10/06 開始1時間で勝負あり 大分蒲江 西野浦一帯

「鎌田さん、10月も夜釣りやりますから来てくださいな」前回の9月の釣行後、黒潮丸の船長からこのように言われたことを思い出す。10月に入っても夏日が続き、当然海の中もサマータイム。例年なら、硫黄島は、昼釣りに切りかえるころだが、10月に入っても夜釣りを続けるという船長の判断は当然とも言える決断だった。今シーズン、一度もシブダイ釣りで結果を出せなかった自分にとって、10月の3連休は正に最後のチャンスとなった。9月最後の出船では、シブダイが小型中心だが、3kgの大型も出ている。また、2.2〜6kgまでのアラも3本出ているという状況。水温も28度、29度と高めなので、これから水温が少し下がれば好釣果も期待できる。

そんなイメージトレーニングを積んでいるところだった。毎日チェックしている台風情報が西日本のほとんどの釣り師を落胆させる結果となった。台風15号が非常に遅い速度で台湾へと迫ろうとしていた。波予報を見ると、釣行日前日の5日、種子島屋久島地方うねりを伴って3〜4mと出ていた。万事休す。この3連休は、仕事しろということだろう。10月にある研究授業と学校訪問の指導案2本の仕事に没頭するつもりでいた。


この台風で釣りができるところと言えば

しかし、金曜日、何か釈然としない中で、携帯電話が鳴った。師匠uenoさんからだ。「ブリ釣り行こい。おら、この日ば逃せば、もうしばらく行かれんごたるけんなあ。」そうか、その手があったか。大分蒲江の鰤釣りなら、南からのうねりを避けられるかもしれない。早速、西の浦釣りセンターに電話すると、出るとのこと。昨年ほどの勢いはないものの、ポツポツ釣れていることだし、行ってみる価値はありそうだ。と、いつものように理由をあれこれとつけながら釣り仕度を始めるのだった。


アジ、サバのミンチの撒き餌を作ってもらいます

午後11時50分ごろに人吉ICを出発し、九州を北上する。神話の里高千穂を越え、宮崎県延岡市を経由して、西野浦についたのが、午前4時過ぎだった。1時間早く到着したので、だれもいないと思いきや、筏の夜釣り客が7,8名、電気ウキの灯りをともしていた。鰤釣り客は、我々を含めて4名。北九州からの2人のアングラーと一緒に釣るようだ。いつものように挨拶を済ませ、電話で船長を呼び出す。

10月6日(土)は若潮、干潮が8時54分、満潮が16時10分。一番の朝まずめのチャンスタイムに干潮間際となるため、潮が動くか心配だ。船長が登場。早速冷凍庫からサバアジの冷凍ブロックを取りだし、それをクラッシャーにかけてミンチ状態にし、撒き餌にするのだ。思い撒き餌を船まで運び、午前6時過ぎにいよいよ出港だ。


さあ出発だ 乗り込むのは隣の小さい船

港にいるときは感じなかったが、最初の岬を過ぎると、案の定台風特有の波長の長いうねりが待っていた。船長は黙ったまま、去年下げ潮のポイントだと言って連れていってくれた鰤の養殖筏の前でエンジンをスローにした。このゴールデンタイムを逃すものかと仕掛け作りに励む。竿、ウキ、リールなど仕掛けはすべて船長におまかせ、こちらはハリスだけを準備した。船長から、ハリス7号を3ヒロという指令が来た。ウキ下は10ヒロ〜13ヒロを釣れとのこと。


正に黄金の時間 朝まずめに仕掛け作りに余念がないuenoさん

毎年、9月頃になると沖からブリが回遊してくる。食欲旺盛になったブリが、餌を求めて養殖生け簀に近づくのだ。それをねらうというのがこの釣りなのだ。仕掛けができて、午前7時前、第1投。船長の指示するタナを攻めるが一向にあたりがない。いつもなら潮が動けば早い時間帯で喰うはずなのだが。潮は動かず、表層だけが滑って船が落ち着かない。何度も位置を変えそのたびにアンカーを入れる。船長が首をかしげる。おかしい。


釣り開始1時間で早くもおみやげゲット おいおい

こう潮が動かないならば、勝負にならない。頼むから潮よ動いてくれ。そう願いながら仕掛けを打ち返していくと、船長が、「仕掛けをあげて」と。何で?と思っていると、「今のうちにおみやげをもらっておこう」ということ。えっ、それって、今日はやばいってこと?あきらめてなるものか。船長が魚探をみてタナを15ヒロまで深くするように指示。今ねらっているタナには魚の反応がないようだ。「うねりで魚が底に沈んだようだ」と船長のことばを聞きつけ、自分だけは何としても釣ろうと、船長の指示よりも深いタナを入れることにした。すると、午前9時過ぎ、ペットボトルで作ったとんでもない浮力のウキが消し込んだ。すぐにあわせを入れるとずんといきなり強い引きが竿を襲った。「船長、喰いましたよ。」船長がやってくる。ハリス7号だ。船長が、「慎重に行け!」と檄を飛ばす。

ググッと強い引き。これはまぎれもない鰤の引きだ。それも去年釣ったサイズよりはるかにでかいサイズ。5kgは裕に超えている模様。慎重にのことば通り、スピニングリールのドラッグをゆるめにし、魚の急な走りにも耐えうるようにと自然と糸がでるように設定。すると、船長がリアドラッグをオープンにし、「これで魚を引きをかわせ」とアドバイス。ところが慎重になりすぎたのが徒となった。仕掛けが何かに並んだ模様。魚からの反応はあるのだが、一向に浮いてこなくなった。「あー、根掛かりだな」と船長。どうやら、この底はロープの残骸がたくさん沈んでいてそのロープにハリスが絡んだようなのだ。船長が何とかそれを回復しようとしたが無理。結局、自ら仕掛けを切りばらすことになった。


ついに魚をとらえたと思いきや

この後、向こうの組の人が1人魚を掛けたが、上がってきたのは、良型のエイ、そして、エソだった。「胴付きでやってみましょう」そして、「オキアミでねらってみようか」と船長が言うごとにどんどん状況が厳しくなることがよくわかった。そして、午前11時50分頃、「鎌田さん、もうやめましょうか」と切り出した。餌もなくなったし、これ以上やっても釣れる気が全くしなかったので承諾し、2回目の鰤釣りは見事な撃沈クラブ入会となった。


ああ 無念の西野浦 来年こそリベンジだあ

今回の釣りで最も感動させられたのは、釣り開始わずか1時間で養殖鰤のおみやげを確保するという船長の読みだった。我々は船長の読み通り見事なボウズだった。さすがに海で生きる男の読みはすごいと関心しながらも、来年はまたこの地でリベンジをと、今日あたりすらなかった師匠uenoさんとともに誓うのだった。

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