10/31 リア充な釣り 甑島鹿島


秋磯開幕は鹿島へ

リア充って何?

ネットサーフィンしていると、時々見かけるこの言葉。

以前から気になっていた。

リア充という言葉は、中年以降の世代には馴染みのない言葉だ。しかし、ネット上では市民権を得ている。どういう経緯で出現したのかはわからないが、文脈から語意を想像すると、その根底には実生活が充実している他人を妬むニュアンスがあることがわかる。


具体例をあげると、合コンしたり、大学生活だったり、バーベキューに興じたり、趣味に没頭していたり・・・。



何?趣味に没頭するということは、なるほど釣りもリア充なのか?

気になるのは、実生活が充実している若者がマイノリティーになっているのではないかということだ。




多くの若者が非正規雇用の歯車になって低所得にあえぎ、その不満のはけ口がネット上を漂っているのでは。




若者が元気でない世の中、国は滅びてしまう。若者が元気で将来に夢や希望の持てる世の中にしなければと思う。リア充という言葉の裏を読むとこんな余計なお世話的な考えに至ってしまう。





リア充より鮮烈な言葉がネット上を賑わしている言葉がある。それは、癒やし隊である。これは、やなちゃんさんのブログでは次のような定義づけとなっている。残念なことだが、この言葉はリア充以上にインパクトがあるものの市民権を得ているとは言いがたい。



 

癒し隊!
釣りが大好きなブロ友の集まりですが癒し隊員に求められているのは
自慢する釣果ぢゃなくて頑張って釣りしても魚が釣れないアングラーの心の支えとなり、魚が沢山釣れそうな時も食べるぶんだけ釣ったら後は釣れないふりをする・・・
そして癒し隊の上級者はお魚を貰うのが
魚を釣るよりも上手い(^o^)v

「やなの日記?」より

 

しかし、この癒やし隊は、リア充のような嫉みという醜い部分がない。どちらかと言えば天然系の香りのするメンタリティだ。



1031日、この癒やし隊を自負するおいらの秋磯開幕がついにやってきた。


全国大会の分科会研究発表のプレゼンという大役を終え、ほっとしたところでの自らを癒やすための釣りを企画することで、自分へのご褒美を。甑島の鹿島地区の渡船「誠豊丸」に秋磯の命運を託すことにした。

「いいですよ。クロがぼちぼち釣れ出してます。」

誠豊丸の船長の言葉にも歯切れよさが感じられる。この時期だから瀬ムラは否めないのは仕方がないが、場所によっては大釣りしているところもあり、今シーズンのクロ釣りはまずまずのスタートを切ったと言える。

そこで問題なのは天気!

一雨ごとに、涼しくなってくるこの時期だが、今年はとにかく雨が少なかった。稲刈りには最適だったが、野菜作りには厳しい気候。そして、10月も後半になって、ようやく雨と晴れが交互に入れ替わりはじめた。

1030日は、大陸から高気圧が張り出し、オホーツク海域に低気圧がある。太平洋高気圧も残っていて、夏型と冬型が混在した天気図だ。


だから、台湾から沖縄本島にかけて、低気圧を伴わない停滞前線ができているではありませんか。幸いなことに、この前線の力はそれほどでもなく、31日は出航できそうだ。


kamataさん、(午前)5時出航です。風が強いみたいなんですよ。」


いつもより2時間遅れの出航であることの根拠を説明しながら、船長が連絡を入れてきた。何々、釣りに行けるのは間違いない。脳の前頭前野が、盛んに暴れ、その指令で釣りに行く準備を高速で終えさせた。



九州自動車道を南へ下り、出航する串木野港には出航1時間前の午前4時に到着。まだ、本格シーズンにはほど遠い時期だが、20名近い磯師が集結していた。



荷物を岸壁に持っていき、しばらくすると、新宿歌舞伎町のどのネオンよりも明るいきらびやかなLEDの光を伴って誠豊丸が岸壁に接岸した。


釣り人の動きが、静から動に変わる。



荷物を運ぶ釣り人の足取りも軽やかだ。自然と荷物を運ぶ動きがどんどん速くなる。期待以外の何物でもない精神状態の釣り人をつぎつぎと飲み込んでいく誠豊丸。


現実のしがらみから逃れ、現実とも非現実ともわからぬ二相の世界へと釣り人たちは旅立つのだ。


「ぶるん、ぶるん」


荷物を完全に積み終えてすぐに、釣り人の気持ちに押されるように誠豊丸は静寂の港を離岸した。


「今日は西磯には行かれんかもしれんな」


キャビン内で、こんな釣り師の会話が聞こえてきた。確かに、船が沖へ出ると、想定外の波があり、誠豊丸は、1.5mの波予報を遙かに超える揺れを演出しながら、甑島鹿島に向かって走った。


どれくらい走っただろう。うとうとといていると、エンジンがスローになっていた。時計をみると午前6時過ぎ。すでに明るくなり始める時間帯だ。キャップライトは無用と思われた。


「〇〇さん、準備してください。今日は西磯には行けません。つぎは、〇〇さんです。」


一瞬落胆の空気が流れたが、すぐに釣り人のモティべーションは上昇気流に乗った。


波に翻弄されているキャビンの外に出ると、ここが東磯であることを知らせる島影が西側に見える。


どこかでみたことのある磯に1番手の釣り師が渡礁していった。弁慶1番だ。弁慶2番に渡礁させた後、


kamataさん準備してください。」

船は鹿島港方向に進んでいる。もしかして・・・。


港に向かう途中に藺牟田水道がある。そこに船が近づくと、風が強く吹き付けるようになり、風波が船首部分を叩きはじめる。



「どすん、どすん。」



船は今年の初釣りで大釣りした平瀬崎に向かっているようだ。ありがとう、船長。東磯の中で最も相性のよい磯を用意してくれて。


船首部分のタイヤが磯の先端部分に接岸。一気に磯に飛び移り、荷物を受け取った。


1031日、下り中潮2日目。いわゆる二十日潮と言って、釣り人にとっては最も実績が高い潮回りだ。今は、最干潮から2時間ちょっと経過したところ。これから波があがってくるので荷物を高いところに置いて撒き餌の準備を始めた。


オキアミ生1角、パン粉2kg、遊漁材1袋を混ぜて撒き餌を打ちながら、仕掛け作りに取りかかった。


竿は、ダイワメガドライM2 1.553。道糸2.5号にハリス2.5号。ウキはBをチョイス。タナは1ヒロ半の半遊導で始めることに。


とにかく、風が強い。1月にデカ版を取り損ねた裏の藺牟田水道側で釣りをしたかったが、北風が半端なく強く、とても釣りをする気持ちにはなれなかった。


釣り座は、船着けにした。ここ平瀬崎は基本的に平らな磯で、釣り座がたくさんありそうだが、低いために満潮近くや波が高いときは先端に突き出た一人がやっとで釣りができるような狭い釣り座しかない。


足下はオーバーハングになっていて水深があるが、そのほかは浅く根が点在していて、いかにもクロが居付いていそうないい雰囲気。


期待を込めて海に御神酒をあげ、第1投。


まず、足下からゆっくり仕掛けを流していった。仕掛けを回収すると、餌がとられていた。


2投も同じ結果。おそらく餌取りが活発に活動しているようだ。


タナを少し浅くして第3投。勝負ウキのプロ山元ウキが、ゆらゆらと潮にのってなじんでいる。ほどなく、魚のアタリを知らせるウキの変化が現れると、ウキはすぐに紫紺の海中へと吸い込まれていった。ウキが小さくなって見えなくなるところで道糸がピンと一直線になった。まるで糸電話が通じるように。


「軽い」

浮いてきたのは、足裏サイズの尾長グレ。


水温がまだまだ高いのだろう。取りあえず口太を釣らなくては。魚の居場所を求めて釣り続けた。


 

撒き餌を手前に打ってやや沖を釣るようにしているが、どうも餌取りの猛攻にあっているようだ。





撒き餌を打つと魚が群がっているのが見える。木っ端グレ、コッパイスズミなど餌取りがチラチラ見えている。釣り人の撒く餌を縦横無尽に拾っている彼らこそリア充ではないか。





足裏サイズの尾長グレを釣って以降は、木っ端グレやイスズミがたまに釣れるというつまらない展開に。





たまに釣れる魚を触ってみる。温かい。もちろん、生命の躍動からくる温かさもあるが、水温がかなり高いことが言える。




餌取りをかわすために、ポイントを変えたり、撒き餌の入れ方を変えたりするが、どうしてもかわし切れない。潮が動かないので、ウキをG2に変えた。





風はますます強くなる。道糸が引っ張られ仕掛けがなじみにくい。ガン玉を足して、対応する。





この平瀬崎の船着けの釣り座は、畳半分の広さしかなく、こぶのような形状で一段高くなっている。その釣り座に向かうためには、低い平らな部分を渡っていかなければならない。





潮位がだんだん上がってきた。




風は益々強くなり、北からの風波も白ウサギとなって平瀬崎にも押し寄せてきた。足下を白波が打ち寄せるようになってきた。この釣り座が波をかぶるようなことはないと安心していたが、だんだんそうも言ってられない状況になってきた。




このまま釣り続けても大丈夫だろうか。時計をみると、10時前。満潮は10時半だから、




まだまだこれから潮位が上がってくる。




ザッパーン




飛沫が体全体にかかるようになった。おいおい勘弁してくれよ。後ろからの飛沫だけに、釣りに中々集中できない。




餌を拾って針につけようとしたその時だった。突然の突風が赤いダイコーの磯キャップを奪っていった。




あ〜〜っと手を伸ばしたが届かなかった。赤いキャップはあっという間に沖へ沖へと流されていった。




2012年からお気に入りのキャップで3年目のシーズンに入ったところだった。



丁度その頃、誠豊丸がやってきた。



kamataさん、どうですか。」



いつものように、ダメのサインを送る。



「今日は3時回収です。ここで粘ってください。」




今日は、船長の知り合いの漁船が迎えに来られないようだ。いつもなら、午後4時半くらいまで釣りをさせてもらえるのだが。




今回は、民宿泊まりの2日釣りで、のんびり釣りができると思っていたが、そうもいかないようだ。




さて、なんとかしなければ。風はさらに強く吹くようになってきた。撒き餌を投げるのに風向きと強さを計算しなければならない。




すると、突然の一発波が後ろから飛んできた。




ドッカーン。



波が膝下くらいまで迫っていた。



えっ、ここはかぶらないと思っていたけど。




いかん、ぼやぼやしていると、次の波が襲ってくる。




とにかく、退却だ。竿を持ってとにかく奥の波が襲ってこないところまで退却した。




さて、まだ、バッカンと玉網は残されたままだ。何とか救出したいところだが、それを阻止するかのように波の連続攻撃がやってくる。




もう、釣り座に戻る気持ちになれなかった。ただただバッカンと玉網の無事を祈るしかない。




釣り座付近は高いからよほどの波が来ないかぎりは大丈夫だが、その途中が、危ない。この満潮付近を堪え忍べば、下げ潮に入れば釣りが再開できる。




潮が引くのを待つことにした。

くつはびしょびしょだ。

さっき釣った小尾長グレをタイドプールで活かしていたが、一発波が彼の運命を救った。



朝方は曇っていたが、今はさわやかな秋晴れ。この休憩時間にくつ下と磯ぐつを乾かすことにした。



また、この時間を利用して、バナナと菓子パンの食事。海の異変で釣りを中断しなければならなかったが、こんなまったりとした時間もいいもんだ。こういうのをリア充というのだろうか。



午後11時半ごろになった。風の強さは相変わらずだが、潮が引いてきた。何とか元の釣り座に戻れそうだ。



満潮から下げに入った海は、朝方の静かなそれとは違う。サラシがあちこちにでき、クロ釣りにはいい条件になってきた。潮は、相変わらず動かないが、サラシのはけだしをねらうと、尾長の30cm弱が何枚か釣れた。海は確実にリア充な状況になりつつあった。



そして、午後2時過ぎ頃になると、潮が左に動き出した。左はやや浅くなっており、そこには大きなサラシができている。




何かが変わると凝視していたウキがゆっくりとシモリ始めた。道糸を張り気味にしていると、魚が反転したらしく道糸は一直線に。竿から伝わる手応えは今までのものとは違った。明らかに本命を伝えるトルクだった。




しかし、バラし。仕掛けを回収して針をチェック。針外れだ。気を取り直して、さっき喰った地点に流していく。再び同じようなウキの消し込みが。やりとりを始めるがこれも針外れをやらかした。

おいおい一体どうなっているんだ。針をもう一度結び変え、また、同じところを攻めた。今度もアタリをとらえた。このシャープな引きは、イスズミではない。


案の定、しっぽの白い美しい灰緑色の魚体がぬうっと現れた。口太だ。35cmくらいか。慎重に抜きあげようとすると、なんとドッカーンと波が来て、クロは針外れで海中へ消えた。

何やってるんだよう。3匹連続でもったいないバラしをやらかしてしまった。これだから、癒やし隊と呼ばれるんだな。

この後、落ち着いて2枚の口太を釣った。ようやく潮が動き出し、サラシもできて好条件が整ってきたところで、遠くから船のエンジン音が聞こえてきた。残念だが、しかたがない。せっかく、リア充な釣りになってきたが、時間切れということで納竿することにした。

30cm級のクロを7枚というのが1日目の釣果だ。この時期にしてはまずまずかな。

回収の船に乗りこみ、そのまま鹿島港へ上陸した。船は、そのまま串木野港へ日帰り組を乗せて走り去っていった。

今日の民宿泊まりは、わたしを入れて6名。宮崎からの5人仲間との楽しい夕食と釣り談義が待っていた。それは同じ趣味を持つ者同士。打ち解けるのにそう時間はかからなかった。

よく話を聞けば、その5人組の方々は、宇治群島へ尾長グレをねらう本格磯釣り軍団だったのだ。

この日は、定置奥に乗られた方が2桁釣りだったが、ミタレや熊ヶ瀬に降りた方々はあまりよくなかったようだ。

「鹿島では、例年この港の周辺からクロが釣れだすんですよ」

など、いろいろな情報を教えてもらった。ゆかいな釣り仲間との釣り談義は時間を忘れて楽しむことができる。ああ、これがリア充っていうんだな。

お互いに、明日のいい釣りを願いながら寝床に着いた。

2日目の朝になった。この日は、風も収まり凪になるとの予報だ。朝6時に迎えに来た誠豊丸に乗りこみ、鹿島港から出発だ。

「西は凪ですよ。西磯に行きます。」

このせっかくの、船長のお誘いだったが、この時期は西磯に行くより、港周辺の磯に行った方がいいのでは。

宮崎の釣り人たちの情報を頼りに、わたしは昨日と同じ平瀬崎に渡礁することにした。

瀬上がりして、昨日とは全く違う海況になっていた。風はなく、釣りやすいコンディションだ。

船着けか裏か迷ったが、1月の初釣りでデカ版を取り逃がした苦い思い出がフラッシュバックし、思わず裏の釣り座へと釣り道具を持って移動を始めた。

ところが、ここでとんでもないことに。3投目で早くも口太とのやりとりをしているときに、釣りをしているときに最も聞きたくない音を聞いてしまった。

「ボキッ」

えっ、うそだろ。

飛び込んできた信じられない情景を唖然としながら見つめた。竿が信じられない角度で曲がっている、いや、正確に言えば折れているのだった。しかし、せっかく掛けた魚は取りこまなければなるまい。

短くなった竿で何とか喰わせた33cmの口太を抜きあげて、竿の状況を詳しく調べた。

ああ、やっぱり折れている。

折れるはずのないがま磯アテンダー2.5号が2番目から見事に折れていた。こんな口太の衝撃で折れるとは信じがたい。

何せこの竿は、50オーバーの尾長グレを浮かせる強力なパワーを持つアテンダーだからだ。

しかし、折れているのは事実。おそらく、何かの拍子に竿に傷が入っていたのだろう。この事件の後、期待していたこの磯での釣りだったが、潮がほとんど動かず、サラシもできない厳しい条件の中で、本命を釣ることができずに、納竿とした。

2日目は不本意な釣りに終わったが、甑島でのこの時期にしてはまずまずだったのでは。また、今年の甑島はクロ釣りで鹿島は良いスタートを切ったのではないかと感じた。

釣りを終えて、また、あのネット造語を思い出していた。釣りはリア充であることは間違いないところであるが、ネットのリア充とは何かが違う。そうだ。それは、リア充であるかどうかは自分が決めるということだ。

魚を釣るという趣味でつながった関係は、ネットでの関係以上に充実感を持つことができる。魚を真ん中にして、人と人とがつながり合う釣り道楽こそ、「リアルに充実」ではないだろうか。

今年も癒やし隊としてリアルに充実していきますので、よろしくお願いします^^




気になる天気予報では? 天気予報


















































串木野港で

















弁慶1番からの渡礁です






































平瀬崎船着けの釣り座



右の水道側



下げ潮ではこちらに流します


撒き餌はいつものバージョン



今日1日の釣りの安全を祈願しました



予想通り こいつらが元気でした



こいつも元気でした


午前中にようやくキープしてもよさそうな魚が


どんどん風が強くなります



午前中に頑張った釣り座は・・・



あれあれ・・・


はいっ 波の下です(汗)


びしょびしょに


小さな尾長ちゃんばかり


水温高いのかなあ


回収前にようやく口太が









民宿マルニさん 料理がとてもおいしいです






2日目も同じ磯で




勝負ウキで




民宿が用意してくれた朝食





アテンダーの惨事




深く入れるとこれでしたTT




船着けの釣り座






左方向の釣り座から 浅い根にクロが潜んでいます


今回の釣果 7枚





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