5/13 愛の糸電話 甑島手打


あこがれの磯 上の村瀬

最近のイノベーションの速度は、ますます加速している感がある。この流れに一番翻弄されているのが、団塊の世代から現在の中年初老の世代ではなかろうか。



「こんなこともできないのですか。」という顔でICT草食男子からバカにされながらも必死でパソコンの画面を見つめている中年初老おじさんたち。



学生時代にボールペン原紙とセットで存在した輪転機、そしてワードプロセッサーを何とか使いこなしていた若かりし頃。やがて、我々庶民にもパーソナルコンピュータを手にすることができるようになった。



また、奇妙なトランシーバーだなと首をかしげた初期の携帯電話が、手持ちサイズになったかと思えば、スマホの登場で今やキッズ世代までがICT機器を使いこなす時代がやってきたのだ。そんな中で肩身の狭い思いをしているアナログ男子である中高年世代。





ところが、アナログチックなおじさんがICT男子対して優越感に浸れる分野がある。ご存じ磯釣りである。




広々とした海。この生物の楽園の中では、0と1の配列によってできているコンピューターの頭脳に支配されることはない。



潮流を読み、風、魚の活性、その他もろもろの自然条件について経験を頼りにあれこれと考えながら、魚との距離を縮めるという磯釣りは、どう考えてもロボットには無理ではないか。



いや、そのうちそんなロボットが登場するかもしれない。疲れたから俺の代わりに釣っといてよなんて。

その時までに、地球の環境を守られているだろうか。まさか、映画「猿の惑星」でみた衝撃のラストシーン。自由の女神の横で土の中に埋まった釣り竿を見て、「これは一体何だ」と首をかしげる生命体が未来の地球を支配しているのかもしれない。

地球温暖化という悪魔のシナリオ少しずつだが着実に地球の体力を奪っているようだ.。これは、地球が元気なうちにできる最高のぜいたくをしようではないか。その最高のぜいたくをするために、いつの間にか、鹿児島県甑島の手打に誘うフィッシングナポレオン隼に連絡を入れてしまっていのだ。


「いいですよ。クロ釣りですか?また前日に電話してくださ〜〜〜〜い。」


奥さんから予約完了の返事を受け取る。通常、中々平日に離島便の客は集まらないのだが、この時期の甑島手打となれば、平日だろうがお構いなしに釣り人はやってくる。運動会の代日で1年間に数度しかない平日釣行ができる513日をアドレナリンの異常分泌がとまらない状態で迎えることになった。



513日、下り中潮2日目。闇夜からの中潮でかなり期待が持てる潮回りだ。GWは、イルカの出現で魚の反応が今一歩だったそうだが、魚影は抜群に濃いところだから心配ない。平日ということでもちろんuenoさんやM中さんも不参加の単独釣行となった。





甑島で迷うのが撒き餌である。甑島はパン粉釣法で有名なところ。漁師がパン粉で釣るのだから、当然お魚たちもパン粉に慣れているはず。だから、磯師の間でもパン粉釣法を使う釣り師が多い。大量のパン粉に少量の赤アミを混ぜて作る。



つけ餌は、オキアミ生、赤アミ、あるいはパン粉ダンゴ。「やっぱパン粉釣法バイ」uenoさんはこの釣り方にぞっこんほれ込んでいるようだが、おいらはどうも相性がよくない。



普通にパン粉、集魚剤、オキアミ生の方が釣れるような気がするのだ。


いろいろ迷った挙句、結局甑島での釣りの王道であるパン粉主体の撒き餌にすることにした。もちろん、それがだめな時の保険として、集魚剤1袋とパン粉2kgとオキアミ生はこっそり忍ばせてましたけど。


九州自動車道を南へ下り鹿児島で南九州自動車道に入り走ること30分で串木野港に到着した。まだ船長は来ていないが、出航1時間前にも関わらず、すでに、12,3名の釣り師が暗闇の港で談笑していた。



やがて、船長と奥さんが登場。みんなの共同作業で荷物を船に積み込んだ後、奥さんの指示で船の後部下の段にもぐり込んだ。平日なのに、大盛況。結局、17名の磯師を呑みこんで、フィッシングナポレオン隼は暗闇の東シナ海を、対馬暖流に逆らいながら突き進んで行った。


波の予報は、1mと全く問題ない。横にはなってみたものの中々寝付けずにいたが、いつの間にか深い眠りについていて気がついたら、エンジンがスローになった。




午前2時すぎに出航し、着いたのが午前4時だった。ここはどこだろう。気になってキャビンの外にでて、状況を確認した。


暗くて何も見えない。見たことがある磯だが、どうも手打西磯ではなさそうだ。早くも渡礁体制の釣り人が一人。船首の見て右側に生活感のある灯りがともっている。



どうやら、ここは手打湾周辺らしい。その底物師が乗った磯は、昔のっていい思いをした東磯「中のオサン瀬」のようだ。



更に船は、ライトを消した。しばらく走るようだ。やがて灯台が見えるところでスローダウン。小さな磯に底物師を乗せた。灯台下というポイントらしい。




更に、船は走り、鋭角的の地形の岬である野崎でスローダウン。どうやらこの沖にある1年に数度しか乗れないシズミ瀬(黄金瀬)の様子を見ているようだ。この凪なら潮が引けば乗れるだろう.。



そこをスル―して、時寄りの比較的大きな磯の前にやってきた。名礁下の村瀬である。ここに2組の釣り人を渡礁させた。


だんだん早崎方面の尾長が出るポイントに近づいている。期待と不安で胸いっぱいになっていると、ここで「kamataさん」と奥さんから声がかかった。


これも名礁「上の村瀬」だ。早崎のハナレには乗れなかったが、ここもいいところ。底物師と上物師であるおいらがそれぞれ違うポイントに渡礁した。




「そこで釣って」船長がサーチライトでポイントを示してくれている。足場は悪くないし、地向きの裏側だが潮が通せば尾長も出そうだ。早速、近くの底物師にあいさつ「ここは尾長が出ますよ」と声をかけていただいた。



時計を見ると、5時前。このまま仕掛けを作って釣りを始めても明るくなってしまう。そこで、最初から昼釣りに仕掛けで釣ることにした。



竿はがま磯アテンダー2.5−53。尾長がくるかもしれないということで道糸4号に、最初は口太だろうと、2.5号のハリスをとった。初めてのポイントなので様子見とG2の半遊動で釣り始めることにした。パン粉撒き餌を暗いうちから撒いていく。


隣の底物師は早速暗いうちから石鯛ねらいで竿を打ち振っている。近くの人が底物師でよかった。こちらは焦ることなく、撒き餌を続けることができた。ぱらぱらとパン粉を撒いていく中で、魚が寄ってくるイメージを思い浮かべながら間断なく撒き続けた。





水平線から白い朝がやってきた。ウキも視認できるようになってきたし、いよいよ実釣開始だ。潮は上げ潮が緩く早崎方面へと流れている。魚はチラチラと見えている。これは釣れる感じだ。



タナは1ヒロから始めた。時計を見ると5時半。よし、今だ。大きくふりかぶって第1投。撒き餌を投入した地点への誘導し、撒き餌と仕掛けを合わせる。さあ、かかってこいや〜〜〜。朝から寝ぼけているクロちゃんをねらった。


 2,3投してみた。ウキを持っていこうとするが途中で仕掛けを放してしまい、餌だけが盗られていた。そのつれない態度は以外だった。違和感を感じているらしく、これは仕掛けを代えなさいという合図とみた。


 すぐさまスイベルから道糸を切り離し、ウキ止めをとりウキを00号に代えた。今度はどうだ。う〜〜〜む、今度も魚が警戒しているのか、やる気になっていないのかどうしても仕掛けを放してしまう。



ならば、前アタリをとる作戦に出るが、素バリの連続。ううん。世の中いや自然界はそう甘くないね。魚がたくさんいる気配はするのだが、一向に魚の食いが立たない。



よく観察すると、ウキとカラマン棒の動きが今一。表層の潮と仕掛けが流れる潮とが違う方向に流れているようだ。



G6のガン玉をハリスに1個つけて、仕掛けを投入。今度は仕掛けも落ち着いたようで、カラマン棒の動きもいい感じだ。その時だった。ウキが一気に消し込み、道糸が走った。



よっしゃあ。中々の手ごたえ。ちょっと出だしは苦戦したが、ファーストヒットは本命と信じて疑わなかった。しばらくやり取りをしていると、信じられない魚が浮いてきた。足裏サイズのイスズミだったのだ。





えっ、このタイミングでイスズミ???。まあ交通事故ということもありうるわけだし、気を取り直して、仕掛けを入れた。



次の魚も釣り人を大いに落胆させた。抜きあげると、再びイスズミが磯の上で跳ねていた。


おかしいぞ。その後、5匹連続でイスズミを釣りあげ焦りが体を支配し始めた。ここは、硫黄島でもない、草垣群島でもない、甑島手打なんだぞ。抜群にクロの魚影が濃いところに来てこんなにイスズミを釣ってどうするんだ。


深呼吸して、もう一度、冷静に考えてみる。ホームグラウンド硫黄島で学んだクロとイスズミとの関係を思い出してみる。


イスズミの勢いが強いときは、イスズミの少し下の層にクロはいるというもの。イスズミがたてつづけに釣れた原因は、つけ餌が全遊動でゆっくりと落ちてクロのいる層に届く前にイスズミが横取りしてしまうからと考えた。


ならば、もうひとつG6のガン玉を段打ちして、仕掛けを少し早めに落ちる演出をしてみることに、答えはすぐに出た。ゆらゆらとウキに前アタリが出たかと思うと、ウキは一気に消し込み、道糸が走った。


あわてて臨戦態勢に入る。数度の締め込みのあとそいつは水面近くに現れた。しっぽの白い大高のあるプロポーション。33cmほどのクロちゃんがおいらに飛び込んできてくれた。




エメラルドグリーンの瞳をもつこの恋人は、釣り人にここが愛のある海であることを知らせてくれた。時計を見ると、午前6時半。



「おっ、釣れましたね。まだ1匹目ですか。」



こちらのオーラを感じ取った底物師は、ようやく手にした魚を見て驚いている様子だった。となりの底物師は上げ潮が当たってくる場所で、本命ではなかったものの、頻繁に竿を曲げているようだった。それだけに、この釣果は釣り人の焦りを和らげた。


釣り始めて、この魚を手にするまで、何と1時間もかかってしまった。手打西磯で1匹目を釣るためにこんなに苦労するとは正直思わなかった。


1匹釣れたものの、サイズ的にはとても満足できないし、この後も釣れるという確信はない。不安は消えないまま更なる獲物を求めて竿を打ち振い続けた。




すると今度は潮が下げ潮の方向に流れていくようになった。すると、魚の食いがピタリと止まった。すると、それに呼応するように、底物師の動きもピタリと止まった。


「潮が逆になっていませんか」


たまらずその底物師は話しかけてきた。潮が逆になったので、魚からの交信が途絶えてしまったみたい。底物師は休憩が多くなってしまった。



こちらは、更なる新しい方法を試す必要に迫られていた。今度は、下の村瀬方面に流して釣れる場所を特定しなければならないからだ。手前は、魚がチラチラ見えるが、どうもそれは、イスズミやオヤビッチャのようだった。



5月にしてこの餌盗り。手打西磯解禁から1カ月。早くも人気ポイントの宿命でもある餌盗りとの知恵比べを強いられることになった。




オーソドックスな方法だが、とりあえず手前に撒き餌を打って沖目をピンポイントで釣るという作戦に出ることにした。竿1本先ではイスズミに捕まった。

ならば、更に沖目をねらう。追い風で撒き餌が結構遠くまでとぶことをいいことに、どんどんポイントを遠くすることにした。


すると、ぷるっぷるっと道糸にクロちゃんの動きがとらえられた。よしっ、と合わせるが、ハリにのらなかった。再び、ぷるぷるっ、これも素バリ。どうやら今日の魚のコンディションは、道糸を張ると魚がえさを放してしまう状況らしい。



それなら、張らずに緩めていると、いつの間にか餌が盗られている。どうすりゃいいんだ。


そう言えば、このぷるぷるっとした魚からの交信は、どこかで体験したことがあるぞ。そうだ、あれだ。糸電話だ。


小学生の頃、衝撃を受けた経験が思い出された。それは、糸電話で友だちと交信することができたことだ。あの何も変哲もない紙コップから何と友だちの声が聞こえてくるんだもの。



その時、それは多分理科の実験だったように記憶しているが、糸を張ると交信できるものの、糸を少しでも緩めると全く交信することができなかった。この道糸のアタリが何と40年前の教室で衝撃を受けたあの糸電話の交信を思い出させてくれたのだった。



まてよ、糸電話はまっすぐに張っていないと交信できなかったよな。ということは、仕掛けが一直線になっていないから、魚のアタリが拾えなかったんだな。こまめに道糸を操作して仕掛けが一直線になるようにしなくては。




新しい作戦が決まったら、とにかく実践あるのみだ。案の定、久しぶりの魚との交信があった。ぷるぷるっと来たんだが、残念なことに仕掛けにのらなかった。今度は、緩めては張り、張っては緩めるを繰り返した。



ぷるぷるってきてもすぐには合わせずに、一旦緩めて相手の警戒心をとり、更に張っては緩めを繰り返し、相手がしびれを切らして走るのを待つことにした。


これを名付けて愛の糸電話釣法。硫黄島の新島の高場で、クロの喰いがシブくなってきたときに、編み出した方法。張っては緩め、緩めては張る。魚を愛するが故に強引にあたりを拾いに行くのではなく、優しく包み込むように喰わせるのだ。そんなことだれでもしているよ。はいはい^^。


ところが、その作戦が、ピタリとハマり、久しぶりに、クロちゃんを釣りあげる。時計を見ると、8時前。これで9枚目。パターンをつかむと、再びポツリポツリと魚を喰わせることができるようになった。




12枚目を数えたところで、船がやってきた。「どうですか」底物師はダメのサイン。ここはどうも上げ潮のポイントらしく、これから下げのポイントに移るようだ。


kamataさん、どうですか。」

一応2けたに乗せたことだし、OKのサインを送った。他の釣り人が、サイズは?と手の合図でリサーチをしてきたが、さりげなく30cmくらいのサイズであることを手の合図で返した。


「ここで粘りますね。1時回収です。がんばってください。」


隼は東磯方面へと走っていってしまった。



 さあ、数はいらない。方がほしい。更に、まだアタリすらない尾長グレちゃんも見てみたい。そんな衝動にかられながら頑張ってみるものの、泡が磯を取り囲むほど、いい潮が入ってこなかった。


5枚のクロちゃんを追加するにとどまり、この磯を後にすることにした。


港に帰ってクーラーを運んだ。おどろくなかれ、どのクーラーも重くて運ぶのが大変だった。


また、「今日は潮が逆でまいったよ」と早崎のハナレにのった底物師は残念がっていたが、底物は全員安打だったようでみな表情が明るかった。


どの瀬にのってもよく釣れていたそうだ。心配していた瀬変わりしていったあの底物師も下げのポイントで本命魚を釣ることができたそうだ。



今回は、愛の糸電話釣法で、サイズは不満が残るものの、まずまずの釣りができたことがよかった。


だが、また尾長グレを釣ることはできなかったことは課題として残った。次回の釣りでもぜひねらっていきたい。


夏日を思わせる気温30度近い串木野港で、心地よい汗とともに重たいクーラーを車に積み込み、この港を後にするのであった。

平日だというのにこの盛況ぶりさすが手打西磯



名礁「上の村瀬」に渡礁 底物師の方と一緒でした


早崎方面が見えます


今回の釣り座


上げ潮はこちらをねらいます


下げ潮はこちらです


2匹目はこ長ちゃんでした


3匹目


4匹目 なるほど口が太いから口太か


5枚目 のんでました^^


6枚目


7枚目ゲット


8枚目 ゲット〜〜〜w


上げ潮ではあたりがあるようですが 本命ではないような


結構 餌取りが多かったような


9枚目 キター


10枚目は 尾長ちゃん♪


11枚目 おつかれさんです


12枚目は 地グロ系


さりげなく魚のサイズを尋ねる釣り師


13枚目


14枚目


15枚目


16枚目


いい感じの潮が下の村瀬方面に流れています


こっちは泡ばかりっすTT


今回の釣果 30〜36cm17枚


ありがとう 上の村瀬


最後に 早崎のハナレに釣り人を回収


まずは 定番の刺身で


クロのボンゴレ・ロッソ まいう〜〜w


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