9/15 秋は青物 餌取りと遊ぶ 一辺島


秋の一辺島

日照時間が少なく、驚くほど涼しかった8月が慌ただしく過ぎ、9月がやってきた。9月と言えば台風の多い時期。また、秋雨前線が活発になり、思った以上に雨が降る時期でもある。






 この時期に秋磯を満喫できる磯上物師は少ない。水温が上昇している中、餌取りの猛攻をかわしながら釣りができる凄腕釣り師だけが、本命を手にすることができる。






 自分には当然そんな技術はない。もし、この時期に離島に行こうものならば。血に飢えたイスズミのとめどもなく続く波状攻撃になすすべもなく磯を後にしなければならないだろう。朝一番が夕暮れ間近のわずかな時間帯が勝負という切ない釣りを。

 そこで、この時期は、磯上物道具の確認と来たるべきベストシーズンに向けての練習に湾内や近場の磯で肩慣らしをした方が無難と考える。

 行き先は、人吉ICから最も地理的に近い錦江湾奥の一辺島に決めた。錦江湾奥に位置しているが、50オーバーのチヌが狙える好釣り場として知られている。この磯で狙うことのできる魚は多種にわたり、チヌ、マダイ、クロ、バリ、アジ、ミズイカ、ボラ、コトヒキ、ゴマアラなど。秋になると青物の回遊もあり、ハガツオなども期待できる。

 一辺島の特徴は、水深の深さだ。足下から階段状に下がっている形状になっており、遠投するポイントは、30mほどの水深があると考えられる。

 人気ポイントなだけに、餌盗りも多い。キンギョと呼ばれる定番のネンブツダイ、トウゴロウイワシ、底に仕掛けを入れると、チャリコ、ミニガラカブ、ベラ、たまにウミケムシなどが邪魔してくれる。これらの餌盗りたちはたいしたことがないのだが、小クロや小アジが邪魔してくるときは、中々仕掛けを底まで到達させることが難しい。

 それでも何か釣れるから、この磯は退屈しない。早速、案内してもらえるかめ丸さんに連絡を取る。

「いいですよ。6時前に来てください。」

釣具店は、隼人市内にある品揃えではかなりハイレベルな永友釣り具に餌を予約して時を待つ。

携帯の目覚ましで午前3時半に目が覚めた。すぐに身支度をし、高速道路に入る。

隼人の釣具店までは1時間。船が待っている隼人港は高速の出口から車で20秒という近さ。まさに、釣り師のための高速道路だ。


ところが、予報が急変し高速道路を南下している時から弱い雨が降り出した。雨はたいしたことはないが、雷だけは避けたいところ。


隼人港に着いたころには、かなりの雨量が地面を叩いていた。心配してかかめ丸さんから午前5時過ぎに連絡を受け取る。白みだした空を見上げる。カッパがあるから大丈夫だが、一日中濡れ鼠になるのではないだろうか。

不安な気持ちで、港に着くと不思議なことに雨はやんでいた。そして、今回お世話になる船頭さんが待っていてくれた。

「夜釣りのお客さんがいるんですよ。そのお客さんと入れ替わります。今から出航しましょうか。」

えっ、ここは夜釣りもできるのか。この磯は何隻かの船があったが、船頭さんたちはもうすでに引退してしまったそうな。

「夜釣りでは何が釣れるんですか」

「アジのいい型が釣れます。」

船頭さんは、両手の人差し指で釣れる魚のサイズを教えてくれた。30cmクラスとみた。

「夜はね、魚がアジに入れ替わるんですよ。この前も30匹くらい釣ってましたよ。」

「今は何が釣れますか。」

すかさずジャブを入れる。

「この前も50cmのチヌが釣れてましたよ。クロも釣れますよ。」

以前利用していた渡船は、携帯がつながらず、渡礁させたことを忘れないでほしいと念じていたほどだったが、今度の船頭さんは年はいくらか若く、携帯電話も使いこなせるし、安心できそう。

荷物を5,6人乗りくらいの船外機をつけたボートに乗せ、午前6時いよいよ隼人港を出港した。

 915日(月)、敬老の日。小潮周り。満潮は1115分ごろ。船はゆっくりと細長い港から沖に続いている水道をゆっくりとしたスピードで滑っていく。沖に出ると右手に大きな辺田小島が見えてくる。その対面には無数の養殖筏が並んでいる。

 養殖筏が目白押しのこの海域は魚にとっても餌に困らないパラダイスではないか。更に、よいことに養殖筏の更に沖には、釣り筏があり、釣り人が餌をたくさん撒いてくれる。

 一辺島はそんな大きな島と筏の間にぽつんと鎮座している独立礁である。度重なる地殻変動後隆起し、かつては山として存在したと思われる。縄文時代前期に一時的に起こった地球温暖化による海水面が上昇。弥生時代にかけて少しずつ海水面が交代する中でその姿を現したと思われる一辺島。その後、気の遠くなるほどの長い歳月を経て風雨にさらされた結果現在のような形となった。

 地球の歴史を見続けてきたこの島は、今はやさしく食物連鎖を形作った魚たちを大きく包んでいる。釣り人が時々やってきては、少しばかりの海の恵みをいただく。その一辺島は今回どんな恵みを与えてくれるのだろう。

 船は本当にゆっくりとしたスピードで進んでいる。米粒ほどだった目標が、少しずつ確実に大きくなっていく。なつかしい磯の形状がわかるくらいに近づくと、夜釣りを終えた釣り師がくつろいでいるのが見えた。

 船がゆっくりと磯に接岸する。夜釣り客の荷物を回収するのを手伝う。表情と動きからそこそこ釣れたことが察知できる。魚の活性も悪くないようだ。これは期待が持てるかも。

 夜釣り客と入れ替わり、久しぶりに一辺島の磯に立った。

「帰りは何時ですか。」

「一応3時でお願いします。早めに上がる時は電話します。」

了解の合図をして船頭さんたちは去って行った。

さあ、久しぶりの一辺島だ。ゆっくりとこの磯にいることをしばらくの間味わいたかったが、チャンスの朝まずめだ。仕掛け作りを急ごう。

竿は、ダイワメガドライM2の1.5−53。道糸2号、ハリスは1.75号。鉤はチヌ3号。仕掛けは、この場所でこれまで抜群の実績があるウキが2Bクジラの全遊動だ。

撒き餌は、オキアミ生半角にチヌパワーと重めの集魚材日本海を混ぜ遠投できるように堅めに仕上げた。餌は、餌取り対策としていつものオキアミボイル3Lサイズとダンゴ餌を用意した。

ポイントを作るため、いつもの場所に撒き餌ダンゴを投入。仕掛けを作ったところで第1投。仕掛けが底まで届かないうちに、ウキに反応が出た。試しにあわせてみる。

軽いが生命反応がわずかに表れた。浮かせてみるとチャリコ。20cmに満たないサイズで即放流。第2投、これもチャリコ。どれも仕掛けが底に着底する前に喰ってきたもの。

上げ潮だから、船付けの釣り座は当て潮になる。しかし、船付けに当たって左右に流れるところがポイントになるので、当て潮でも落胆することはない。

しばらくして、ウキが沈み始めたところで道糸が走った。なんじゃこりゃ。仕掛けが底に行く前に喰ってきたみたいだが。浮いてきた魚を確認する。しっぽは鋭角的だ。新幹線のような流線型の形は紛れもなく青物だった。

しかし、残念なことにこの青物はアジなどの商品価値の高いものではなかった。ブリの幼魚「ヤズ」だ。しかも40cmほどの今まで釣ったことのないようなミニサイズ。こんなサイズを食べたことがない。持って帰るかどうか迷ったが、鉤をすっかり飲んでしまっているので、生存率が低くなると考え、キープすることにした。

ところが、これからヤズとチャリコの波状攻撃が始まった。全遊動ウキしか持ってきていなかった私は、こいつらの疾走をとめることができなかった。

途中で、ボートに乗った釣り人と話をした。彼は、磯釣りをしているおいらの近くでルアーを上げている。しかし、魚からの反応はナッシングのようだった。

「どうですか。」

「いや〜ヤズばっかりですよ。そちらはどうですか。」

「セイゴねらいなんですけど。ぜんぜん。」

ダンゴ餌に変えたが、ヤズはダンゴだろうがオキアミボイルだろうが食い付いてきた。この調子なら、相当な数がいる模様。

浅いタナにはいないが、竿1本くらいのタナにたくさんいるもよう。また、30cmくらのマダイもその浅いタナで喰ってきた。海の中は、餌取りパラダイス。しかも、喰えるか喰えないか微妙な感じのお魚さんたちと終始遊んでもらうことになった。

チャリコとヤズのコンビという今までで最強クラスの餌盗りに翻弄され続けたが、ほどよく当たりもあり、十分楽しませてもらった。

昼過ぎまで粘る予定だったが、スマホの雨雲レーダーが1時過ぎに雨を降らせる予報を知らせてきたので、1時に早上がりすることにした。

むかえに来た船頭さんに

「ヤズとチャリコばっかりでしたよ。」

「ヤズとチャリコは多いですよ。昨日の方はそれをかわして釣ってましたよ。」

「途中、ハリスをぶち切られました。どうもヤズではないようなんですが。」

途中で、得体の知れない青物らしき当たりがあったもののハリスをぶち切られたことが気になって尋ねてみた。

「たぶん、ハガツオじゃないかなあ。ハガツオはよく釣れるよ。歯がするどいからね。本鰹よりうまいよ。」

なるほどそうか。やはり工夫が必要だったのね。ただ、餌取りが意外にも食えそうな魚だったので、それで満足してしまったのが、工夫しなかった原因である。

昼間での釣行だったが、一辺島のポテンシャルの高さを改めて感じさせられた今回の釣行。港に上がった途端降り出した雨が、一辺島が今回の釣りを快適なものにしてくれたと知らせてくれた。改めて釣りをさせてくれた一辺島に感謝の気持ちを港に残して家路を急ぐのであった。





とても親切な船頭さんでした



























隼人港方面を臨む

久しぶりに一辺島と対面

夜釣りのお客さんと入れ替わり

なつかしい場所に帰ってきたみたい

この先はチヌのポイントです


釣り筏が見えます

第1投からチャリコ



チャリコの次はヤズでした^^;


また ヤズがきた


またもやヤズ これは群れで居付いているな

上げ潮は手前に当たってきます

いつもの餌盗りのキンギョが元気なし


筏が点在しています


釣っても釣っても ヤズ


錘を外すと こいつが・・・・><

クロいるんだね

竿1本くらいの浅いタナで喰ってきました

本日の釣果

ありがとう楽しませてもらったよ

今度はいつここにこれるかな

むかえお世話になります

ありがとう一辺島

隼人港に戻ると雨が

マダイとヤズの造り

ヤズの中華風刺身

ヤズのハンバーグ

マダイの潮汁


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