2/22 恐るべし新人 豊予海峡 

いよいよわたしにとってのGWがやってきた。サラリーマンにとって平日に釣りができるというのは夢のまた夢。それを叶えてくれる時期がやってきたのだ。2月24日(日)に学校行事があり、前日の23日(土)は準備ということで、土日出勤になる。そのために、22日(金)と25日(月)の両平日が休みになるのだ。この週間をわたしはかってにサラリーマン釣り師のGWとよんで楽しみにしている。なぜって、折しも九州では寒グロの終盤戦に入ったところで、クロがまだまだ期待できる時期だからだ。しかも、今年のクロは遅れ気味で、このところ最盛期を迎えるという船長もいる。このチャンスを逃す手はない。

しかし、寒グロも魅力的ではあるが、まだ他にもいい時期を迎えている釣りがある。1つは、寒チヌ釣りだ。天草では水温10℃から11℃でもチヌが食う場所がある。一日あるかないかというアタリをいかにものにするかというシビアな釣りだ。もう一つは、関アジ釣りだ。アジは年中釣れる魚であるが、この時期のアジ釣りは結構数型ともによく、豊予海峡では、関サバまじりで好調に釣れているそうだ。このブランド魚の船釣りは、お手軽で最高の土産を手にできるということで大変な人気である。この時期の船の予約は土日をとるのは難しいほどだ。


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さあ、せっかくの平日釣行、どうする。いろいろ考えていたところ、職場の同僚で昨年の11月、私が硫黄島デビューをさせた新米釣り師KOHちゃんの存在が頭に浮かんだ。この前は、せっかくの磯デビューにも関わらず、あまり釣れないという散々な結果を味わわせてしまい、何とか罪滅ぼしをと考えていた。釣りの話題を振ると釣りに行きたいとのこと。ということは、今度こそ、釣りの醍醐味を味わわせなければならない。本人に希望を聞いてみると、「たくさん釣れる釣りがいいですね。」ということだそうだ。

なるほど、わかった。それなら、関アジ釣りに決定!遊漁船はHPで相互リンクしているべっぷ丸さんにお願いすることに。初心者にも丁寧に教えてくれ、釣った魚を絞めてくれたり、鮮度を保てるようにクーラーの中まで気を配ってくれるサービス満点の船。船釣りデビューのKHOちゃんにはうってつけだ。べっぷ丸の釣りのポイントは、アジサバ釣りでは、伊予灘か豊予海峡である。2月22日は大潮。速吸瀬戸と呼ばれるこの海域は、潮の流れが速く、底をとるのが難しいが、アジは数型ともに実績が高い。天気予報を確認し、船が出ることを確認した後、KOHちゃんを車に乗せ、人吉ICを21日の午後10時半に出発した。
熊本県の人吉から別府市内までのルートは、いろいろ考えられるが、夜中を走るなら断然国道57号線を行くのが都合がいい。九州自動車道を北上し、益城ICでおりる。第二空港線から熊本空港を通って大津市を通る国道57号線に出る。そこから阿蘇を突き抜け、大分県竹田市にはいる。そのまま57号線を進むと犬飼町の手前から左に曲がって国道10号線に出ると、大分市はすぐである。大分市から別府市までは、夜なら20分で行く。我々は途中で休憩しながら、午前2時過ぎに別府市に入った。

べっぷ丸が待つのは、最近移転した若草港。そこには、新しい無料休憩所やゆったりとした駐車場が待っていた。コンビニで食料と飲料水を買ったあと、無料休憩所で休ませてもらうことにした。無料休憩所を利用するには、予め船長にその旨を伝え、鍵の番号を教えてもらう必要がある。我々がその休憩所に滑り込んだの時はすでに、午前3時を過ぎていた。6時集合だから、2時間半ぐらいは寝ることができるだろう。2回が仮眠室になっており、きれいなフローリングの床にこたつ、冷蔵庫などが置かれ、2段ベッドで休むこともできた。長時間のドライブで疲れ気味であったためかすぐに熟睡モードに。お休みなさい。

ごそごそという人の気配で目が覚めた。午前6時前だ。早速、起き出して、船に向かった。もうすでに出船準備が進んでいる。早速、乗務員さんにあいさつを済ませ、船に乗り込む。ここべっぷ丸では、釣り座の決定は、早い者勝ちで行われる。船の真ん中に私とKOHちゃんととなりどうしで釣り座を構えることにした。リールと竿を持ってきたが、竿は3980円で買った50号の竿。不安があったので、念のため竿を借りることにした。ところが、「竿だけ借りるよりも、竿リール、仕掛けのおまかせコースの方がお得ですよ。」の乗務員さんのアドバイスに従い、私もKOHちゃんと同じようにお任せコースにすることにした。




大型新人 KOHちゃん 船釣りデビュー戦

午前6時半、べっぷ丸は凪の別府湾に旅立っていった。本日の客は10名。みなベテラン釣り師ばかり。みな一様に押し黙っている。これからやってくる釣りという業のために静かに時を待つ釣り師たち。今日の大分の海は我々にどんな答えを用意してくれているのであろう。

船の進行方向に対して右手には、大分臨海工業地帯が見える。新日鐵大分の工場が見えている。こんな工業地帯からすぐの場所に日本一を誇る九州のブランド魚関アジが釣れるから面白い。人間の近代文明と自然とが共存した趣きある場所がこの海域だ。速吸瀬戸と呼ばれる潮の流れの速いという必然、餌となるプランクトンが豊富という必然、地形や気象条件の必然などが幾重にも折り重なった偶然がもたらした奇跡の海。それが、豊予海峡なのだ。その奇跡の海で育った鯵は、一度食べたら忘れられないだろう。鯵であるが鯵でないというこんなへんてこな禅問答が頭に浮かぶほど、ここで育った鯵は、他の鯵とはわけがちがう。この違いをまず確かめるなら、プリプリの身の食感の刺身で食すのが一番だろう。「なにっ、これって本当に鯵?」と首をかしげたくなるほど、その違いは歴然。また、関アジを叩いてみるとその違いは更に明らかに。包丁で中々崩れないその身は、やがてゼラチン質のような、ゼリーのようなぷるんぷるんの状態になる。その叩いた身で作ったサンガ焼きが絶品料理となって我々の舌を満足させてくれる。小型サイズは、塩水につけて一夜干しにするとこれが絶品の干物になる。刺身でよし、焼いてよし、叩いて調理するもよしの何でもこいの高級食材。これが関アジの全体像である。「たくさん釣れたらどうする?」「職場のだれかにあげましょうか」はやくもこんな相談をしながら、その時を待った。





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すると、思いの外早くエンジンがスローとなった。時計を見ると午前7時半すぎ。どうやら本日のポイントは近場の豊予海峡のようだ。その場所であることを証明するように、視線の先には、四国佐田岬半島が、その反対側に大分佐賀関半島が見える。さわやかなエメラルド色の風が吹いてくる。海は、冬の海を代表する緑群青色だ。さあ、これからいよいよ釣りが始まる。船釣りでは、最初の数投でアタリがなければ、その日は苦労する釣りを強いられる。また、逆に第1投から釣れる状況なら、その日は好釣果に恵まれることが多い。さて、本日のお魚さんの機嫌はいかに。



ホウボウを釣ってご機嫌のKOHちゃん

「では、始めてください。」の船長の合図で、いよいよ釣り開始。10人の釣り師が一斉に120号のおもりを伴ったアジ釣りのサビキ仕掛けを海底へと落としていく。おもりが底へ着いたところで、仕掛けを3mほど巻き、竿をしゃくって餌を出す。そして、底に仕掛けを落としてアタリを待つという、船釣りの中でも最もポピュラーでお手軽なサビキ釣りである。この日は、大潮。しっかり底をとらなければ釣果は得られない。数投するがアタリはない。「はいっ、底に落としたらしゃくって餌を出してくださいね。しっかり反応出てるよ。」魚探では反応があるそうだ。魚はいるのに釣れない。まだ、釣り始めで食いが立っていないようだ。

午前8時頃、ようやく船首付近の釣り人が魚を釣り上げた。鯵である。これを合図に、ポツポツと釣れたが、一人0〜2匹という状況だ。私も何とか1枚釣れたが、KOHちゃんはまだ釣れていない。初心者ということで、乗務員さんがつきっきりでKOHちゃんを指導している。学生時代は、アーチェリーの名手としてならし、バスケット部の顧問として、子どもの指導に熱心なKOHちゃんだが、こと釣りに関しては初心者。乗務員さんの指導に素直に従う姿がとてもかわいかった。しかし、ここに、大型新人釣り師であるKOHちゃん怒濤の反撃の予兆がすでに見られていた。船長のマイクでのアドバイスや乗務員さんの指導、そして、今釣れている者に学べという格言どおり、ほかの釣れている釣り師を注意深く観察していたのだった。その結果が後半怒濤の反撃となるのだ。




船釣り初挑戦でHPデビューのKOHちゃん

あまり食いが立たなかったので場所を変えると、今度は反応がよかった。次々に当たりが出るようになった。私は順調に釣り続け2桁を過ぎた。KOHちゃんも感動の第1号を釣った後、ボウボウという魚を交えながら7,8匹ほど釣って満潮の潮止まりを迎えた。満潮は大体9時半頃。その間に食事タイムとした。

その後、場所を変えると、下げ潮が動き出したので、魚の活性が一気に上がってきた。すると、魚がサイズアップ。特大サイズの関アジが釣れるようになってきた。KOHちゃんも関鯖混じりで怒濤の追い上げ。特に、圧巻だったのが、ダブルを達成した後、トリプルの2連発。つまり3投で8匹の関アジをゲット。私の釣果に迫る追い上げを見せた。私も初心者に負けてなるものかと妙な競争心が出て、何とか22匹の鯵を釣り、午後2時を過ぎたところで納竿となった。KOHちゃんも18匹の鯵と鯖とホウボウが1匹ずつという好釣果に恵まれた。ここに、大型新人釣り師KOHちゃんが誕生したのだった。



関アジがまずます釣れました


魚をクールで送る家族思いのKOHちゃん

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