10/11 秋のシブダイ

台風18号が日本列島を縦断した後、さわやかな秋空がやってきた。10月の3連休は何としても釣りに行きたいところだが、「kamataさん、予約が少なくてね、uenoさんも誘ってみてください。」と黒潮丸の船長がSOSを。9月に海に生きる男たちを悩ませた流木問題は、渡船業界をも疲弊させるに十分なものだった。ずっと、海に出られない日が続いた久しぶりの硫黄島釣行だった9月26日、27日は、まずまずの釣果だったとか。黒潮丸としてもこの3連休はなんとしても船を出したい算段だったであろう。うまい具合に10日からの夜釣りは客が入ったとのこと。ところが、10日はどうしても都合がつかず、11日からの夜釣りしかできない。uenoさんも10日は稲刈りでだめということでおいらとの利害が一致した。善は急げだ。この朗報を船長に伝えると、「わかりました。出港できますよ。この前は立神が結構よかったよ。2時に集合です」


夜釣りののんびりとした出船風景

10月と言えば、もう昼釣りの時期だが、ここは硫黄島。水温は依然28度あたりでまだまだ夜釣りシーズンというところ。本日の離島戦士は船釣り3名、磯が4組6名という布陣だ。「朝、携帯を落としてねえ。1時にやっとNTTからこっちに戻ってきたよ。」船長のテンションの高さは相変わらずだ。
 
 午後2時35分に黒潮丸は枕崎港を離れた。波高1mの予報にしてはゆれる船内で待つこと90分、あっという間に午後4時過ぎに、いつものように竹島ノ鵜瀬の前でエンジンがスローに。「kamataさんどうします。昨日、鵜瀬が6,7枚釣れて一番よかったよ。」でたあ、船長のこの言葉。もう気持ちは立神に行っていたのにこのセリフ。まようじゃないですか。結局、uenoさんが苦手意識を持つ立神を振り切り、鵜瀬に浮気することにした。


昨日一番よかったところだよ 7時回収ね

干潮が午後6時半で、うまいことに夜釣りを始めるころ、本命の上げ潮が流れる小潮回り。これで鵜瀬は3回目だが、シブダイの釣果はすべて上げ潮だった。夜中までがチャンスタイムとなる展開だ。


上げ潮と下げ潮の撒き餌の位置を確認中


下げ潮の釣り座でアカジョウねらい


餌取り地獄 サンマのかだらもぼろぼろだ


下げ潮の釣り座でアカジョウねらいで魚から無視された後、暗くなってすぐuenoさんが動いた。「さあ、釣ろい」と早速釣り始める。完全に暗くなってからと声をかけようとするやいなや、「うおーっ」と雄たけびをあげて、いきなり第1投で35,6cmのシブダイをゲット。こんなの見せられちゃたまらない。早速、おいらも参戦した。

ところが、魚のやる気を感じたのはこの時だけで、二人とも当たりはあるものの喰わせきれない悔しい時間だけが過ぎた。午後7時半ごろようやく、キロクラスの本命シブダイを誘って喰わせ、ぶり上げようとしたが、右側が思いのほか高く、ぶり上げきれず、魚は壁に激突。ハリが外れたらしく、そのままオートリリースとなった。

 この失態が悪夢の前兆でなければいいが。案の定、時間の経過とともに魚からの便りは滞り、満潮潮どまりを迎えた。ここまで、uenoさんの1.5kgのコショウダイとクロホシフエダイ、かわいいヨスジフエダイが釣れただけで、おいらは坊主街道をつきすすんでいた。

 釣れないいらいらは悪循環となり、ついには根掛かり解消作業中に愛する石鯛竿「幻覇王」の穂先が「ボキッ」と鈍い音とともに折れてしまったのだった。矢折れ刀尽きた感だ。スーパーサブの石鯛竿はuenoさんが使っているし、もうブッコミはできない。離島に来てのこの失態は悔やんでも悔やみきれない。15分ほど、星空を茫然と眺めることしかできなかった。

 気持ちを切り替えたとき、気が付いたら、5号竿を手にしていた。この場所でフカセ釣りは釣れる気がしないが、折角きたんだもの。このまま、帰るわけにはいかない。下げ潮が走りだした夜中の12時半ごろ、2号の電気ウキによるフカセ釣りを始めることにした。

 撒き餌がたまるだろう場所に仕掛けを入れ、フカセ釣りというよりもミャク釣りに近い探り方で、魚信を待った。やっぱり無理かなとあきらめかけた午前1時過ぎ、何の前触れもなく、道糸が一気に走り、竿が絞り込まれた。明らかに本命と言える当たりだ。浮いてきたのは、本命の37cmのシブダイ。あきらめかけただけに、この1尾は本当にうれしかった。


あきらめかけた時のこの魚はとてもうれしかった



君はお呼びでないよ


 しかし、下げ潮がきれていたのはここまでで、後は、外道のオンパレードで朝を迎えた。

 午前7時に黒潮丸が迎えにきた。「kamataさん釣れましたか。」「2人で4枚」船長ずっこける。いつものように船長を裏切るおいらたち。「水温も高いし、結構いい上げ潮が流れてたんだけどね。」しかたがない、腕が悪いんだもの。


これからアカジョウのゴールデンタイムなのに


美しい鵜瀬の夜明け 右が新島 左が竹島が


釣れましたかあ


ありがとう 鵜瀬


かなしい釣果


uenoさんの釣果

 肩を落としながら船に乗って枕崎に帰った。平瀬の高場の釣り師が、シブダイの2キロオーバーを6,7枚釣っていた。「昨日は2枚だったから、やめといたらといったんだけどね。そしたらあの釣果。やっぱり釣り方が大事だな。」と船長。その言葉はそっくり自分に帰ってきた。そして、振り返ると再び枕崎おさかなセンターのモニュメントが語りかけてきたのだった。


「きばらん海、かまちゃん!」


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