1/23 釣り場選択について考える 上甑里

土曜日のバドミントン大会の引率から帰り自宅に帰った時だった。

ふと携帯の着信履歴を見ると、師匠uenoさんからのものだった。折り返し連絡すると、
 
「甑島行きの船が出るバイ。おらもうえさバ混ぜたバイ」
 
と電話口からもアドレナリンが噴出しているのがわかるくらいのハイテンションでまくしたてた。下り中潮3日目。波高1mという予報は1月になって初めてではないかというべた凪予報。行き先は、上甑里。このところ絶好調を維持している里。16度台まで水温が下がっているが、かなり活発にクロが喰っているという。自分は、そんな時でもできればホームグラウンドでと考える人だが、uenoさんは違う。今釣れているところにと考える人だ。確かに釣れているところへ行くのは大切なことだが、釣れているポイントに乗れるという保証はない。だから、ボクはあまり釣れてなくてものんびり釣り慣れたところで竿を出したいと願う方だ。
 
「kamataさん、里はかなり釣れよるげな。里に行こい!(行こう)」
 
師匠の言葉は絶対だ。ここは師匠の考えに従おう。実は自分にとって里はあまり相性のよくない釣り場だ。釣れているといって出撃すると、たいてい水温が急に下がってだめだったなんてことが常だった。まあ、腕も悪いことだしだめでもともと。釣りができること自体がありがたいと思って頑張ろう。気持ちを切り替えて出撃準備を始めることにした。下弦の月になりきれない上部がややへこんだ赤いそれが東の空にくっきりと現れていた。



本日の撒き餌

釣り経験も10年を超えると、今まで見えなかったことが少しずつ見えてくる。例えば、釣り場選択。釣り雑誌などで、釣れていそうな釣り場をチェックし、釣り場を決定していた時期があった。ところが、釣り雑誌の情報は早くても3週間前だったりする。雑誌が伝えている時期は確かに釣れていたが、それ以降はさっぱりということが多かった。

こんな時期が2,3年続いた後、自分にとって革命的な出会いに巡り合った。携帯サイトturinaviである。釣り雑誌の3週間前の情報からは考えられないほどその情報は新しかった。何せ釣れているという情報は前日のものだからだ。それからというもの、釣り場選択にこのサイトは欠かせなくなった。uenoさんもその情報を頼りにしていて、

「この前turinaviでよかったけん、そこに行こい(行こう)」

といった具合にである。

しかし、それでも中々納得いく釣果を上げられなかった。確かに、最近まで釣れていて釣れる可能性は高いのだが、その釣り場のどこでも釣れているとは限らない。どんな好調な磯でも多少なりとも瀬ムラがある。また釣れ方も昨日までは釣れていた磯でも今日はさっぱりということもしばしばあった。

渡り鳥のように、釣り情報で釣り場を次々に変えていくというスタイルに限界を感じ始めていたころ、硫黄島という釣り場に出逢った。ここの釣り場は答えがはっきりしていた。サラシを狙えばクロが釣れるという方程式がそこにはあった。タナは矢引きから1ヒロ半。どんなに喰い渋ろうが、水温が下がろうが、その釣れ方は変わらない。喰うときは喰うし、喰わない時は何をやっても喰わない。釣り経験が浅く、釣技も未熟な自分にとって、硫黄島の各上物ポイントはあまりにも魅力的だった。そして、気がつくと、いつの間にか硫黄島が自分のホームグラウンドとなっていた。

ホームグラウンドとはよく言ったものだ。硫黄島なら釣れなくても納得して帰路につける。釣っても釣れなくても心が癒される。磯釣りを堪能できる。船長とも仲良くなり、硫黄島の各釣り場を船長の情報や自分の足で経験を蓄えることができた。通えば通うほど硫黄島が好きになる気がする。そして、振り返れば、いつも雄大な硫黄岳が見守ってくれていた。

ところが2人以上の釣行となると、どうしても相手の意見を尊重しなければならないことが出てくる。自分にとっては不本意でも相手のために、そして、自分も仲間と楽しむために、相手が希望する磯を選ぶことだったある。

「里はかなり釣れよるげな」

というこの師匠の言葉を無視するわけにはいかない。実は、uenoさんは、1月5日の初釣りを上甑里で6枚ほどのクロをゲット。釣りを終えて港で魚の品評会をしているところで、クーラー満タン、バッカンにお変わりという光景を家政婦ならぬ彼は見てしまったのだ。その時、アドレナリンがuenoさんの体を高速で駆け巡ったのは間違いない。釣り場選びについては、ジグマタイプではなく、渡り鳥タイプのuenoさん。次回の釣り場を上甑里にするのに躊躇はなかったに違いない。それが、巡り巡って「里はかなり釣れよるげな」という言葉に集約されたようだ。uenoさんはあまりにもポジティヴだった。何度も言うが師匠の言葉は絶対だ。不本意ながらも私はuenoさんの意見に沿う形で上甑里を2011年の第2回目の釣り場に選ぶことにした。

上甑里は自分にとって相性があまり良くない苦手な釣り場だ。uenoさんにとってもそれは同じだと思うのだが、今回はかなり自信があるらしい。しかし、釣れているところへ出かけて「昨日までは爆釣していたんだけどねえ」とか釣り人が集まりすぎて乗れる場所がないなどといった苦い経験を多数持つ自分としては、どうしてもuenoさんの2週間前の情報や携帯サイトだけでは信用できない。不安を抱えたまま、釣り道具を準備し、撒き餌もあらかじめ作っておき、午前0時過ぎに人吉ICから船が出航する串木野港へと出発した。

九州自動車道を南へ下り、鹿児島の分岐点から南九州自動車道に入り、入来ICで国道に出て北上ルート。串木野港に行くにはこれが一番時間がかからない。


おびただしい釣り人の数が・・・

港へ着いたのが、午前2時過ぎ。今回お世話になる蝶栄丸が停泊する港奥の岸壁を目指して車をゆっくりと進めていると、およそ深夜とは思えない光景が待っていた。何と我々を含めて自動車の数が半端ではなかった。20台近くに膨れ上がっていた。まるで、中古車センターのような勢いだ。

せわしく戦闘服に着替える者、煙草をくゆらせながら今回の釣りを語っている者、早くも釣り道具を船の到着予定位置に運んでいる者。下弦の月になりきれない何ともユーモラスな月明かりに照らされて、30人以上の戦士たちが蝶栄丸の到着を今か今かと待っている。


風格すら漂わせる 南九州最強渡船蝶栄丸

やがて船の到着を待ちきれない釣り人のオーラを先回りしたかのように、蝶栄丸はきらびやかなLEDのサーチライトの光を放ちながら、釣り人の待つ串木野港へと接岸した。午前3時15分、南九州最強と呼び声の高い蝶栄丸は、今や風格さえ漂わせて釣り人とその荷物を次第に呑みこんでいった。「一体どれくらいの釣り人が乗ってくるんだろう」数える気もなくなるほど、この日の釣り人は多かった。

釣れているとは言え、この数は異常ともいえる現象だ。ついこの間、硫黄島を始めとする離島便が厳しい局面を迎えていることをこのHPで紹介したばかりなのに、ここは全くの別世界だった。この蝶栄丸の人気は、もちろん魚が活発に喰っているからだけではない。釣り人の安全で楽しい釣りを第一に考え、できる限りの釣らせるための努力を惜しまない船長の言動は、もはや語るべくもないほど、多くの釣り人から絶大な支持を得ていた。

甑島の潮流や天候を知り尽くし、魚が余り喰っていない時など「今釣れてないから来ない方がいいよ」と平気で予約してきた釣り人に話すこともあるというそのこだわり。釣り人を瀬上げした後もしばらくはライトをあてて安全確保を優先してくれる姿勢。そして、その後に、サーチライトを使っての釣り方の詳しい説明(時にはタナまで教えてくれる)など、その言動は、釣り人の心をわしづかみにしていった。この釣り人の数はは魚の釣れ方だけでなく、船長の人格をリスペクトした結果の表れであると言えるのでは。

満員御礼の釣り人の乗せて、蝶栄丸は冬の漆黒の東シナ海に向けて旅立っていった。波高1mという今年に入って初めてではないかという凪の予報に安心したのか、心地よい睡魔に襲われていた時、おそらく甑島との水道の中間地点に入ったころだろうか、ガッタン、ガッタンと船が揺れ出した。その地点はよく揺れる場所だからと気に留めないでいたが、その揺れはしばらく続き、それはエンジンがスローにあるまで続いた。


今日は沖磯・地磯の布陣

出航が遅れたためか、時化気味のために船の減速を余儀なくされていたためなのかはわからないが、最初の渡礁の時すでに時計は午前5時前をさしていた。

「○○くん」

船長が次々に釣り人をマイクで呼び、沖磯から渡礁させていく。走っては瀬上げ、走っては瀬上げを繰り返した。しばらくすると、里の港の明かりを頼りに船は地磯方面へと進んでいることが分かった。さすがに、ここまでくると北西の風は全く気にならなかった。

「はいっ、○○くん3番」

というように地磯に次々に釣り師が渡礁していった。自分たちの番は一体いつなんだろう。だんだん釣り人が減っていくと、どこに乗せられるのかという期待がやがて不安に変わっていった。あれだけ満員だった蝶栄丸も我々を含めて後2組というところで、いよいよ渡礁という段になった。


あれに見えるは犬島

「uenoさん」

船長がuenoさんを操舵室に呼んだ。

「この地磯に乗りますか?それともサラシのあるところがいい?」

それまでの客にはそんなことを言っていなかったようだが。まあ、理由はともあれ選べるということはいいことととらえ、サラシ場を選ぶことにした。

なぜ、サラシ場を選んだかというと、

サラシ場=魚の喰いタナが浅い=魚の警戒心が薄い=釣れる

という単純思考に支配されていたからだった。更にサラシに対するポジティヴ思考がボクらを支配し始めた。また、

サラシ場=魚の警戒心が薄い=太ハリスが使える=釣れる

とまあuenoさんもこんは方程式を唱え始めていた。

「わかりました。中に入ってください。しばらく走ります」

蝶栄丸の船長は有難いことに、我々の希望を最大限に聞いてくれている。ここまではルンルン気分で渡礁の時を待った。ところが、船が沖へと走り出すと、波が出始めた。北の風は獅子の口の地磯あたりでは感じなかった強風も、ここではまともに正面吹きになっていた。近島を過ぎ、松島を過ぎ、それでも船は止まらない。そして、犬島の近くになってようやくエンジンがスローになった。

「はいっ、準備して」

船が目指しているのは犬島の本島ではなく、その西に位置する低いでこぼこした見たことのある独立礁「犬島のハナレ」であった。ホースヘッドのタイヤが陸地の渡接岸地点を探している。下からずり上げるように船が接岸すると、すばやく渡礁し荷物を受け取る。

「低いから、波を被ります。荷物をその上に上げてください。」

渡礁した後は、まず自分の安全確保というセオリーに従う。そして、濡れている地点に絶対荷物は置かない。しばらくすると、サーチライトがエスコートする。

「うらのワレに撒き餌してください。そのサラシ付近がポイントです。海苔が貼っていて滑りやすいから気をつけて。」

マイクで一通りのアドバイスをした後、白々と夜が明けそうになる中、反転して港方面へと帰っていった。2011年の釣り場は、犬島のハナレにようやく最後の最後で決まった。時計の針は渡礁開始から2時間弱の午前6時半を指していた。


上げ潮のポイント

さて、荷物を安全な所に置いて仕掛けを作ろうとポイントを確認すると、これからの釣りに不安を覚えた。なぜなら、船長の示したポイントを釣るための釣り座はあまりにも狭く、1人がやっとの状態だ。おまけに北向きの強風が正面吹き。確かにサラシはあるが、うねりが時々やってきては足下の近くまですでに波が上がってきている。ここで釣りをすることのできる時間は、ぜいぜい午前9時までだろう。ここでは、自分にはちょっとスリルがありすぎだ。ついさっきまでは、

サラシ=釣れる

という安易な方程式を描いていたのに、もうすでにその考えを改めなければならなかった。サラシを求めた結果、ついてきたのは

「正面吹きの強風」「うねり」「身を切るような寒さ」「足場の悪さ」「滑りやすさ」

だった。

穏流場=釣れない

はこの時即座に間違いであることに気がついた。穏流場は

「穏やかな風」「波静か」「快適な気温」「足場の良さ」「全遊動が容易に使える」

などというポジティヴな要素があるものだ。

判断を誤ったか。なあにまだ後悔するには早すぎるさ。絶好調の里だもん。少しは釣れるさ。ちょっと気持ちを一応前向きにして仕掛け作りに入った。


このワレに撒き餌をしなさいとのこと

竿は、がま磯アテンダー2.5−53。道糸3号、ハリス2.5号。ウキはこのサラシだから釣研グレイズ3Bをチョイス。もちろん半遊動でタナは2ヒロから始めた。ハリスにガン玉を段打ちし、ハリはグレバリ5〜7号をメインとした。

uenoさんは、早くも上げ潮の釣り座で釣り始めている。釣り座の左のワレに間断なく撒き餌を打ちながら。自分もuenoさんの右隣で釣らせてもらうことに。しばらくすると、

「kamataさん、餌盗らるんね(盗られるね)こっちは何もおらんバイ。」

と、早くも疑念を投げかける声が。こちらも餌を盗られない。タナを深くしたり浅くしたりしながら魚の居場所をさぐる。しばらくは、時間だけが過ぎていく。

只今絶好調の里とは思えないような滑り出し。首をかしげながら、釣り続ける。潮は、サラシのはけ出しが引かれながら右へと動きやがてまた左に戻ってくる動き。餌がたまり潮目もできていた。餌取りの多い時期なら厳しい潮だが、寒グロの時期ならポイントとして有望なはず。

ところが、釣り始めて1時間すると、餌が盗られ始めた。しかし、それはとても本命とは程遠いわずかな喰い跡だった。オキアミの頭だけをわずかにかじったり、頭だけを食べていたり、胴体の一部分だけを少しだけかじっていたり・・・。入れ食いとは程遠い、明らかに喰い渋りと思われる状況に思えた。

「こら、かなり食い渋っとるね。きびしかなあ」

uenoさんの得意の嘆き節が始まった。今日の甑島の里はまるで宮崎の北浦のようにスレまくった手ごわいクロに思えた。餌をわずかにかじっているのだが、ウキに全くと言っていいほど変化が現れない。これだけウキを沈めたりして違和感を抑えているというのに喰わないなら仕掛けを変えるしかない。

仕掛けを変えると言っても、その時は全遊動しか思いつかなかった。00号のウキに、ハリスに極小ジンタンを段打ちにし、まるでミャク釣りのように仕掛けをまっすぐに瀬際に落としていった。仕掛けがなじんだところで道糸を張り気味にしながら魚のアタリを待っていると、道糸がわずかに生命反応を伝えたように感じたのでそうおっと合わせてみると竿に重量感が。おっ、アタリかも。今度はするどく合わせるとがま磯アテンダーが青空にきれいな弧を描いていた。

やつは、一気に瀬際に潜り込もうとするが、こちらも竿をあまり立てずに応戦。しばらくすると、浮いてきたのでゴリゴリ巻いて浮かせると、何と深いエメラルド色の背中をしたクロちゃんがサラシの切れ間からぬうっと現れた。ゴリゴリ撒いて一気に抜きあげる。足下に飛んできたのは、37cmのこの時期の甑島のそれとしてはやや物足りないサイズ。それでも、ボウズ脱出には違いない。苦労しただけにうれしさがこみあげてきた。


いました いました クロちゃん


このサラシの際で喰いました

「おっ、釣れたバイな。よかなあ。半遊動ね。」

「いいえ、全遊動ですよ。仕掛けを変えたら一発で喰いましたよ。」

「えっ、半遊動な。よう釣れたな。どこで当たったな?」

「瀬際ですよ。」

このサラシ場で全遊動とは信じられないという表情のuenoさん。これまで、ミニサイズのカサゴのみという釣果に悩んでいたuenoさんはこれで俄然やる気モードに入った。


1匹釣れたのでやる気モードのuenoさん

魚が釣れてすぐ、蝶栄丸が見回りにやってきた。この人数と強風うねりでは、瀬変わりも難しいだろう。

「釣れましたか?上げ潮は今の場所で釣って。10時過ぎたらこっち(船着け)で釣って。回収は1時過ぎです。」

そうマイクでアドバイスを。今日の満潮は10時過ぎだから、上げ潮のポイントの反対方向にある下げのポイントは風を背中にしょえるので好都合だ。

蝶栄丸が去っていって、しばらくしてuenoさんが30cm強のクロを1枚ゲット。ようやく型をみることができたuenoさん、ほっと胸をなでおろす。このままもしかして時合い到来かと思われたが、再びここは沈黙の海となった。

風と波は収まるどころかますます激しくなった。犬島のハナレは低い瀬で、うねりに弱い。満潮近くになり、もうこれ以上今までの釣り座での勝負は無理と後退を余儀なくされた。午前10時ごろ1段上に上がって釣っていたが、突然の波が襲ってきた。私は全身びしょ濡れ、uenoさんはと視線を向けると、今まさに彼のバッカンが波にさらわれていくところだった。

「あー、あー、お〜い」

こんな呼び声にバッカンは応えることもなく、あっという間に激流に流されていった。どうやらいつの間にか、すでに下げ潮の激流が流れていた。満潮近くは危険なので、満潮を過ぎ潮位が下がってから下げ潮のポイントに入ろうと思っていたが、激流はますます激しさを増していく。もしかするととその激流の中におもりを打って流してみるが、餌をとられる気配もなかった。


バッカンを流され意気消沈


気がつけば船着けは波の下


風裏は穏やかなんですけど 激流でした(TΛT)

「こら釣りにならんバイ。潮の速かなあ」

ため息交じりにぼやくuenoさん。おいらも同じ意見と下げ潮になるまで、激流が収まるまで休むことにした。風は相変わらず強く、沖でさっきから元気よく跳ねていたうさぎさんがどんどん躍動し大きくなる。2人とも全身に飛沫を浴びて体は冷え切っている。寒さのために指先も震えて仕掛けづくりもままならない。だんだん、戦意喪失の様相を呈していた。集中力が切れると、uenoさんはだんだん俗世間の話題を振ってくる。

「kamataさん、港に帰ったらうどんバ喰おい(食べよう)。この前串木野に讃岐うどんの店ができたバイ」

とついには、こんなわけのわからない話を始めだした。あれだけ全身の毛孔からアドレナリンを噴出させていた人とは思えない言動だ。だから、ホームグラウンドがいいっていったじゃないのさ。残念なことだが、今回の釣りは、帰りのうどん屋を楽しみにするほど厳しかったのだ。

その後、私が1枚のクロを潮位の引いた上げ潮ポイントで釣った以外は、さしたるドラマもなく、午前12時30分に無念の納竿とした。片付けが終わって寒さに震えながら、この一番の最盛期の寒グロの時期にこんなに迎えの船が待ち遠しいと思ったことは今までなかった。


めっちゃ時化てませんか?



寒〜〜〜い! はよ迎えに来んかなあ


回収は最後の方でした


ありがとう 犬島のハナレ

1時半前に船は迎えに来てくれた。無言で船乗り込む。黙って荷物を船の中に収納。今日の釣りが厳しかったことをだれもが悟ってくれただろう。昼過ぎになってようやく原因不明の時化が収まりかけた海を恨めしく見つめながら、犬島のハナレにこうあいさつした。

「今日は参りました。君に完敗!」

船は、そんな撃沈釣り師を乗せて、串木野港へと向かった。

午後3時過ぎに港へ到着。重たいクーラーはあまりなかったように思う。釣り人の動きで、今日はあまりいい釣りはできなかったことがわかる。

港を後にし、uenoさんのたっての希望で串木野に最近オープンしたといううどん屋に立ち寄った。

「やっぱ、うどんは讃岐バイ。うまかもん。よか見せバ見つけたバイ」

里に行こうと言い出したのは、uenoさんである。バツがわるかったのかどうか知らないが、こんなにうどん屋で喜ぶ人だったとは思わなかった。ただこの撃沈で、次回の硫黄島が確定的となった。

「やっぱ硫黄島バイ。今度の硫黄島は楽しみかなあ」

こんなuenoさん、いまだにホームグラウンドを持たない釣り師だ。これからもきっといろんな釣り場を渡り歩くだろう。そんな釣りも決して悪くないね。そして、これからも釣り場をどこにするかという悩ましい、そして、楽しい選択をしていくことになるだろう。

店を出ると、あれだけすがすがしかった青い空がいつの間にか鉛色のそれになり、小粒の雨を降らせていることに気付いた。

いいときもあればよくない時もあるそれが釣りだよ。

今まで自分たちを見下ろしていた空がそう言っているような気がした。


最近串木野にできたうどん屋


これを楽しみにするほど今回の釣りは厳しかった


37cm 33cm 2枚


寒グロの刺身 甘くてうま〜〜い


クロのムニエル クリームソース
これは自分でもヒット商品だと思いました

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