してくれていた。感謝である。船に乗り込むとうれしい顔が見えた。何と情報をくれた関ちゃんさんが乗っていたのだった。「久しぶりですね」とあいさつ。関ちゃんさんはあいさつ替わりにネットで教えてくれた「必殺ウツボ仕掛け」をくれた。「今日は底物ですか」底物師の関ちゃんには愚問と言える言葉かけだが、返ってきた言葉は「上物です」だった。「船長、風裏に乗せてください」と関ちゃん。時化男と言われているK野様もおられた。また、硫黄島の釣りで釣り雑誌や釣り師の間でも有名なNさんも乗船。先日のアカジョウもNさんがしとめられたそうだ。

船は、2時40分ごろ枕崎港を離れた。波高1.5mの予報。急ぎ足で通り過ぎた低気圧の影響で風が強く吹く中、黒潮丸は硫黄島に向かってひた走ること90分でエンジンをスローにした。今日は、かいしん丸が来ているので、平瀬からの渡礁と思いきや、「風が強いからあとで」と他の所へ。しばらく走ると、「鎌田さん、準備して」と船長から声がかかった。硫黄のにおいが立ちこめる磯に近づいている。Nさんと連れの方が渡礁していく。タジロの低場だった。ということは、どうやら希望通りタジロの高場に乗せてもらえるようだ。「関○さんも一緒に」と船長。速やかに渡礁完了。時計を見ると4時半。上り中潮で今が満潮。うねりがまだ残っている。荷物を高い場所においてゆっくりと準備を開始する。これから下げ潮が走り出すはずだから下げ潮はシマアジ釣りにはいい条件だからいいかも。


夜釣りのブッコミ まずはカツオの腹皮を

ピトンを入れる穴をさがす関ちゃんさん。「ブッコミのポイントはこのあたりがいいですよ。」と勧めてくれた。準備しながら釣り談義に花が咲いた。準備を完了すると空が白々とし始めた。竿はダイワ幻覇王石鯛竿。シーライン石鯛遠投の両軸リール。37番の瀬ズレワイヤー20号の真空おもりのムツバリ16号のブッコミ釣り。餌は、カツオの腹皮、キビナゴを船長から準備してもらった。朝になったので、昼釣り用の撒き餌とタックルを準備。ブッコミは置き竿にしてまずはアカジョウの餌であるイスズミを釣ることにした。関ちゃんさんが瀬際に撒き餌をしている。「イスズミが浮いてますよ」と関ちゃんさん。「イスズミ釣ってもいいですか」と言うと「どうぞ、どうぞ」と関ちゃん。


関ちゃんさんと なかよくならんで

とは言っても、ねらうと中々釣れないのがイスズミだ。つけ餌をさわると温かい。水温は大丈夫?そうこうしているうちにブッコミの仕掛けに変化が。ジーッという音ともに竿先が突っ込んでいる。これは大変と、上物竿を置いて急いで石鯛竿をにぎりあわせを入れる。どうやらのったようだ。だが、軽い。上がってきた魚はウミヒゴイ。今度はキビナゴを房掛けにして投入すると、今度もあたりがあったが喰わせ切れなかった。1投ごとにあたりがある。イスズミをねらっている場合ではない。3投ほどしたところで再び道糸が走った。あわせを入れる。のった!うーん、これも軽い。上がってきたのは1kgほどのウミヒゴイ。「これは結構うまいですよ」と関ちゃん。これから、魚料理に関する話題となる。タバメはフライにすると美味しいということを教えてもらった。
午前6時過ぎ、黒潮丸が近づいてきた。えっ、もう瀬変わり?となりのNさんたちを回収し、潮が引いてのれそうな平瀬へいくためだ。船がこちらにやってきた。「どう?だめ?」船長が尋ねる。「向こうへ行かない?アジが釣れたよ」と船長。これにいち早く反応したのが関ちゃんさん。「かまちゃん向こうへ行きましょう。アジがつれたそうですよ。」と荷物を片付け始める。私も片付け始めたが、「向こうは1人だよ。鎌田さんはこっちでいいよね。向こうに2人はもったいないよ」と船長。こうして、関ちゃんさんはタジロ低場に瀬変わりとなった。「潮もいってるから釣れるよ。1時15分ごろに迎えにきますから」と言って、黒潮丸は去っていった。

最初の訪問はウミヒゴイ


タジロでは天然記念物? 口太メジナ

さて、1人になった。釣りをいろいろ教えてもらおうと思ったが残念。釣りに集中することにしよう。黒潮丸が去っていたあと、撒き餌が効いてきたのか、魚の活性が上がり、すぐに手頃なイスズミが釣れた。早速、さばいて切り身を5つほどつくり、アカジョウねらいの餌とし、仕掛けを入れた。そして、上物釣りを再開する。撒き餌をすると瀬際でデカ版のイスズミが撒き餌を拾っている。魚の活性が高く、タナも浅いと感じた私は、2ヒロから釣り始める。手前はイスだらけだろうから、やや沖を釣ることにした。それでもやはりイスズミが釣れてくる。仕方がないので、浮き下を2ヒロ半に下げてトライ。魚の数があまり多くないようで、すぐにすれてしまい、中々ウキを一気には持っていかない。仕方がないので、誘ったり、ウキが完全に見えなくなるまで待って道糸に変化が現れてから合わせることにした。


関ちゃんさんは隣の低場へ瀬変わり

すると、ウキがゆっくりと消し込み、ウキが見えなくなるころから一気に走って竿にのった。「また、イスかあ」と思ったが、あまり竿を叩かないので、おやっ、と思っていたら手前に寄ってきたのは、久しぶりの灰青色のしっぽの白いお魚さんだった。イスズミに混じって準本命の口太メジナが意外にも訪問してくれたのだった。35cmほどのここではまずまずのサイズ。沖を本流が走り、その潮に引かれる潮に乗せて流して喰わせた1匹だった。
今日の魚は警戒心が強いのか、1匹釣ればいきなり活性が下がって餌を盗られなくなる。更にタナを深くして竿1本弱にするとやや小振りのクロをもう1匹ゲット。シマアジ釣りに来たのにいきなりクロの連発かと思ったが、それから当たってくるのはイスズミばかりとなった。潮が止まってしまったらしい。


幻覇王 魚信とらえきれず

時計を見ると、8時頃だった。遅い朝食を取りリフレッシュして再び挑戦。潮が走り出したのか、再び餌を盗られるようになった。ウキに変化が見られないので、タナを2ヒロ半に浅くしてトライ。ウキは、丹羽ウキ3B、道糸5号、ハリス4号だった。再び引かれる潮をねらうと今度ははっきりウキがツッコミ、道糸が走った。イスズミみたいな竿の叩きだが、イスズミほどしつこくない。案の定、浮いてきたのはしっぽの黄色いうれしい訪問客だった。振りあげると青空をバックに魚が舞う。40弱の良型のシマアジだった。12月に来たときよりかなり成長してくれていた。刺身だ刺身と大事にクーラーに入れた。


冬よりかなり成長していたシマアジ

その後、ポツポツとシマアジを釣る。タナは2ヒロ半から1本半まで変動。水温が下がってきたのかだんだん魚の活性が落ちたように感じた。残念ながら魚の活性があったのは、下げ潮までで、上げ潮になるとイスズミの一人舞台となった。本当にここのイスズミはでかい。イスズミの歯が鋭いので飲まれると4号ハリスを切られることもある。唇にかかったら口が堅いため外れることも多かった。


ここのイスズミはとにかくでかいんだ

そして、干潮潮止まりに事件は起こった。ふと、低場の関ちゃんを見ると何と魚とのやりとりをしている。それも半端な魚ではない。かなりの時間やりとりをしている。その格闘を固唾を呑んで見つめていると、石鯛竿は緊張から解き放たれる。痛恨のバラシ。あそこは、冬に関ちゃんさんの仲間のNさんがアラを釣ったところだった。おそらくアラだったのであろう。ガマに入った獲物を粘って引きずり出し、もう少しで浮かせにかかるところだったという。


ついにあたりをとらえた関ちゃんさん 頑張れ!

残念、関ちゃんさん。上げ潮になると大きなドラマもなく。回収の午後0時半を迎えたので納竿とした。この日は、釣りの時間の大半が下げ潮だったが、下げ潮で水温がさがったようだ。水温が急に下がったときはタジロが有利。他の方も厳しい釣りになったそうだ。満足行く釣果とは言えないが、久しぶりに硫黄島へ来て心から癒された一日。今日は天気の良かったので、しばらく硫黄島のロケーションを楽しむことにした。お泊まりの方が新島に瀬変わりさせ、最後に平瀬の釣り人も回収。船は全速力で枕崎港へ帰った。

本命の底物は釣れなかったが、4,5月でも離島での釣りを満喫できることを知ったと言う意味では。満足できる釣行だった。そして、釣り人の心を平等に癒してくれる硫黄島が益々好きになってしまうのだった。


硫黄島に心から癒された1日


クロはまだ卵をもってました



船長に売ってもらったカツオが絶品だあ
刺身にタタキ この弾力
ウミヒゴイは唐揚げに

TOP         BACK