3/29 花冷えのチヌ 熊本天草湯島

「29日はどうするね。おら、湯島に行こうと思っとるバッテン。」師匠uenoさんが、体中からアドレナリンを吹き出さんばかりに聞いてきた。桜の花が八分咲きとなったこの時期、乗っ込みチヌも大型が釣れるのもこの土日が最盛期を迎える。偶然にも29日は体が空いたので、uenoさんのやる気モードに乗っかることにした。


ヤマツリ大矢野店 餌を混ぜてもらえます

年に1,2回しかチヌ釣りをしない私にとって、乗っ込みチヌ釣りは大いに魅力を感じる。人間の生活圏である近場の磯や堤防で50cmを越える魚を手にできるとあって、この時期にチヌ釣りをしない手はない。いつもは離島の釣りに没頭する私だが、スレまくった魚と対峙するのもこれまたたまらなく面白いものだ。

そこで、チヌをねらいにどこに行くかだが、チヌのポイントは無数にあり絞り込むのが大変。また、チヌ釣り人口もこの時期に一気に最高潮になるため、渡船の予約もいっぱいになるし、たとえ予約できたとしても明らかに魚の数より多い人数状況での釣りを強いられることになる。そんな中、uenoさんが、湯島沖堤防の釣りを選択したのにはわけがある。

@魚影がすこぶる濃い
湯島は、島原半島と天草諸島との間に浮かぶ周囲4kmの離島である。その昔、島原の乱で天草四郎が度々この島で会議を開いたことから「談合島」と呼ばれている。この島へ行くには定期便しかないために、釣り人が入る余地が少ない。また、地元の人もチヌ釣りはやらないそうで、時々やってくる釣り人のおこぼれ餌を食べに堤防にたくさん居付いているようだ。また、島原半島と天草諸島との間のぽっかり浮かぶこの島は、冬場有明海の深場にいたチヌが乗っ込みの時期になると上昇して餌を荒食いするために回遊してくる地点となっているようで、回遊チヌも多いと思われる。

A収容人数の多さ
磯釣りでは、実績のあるところはある程度限られていて、乗っ込みの時期になると、中々お目当ての磯には上がれないことが多い。しかし、湯島の堤防はかなりの釣り人の収容人数を誇っている。ハナレ堤防、赤灯台堤防、テトラ帯、港内のハナレ堤防、地続きの堤防などがある。それぞれに型ねらい、数釣りできるところと多種多様な特徴を持つ。船頭さんは、その日の状況に応じて堤防に渡してくれる。それぞれの堤防でかなりの人数を収容できるため、大人数でも大丈夫というわけだ。


幸福丸 2番船でお世話になります

今回お世話になるのは、野釜港から誘ってくれる幸福丸さん。堤防だけでなく磯にも渡してくれるという。携帯サイト釣りナビでチヌの食いが活発という幸福丸さんの情報に食いついてきたのがuenoさんだった。「湯島はえらい釣れよるげな」こんな話をしていたのだった。
28日は、学校の送別会があり、私は転勤だったので、最後までおつきあいすることとなり、自宅にたどり着いたのが午前1時半だった。今回はこんな展開なのでuenoさんが親切にも自宅まで迎えに来てくれるという。1時間ほど仮眠した後、約束の3時に車に乗せられ、一路天草野釜港へとひた走った。ほとんど寝ていない状況で助手席にいたがとてもつらい。ほとんど記憶のないまま午前5時半に野釜港についた。5時半に来てくださいということだが、もうすでに第1便は出発した模様。しばらく談笑していると、船が帰ってきた。午前6時をまわった頃、6名の釣り人を飲み込んだ幸福丸は、野釜港を離れた。


湯島沖堤防 型ねらいのポイントらしい

野釜島にほど近い場所にある黒島を抜けて、島原半島方面を走ること15分で湯島にたどり着いた。山の斜面に張り付くように人家が続いている。港らしき場所にはたくさんの防波堤が続いていた。私は初めてだが、uenoさんは2回ほど来たことがあるので、いろいろと説明してくれた。「今日は型ねらいということで、赤灯台ば言うとったもん。」前回uenoさんは赤灯台で2枚のメイタを釣っている。また、赤灯台で本命ポイントで釣っていた釣り師が数釣りをしていたのを目撃。それで、この赤灯台にということにしたんだそうな。
現在、干潮間際で、潮位がかなり低いので、船を着けた後梯子を登らなければならないそうだ。重い釣り具を持ちながら梯子をのぼるのは至難の業。何とか荷物を堤防の一番上に乗せやっとでのぼった。日頃の運動不足を思い知らされることに。すると、uenoさん、「ロープもあったんバッテン」おいおい始めから言ってくれよ。幸福丸は高い堤防に渡すためにロープを常備してくれている。


第1投からメイタを釣るuenoさん
赤灯台堤防はV字型をしており、沖に向かって右端に赤灯台がある。一番のポイントは、真ん中のとがった部分でどの潮にも対応できる釣り座だ。早くも先客が1人釣り始めている。「あそこはこの前もたくさん釣りよったもんな」と、uenoさんは早くも荷物を赤灯台に持っていく。あそこもかなり実績のあるポイントらしい。荷物を持っていく途中殺気を感じたので、視線をその先にやると、早くも先客が魚を掛けていた。37,8cmのメイタが玉網に収まった。今が時合いらしい。これは早くしなければ。考える間もなく、uenoさんと先客アングラーの丁度間だに釣り座を構えることにした。
海を観察すると、砂地で所々に海草が茂っている。堤防の際にチヌの好きな藻がこれから大きくなるという状態。いかにも釣れそうな環境だ。早速、仕掛け作りに入った。竿はダイワメガドライ1.5−53。道糸2号、ハリス1.5号で、ハリはヤイバチヌ2号を結んだ。ウキはとりあえず風もそれほど吹いていないし、潮も速くなさそうなので、キザクラクジラ0シブの全遊動とした。極力遠投というアドバイスをuenoさんから受けていたので、撒き餌の届くぎりぎりの範囲まで遠投し、釣り始めた。潮回りは小潮でこれから正午頃に向かって上げ潮となる。uenoさんによると上げ潮は島原半島方面から流れてきてこの堤防ではアタリ潮になることが多いそうだ。特に、潮の大きいときがその傾向が強いとのこと。

美味しく食べるために

仕掛けを入れてみると、アタリ潮だ。極力遠投するが、みるみるうちに右手前へと戻ってくる。「uenoさん、アタリ潮ですわ。」まだ仕掛け作りが終わっていないuenoさんに情報を提供。アタリ潮だが、こういう堤防では刻々潮が変わりいつチャンスが来るやもしれない。そのチャンスタイムのために撒き餌は切らさないようにと釣り続けた。2投目から0シブの全遊動のウキがアタリと思われるゆっくりとしたウキの消し込みを見せた。合わせてみるがスバリ。3投目も同じような消し込みが。これもスバリ。今の潮ではどうしてもあわせの角度が悪すぎる。しばらくは我慢の釣りだなとuenoさんを見ると、何と竿を曲げているではないですか。結構引いている。元気な魚だね。釣れたのは、35,6cmのメイタサイズだが、見事本命をゲット。「第1投で釣れたバイ」uenoさん超ご満悦。「チヌ釣りで第1投で釣れたのは初めてバイ」早速、魚をシメにかかっている。
「タナはどれくらいですか。」「竿1本とちょっとバイ」えっ、かなり浅いタナで釣れているね。「3Bの半遊動バイ。仕掛けを回収しようとしたら魚が走ったバイ。」「そっちはアタリ潮じゃあないんですか。」「堤防の先端に回り込む潮で釣れたバイ。」uenoさんの釣り座では、当たってきた潮が堤防の先端をかすめて回り込んだところで喰ってきたとのこと。タナが浅いということ、チヌがハリを飲み込んでいたことを考えると魚の活性が高いことが伺える。
今のうちに何とかしなければ。しかし、どうしても喰わせられない。そのうち先客アングラーとuenoさんがともに1匹ずつ魚を釣りあげた。ますます焦る私。申し訳ないが、uenoさんのとなりで釣らせてもらうことにした。だが、まったく音沙汰なし。3Bの半遊動に変えるが変化無し。これは潮が変わるまで待つしかないと、もとの釣り座にもどった。


海上タクシーで2名の釣り人が

その後、10時頃に海上タクシーでやってきた釣り人が二人、赤灯台と反対側の先端へやってきた以外は、さしたるニュースもなく満潮の潮止まりを迎えた。これまで、uenoさんがここまで4枚、先客アングラーが5枚、私は見事なボウズ。この現実に2日酔いだった私の体が目覚めた。何とかしなければ。ところが、まずいことに風がどんどん強くなるばかりで仕掛けが入らない。私もuenoさんも5Bでそれに対抗。満潮を過ぎ、潮は下げ潮に入るが、上げ潮の残り潮が沖に向かって左に流れている。
午後2時を過ぎた頃から、潮は沖に向かって右に流れ出した。潮と風が反対の方向になったため、仕掛けを入れた後、適度に糸ふけを出せば潮の流れに乗せていっていい感じで馴染んでいく。撒き餌の打ち方もウキの周辺だけにかぶせるのではなく。潮流の上にあたるところに間断なく撒くようにした。潮の流れが堤防に対して平行になり、それとともに風も幾分弱まってきた。仕掛けを3Bのウキに戻し、沈ませながら流していくと、午後3時半ごろに道糸に不自然な動きを感じたので合わせてみるとググッと今日初めての重々しい引きを味わった。コンコンと首を振る動作でチヌを確信した私は、あわてずにチヌが浮いてくるのを待った。


やっとで釣れた48cm

やがて、ぎらりと水面を割ったのは、良型のチヌ。uenoさんに掬ってもらった。「結構大きいですね。」私が釣果のないことを心配してくれていた先客アングラーはこの釣果を喜んでくれた。ずっしりと重量のある48cmのチヌだった。ハリがチヌの上唇を貫通していた。「ありがとうございます。これで家に帰れます。」心配してくれたことに感謝の笑顔を返した。
その後、やはりチヌのあたりは途絶えてしまい、撒き餌がなくなったところで納竿とした。今年も逢えた乗っ込みチヌ。久しぶりに難しい釣りを堪能できたことを湯島の海に感謝しながら、この堤防を後にするのであった。


抜群の魚影を誇る湯島の堤防


今シーズン初のチヌとはいポーズ


メイタ5枚釣ってご満悦のuenoさん


干潮時の回収は大変 ロープが必需品

美しい湯島の情景 またお願いしたいね


この日の竿頭はテトラの釣り人で12,3枚。本日、内側の堤防で50オーバーのチヌが出たそうだ。


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