11/03 何が釣れるかわからない 甑島一帯

2007年11月3日 釣り場データ


「鎌田さん、だめですわ。波がね2.5から3と言うとりますから。また来週あたり予約してください。」がっくり。これで今年になって何度目だろう。硫黄島行きが中止になるのは。紅葉の頃に活発に活動するであろう青物たちにあいさつに行きたかったのに。南からの時化は、種子島屋久島地方にもやってきていて硫黄島周辺もかなりの波に見舞われるそうだ。この離島の秋磯では、底物が中心になるため、石鯛のポイントは「鵜瀬」「平瀬」「浅瀬」などの低い磯場が多い。だから、無理してもまともな釣果がでないと、釣り客のことを心配しての黒潮丸の決定だった。このところの原油高騰で遊漁船業界はかなりの打撃を受けているであろう。いつまでも離島の釣りを満喫するためには、自然を大切にするということと快適に釣りをサポートしてくれる遊漁船業界を守らなければならない。

こんな訳のわからない理由で、今度は他に釣りができるところはないか考えることにした。磯釣り師なら秋磯にチャレンジしなければならないところだが、今回も未知の世界が見たくて、甑島の船釣り専門の「釣好」に電話する。予報が、2.5m〜2mとなっていて、もしかしたらと思ったからだ。すると、いつものおばちゃんではなく、船長が出た。「出ますよ。6時前に来てください。」甑は無理と思っていたが、なんとあっさり許可が出た。ということで、今回も硫黄島中止ということで船釣りということになったのだった。


原油高騰にもめげずに頑張る遊漁船業界

気がつくと、前回の蒲江の惨敗からすでに1ヶ月を迎えようとしていた。久しぶりの釣行に釣り依存症の私は、前日の夜、まるで遠足に行く子どものように中々寝付けなかった。11時頃から目が覚めてしまい、いろいろ寝ようと試みるが興奮して眠れない。悶々とした時間を過ごすとあっという間に目覚ましを掛けていた午前3時になった。いろいろ自分で確認しながら自宅を出たのが午前3時半。九州自動車道を通るいつものコースで5時15分ごろ釣好に到着。釣具店の中では、朝からハイテンションのおばちゃんがいつもの笑顔で迎えてくれた。

「鎌田さん、この前のマグロの写真ここにありますよ。もって帰ってください。」なんと、8月にお世話になったとき、マグロを釣らせてもらったが、その時の写真が店内に張り出されているのだった。あのときは、惨敗の気配濃厚で最後の最後で釣れた値千金の一発だった。やはり釣り師たるもの何事も結果を出さなくてはと思わされるのであった。本日の客は全部で9名。他の釣り師がたくさんいたので、いつものようにあいさつをする。私が熊本県から来たと話すと、「遠くからご苦労様。でも、熊本にも天草とかいいところがいっぱいあるでしょうに」と鹿児島の方からよく言われる台詞を聞くことになった。天草にいくには人吉盆地からいくのはかなり時間がかかるということを丁寧に説明した。他県から来たよそ者でも会話ができれば、そこは同じ魚に向かっている釣り師たち。すぐにうち解け、いろいろと教えてもらうことになった。

餌を受け取り串木野港へ着くと、早くも出船準備をしている遊漁船に出会った。釣好と同じく船釣り専門の福寿丸と太陽丸だ。停車している車の数や釣具店のものらしいワゴン車があるからしてかなりの人間が串木野港を出発するようだ。まるでスポットライトのような船の灯りの中、2つの遊漁船はたくさんの釣り師の夢とロマンを乗せていた。ここ串木野港は遊漁船の基地としては有名。磯釣りでは、蝶栄丸、ハーバーワンがすでになかったので出港したようだ。しかし、Fナポレオン隼、誠芳丸は止まっていたので、おそらくこの天候で中止にしたのだろう。


本日は晴天 波高し

ふねに乗り込む前に、くじ引きを行う。事前に釣り座を決めるためだ。引くと8という数字。あちゃー、前の方か。定員が12名の釣好では、数字が小さいほど船釣りで有利と言われる後ろの釣り座となる。私は8番なので、不利と言われる前の方だ。荷物を船に積み込み、キャビン内でくつろぐことに。すると、そこにはさっきの釣具店で会話したおじさんアングラーがいた。ごく自然に会話が始まった。まずは、「ここは何が釣れるんですか」と聞いてみた。「うんそうなあ」少し考えていたおじさんは、私の質問にこう答えたのだった。「何が釣れるかわからんよ」う〜ん、思わずうなってしまった。これこそが、お魚天国甑島での釣りを表す最も端的な言葉だと思う。

名前は忘れてしまったが、ある生物学者が次のような実験を行った。微生物を2つの同じ容器で同じ条件の下で同じ数だけ飼育していく。ただし、違うのは、1つは微生物の種類が少ない容器、もう1つは種類が多い容器だ。この実験で、より多く生きのこったのは、同じ数でありながら、種類の多い容器の生物だった。つまり、この実験で明らかになったのは、種類が多いということが生物にとって住みよい環境であるということである。いくら1つの生物の数が多くても、種類が少なければ、それは一時的に増えたとしても結局数を減らしてしまうという

「何が釣れるかわからんよ」という言葉は、この理論を私に思い出させてくれた。それと同時に、甑島の海が生きものにとって住みよい環境であるということが言えると思う。秋という季節の条件もあるだろうが、自分のこれからの釣行への期待を高めるのに十分な言葉だった。甑の海よ。硫黄島に行けなかった我が思いを慰めておくれ。

午前6時15分頃、釣好は串木野港を離れた。「1時間ぐらいで着くよ」のおじさんお言葉通り、午前7時20分頃、釣好はエンジンをスローにした。キャビンの外に出ると、かなりの風と波だ。確かに、予報通り2.5mはありそうだ。東向きに中甑島が見える。船長がアンカーを入れ、ポイントが確定。「おもりは200号でお願いします」の後、しばらくして「底から5m〜15mをねらって。では始めてください。」で釣りが始まった。


最初の訪問者

「いい時は、始めから釣れるよ」とキャビン内で話したおじさんが船長に話しかけている。期待感いっぱいで釣り始める。しかし、アタリがない。30分経過した午前8時過ぎにようやく、第1号の声がした。良型のイサキが釣れていた。午前8時からポツポツ釣果が聞こえてきたものの、お魚天国甑島とは、思えないような低調なスタートだった。その後9時前に小型のチダイ1枚。9時過ぎに40cm近いチダイを1枚追加して、最初のポイントに見切りをつけることになった。一番期待できる朝まずめに一番期待できる場所へ来たはずだから、不安なスタートをきることになった。この時点で、釣り師はみな2,3匹という釣果だった。

場所変えの後も食いが一向に立たない。この後釣れた魚は

9:20ウマヅラハギ
9:25 アカイサキ
10:13 マトウダイ
10時半頃 カイワリ
11:15 カイワリ アジのダブル
11:30 アジ
11:57 レンコダイ
12:00 マトウダイ
12:15レンコダイ
13:40アカイサキ
14:03チカメキントキ


これがたくさん釣れるはずだったが


何度となく移動を繰り返す


これもたくさん釣れる予定だった


形はグロテスクだが 味は絶品


こうなりゃ 数はあきらめ 五目ねらいだ


最後の締めは チカメキントキ


今回の釣果 微妙?

一日中、ポツポツとした釣果が続き一向に食いが立たない状況で、ついに船長が「これで終わります。片付けに入ってください。」と終了宣言。みな無念の思いを乗せ帰り支度を始めるのだった。

午後3時半ごろ、串木野港到着。予想通り、自らクーラーを開けるものはいなかった。言葉少なに港をそそくさと後にする釣り師たち。撃沈した釣り師の行動は、磯釣りでも船釣りでも同じだった。氷を入れてもらうためにクーラーを開けると、他の釣り師たちが声を掛けてくれた。「これなら熊本に帰れますなあ」数は出なかったが8目釣りを達成したことを評価してくれたようだ。船長も「今日は悪かったですね」とすまなさそうに声を掛けてくれた。しかし、私にとっては、何が釣れるかわからないという甑島の船釣りを十二分に堪能できた1日だった。釣れないからいろいろタナを変えたり餌を変えたりして、磯釣りほどのおもしろさはないものの、船釣りの醍醐味は味わえたと思う。私ももっと経験を積んで、初心者に「何が釣れるかわからない」と言えるようにしたいと思うのだった。


本日の食材 大アジ マトウダイ カイワリ イサキ アカイサキ チダイ


本日の料理

チダイ アカイサキのアクアパッツア
マトウダイ カイワリ アカイサキ アジの造り
カイワリ イサキ アカイサキ アジのフライ
カマ焼き少々

個人的には、カイワリの造りが一番でした


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