7/5 誘って喰わせろ 硫黄島

今年は、雨の当たり年?と思えるような雨の降り方だった。九州でもこの梅雨時期に例年の2倍ほどの雨が降ったという。当然、この天候なら、船止めの日が多かった。6月は、太陽を拝めた日はとても少なかった。硫黄島でも、6月の第1週は出たもののあとはすべて時化で黒潮丸も仕事ができなかったそうだ。満を持してuenoさんと釣行を計画していた6月28日もポセイドンは釣り師に釣行許可を与えなかった。「時化続きで仕事になりませんわ。」と肩を落とす船長の姿が携帯電話の向こう側から容易に想像できる状況だった。

 渡船業界に打撃を与えたのは、天候だけではなかった。より深刻なのは、今や海に生きるものにとって死活問題であるガソリンの高騰だ。1Lあたり180円が当たり前。それどころか、年内には200円になるのではないかという。漁師さんたちは、出漁すれば赤字というとんでもない生活を強いられているという。当然、遊漁船業界にもこの値上げは深刻で、料金の値上げで急場をしのいでいる。我々釣り師も1匹1匹を大切に釣る時代がもうそこまできているということだ。何とか瀕死の状態になる前に、海を愛する、魚を愛する釣り師は、遊漁船業界をまもらなければならない。そんなことで、翌週の7月5日、6日と硫黄島への夜釣り第1戦を黒潮丸に託すことにした。この日は、全県下で中体連の大会があり、1人での釣行となった。





天気は曇り時々晴れ、降水確率20パーセント。波高1m。何の不安材料もない状況で黒潮丸に乗り込む。本日の客、17,8名。久しぶりにたくさんの離島のロマンに魅せられた磯釣り師を飲み込んで黒潮丸は枕崎港を午後3時26分に出港した。
 仕事の疲れですぐに熟睡。予定通り90分の航海で、いつものようにエンジン音がスローになった。



最初の渡礁は鵜瀬

最初の渡礁が始まった。鵜瀬である。幸運な釣り師が3名、鵜瀬の南向きのシブダイのポイントに渡礁。そして、鵜瀬のハナレに1名。船は反転し、今度は去年の夏、絶好調だった平瀬の2つのポイントにそれぞれ2名ずつの釣り師が乗り込んでいった。更に、船は反転し、東を目指した。げっ、この方角はやばい!おいらが夏の夜釣りで最も相性が悪い新島に向かっているではありませんか。これまでの硫黄島で最も辛酸をなめさせられた新島への苦手意識がよみがえる。案の定、船は、新島の北エリアに近づいた。ここに乗るのは、なんとネット友達の関ちゃんだった。相方のK野さんも一度は、ここに乗りかけたが、再び船に戻った。ここは、時化た時によく乗せられるところなので、釣り師の間でもあまり人気の場所ではない。今日は、実は南西のうねりが入っているので、船長によると立神などの西磯や地磯は使えないという。その状況を判断しての関ちゃんの好判断だったのだ。
 「Tさんは、コウカイドウは相性悪いからいやでしょう。カマタさん、コウカイドウは初めてだよね。カマタさんはそこでいいですね。」Tさんに聞くと、そのコウカイドウは2回チャレンジして2回ともだめだったそうだ。「潮が入りにくいところなんですよ。狭い釣り座でこの前2人で乗ったんですけど、荷物置いたら狭くて大変でした。」あまり芳しくない情報を教えてくれたTさんは迷ったあげく浅瀬に乗ることになった。





シブの良型の実績が高い洞窟


浅瀬に近づいて驚いた。南西からのうねりが潮波と一緒になり、三角波を形成していた。何とか踏ん張ってTさんを渡礁させた黒潮丸。今度は、本当南側に位置するタジロに2名の釣り師を。2.5mはあろうかという波をかいくぐり、2名の釣り師を洞窟へ。そして、ゆかいなNさん親子を人気瀬のみゆきに渡礁させた。冬場にのったヒレ瀬は波の下であった。それくらい南側は時化ていた。

その後、立神とミジメ瀬の間をスルーした黒潮丸はK野さんを北のタナらしき場所に渡礁させると、最後にやっとで自分の番が回ってきた。船は、入り江になっている奥にゆっくりと近づいている。どこに釣り座があるのだろう。ホースヘッドをつけた。えっ、どうやってのぼるの?足を置く場所があり、そこから向こう側にある磯壁を手でつかんで上がらなければならなかった。これほど苦労する渡礁は初めてだった。

「狭いから、気をつけて。この手前がポイント。シブやアカジョウが釣れるよ。6時半に迎えに来ます。







つけ餌の準備はこれでO



本当に狭い釣り座だ。荷物を置くともう寝る場所もない。早速準備に取りかかった。夜の帳が下りようとしている。美しい夕焼け空を魚にビールを味わう。至福の時だ。




9時半頃満潮を迎える中潮。上げ潮の時がチャンスと、仕掛けを打ち返す。アカジョウのアタリはなく、夜を迎えた。潮が左にうごきだした。潮の動きに呼応するように魚からの反応が出始めた。2回ほど、道糸が走るが合わせがうまくいかないのか、喰わせ切れなかった。この潮の動く時間帯に30cmほどのシブを釣ってはいたが、どうしても釣れない。そして、アタリが途絶え始め眠気が襲ってきた頃だった。いつものように小刻みなあたりがあったと思いきや、一気に道糸が走った。今度はやる気のある入り方だ。竿を何とか立てることに成功。かなりの重量感だ。よっしゃあ、ようやく魚をとらえたぞ。ところが、喰わせた魚は、釣り師の予想をはるかに超えたパワーを持っていた。そいつは、左の根へ一気に走り出したのだ。両軸リールのスプールから道糸が出て行く。ドラグを緩めにしていたので、道糸の走りが止まらない。この走りを何とか止めさえすれば・・・。そころが、相手の方が1枚も2枚の上だった。いきなりふっと、竿へのトルクは消えた。どうやら道糸からいってしまったらしい。13m位のところで道糸が根に触れてしまったようだ。残念、痛恨のバラシ。5kgくらいのやつではない。それ以上だ。この7月初旬は、良型の魚を釣る絶好のチャンス。メモリアルフィッシュかと思っただけに悔やまれる。この後、潮が止まるとともにアタリは途絶え、再び急速に睡魔が襲ってきて、2時間ほど仮眠してしまった。

 時計を見ると、午前1時半を過ぎていた。ここまで、30cmほどのシブ1枚。このままでは帰れない。必死の形相で撒き餌をし、アタリを待った。午前3時を過ぎると、潮がさっきの好潮と同じく沖に向かって左に走り出した。よしっ、チャンス到来。案の定、魚からのたよりが頻繁に届くようになった。このときも2回ほど道糸が走るが喰わせ切れなかった。焦りが見えた頃、再び道糸が走った。竿を立てるとかなりの重量感。久しぶりの魚信だ。のがしてなるものか。慎重に浮かせにかかる。始めは強いアタリだったが、浮かせにかかるとやつはあっさりと水面をわった。石鯛竿でブリ上げると、残念ながら準本命の黒点だった。しかし、クロホシフエダイでは、メモリアルフィッシュの53cm、2.15kg。大切にクーラーに納めた。

 よしっ、次なる獲物を求めて仕掛けを打ち返すも、この後、潮が止まってしまい、魚を捕らえることはできなかった。





上はこのような断崖絶壁


ありがとうコウカイドウ


港に帰って、釣りを振り返った。平瀬、鵜瀬ではかなり釣れていた。新島の関ちゃんも6、7kgのフエフキを筆頭にシブを好釣り。浅瀬のTさんは、フエフキがめだった釣果。K野さんやNさん親子も不本意な釣りだったそうだ。Nさんは、「うねりで2回流されたよ。最後は、竿ケースが流されて船に拾ってもらったよ。」全身ずぶ濡れになった理由をこのように語ってくれた。

 この日の釣り頭のNさんから、今日の釣りでは、誘いが大切であったことと、生タコの切り身が有効であったことを教えてもらった。ということは、コウカイドウでも誘いなどの工夫で好釣りが可能であったということが言えるのではないか。ブッコミは向こう合わせの釣りと勝手な解釈で工夫を忘れたことに最大の惨敗の理由があるように思えた。ブッコミ釣りの奥深さを改めて知ることができた今回の釣行。悔しさとともに早くも心は次回の釣行へと向かっていた。それを証拠に、ライフジャケットを枕崎の港に置いてきてしまったのだった。



みんな釣れている中でのくやしい貧果


また来るよ 垂涎の地 硫黄島


鵜瀬のハナレの好釣果
    スジアラ アカジョウ シブダイの揃い踏み




一応メモリアルフィッシュ 53cm2.15kg


本日の料理 いただいたトコブシが一番美味


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