8/21 2連続途中回収 野間池

 「釣りに行こい」モホロビチッチ不連続スケジュールで、夏季休業中に一度も釣行できなかった師匠uenoさんが、鼻息も荒く誘ってきた。問題は、どこに行くかだ。予め、22日〜23日の夜釣りにと硫黄島に予約を入れていたが、このところの低気圧の発生、ゲリラ雨のおかげで、電話口の向こうにいるuenoさんも不安一杯の面持ちだ。案の定、低気圧の発生で西風が強く、天気予報も雨。「カマタさん、だめですわ」と黒潮丸の船長の寂しげな一言で硫黄島中止が決定。

 ここで、uenoさんが動いた。「野間池にしょい。21日から行くバイ。」薩摩半島は離島に比べ低気圧の影響が少ないだろうという判断からだ。「野間池はO.Kげな。11時半集合な。」数ある釣り場の中で、uenoさんが野間池を選んだもにはわけがある。実は7月の野間池の夜釣りで、フエフキの58cm、60cm、良型シブダイ4匹などをゲット。ご満悦の釣りを展開し、朝6時までの予定だったのに満足したのか夜中の12時の回収便に乗って帰ったという。「やっぱ、夜釣りはふかせバイ。フエフキの連続であたってきてなあ。面白かったバイ。」uenoさんは、フカセ釣りにかなりのこだわりを持つアングラーである。フカセ釣りが面白いと思えば、四季折々の様々な釣りモノがあるにもかかわらずフカセ釣りを行う。「uenoさん、船釣り行きましょう。」と誘っても、フカセ釣りでなければ目もくれない。こんなこだわりに魚たちも敬意を表していい釣果を与えているようだ。そのuenoさんに私も敬意を表して今回の釣りでは、フカセ1本で行こうと思うのだった。

 8月21日、大陸からの低気圧の影響で南西の風が強く、波高1mの予報で出ますという船長の言葉はあったものの不安は消えなかった。途中、大浦にある釣具店「釣友」で情報を収集。



野間池、秋目などの釣り情報に詳しい「釣友」

「今日は、西風が強いから、表番でしょう。明日は雨の予報だから気をつけたほうがいいですよ。」ここ野間池では4ハイの渡船があり、公平を期するために瀬割を決めている。我々がお世話になる第3福丸は、本来は裏々4番だが、風の影響で南西に位置する3番、4番の瀬割の磯は使えないだろうということであった。「釣れとっですか。」せっかちなuenoさんが、いきなり核心に迫る問いを行う。「あんまり出とらんですね。今年はイサキがよくないですね。」と渋い表情。ここ最近、あまり釣れていないそうだ。まあ、こちらとしては、釣りができるだけでも有り難いから気にしないけどね。

 ここで、メインの餌であるボイルを購入して、野間池港へ向かった。釣り客は我々と底物のもう一組(2名)。荷物を船に積み込み港を出発。2組のため冬場のクロ釣りの時期に行われるじゃんけんはないようだ。


静かな野間池港

船は、表番に向かっている。ここは、釣り雑誌で何度も登場する名礁である。口太、尾長、イサキ、底物なんでもこい。また、夏場の夜釣りのシブダイ、フエフキダイにも定評がある。水深があり潮きれがいいためかアラのポイントとしても有名である。「赤瀬にお願いします」と底物の2人が船長に交渉している。「今日は、ワキガ瀬に」と船長。この2つとも釣り雑誌ではお馴染みの名礁。言葉を聞くだけで身震いがしてくる。早速、uenoさんが動いた。「どこにのらるっとですかね。」「赤瀬に」


憧れのフィールドが目の前に

船は沖磯群を南から回り込むようにしてワキガ瀬に向かっている。「これがワキガ瀬か」その名礁は釣り人の渡礁を拒むように円錐形をしていて、どこから渡礁すればいいのかわからない。「おとろしかなあ(恐ろしいなあ)」uenoさんもこの奇巌城のような磯を注意深く見つめている。船は、無造作にワキガ瀬につけた。「えっ、どこに足をかけるの?」というくらいの狭い足場に1人の釣り人が飛び乗った。荷物を受け取ると、奇巌城に張り付くように重い荷物を背負いながら、よじ登っていく。ちょっとでもバランスをくずせば最悪落下という惨事に至る。渡礁に緊張感が走る。2人目が飛び乗り、また荷物を受け取る。2名の方は常連さんのようで、動作もてきぱきしていて見事だ。


名礁「ワキガ瀬」

今度は自分たちの番である。やはりごつごつした巌に船をつけた。すばやく、飛び移る。ここもワキガ瀬同様、足場の悪いところだ。荷物を受け取り、船長のアドバイスを待った。「上げ潮が右に流れるから、そこの高いところから釣って、裏の水道もいいよ」時計を見ると4時20分。ここから夕マズメの釣りの準備と、夜釣りの準備。磯の全体像をつかむ作業に入った。船長によれば、タナは、竿3本から4本とのこと。さすがに底物のポイントだ。深いっていうか深すぎる。これは難しい釣りになりそうだ。ミノーとジグを引いて、青物を回遊を調べた後、早速夕マズメの釣りを始めることにした。

 釣り初めて息を呑んだ。何か赤いモノが瀬際で動いている。この赤瀬の釣り座は6m以上の高い位置にあり、水中の様子がよく見える。瀬際で餌を探しているのは、おそらく、アカジョウ、スジアラなどの根魚だろう。群青色の海へ仕掛けを入れる。ウキが早くも紫紺の海へと消し込まれる。早くも魚からの反応が届いた。最初に、訪問してくれたのは、イスズミだ。硫黄島と違ってかわいいサイズだ。海へお帰り願って第2投。これもウキが消し込んだ。竿先を叩くお馴染みの引きを味わいながら、浮かせると事件は起こった。その浮かせたイスズミめがけて茶色に白っぽい縞模様の入った怪物が突進してきたのである。目測だが、10キロは逢った模様。トゲのような鋭い背びれも確認した。この怪物は紛れもなくアラである。この瀬の食物連鎖の頂点に立つこの魚がいるということは、そのアラが生きていくだけの食料がそこにあると言うことである。野間池の魚影の濃さを改めて感じさせられた出来事だった。いけすに入っていないアラを見たのは初めてだった。さっき秒殺で仕掛けをとばしていったのはこいつらかも。


朝6時回収です


名礁 赤瀬に渡礁


モチベーション高いuenoさん

いかんいかん。そんな対象魚でもない魚に感動している暇はない。自分の釣りに集中しなくちゃ。ところが、今日の潮はどうもおかしい。表層は流れているようなのだが、底潮は全く違う動きをしている。手前に当たってくるのだ。おかげで、仕掛けが手前の瀬に引っかかり、ウキを1個ロストしてしまった。uenoさんも度重なる根掛かりに閉口していた。「潮のおかしかなあ」

 夜の帳がおりて、夜釣りへと突入。今日は、午後9時50分満潮の中潮最終日の潮回り。潮がいけば、かなりの釣果が期待できるだけに、良潮がくるまで我慢の釣りになりそうである。潮がいかない時間帯が続き、エサトリのアミフエフキ、ハタンポ、マツカサなどを時々釣るというつまらない展開が続いた。そんな中、uenoさんが、一瞬潮が動いた時間帯を逃さず、40cmのシブダイをゲット。そして、下げに入った12時ごろから、良潮が入り魚の活性があがることが予想されていた。早速、uenoさんが44cmのクロを釣り上げた。私も魚の当たりをとらえ、獲物はツバメウオだったものの期待できる時合いの訪れを感じていた。よしっ、これからだと気合いを入れた直後だった。

「そのときなの、もしもし君たち帰りなさいと♪」というピンクレディーの歌のように福丸がやってきた。「朝方にかけて、時化てくる予報がでたので、回収します。準備してください。」がっくり!これからだというのに。しかし、船長の言葉は絶対である。すぐに片付けに入った。


無念の途中回収 肩を落とすuenoさん

これで2連続途中回収。こちらがどんなに念じても自然が応えてくれなければ、釣果は得られないことを感じさせられた今回の釣り。無念さを抱えながら、中途半端な夜中の1時港を出発という車の中で、次回こそは途中回収にならないようにと念じるのであった。


臭いがきつく うまくなかったツバメウオ

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