2/15 磯釣りなら離島へ行こう 硫黄島

 11日の硫黄島釣行さめやらぬ、週末14、15日は、11日の瀬々野浦であたりが1回しかなかったという惨敗をくらって再起をめざすuenoさんとのお泊まり釣行の予定だった。しかし、1月比べれば多少穏やかになったとはいえ、今は2月。週末の度に時化模様の展開は相変わらずで、14日は春一番のなごりで4mのち1.5mで船止め。15日は、2mのち2.5mという時化気味の予報の中、黒潮丸へ確認のрすると。「今思案中なんですよ。2mから2.5mと言うとるからねえ。今日は石鯛釣りが10人いるんですよ。まあ、上物なら新島とか、みゆきとかのれるところがあるけれど、底物はできるところがないんでねえ。あと1時間まってくださいよ。」という回答。祈るような気持ちでр待った。「カマタさん?一応出ることにしましたわ。5時の予報が変わらなかったら、3時集合です。」ヒャッホー!離島の磯釣り本格シーズン到来を告げる梅の花が満開になった時期に自宅待機なんて拷問に近い。このところ本来の調子が出ていない硫黄島だが、前回辛酸をなめさせられた「みゆき」に乗せてもらえるという。否が応でもボルテージはあがった。


離島の釣りを好演出してくれる高速船黒潮丸

午後11時半、ueno宅集合。人吉ICから九州自動車道を南へ下り、枕崎港についたのが午前2時過ぎ。早くも10名ほどの磯釣り師が戦闘服に着替えたり、荷物を整理したり、たばこを吸って緊張を静めたりと、いつもの離島便への情景が繰り広げられていた。

 15日(日)下り中潮4日目。硫黄島の満潮は、午前10時半ごろ。下げ潮のポイントである「みゆき」では、納竿間際に本命の下げ潮が流れるかどうかという潮回り。決して好条件とは言えないが、我々の釣行日は休日の日だ。贅沢を言っている場合ではない。

 程なく船長が軽トラックで登場。クーラーに氷を遠慮がちに入れ、荷物を船内に運んだ。本日の客は15,6名。その4分の3ほどの底物師と残りの上物師を飲み込んだ船は、枕崎港をゆっくりと進んでいる。沖に出た時が勝負。はたして、今日の海の様子はどうだろう。船底に寝ていれば、これまでの経験で、凪か時化模様なのかがある程度予想できる。

 エンジンが高速に切り替わった。船底にぶつかる波の振動を体全体で感じてみる。今日は大丈夫ではないかな。安堵感とともに心地よい睡魔が襲ってきた。魚の夢を見ながら高速船にゆられること90分きっかりで硫黄島周辺に到着した。「今日は平瀬からの渡礁ですよ。」船長がマイクで釣り師の動きを指示している。凪の日しか乗れない尾長、石鯛の1級ポイントである平瀬に釣り人を乗せるということは、今日の海の状況はそれほど深刻ではないようだ。「満潮近くになったら迎えに来ますから」うねりがあるようだ。船は反転し、硫黄島の中でも尾長、石鯛の1級磯「鵜瀬」に近づいた。底物師を竹島側に2名、硫黄島本島向きに3名が渡礁。釣り師のヘッドライトが初夏に乱舞する蛍のように暗闇の中を躍動している。みんな心の中は60を超えるデカ尾長に向かっているのだろう。

 船は、大方の予想通り北風にめっぽう強い好ポイント新島につけた。関ちゃんさんが上礁したもよう。もうすでに10名の釣り師を夢ステージへと送り届けた。次なるポイントは、底物の名礁、硫黄島南東部のハナレ瀬「浅瀬」。2名の底物師が浅瀬の斜面を駆け上がった。さあ、いよいよ我々の番だ。船の針路は西にとっている。右に硫黄島港、集落の灯りがぼんやりとともっている。右側の黒い島影が月明かりを遮るようになると、エンジンがスローになった。サーチライトが正面の巨巌を照らしている。時化に強く、尾長、クロの隠れた名礁「みゆき瀬」が忽然と現れた。迅速に荷物をホースヘッド付近にもっていく。船を着ける部分は低く、渡礁に神経を使うこの磯に、慎重に降り立つ。荷物を受け取る。「潮があがってくるから、急いで荷物を上げて」船長がすぐに安全指導。ここはうねりがあると、高波で荷物が流される危険があるところ。以前、夜釣りシーズンにご一緒した方が、荷物が流されてやむなく水泳をしたといわれていただけに、我々もうすぐに行動した。

 クーラーを足場にして、2mほどの上の段に上り、荷物を上げてようやく夜尾長の準備を始めたのが、午前5時40分頃。急げ、時間がないぞ。迫り来る緊張感の中、仕掛け作りに入った。竿はダイワ幻覇王石鯛竿に道糸20号、ハリスはワイヤー37番。喰わせる仕掛けではなく、掛けたら絶対とる選択をした。午前5時50分に第1投。夜尾長のポイントは船着け横のワンド。前回のようなサラシ真っ白という状況ではなく、釣りやすい。

 どきどきの夜釣り。何の前触れもなくいきなりuenoさんが魚を掛けた。やつは、いきなり右の沈み瀬へ一直線に横走り。あの5号竿の曲がりからして、掛けた魚はただ者ではなさそうだ。「やりましたね。頑張れ!」昨年の野間池の夜釣りで58cmのフエフキダイを1人で玉網かけまでして仕留めているuenoさんが5号竿の剛力を使って強引にやつとの距離を詰める。今度はやつは一気に手前と突っ込みを見せる。間違いない、尾長だ。ついに掛けたんだ。やったね、uenoさん。幾度のなく突っ込みを見せる相手を慎重にいなしながら浮かせ、強引にブリ上げた。白く光らないぞ。やっぱり、尾長だ。「uenoさん、おめでとう。尾長でしょう。」2キロを超えた茶色の魚にライトを当てるuenoさん。突然、ずっこけるuenoさん。ピチピチ跳ねるその魚の尾ひれの根本には3つの筋が見えた。「でた〜、サンノジなあ」こいつの引きは、尾長そっくりだ。「持ち帰って喰ったらうまいかもしれんですよ」と私のフォローに耳を傾ける力はuenoさんには残っていなかった。今回の夜釣りで唯一の見せ場は,夜釣り終了の合図となったのだった。しかし、これはこれからuenoさんにふりかかる不幸の序章に過ぎなかったのだ。


夜尾長のポイント この足下に尾長の巣があるらしい

さあ、夜釣りの後は、口太ねらい。問題は釣り座をどうするかということ。uenoさんには申し訳ないが、彼には前回私が8枚釣った釣り座で勝負してもらうことにした。今回は私が前回乗れなかった一番奥の釣り座で釣らせてもらうことにした。「昼はどこで釣っとな」と聞いてきたuenoさんに、「あそこですよ」と前回の私の釣り座を指さす。「えっ、あそこな。どぎゃんして登っとな」急な斜面を見て驚くuenoさん。「大丈夫ですよ、uenoさん、足をかけるところがちゃんとありますから」と、前回Hさんから上り方を教えてもらった通りにuenoさんに上り方を伝えた。安堵するuenoさん。「おっ、ここは釣りよかな」よかったuenoさんはこの釣り座を気に入ってくれたようだ。

 すかさずポイントを説明。「足下に溝があるでしょう。そこに仕掛けを入れるんですよ。」「えっ、あんな狭いところにな。」目が点になるuenoさん。無理もない。私も初めて説明を受けたときは、信じられなかった。「ワレの下はオーバーハングになっていて、クロが浮いてくるんですよ。でも少しでもワレの外に出てしまうとイスズミにつかまりますよ。」と一通り説明。


4mほどのこの崖をのぼるとuenoさんの釣り座に

半信半疑で仕掛け作りを始めるuenoさんを尻目に、今度は自分の釣り座のチェックに行くことにした。この「みゆき」のクロのポイントは3つある。1つは一番手前のuenoさんが構えた釣り座。真ん中の赤い岩のポイント。そして、一番実績が高いと言われる奥の釣り座である。私は、今回は前回Hさんが入れ食いを演じたその奥のポイントに入らせてもらうことにした。uenoさんには悪いが、その入れ食いポイントを知りたくて竿とバッカンとドンゴロスと一緒に道なき岩をのぼり下った。


私の釣り座へはまずこの崖をよじ登る


あのバッカンが今回の釣り座 ちょっと危険


このワレに撒き餌して魚を寄せる

まず、夜釣りポイントの壁から下の段におりる。丁度uenoさんの釣り座の後ろの地下を通るように。途中で壁が切れていて、そこから満潮時には潮が入ってくるようになっているので、大潮の満潮時は要注意だ。そこを過ぎる自分の背丈ほどの崖があり、そこを登る。大きなゴロタ石3個伝うと、最後の難関が待っている。まるでホタテの貝殻を立てたような岩があり、そのてっぺんをつたって行かなければ平らな釣り座へ到達することはできない。このホタテ岩の前に来て愕然とした。高所恐怖症の自分にこのホタテ岩を登ることができるのだろうか。もとの夜釣り尾長ポイントに戻ったとしても、イスズミやソウシハギの餌食になることは目に見えている。さあ、どうするどうする。

 しばらく考えた結論は、釣りバカ精神の勝ち。慎重にゆっくりはうようにして釣り座に向かえばいいということだった。かっこわるくてもいい。安全第一だと時間がかかってやっとで釣り座に到着。汗だくだ。しかし、何か偉業を成し遂げたような妙な達成感がある。釣り座に立ってポイントを確認する。足下の左側にワレがある。しめしめ、ここに撒き餌をすればいいのだな。このサラシができるワレの下にオーバーハングがあることは事前情報で確認済みだ。

 時計を見ると午前7時半を過ぎていた。さあ、仕掛けを作ろう。予めセットしておいた竿ダイワマークドライ遠投3号ー35に、道糸5号、ハリス3号を1ヒロとる。ウキはAZで買った380円の3B。半遊動仕掛けとし、ウエイトスイベルの上に3Bと2Bのガン玉、ハリスにG3の段うちと口錘としてG7を取り付けた。ウキを完全に静めて穂先であたりをとる作戦。釣り座の条件から、玉網かけなくてもすむように竿は3号とした。ハリはグレバリ7号を基本とした。

 満潮が10時半頃。みゆき瀬が下げのポイントというのにはわけがある。硫黄島の上げ潮は東から西へと本流が動くのが基本。ところが、みゆき瀬は永良部崎の半島で上げ潮を遮られる格好となる。このため沖から潮が入りにくくなる。下げ潮はその逆でカメクレ方面から下げ潮がダイレクトに入ってくる。これが、「みゆき瀬」が下げ潮のポイントになる所以ではないだろうか。

 しばらく撒き餌をして仕掛けを瀬際に入れた。潮はあまり動いていない。上げ潮だし厳しいだろうなとウキを見つめていると、いきなり視界から消えた。道糸が走る。小刻みに竿をたたくその魚は、予想通り硫黄島で最も数が多いのではないかというイスズミだった。君には用はないんだよと海へお帰り願う。もう喰ってくるんじゃないよ。背中に殺気を感じ、後ろを振り向くとuenoさんも魚とのやりとりを演じていた。ブリあげた魚はやはりイスズミだった。今日は一体何匹のイスズミくんと出合うんだろう。苦笑いしながら釣り続けた。


イスとも知らずに頑張るuenoさん

8時過ぎ港方面からエンジン音が聞こえてきた。黒潮丸が見回りにやってきたのだ。「カマタさん、どう、釣れてる?」ダメ、まだのサインを送る。「新島に変わろうか?」おいおいもう瀬変わりかよ。まだ釣り始めて1時間もたっていないじゃん。結果をくだすには早すぎる。上げ潮は本命潮ではないことを心配しての船長の配慮だったが、ここで粘る意思表示をすることに。

 さあ、釣りに集中だ。後ろのuenoさんは次々と魚を掛けている。気が気でないが、「でたー」「またこいつか」「イスっ」とイスズミを中心とした外道天国を味わっているようだった。こちらは、時折イスズミが竿を曲げるものの本命のクロを喰わせることすらできていない。不安がよぎったその時、道糸が一気に走ってやりとりとなった。竿先をたたく動作でまたイスかと思ったやつは、釣り座の左側のワレに一直線。竿を右に傾けて魚の突進を止める。3号竿の剛力でやつはあきらめたのか反転し、今度は足下への突っ込みをみせる。しかし、3号竿での攻防は釣り師の盤石相撲だ。あっさりと水面を割ったのは、待ちこがれていた良型の地グロ。一気にブリ上げる。40オーバーやつはすでにのっこみ状態で白子を吹いていた。時計を見ると8時半。ここで粘ってよかったかな。ほっと胸をなでおろす。「おっ、釣れたバイな。タナは?ガン玉打ったね。」外道天国に苦しむuenoさんは、早くも情報収集だ。その後、キロクラスの地グロを2枚追加した。


40オーバーの地グロが待っていてくれた


みゆき瀬は午前中はほぼ日陰となる


渡りグロも歓迎してくれた

今日の海況は、前回と同じようにうねりはあるのだが、違うのはサラシができてはすぐにきえてしまうことだ。中潮の最終日ということで、また上げ潮ということで潮があまり動いていないことが原因のようだ。潮はゆるやかに左の本島の壁にぶつかって潮目を形成している。そこに餌がたまっていることが容易に想像できる。瀬際だけではなく、その潮目にも仕掛けを入れてみると2回ほど強いあたり見舞われた。残念ながらバラシに終わる。ハリをみるとハリ先が外側に曲げられていた。デカ番のイスズミの堅い歯にしてやられたかと思っていた。
 すると、3回目のするどい当たりが襲う。この獲物は変だ。イスにしては引きがおかしい。右に左に暴れまくる。君はだれだい。浮いてきた魚の鋭角的な尾ひれを持っていた。魚体は細長い。ムロアジにしてはでかすぎる。もしかして、ヒラ・・。と暴れる魚がやっとで弱ったところで、3号竿の力を信じブリ上げた。ミサイルのように飛んできたその魚の名はヒラマサだった。こいつだったのか。みゆきは青物が回ってくることでも有名だが、思いがけない高級魚の訪問に思わず口元がほころんだ。

 その後2枚追加して計5枚となったところで、撒き餌をつくりなおした。ほどなく、黒潮丸が2回目の見回りにやってきた。「どう、釣れてる?ここでねばるね。12時に迎えに来ますから」午後から風が強くなり、安全を重視して今回も早めの回収となるようだ。撒き餌をつくりながら、uenoさんの釣りを見学した。丁度根掛かり中だった。「あ〜」無情にもウキが自由なる航海へと旅立とうとしている。今日はこれで2個目のウキの損失だという。細長い溝に仕掛けを入れなければならないし、ガン玉をつけているのでどうしても根掛かりしやすくなるようだ。「ここには、クロはおらんバイ。この溝で釣ってもイスのおったもん」uenoさんのぼやきの数がだんだんふえていく。相変わらずの外道天国にかなり苦しめられているようだ。私が釣っていた時は本命の下げ潮だったせいか小振りながらクロが8枚ほど釣れた。しかし、今回は上げ潮でしかも潮が動かない条件。外道天国になるにも無理はなかった。

 こちらはあたりが多く、おもしろい。確かにイスズミは多いが、その合間にクロがやってきてくれる。本命でない上げ潮でも5枚のクロを釣ることができた。この場所には無数のクロがいるようだ。満潮を過ぎてすぐに2枚追加し、下げに入って潮が動きだしたところで、3枚追加して10枚を数えた。折角本命潮になり食いがこれからというところで無情のタイムアップ。ウキウキ気分でてきぱきと午前11時半に片付けに入った。


回収の船を待つuenoさん


海の恵みをありがとう みゆき瀬

uenoさんは、硫黄島初めてのボウズ。色々手をかえ品を変え頑張ってきたが、条件が悪すぎたようだった。「おら、もうここはよかバイ」肩を落とすuenoさんを見ながら罪悪感がわき上がってきた。uenoさんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。回収の船に乗り込むと、「釣れましたか」の船長の問いに、uenoさん、「ボウズ」と答える。船長の声が私に向けられた。「カマタさん、uenoさんにちゃんと釣り方教えないとだめじゃないの」

 枕崎港に帰って、今回の釣りを振り返った。今日は、ここのところまれに見る低水温状態だったそうで、枕崎の鰹漁師がボウズをくらうほどの悪条件だったそうな。期待の上げ潮も冷たい潮が流れ、石鯛組は1枚か2枚という厳しい結果に。上物期待の新島もコッパメジナだらけだったという。その中でもみゆきは潮の動きは良くなかったものの、水温低下のおかげでクロの食いが上げ潮でもたったおかげで好釣果を得ることができた。ただ誤算は、uenoさんのボウズだった。船長によく聞いてみると、私の釣り座とuenoさんの釣り座とでは釣り方が違っていたことだ。私のところはふかせでも釣れるし、通常の瀬際釣りでも対応できる。しかし、uenoさんの釣り座では、通常の仕掛けでは通用しない。ウキを完全に空中に浮かせて釣らなければ、イスズミにつかまるということだった。錘は何と5号。

 「あそこは、ひるでも尾長はでるよ。数年前、そこで、68センチの尾長がでたよ。それも昼に。知り合いの漁師が硫黄島に潜ったんだそうだが、みゆきのオーバーハングが一番尾長がいたそうなんだよ。言ってたよ。あそこは(みゆき瀬)尾長の巣だって。」こんな話を船長が続けてくれたので、uenoさんの機嫌も何とかもどってきた。「今度は、uenoさんが、奥の釣り座で釣ってください。リベンジしましょうよ」みゆき瀬のクロはまだまだ釣れるようだ。撒き餌を続けるとおびただしい数のクロの魚影が確認できたからだ。

 硫黄島の裏エースとも言うべき「みゆき瀬」の実力を体験できた今回の釣行。帰りの車中では、早くも次回のリベンジに向けて、釣り方に関する話題で盛り上がるのであった。

 ああ、もうみゆきなしの人生なんて考えられない


クロ10枚(半分は40オーバー)ヒラス61cmのおまけ付き


ヒラスの造り 一晩おいたらあま〜い最高♪


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