1/4,5 魚と人に癒やされて 甑島・鹿島

鹿島東磯屈指の好ポイント 平瀬崎
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年末年始の寒波のあと、日本列島に穏やかな気候が戻ってきた。「税」という漢字でまとめられた2014年。火山活動が活発になってきた日本列島では、南海トラフ地震が現実味を帯びてきている。自然の猛威を味わうことになるかもしれない昨今、その反面、自然から癒やされたいと願う人も確実に増えている。 文明が発達し、人間の手で国土が次々と変えられている中で、いわゆる富裕層は何を求めているのか。それは、機械化された便利な環境に身を置くことでも、華やかな夢舞台の中を泳ぐことでもなかった。 きれいな空気を吸って、きれいな水に囲まれての自然食中心の暮らし。これが今や富裕層が最も求めているステータスだという。富裕層が考える最高のぜいたくが、実は、貧しいかもしれないが、過疎化であえぐ地方の人々が自然とともに生きている暮らしだったとは。 地方の田舎は、雇用は少なく賃金は安いかもしれないが、都会のラッシュアワーもなければ、コンクリートジャングルもない。そこには、自然と一体になりたいという天人合一の自然観であふれた世界が待っている。 そんな世界を手っ取り早く味わいたいなら釣りを覚えなさいと言いたい。釣りを成就するためには、様々な日常のしがらみからおのれを解放しなければならない。電波から遠ざかった世界で、思う存分魚との知恵比べを行う釣りは、この上なく楽しいものだ。ICT機器に囲まれた生活をすればするほど、自分の内なる心はますます自然へと向いていく。 しんしんと冷え込む暗闇の磯場で、震える手で仕掛けを作り、夜明けを待って魚との距離を詰める。中には、大時化の中、ばっかんばっかん揺れる船に乗り、げろげろ状態になってしまう一触即発状態で耐えながら、ようやく渡礁したが撃沈してしまうことだってある。 運が良ければ、魚との楽しい交信を得ることができるが、最悪、何の収穫もなく磯場を後にしなければならない。安くない渡船代を支払い、寒空の中、一日中立ちっぱなしで仕掛けを打ち返すこの業は、釣りを知らない釣り人の対極にいる人々から見れば、拷問以外の何物でもないのかも。 何で釣りなんか好きになってしまったんだ。他にも趣味はたくさんあったろうに。釣れなくても魚に裏切られようとも、しばらくするとまた磯に向かってしまうんだ。 ここまでくると、釣りをしたいのではなく、海が自分を呼んでいるのではないかと考えてしまう。釣りはもう自分にとって切っても切れない空気のような存在になってしまった。 そんなおいらと同じように、釣り依存症にあえぐ人物がいる。ご存じおいらの師匠uenoさんである。 「kamataさん、鹿島に初釣りに行こい。鹿島は太か魚の釣れるごたっで。」 年末の硫黄島から帰還した直後に、uenoさんがこのようにつぶやいたのだった。 確かに、釣り師は、釣りが終わった時点から次の釣りが既に始まっているというが、さすがに早すぎるだろう。 そう突っ込みを入れながらも実は自分も思いは同じだった。 年末年始の寒波の後、2015年の磯釣り開幕は、思いも寄らぬ凪予報が飛び込んできた。これは、夢の1泊2日釣りは確実かも。 釣行前日の日に船長に電話を入れると、 「kamataさん泊まりだったですよね。」 と出航を知らせる返事をもらった。 本当に、何年ぶりだろう。初釣りで1泊2日釣りを計画して成就できたのは。 こいつは春から縁起がいいわい。 この吉報をuenoさんも喜んでくれた。 かくして、釣りバカ二人は、九州自動車道を南へくだり、南九州自動車道から串木野港へ到着した。 ただ、凪の東シナ海への出発前、気になることがあった。それは、船長の言葉だった。 「kamataさん、今日は2船体制なんですよ。」 さすがに、クロ釣りベストシーズンの甑島は人気が高い。しかし、それにしても船長の知り合いの漁船をチャーターにしなければならないほど、客が多いとは。 荷物を船に積み込むと、キャビン内の下の段に潜りこんだ。 「西磯に行かれればよかなあ。」uenoさんは、東磯で幾度も惨敗を喫しているためか、東磯は苦手意識を持っている。西磯は数型ともに、実績があり、おいらももちろん西磯が希望だ。 ところが、船長から意外な誘い言葉を受けた。 「kamataさん、東磯ですけど、平瀬崎はどうですか。よく釣れてますよ。」 平瀬崎とは、鹿島港から北へ出たすぐのところにある地寄りの独立礁である。西磯への玄関口として藺牟田水道に隣接しているので潮通しは抜群。寒グロのはしりの時期に実績がある。 誠実な船長だから、間違いないと思うが、西磯に行きたがっているuenoさんがこれをどう考えているか。 「uenoさん、平瀬崎はどうですか。」 「平瀬崎は東磯やろ。西磯はあいとらんとだろか。」 「平瀬崎は、uenoさんが一度釣ったところですよ。」 幸いにもuenoさんは平瀬崎で一度いい釣りをしたことがある。uenoさんにいかに船長の提案をポジティブになってもらうか考えながらuenoさんと交渉する。 「平瀬崎では結構釣りましたよね。平瀬崎に行きましょう」 強引にuenoさんを説き伏せ、船長に向かって 「平瀬崎でお願いします。」 と言い放ったのだった。Uenoさんもこの迫力に負けたのか、しぶしぶ平瀬崎を承諾。かくして、鹿島リベンジ釣行は、東磯鹿島での釣りとなったのだった。 午前2時、静寂そのものの串木野港を、ゆっくりと誠豊丸は進み始めた。沖堤防を過ぎると、今回の海の状況は明らかになる。 さすがに凪予報。心地よいゆりかごのようなやさしい揺れを体感しながら目的地に着くのを待った。 いい釣りをするために、船で仮眠を取りたいところだが、これが中々寝付けない。そんな時は、過去の釣りのシーンを思い出してみる。しかし、何度思い出してもいい釣りは浮かんでこない。なぜって、そういえば鹿島でこれまで釣りをして一度もいい思いをしたことがなかったからだ。 逆に目が覚めて、エンジン音が変わる瞬間を待ちわびること1時間半で鹿島東磯付近に到着した。 今夜は満月。大潮初日。比較的明るい中で、サーチライトの方向を見ると、見たことのある磯が忽然と現れた。 潮通し抜群、東磯を代表する磯「弁慶」が見えた。船は、乗ると思っていた1番をスルーし、対面にある2番へ2人を渡礁させた。 「kamataさん、次行きますよ。」 港が見える方向にしばらく走ると、エンジンがスローに。LEDが照らしたその先にイメージより大きな独立礁が見えた。 平瀬崎の名の通り、足場の良い平らな磯場へ一気に渡礁を済ませる。 「今日は瀬替わりはありませんから。船付けか裏の水道側で釣ってください。昨日は、船付け がよかったみたいですけど。頑張ってください。」 さあ、2015年の初釣りの舞台にあがった。この磯では一体どんな答えを用意してくれるのだろう。 ここはやっぱ足場がよかなあ。Uenoさんは取りあえず、足場がよいと喜ぶ人だ。時計を見ると、午前3時45分。夜明けまでまだまだ時間がたっぷりある。急ぐ必要なない。私はまず、クーラーからビールとつまみを取り出した。 釣りを始めて14年目のシーズンを迎えた平成27年。今年も元気で釣りができますようにと念じ、プシュッと缶ビールを開けた。コンビニで売っていたS社の「金のビール」。なんだか正月にふさわしいじゃないか。 1時間ほど、夜明け前の磯ビールを楽しみ、uenoさんと世間話をした後、ようやく仕掛け作りに入った。 今日の撒き餌は、オキアミ1角、集魚材2種類、パン粉2kgをまぜまぜ。 タックルは迷ったが、前回の鹿島の撃沈から、食いが渋いと予想し、竿はダイワメガドライM21.5−53。道糸2号にハリス2号。本当は、ハリスは2.5号を使いたかったが、2.5号がトラブって使用不能。しかたない2号同士のラインナップだ。ウキはこの海の状況なら、G2でいいかな。 「おら、ここで釣るでな。」 Uenoさん、早くも前回いい釣りをした船付けの先端に釣り座を構えた。さて、おいらはどこに釣り座を設定しようかな。もし、この船付けで釣りをするならば、納得できる釣り座がない。 意を決したおいらは、裏の水道側の未知のポイントに行くことにした。 船付けの後ろは階段状になっており、一番上の段に上るとまるで包丁で巌を切り取ったような真っ平らで斜めに傾いた広大な磯場が現れた。西の方向を見れば、現在建設中の橋が見える。おいらは一番低い地点までバッカンを運びそこを釣り座とした。 藺牟田水道に面しているので、潮通しがよさそう。ただ、暗闇で磯の状況がよくわからない。水深や根の状況などまったくわからない。しかし、やることはやらなくてはと、少しずつ間断なく撒き餌を続けた。 撒き餌は単調な作業だが、魚を寄せるという意味では、非常に大切な準備である。そして、釣り師ならば、この作業も楽しくないはずはない。 1時間ほど撒き餌をして、時計を見ると午前7時過ぎ。明るくなってきたし、釣り始めるとするか。 タナは、2ヒロの半遊動仕掛け。潮は、ゆっくりと右へ動いている。果たして本日の釣りはいかに。振りかぶって第1投投げました。 ウキは朝の乾いた空気の中を切り裂き、大きな放物線を描いて紫紺の海中に突き刺さった。 撒き餌を被せて様子をみる。ウキに現れる小さな波紋。前アタリを知らせる信号だ。仕掛けを回収すると、餌をかじった形跡が。餌取りも何も見えないが、魚からの反応にほっとした。取りあえず最悪ではないらしい。 タナを2ヒロから1ヒロ半に浅くして、再び投入。撒き餌は、集魚力の高い集魚材と甑島では圧倒的なパフォーマンスを演じてくれるパン粉を大量にフレンドしたもの。さあ、おいしいよクロちゃん。 すると、明らかに魚が餌をくわえて反転したようなウキの消し込みが見られ、竿を立てるだけでいきなり第2投でのアタリをとらえた。 数度の締め込みをメガドライのしなやかな竿の弾力で受け止め、浮いてきた魚は本命の口太ちゃん。 慎重に抜きあげる。よっしゃあ。きれいなエメラルドグリーン色の美しいプロポーションの魚体をしばし眺めてサイズを測る。37cmのまずまずのサイズ。 前回の鹿島では、魚の反応がなくて本当に苦労したが、釣れるときは本当にあっさり釣れるものだ。いきなりの時合い到来か。焦る気持ちを抑えつつ第3投。 これも同じような反応がウキに現れ、難なく2匹目をゲット。時計を見ると7時15分。今がチャンス、今のうちに釣らないと。 ところが、次は、魚が警戒したのか、餌をくわえただけで終わった。流し方を変えたり、ガン玉を足したり、タナを調整したりしたが、魚の反応がもう一つになった。 潮は右に当て気味に本当にゆっくりと動いている。潮が止まっていると言ってもいいくらいだ。 ここで右の瀬際に見切りをつけて、気になっていた左の張り出し根の際を攻めることにした。これも魚からの反応があり、実にゆっくりとウキが消し込んでいる。道糸を張り気味にしながら、アタリを待つ。ウキが海中深く沈んで見えなくなった時、道糸がドンと一直線に引き込まれた。 反射的に竿を立てて応戦するが、相手が一枚上手だった。左の根に入られ竿先がふうっと軽くなった。同時に仕掛けの回収時に無重力感を感じた。ああおいらの勝負ウキが。 昨日買ったばかりの勝負ウキを20分間ほど使っただけで失うという残念な展開に。仕掛けを作り直して再び右へ流す釣り方に変更。今度は明確なアタリだ。浮かせるとあれっどうりで軽いはずだ。足裏サイズの尾長ちゃんだった。これはさすがにリリース。 同じ釣り方でまたまた道糸が走った。今度は、えらい竿を叩くなあ。案の定、上がってきた魚はぎんぎらぎんになりげなく〜マッチではないイスズミさんだった。はい、さよなら。 手前は、餌取りが増えてきたと感じたところで、今度はやや沖を攻めることにした。これが見事に当たり、40そこそこと38cmをゲットで4枚目。 30分ほど沈黙が続いたが、これもやや遠投した地点で30後半の口太をゲット。これで6枚。まだまだチャンスがと思いきや、潮が止まってしまった。同時に魚からの反応が消えた。時計を見ると、午前9時。 釣り開始から2時間で6枚の釣果。サイズ的にはまだまだ甑サイズとは言えないが、まだ時間はたっぷりある。あわてる必要はない。休憩していると、船付けで頑張っているuenoさんがしばらくするとやってきた。 「kamataさんどがんね。」 「潮があまり動かないですね。そっちはどうですか。」 「こっちは激流バイ。2枚釣れたバッテン、それから釣りにならんやったもん。」 意外な返答が返ってきた。向こうの方が本命釣り座と思っていたが。 気を取り直して釣り座に戻って釣りを再開する。いつのまにか潮が変わっていた。今度は反対に左に流れていく。いい感じの潮だ。仕掛けを流していくと左の根の付近で仕掛けが深く入っていく。 あそこがポイントかも。丁度その地点で撒き餌が同調するように、流していくと自分が立てた仮説が正しいという結果が出た。ここで3連続の釣果。サイズはやはり30後半。9枚目は尾長グレだった。もしかすると、ここでいい潮が入れば、いいサイズの尾長が喰うポイントかもしれない。 11時頃再び時合いが来て、2枚の口太をゲット。これで2桁に乗せた。 ああ心地よい潮風と心地よい疲労感。釣りは人生最高の道楽だと言ったが、その通りだ。時間よとまれという永ちゃんの歌が頭の中を駆け巡る。 だんだん潮が引いて、左の根や右の根が見えてきた。朝まずめはわからなかったが、中々根がきつく早めに勝負をしないと魚に逃げられてしまう場所のよう。 ここの魚は喰わせたらまず左の根に一直線。それを何とかかわしても今度は右の根に一直線だ。このパターンで4発ほどバラしてしまい、ウキも4個もロストしてしまった。 この日は大潮であるにも関わらず、潮が右にいったり左にいったりふらふらして落ち着かない。時合いが頻繁に来るのであるが、2,3匹で終わってしまうのだ。入れ食いという感じではなかった。 12時過ぎにも時合いが来た。ここでは、44cmの本日最大サイズをゲットした。これで13枚。ドンゴロスも重たくなってきた。 おいしく食べるため、血抜きをする。その手間を省いて釣りに専念する手もあるが、2日釣りだもの、あわてる必要はないよね。 そのとき、船長が大量の回収客を乗せて西磯方面から、藺牟田水道にやってきてスピードを緩めた。 「kamataさん、4時頃道具を片付けておいてください。」 マイクでそう言うと串木野方面へと走り去っていった。やはり、西磯に行っていたか。もうここまでつれたら西磯には未練はないが、釣果が気になる。 その後2時頃再び時合いが到来し、くやしいバラしを演じながらも4枚を追加し、合計17枚を数えた。時計を見ると3時をすぎていたので、ここで早めの納竿とした。 船付けに戻ってuenoさんと合流。Uenoさんも2桁にのせて満足の釣りを終えようとしていた。 「40オーバーも何枚か釣れたバイ。潮がずっと沖に流れたもん」 二人とも2桁釣りで初釣りとしては申し分ない結果となった。 磯場をきれいにして、道具を片付け回収を待った。串木野港へ日帰り組の釣り人を送ったあと、誠豊丸は、また鹿島に戻ってきた。そして船に乗り込んだ。 乗船すると、瀬泊まり釣り師が4組ほどいた。夜釣りはほとんど期待できないと悟ったおいらたちは民宿に泊まることにした。 船は瀬泊まり客より前に、我々を港に下ろすため、鹿島港へ向かった。途中沖堤防で3.5kgの本石を含め4枚の底物をゲットした方も回収した。クーラーを開けると、釣り師の間から歓声があがった。甑の実力を見せつけられた思いがした。 船は、港の岸壁に着けた。 「kamataさん、6時半から7時の間にここに来ておいてください。」 誠豊丸は、瀬泊まり客を瀬変わりするために沖磯へと走り去っていった。 もうすでに、民宿の方が車で迎えに来られていた。おいらは久しぶりに荷物と一緒に荷台に載せられて、民宿へと向かった。 今夜お世話になるのは、民宿マルエさん。道具を置かせてもらって、すぐに風呂に入ることを勧められた。 磯場で海水の飛沫を全身に浴び、冷えた体をあたため、疲れをとるのは風呂が一番だ。家庭用の真新しい浴槽が2つありいい感じ。最高の気分で部屋に戻った。 そして、お楽しみの夕食。今日は、4日で店が休みなんだそうな。それなのに、とてもゴージャスな食材を準備していただいた。 酢の物、バテイラみたいな巻き貝系の煮物、ミズイカの刺身に舌鼓。そして、メインは寄せ鍋。クロ、イサキ、手羽先、ホタテ、ブラックタイガー、豆腐や野菜類がもう食べきれないほどたくさん用意されていた。 年明けということで切り餅も添えられていた。もうお腹いっぱいなのに、雑炊まで準備。我々は、今日の釣りを楽しく振り返りながら、英気を養った。 新しく清潔な部屋で、気持ちよく爆睡。さあ、明日はどんな釣りになるんだろう。期待を込めて布団に入った。一睡もしてないんだもの、いつのまにか眠りについていた。 けたたましい携帯電話の着信音で目が覚めた。今何時だろう。寝ぼけた目で時計をみると午前4時半。中村船長からだ。 「あのkamataさん、6時に来られますか。」 船長の声のBGMはゴーという船のエンジン音だ。どうやら日帰り客を乗せて、こちらへ向かっているらしい。 「わかりました。出てきます。大丈夫です。」 さらに、船長が話しかけてきた。 「kamataさん、昨日は潮がいってなかったのか、西磯はあまり釣れていませんでした。Kamataさんのところ(平瀬崎)が一番よかったみたいですよ。」 本当か?今までは他は釣れているのに、自分たちだけ撃沈というパターンがほとんどだったが。 「明日はどうします?もう一度平瀬崎に乗りますか。」 Uenoさんはいつのまにか起き出して、電話の会話に聞き耳を立てていたようだ。 ここでuenoさんと緊急協議に入った。今度はuenoさんがオピニオンリーダーとなった。 「尾長が釣れるところへ行こい。」 「えっ、それはどこですか。」 「灯台下。」 灯台下?確かに、8年前uenoさんはここでいい釣りをした。空前の尾長フィーバーにわいていた鹿島西磯。特に、灯台下では、60を超える尾長がわいていて、尾長釣り師が九州各地から集まっていた。 そのとき。たまたま灯台下に乗せられたuenoさんは、何度も尾長の激しい当たりに見舞われ、ようやく取れたのは48cmの尾長グレだったそうな。大きな口太も釣れて大満足の釣りができたそうな。その話は何度も聞かされていた。 だから、uenoさんが灯台下に行きたいのもよくわかる。でも、それは8年も前の話だ。「祇王精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、・・・おごれるものも久しからず・・・」のくだりが頭を駆け巡った。それに有名磯とはいえ、潮がいかなきゃただの岩じゃないのか。 おいらは、このところ、実績があるわけでもない灯台下に乗るというuenoさんの意見に賛成しかねた。まだ、西磯が本調子でなければ、平瀬崎で尾長をねらってもいいではないか。 「kamataさん、もう数はいらんバイ。尾長ば釣ろい。」 この一言にわたしは折れてしまうことに。そうね。確かにもう数はいらないよね。平瀬崎に行けば、釣れるとわかっているけど、あえて冒険するのも悪くないね。そして、船長に、 「灯台下でお願いします。」 とこちら側の意見を伝えた。しかし、 「わかりました。あそこも口太が釣れますよ。」 の船長の言葉に尾長グレという言葉がなかったのが気になった。 我々は、すぐに身支度を始めた。6時半に出発することを伝えていて、民宿の女将さんに、朝食のおにぎりを頼んでいたが残念。仕方がない。 午前5時半に民宿を出発。徒歩5分で港へ到着。閑散とした鹿島港に猫が1匹出迎えてくれた。しばらくすると、遠くから船のエンジン音が聞こえてきた。 さあ、今日は一体どんな魚に会えるのだろう。再び期待で胸が膨らんでくる。やがて、きらびやかなLEDを伴った誠豊丸が、たくさんの釣り人を乗せて港に入ってきた。昨日とは違うメンバーに荷物を積み込んでもらい。いよいよ港を後にして、沖へ出撃だ。 まず、船は、10分ほど走って、中甑方面の弁慶島に瀬付け。2番半に乗せた後、今度はまた港方面に戻ってしばらく走る。我々が昨日お世話になった平瀬崎へ瀬付け。ピン釣り師が渡礁。クーラーが小さすぎません。こんな心内語で彼を見送った。 「次は、kamataさん、灯台下です。」 船は藺牟田海峡を過ぎていよいよ念願の西磯エリアに侵入した。西側に入って、海況が思ったよりも良くないことがわかった。 波高1.5mの予報にも関わらず、西側はうねりがあり断崖の岸壁の足下を洗っていた。以前乗ったことのある「鳥の巣」「ダンママ」「冷水」を過ぎ、中甑エリアで一番西側に位置する灯台下の前でエンジンがスローになった。 おう、なつかしい。2003年11月以来の灯台下。うねりで高場と低場を分けるワンドはものすごいサラシができている。船はネンガ瀬との間の狭い水道に入った。灯台下の低場とがっぷり四つに。 急いで渡礁。荷物を受け取り、時計を確認。午前6時半になるところだ。もうすでに夜が明け始めている。急いで準備をしなければ。 撒き餌は1日目と同じ。違うのは、昨日はタックルが軽めで幾度もバラしを演じてしまった反省から、尾長を意識した仕掛けにしてみた。 竿は、がま磯アテンダー2.5―53。道糸4号にハリス3号。ハリはグレ針7号。タナは例によって2ヒロの半遊動から始めることにした。 Uenoさんは、早くも準備を整え、撒き餌をそこそこに釣り始めていた。うねりで海はがちゃがちゃしている。潮は、ネンガ瀬との水道を沖に流れているようだ。 いい潮のような気がするが。すると、uenoさん早くも魚との交信を始めていた。Uenoさんの勝負竿であるがまの2号竿がトラブルで使用不能になってたいた。そこで、昨日も大活躍を果たしたスーパーサブのダイワの1.2号竿で釣っていたが、これが今朝のマズメでも活躍しそうだ。 Uenoさんがかけた魚は、潮に流していくといきなりあたってきたようで、瀬際伝いに沖へと走ろうとしていた。ぐっぐっと魚が竿を絞り込む。竿が容赦なくつの字に曲がっている。 「なんかな、こいつ。」 Uenoさんも竿がやわらかいだけに強引な勝負ができない。慎重にやりとりをするuenoさん。魚が浮いてきた。サラシの中からぬうっと現れたのは、赤い魚だ。 「おっ、マダイバイ。やったあ。」 Uenoさんが本日初の釣果となった魚は2015年初春にふさわしいめで鯛だったのだ。42cmほどのほどよい大きさ。 「ここもマダイの釣れるとバイなあ。」 Uenoさんマダイが釣れて大満足のよう。こちらもこうしちゃおれない。仕掛けを作り終えてこちらも第1投。まずは、クロはサラシを釣れの格言どおりサラシの発生している瀬際をねらうことにした。 やはり予想どおり、ウキが消し込み始めた。合わせてみるが、竿に乗らない。なるほど、タナが合っていないな。タナを2ヒロから1ヒロ半に浅くして、第2投。 今度は明確に当たりが出た。合わせると竿にしっかり乗った。2.5号の竿だもの。強引に浮かせると、口太が浮いていた。慎重に抜き上げる。よしっ、これでボウズ脱出だ。 更に沖目に遠投して、道糸が走り2枚目。これは、42cmの許せるサイズ。あまりに順調すぎる出だした。川内港の満潮は午前8時過ぎ。上げ潮のいい時間帯にとにかく釣らなくては。 マダイに続いて1匹目のクロを釣ったUenoさんが声をかけてきた。 「kamataさん、これ渡りグロじゃなかかな。」 確かに、これまで釣ったクロの体色はブルーだった。そういえば、昨日の平瀬崎では、すべての魚が居付きの地グロ系だった。沖から入ってきた魚なら数釣れるはず。潮は、沖に行く流れではなく、ネンガ瀬方面への流れになったが、3枚、4枚目と順調に渡りグロをゲット。そして、5枚目は、渡りグロではなく地グロだったが、連続して釣れることでその状況の変化は気にしなかった。 これだけ数釣れるなら、そのうち大きいのがあたってくるだろう。このときまでは楽観的になっていたが、そのうち潮が止まってしまい沈黙が始まった。やはりさっきの地グロが確変の終わりを告げたのではないか。 表層の潮は沖に向かって左に早く流れているのだが、底潮は全く動いていない。きつい二枚潮の時間帯がやってきた。道糸が表層の潮に引かれて、魚の当たりが拾えない。ウキを完全に沈めてみたりいろいろと工夫してみるものの魚を喰わせることはできなかった。 しばらくすると、誠豊丸が見回りにやってきた。 「kamataさん、どうですか。」 前半いい感じだったので、両腕で丸い輪を作ってOKのサインをしてみせた。 「そうですか。よかったですね。他のところはあまり釣れてませんよ。ここでねばって」 9時過ぎに、潮が右に動き出した時に、1枚追加した。そして、悔やまれる出来事が一つ。ハリスをチェックした時に、ハリスに結び目ができていた。ここで気づいたならばすぐに直すべきだった。 しかし、そのまま釣り続けてしまい後悔することになった。 午前10時頃渾身のアタリをとらえた。アテンダーが今までにない曲がり方を見せてくれた。 こいつはでかい。その瞬間そう思った。しかし、無情にも竿は天を仰いだ。チェックすると、ハリスの真ん中からいってしまっていた。そう原因は、ハリスに問題があったのに、それを改善しなかった自分の怠慢にあった。 潮位がだんだん下がってきて、サラシも少なくなってきた。海も落ち着いてきたが、潮は相変わらず動かず苦戦を強いられた。 その後、潮が引いたので高場にいってみたが、潮は動く気配はなく、11時頃、45cmのサンノジと35,6cmの地グロを1枚追加して納竿とすることにした。 おいらの釣果は、クロが42cm〜35cmが7枚という結果に。尾長の気配はなかったが、でかい口太の気配はむんむんする。まだまだこれからという灯台下の釣りを終えた。 「潮のおかしかったなあ。ばってん、おもしろかったバイ。」 Uenoさんが磯場を片付けながら、思わずつぶやいた。おいらも全く同感だ。 魚はそこそこ釣れたが、それ以上に、自然と一体になれた2日間だった。 迎えの船に乗り込み、デッキの最後尾に入った。そして、船に自分たちのために何かが届いていることを知った。 それは、我々が早めに民宿を出て、あきらめていた朝食のおにぎりだったのだ。丁寧に、一つ一つラップに包んであった。そして、なんとuenoさんが部屋に忘れていたガラケーも添えてあった。 我々は、帰りの船の中でありがたくおにぎりをほおばりながら、自然だけに楽しませてもらったのではなく、船長を始め民宿の女将さんのおもてなしの心にも癒やされたのだと気づかされたのだった。もちろん、自分たちが魚を釣ったのではなく、船長に釣らせてもらったということはいうまでもなかった。 だんだん遠ざかる甑島を眺めながら、寒いはずの風がさわやかな風に感じ、甑島にまた挑戦することを心に刻んで離島の渡船基地串木野港に帰るのであった。 |
![]() 初釣りの準備をする誠豊丸 ![]() 今日は瀬替わりはありませんよ〜
夜が明けるまで時間がありました 新春にふさわしく金のビールで乾杯 ![]() uenoさんは船付けで ![]() 裏の水道はおいらがゲット ![]() 早くもボウズ脱出 ![]() 見事なプロポーション ![]() 左のシモリ根付近がポイント ![]() 左に潮が動けば 釣り座を高い地点に ![]() 食いが渋くなったらハリを落とします ![]() 居付きのクロみたい ![]() 尾長グレもいました ![]() 本日最大サイズ 44cm ![]() 上げ潮でも時合いがありました ![]() しっかりとお片付け ![]() 本日の釣果 ![]() uenoさんの釣果 ![]() 静かな鹿島港 ![]() 民宿マルニさんお世話になります ![]() 新鮮な海の幸がてんこ盛り ![]() 二日目は 灯台下 ![]() あこがれの灯台下で ![]() うねりがけっこうありました ![]() なんか喰ったバイ ![]() めでたい魚でした ![]() ボウズ脱出 ![]() 本日の釣果 ![]() ありがとう 灯台下 ![]() 今回の釣果 ![]() 44cm〜34cm24枚 サンノジ1枚 ![]() 楽しかったね 右サンノジ 左クロ クロの握り寿司 サンノジの握り寿司 クロのみそ汁 |