12/30 悪条件は好条件? 硫黄島・新島


硫黄島 新島

今年の冬は暖冬です。

気象庁から発せられる長期予報では、そのように行っているという。


ところが12月は思いの外寒かった。


平均気温や降水量(積雪)は観測史上3〜4番目に寒く、雪が多い月だそうだ。水温も例年なく順調すぎるように水温が下がり気味。

 

それゆえ、12月に入って磯釣り師をの頭を悩ませる天候が続いた。



クロが釣れそうな水温まで下がってきているというのに、沖は時化が続き、渡礁も限られた日時のみ。



釣りに多くの時間をかけられる職種ではない男たちは、土日に照準を合わせたようにやってくる時化に地団駄を踏んだ。



サラリーマン釣り師に、釣行日を選ぶ権利はない。自分が休めるときが釣行可能日だ。

 

それでも、23日は甑島・鹿島でuenoさんと納得行く釣りではなかったものの、渋い魚と対峙するおもしろさを味わった。

 

2014年が終わろうとする1230日、uenoさん、M中さんとの3人で1年安全に釣りができたことに感謝の気持ちを込めて、HG硫黄島で釣り納めを行うことにした。

 

29日の午後11時、約束の時間より30分も早くM中さんが待ち合わせ場所であるわたしの自宅へやってきた。

「お願いしまっす。」

今回の釣りに並々ならぬ意欲を見せながら全身の毛穴からアドレナリンを発しながらやってきた。


M中さんはドクター。彼も釣行日を選べないサラリーマン釣り師の仲間である。


Uenoさん宅に集合し荷物を車一台に積み替えていよいよ硫黄島に向けてレッツらゴー。

九州自動車道を南下。AZで付け餌などを買い、離島の渡船基地である枕崎港に着いたのが、午前2時を少し回ったあたり。

港は、草垣群島行きの第八美和丸と思われる自動車でいっぱい。また、となりの黒島行きの荒磯に乗船する釣り師の車もなかなかの数。


それに対して、黒潮丸の自動車は数えるほど。御嶽山や阿蘇山の噴火の影響か、火山に見守られながら釣りができる価値に暗雲が立ちこめてきたのだろうか。


kamataさん、時化でねえ。出発が何時になるかわからないよ。」


この時期の硫黄島の価値は、夜明け前から朝方にかけてねらうことができるデカ尾長である。硫黄の臭いが立ちこめる場所で、デカ尾長をねらう緊張感は、タマラナイ。そう間違いなく、誰もがそうであるように、我々3人は尾長グレに恋をしてしまったのである。


その尾長釣りができなくなるかもしれない。出航時間が遅れるというのは、かなりのマイナス材料だ。


しかし、前日に船長から「午前3時集合です」の吉報を受け取った。そして、今年も釣り納めで尾長をねらう釣りができることに感謝。


午前3時前、いつもの軽トラックで船長登場。にわかに釣り師の動きが活発化。


ぶるん、ぶるん。黒潮丸に命の鼓動が蘇った。荷物を積み込む釣り師たち。今回の離島への夢舞台行きの挑戦者数は12,3名。わたしが離島に通い始めた頃に比べると半分に満たない数だ。


kamataさん、鵜瀬に乗せてあげようと思ったけど、時化で鵜瀬は使えないよ。今日は上げ潮だからみゆきよりも3人で新島に降りて、一人はあとで洞窟に乗せてあげるよ。」


釣り人のロマンをどの船長よりも理解してくれる泉船長の一言はうれしかったが、これからの釣りに不安を覚えた。



29日に通過した低気圧の影響は、天気図以上のものがあったようだ。北西の風やうねりがあっても、季節風に強い鵜瀬は釣りができることが多い。この時期、デカ尾長の産卵場所である鵜瀬が使えないのは痛い。



黒潮丸は、午前320分に暗闇の枕崎港をゆっくりと出発した。



案の定、がっぱんがっぱん揺れた。キャビン内で鵜瀬が使えない理由を体感しながら、毛布にくるまった。



通常は、ここで1時間でも睡眠を取り、釣りの体力を蓄えたいところだったが一睡もできずに、エンジンがスローになった。


kamataさん、準備してください。」

デッキに出てみる。結構な風と波。波に翻弄されながら、船はゆっくりとサーチライトを照らした目的地へと近づいている。



ごつごつとした不規則な巌の集合体が見える。西之島の噴火が話題となった2014年より80年も前、1934(昭和9)に形成された昭和硫黄島だ。釣り師の間では新島と呼ばれている。



まず、船付けにピンベテラン釣り師が無事に渡礁。次に、東のスベりにピン底物師。そして、我々の番になった。船は、新島の南東側にあるワンドの中央部に向かっている。


「えっ、ここも釣り場なのか。」


今まで渡礁をみたことのない場所だった。それだけ渡礁を限られたラフコンディションだったのだろう。3人はすばやく渡礁し、船長のアドバイスをまった。



「最初は下げで尾長ねらって。明るくなったら上げに変わるから(ウキ下を)浅くして釣って」



船は反転し、浅瀬方面に向けて走り去っていった。


「時化とったなあ」


Uenoさんが一言つぶやいた以外、3人は無言で準備を始めた。もちろん、夜明けまでのこの時間帯が最大の尾長グレをしとめるチャンスであることはわかっている。


初めての場所で、海底の様子がどうなっているかまったくわからない。取りあえずセオリーどおり撒き餌をたっぷり効かせて大きいタックルで瀬際を釣り始めた。


竿はダイワブレイゾン遠投5号に道糸10号にハリス10号。3Bの電気ウキの半遊動。タナは1ヒロ半から始めた。


このワンド奥の場所はサラシが少なく、尾長釣りには良さそうな感じだが、撒き餌のたまる場所がほしい。UenoさんもM中さんも準備完了し、3つの海蛍が漆黒の瀬際を彩った。


仕掛けを回収する度に餌をかじる輩がいる。だれだ君は。


しばらくすると、その答えをM中さんが出してくれた。


はいっ、予想どおりイスズミさんでした。イスズミは、この硫黄島で年中大発生している。硫黄島で釣りをするためには、イスズミと無縁でいることは考えられない。イスズミはこの釣りの税金と考えるべきだ。


わたしの仕掛けにもイスズミが食い付いた。尾長グレは一気にウキを持っていくし、シャープな引きを楽しむことができるが、イスズミは警戒しながら小さなアタリだ。



そして、やつは横に走る。そして、喰わせたらがんがん竿を叩く。口が堅くハリスが傷つくので厄介な存在だ。



クロを釣りたいなら、イスズミも釣りなさい。いや正確に言うと、イスズミを釣りながら時々釣れるクロを拾っていく。そして、大切なことはクロにとっての良潮が入った時合いを逃さないことだ。硫黄島に通うベテラン釣り師から教えてもらった話だ。


ところが、釣りを初めて気になることがあった。帰ってくる付け餌があたたかいのである。まるで、温泉につけたような体感。いい潮が入っているように思えるのだがアタリなく首をかしげながら釣りを続けた。


突然、uenoさんが「なんか喰ったバイ。」と言いながら魚とのやりとりをしている。どうせイスズミだろうと思っていると、暗闇の中で跳ねている魚影がイスとは違った。ライトを当てるとみなで驚いた。


バラフエダイである。40cmクラスの小型であるがうまい魚である。Uenoさんもちろんキープ。この魚は正真正銘の夏魚。この魚が釣れるということは、海中は夏模様か。



しばらくすると、その答えを再びM中さんが出してくれた。


「なんか、ぼこぼこ泡が出とる。」


トイレを済ませようと構えると、その目標地点に不振な泡を発見。



どうやら、この場所は海底から温泉が湧き出ているようなのだ。ここでようやく度重なる寒波で水温が下がっているこの時期に、イスズミの躍動と夏魚の訪問がみられたか理由がはっきりした。



そして、本命の姿をみることができない残念な朝を迎えた。


「なんか、ボウズの予感がするね。」



uenoさん。尾長釣りを早々とあきらめ昼釣りの仕掛けを作り始めていた。



前回の鹿島での惨敗がメンタルをメガティブなものにしていた。M中さんも同じく昼釣りの仕掛けに変更。」



わたしは、夜釣りの仕掛けのままで船の見回りまでは尾長1本ねらいの予定。これから上げ潮が走り出す。いい潮が流れたらチャンスはあるはず。




今日の干潮は午前7時半ごろ。夜が明けると、不可解なことだが魚からの反応が全く途絶えてしまった。



付け餌がそのまま返ってくる。付け餌を触るとなぜか冷たい。温泉から水風呂に入った感じ。突然冷たい潮が入ってきたようだ。



首をかしげていると、釣研の3Bのウキがバスクリンのような海中に一気に消えた。反射的に合わせる。よし、キター尾長だ。


いや、軽い。ハリス10号の太仕掛けには不釣り合いな魚を抜き上げた。


「クロばい、クロ」とuenoさん。


尾長ではなく残念。だが、ボウズ脱出は素直にうれしかった。


この釣果は2人の準備の時間を加速させた。Uenoさんは中央にあるサラシのはけだしをねらうようだ。



しばらくすると、uenoさんが魚とのやりとりを始めていた。抜き上げた。クロである。それも40はありそうな良型。更に、もう一匹。



「釣れたバイ。深くなかバイ。サラシの先で喰ったよ。」


クロが釣れてほっとするuenoさん。対照的に、焦るM中さん。


ところが、この時合いは短かった。3人ともにアタリがない時間帯が続く。


わたしは、クロが1匹釣れた後、尾長釣りをあきらめ昼釣りの仕掛けを作った。そして、初めてのポイント洞窟へと心を奪われていた。


竿はがま磯アテンダー2.5―53。道糸4号、ハリス3号。ウキは取りあえず3Bをチョイス。ハリはグレ針7号を準備した。


しばらくして、黒潮丸が近づいてきた。


「どう?釣れてる?だめ。」


3人でクロが3匹しか釣れていないことを伝える。


「鵜瀬は風と大波で無理。ここで粘って。Kamataさん、新島にもう一つポイントがあるけどそっちへ行ってみる?」


この船長の申し出を断る理由はなかった。船に飛び乗りそのポイントのみえるところまで連れて行ってもらった。底物師のいる東のスベりの更に東側の地点だ。


「あそこに、瀬が見える?その先にサラシがあるでしょう。そこはワンドになっていてクロが入れ食いします。(タナを)1mくらいに浅くして釣ってください。」


了解しました。再びさっきの場所に戻してもらい。タックルと餌を抱えてそこまで歩いて移動することにした。船は、


120分に迎えに来ます。」


と言って去って行った。





























































わたしは、急いで荷物を整理し、タックルとバッカンを持って歩いてさっき船長が教えてくれたポイントに迷わず移動を始めた。


「向こうで釣ってきます。」


距離は150mくらいだと思われるが溶岩が冷え固まってできた場所だ。



平らな場所があるはずはない。途中、硫黄の臭いが確認できる場所がある。



初めての場所での釣りは心躍るものがある。思いバッカンを抱えながらの移動は、50歳を超える肉体には過酷だったが、それを忘れさせる魅力がこの硫黄島にはある。



底物師を右手にみながら、10分くらい歩いてようやく新ポイントに到着。周囲の状況を確認。



新島西側の高場に行くよりはずいぶん楽な行程だったが、気になることが一つ。魚を釣るポイントはわかるのであるが、釣り座がどこかがわからない。



この場所は全体的に低く、海底も浅いと考えられるため、やりとりには余裕がない。



勝負を決めないと瀬に潜られて切られてしまう。ということはできるだけポイントに近いところで釣りがしたい。



でも近づこうとすると時折うねりでどっかんと波が打ち寄せてくる。



そこで、選んだ場所は、ポイントに比較的近く、高い場所だった。これから上げ潮で潮位が高くなるので注意が必要だが、今のこの状況なら大丈夫だろう。


早速、撒き餌もそこそこに釣りを始めた。どっかんと瀬に波が打ち寄せている。そのうち寄せている場所に撒き餌を打つ。



撒き餌が広がる場所に仕掛けを入れる。時折デカ波がやってくるので、仕掛けがぐちゃぐちゃになってしまう。仕掛けを入れるタイミングが難しい。



1投、2投と餌がとられるだけだった。仕掛けを落ち着かせるために、ハリスに重めのガン玉、を。ハリスを矢引にさらに浅くして魚の反応をみる。


ウキが一気に白い洗濯機の中のような泡に消えた。道糸が走って、硫黄島ならではのやりとりに入る。



アテンダーの剛力を信じてひたすら強引に浮かせて抜き上げる。白い泡とは対照的な黒い魚影が宙を舞った。


40をわずかに超える口太がぴちぴち跳ねていた。よしっ、これは釣れるぞ。入れ食いの話は本当だったんだ。


ところが、次の魚は釣り人を大いに落胆させた。イスズミである。おいおいここにもいたか君は。



イスズミは時々テンジクイサキやソウシハギというお友達も釣れてきた。そして、たまにクロが釣れるという展開。1投ごとにアタリがあり、退屈しない釣りができた。


しかし、退屈しないということでは、他の要因がむしろこの釣りを楽しいものにしてくれた。



上げ潮がはどんどん潮位を上げ、うねりに端を発した波が正面から左から時折どっかーんとやってきては、釣り人にびしょ濡れの洗礼を浴びせた。


気がつくと、釣り人の膝まで波が来た。そして、タオルや撒き餌シャクが消えていた。すんでのところでバッカンを守った。いつのまにか、魚を入れたドンゴロスまで流されるところだった。


後半は、釣り座のかなり後方にバッカンを置き、スコップに撒き餌を入れてポイントに投げ、スコップを後方に捨てて、仕掛けを入れた。



やりとりをしながら、波がどっかーんと来ることもあったが、幸いに人を流すほどの破壊力はなかった。



こうして、波をよけながらの楽しい釣りはあっというまに過ぎていった。魚が10枚に達したところで時計をみると12時前だった。少し時間は早いが納竿とした。


船付けまで戻ると、2人とも釣りを終えて、片付けまで終わっていた。


Uenoさんは船の見回りからイスズミと青物らしきアタリがあっただけでやや不本意な結果となったそうだ。


そして、M中さんがまた青物らしきアタリの答えを出していた。グレバリを号数を上げて釣った青物の正体はネイゴだった。


120分過ぎに船が迎えにきた。いいポイントを教えてくれた船長に感謝の言葉を。



となりの船付けで釣っていた釣り師は、見回りまでボウズだったが、それから入れ食いに転じたそうだ。



うねりで渡礁場所が限られる中、サラシができたところはクロ釣りには好条件だった。我々3人が乗った場所はサラシが少なく条件に恵まれなかったのは残念だった。



帰りの船は揺れに揺れ、90分かかるところを2時間かけてようやく枕崎港へ帰還した。



2014年悪天候続きだった12月を象徴するような条件の中での釣りだったが、船長の粋な計らいでいい釣りができた。



あと1日で2015年の年が明ける。2015年はいったいどんな年になるだろう。帰りの自動車の中で、uenoさんと早くも初釣りでの戦略をああだこうだと話しながら、人吉盆地へと帰っていった。


みなさんにとっても来年はいい年でありますように。



離島への渡船基地 枕崎港




日中でも尾長があたってくるよ















普段は乗せない場所に























































東のすべりには底物師


































































































































早くも尾長釣りをあきらめ 口太釣りへチェンジ


























わたしは尾長釣りをあきらめずに






















瀬際に温泉が湧いていました























ボウズ脱出 10号ハリスでゲット


M中さん場所移動






uenoさん サラシのはけだしで良型クロ2匹ゲット





新島の新ポイントを教えてもらいました


陸路で移動します


東のすべりでは底物師が奮闘中


新ポイントから硫黄岳を望む


沖の沈みとワンドの間がポイント


いきなり40オーバーゲット



テンジクイサキも絶好調でした


ここのクロよく引きます


釣り座は波の下


M中さん工夫してネイコを゙ゲット


ありがとう 新島


今回の釣果 40cm〜32cm10枚


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