4/30 夢と現実が交錯する島 宇治群島




名礁 小鮫

kamataさん、29日は波のあるげな。サザンクロスが30日からの出航にするげなばってん、よかな。」

シーズン終盤最後の尾長グレねらいは、やはりGWになった。今シーズンの終盤になって4月初旬にようやく尾長を釣って以来、もう一度夢をと最後のチャンスを待っていたが、この吉報は宇治群島の尾長から何かプレゼントを受け取ったような感覚をもった。

今回はuenoJRが欠席ということで、uenoさんと二人での釣行となった。今シーズンは尾長と出会えていないuenoさん。何としても尾長を釣りたいと、かなりの力の入れようである。

「午前1時出航げな。9時半集合でよかな。」

いつもは、午前0時出航のはずなのになぜだ。

よく考えると、遠方からの釣り人が熊本を通るので、ということらしい。

船長の粋な計らいに同調する。

串木野港に付いたのが午後11時半。最近絶好調のサザンクロスだが、釣り人は、地震の影響かあまり多いとは言えない。

「ぶるん、ぶるん。」

船長がいつのまにかやってきて、愛艇サザンクロスに命を吹き込んだ。

「えー、磯に下ろさないクーラーから乗せてください。」

「次は、磯に下ろすクーラーです。」

船長が釣り人の荷物の管理をしながら指示を出している。携帯電話が使えない宇治群島では、荷物の積み下ろしのミスは致命的だ。

釣り人にも荷物を自分で管理しなければならないという意識が生まれる。当然、サザンクロスでは、荷物の間違いは皆無ではないだろうか。

荷物の積み込みが終わる頃、遅れる予定だった組が予想より早めに到着。無事に、午前1時ごろ出航となった。

これから、3時間と少しの船旅。さすが大型船らしく、広々としたキャビン内。今回は、空いている操舵室先のスペースにuenoさんと潜り込んだ。

「今日の瀬割はどこかな?」

「黒瀬まわりじゃないですかね。」

「ツバメにはいかれんとやろか」

「雀島は黒瀬まわりに入っているみたいですよ」

Uenoさんは、昨年雀島でいい思いをしたことが忘れられないようで、いつも雀がいいと言ってくる。そんなお気に入りの磯なのに、いつも雀と「ツバメ」と言い間違える。確かに、両者とも日本人にとって身近な鳥ではあるが。かく言う筆者もなぜ雀島というのかわからない。

こんなたわいもない会話をした後、ごろんと横になった。港を出ると、エンジンは高速回転に切り替わる。

対馬暖流に逆らうように走るサザンクロス。離島の船の中では最大級の規模を誇る渡船。その安定した走りは、釣り人なら是非体験した方がいい。4月・5月ともなれば、東向きの風の日が多くなり、東シナ海側は凪になることが多い。今日も凪だ。

さて、今回の釣りではどんなドラマが待っているのだろう。瀬際に仕掛けを入れてアタリを待つ自分の姿が頭の中に浮かんでは消える。尾長グレを仕留める夢を妄想しているといつの間にか深い眠りに落ちていた。

どれくらい時間が経っただろう。いつのまにかエンジンがスローになっていた。最初の渡礁が始まったらしい。

操舵室に近いこの場所は、船長の言葉がダイレクトに聞こえてくる。

そして、注意深くその音声を拾っていると、どうやらどこかの船と無線でやりとりをしているようだ。

「南星瀬は・・」「了解・・・」

このわずかな言葉のやりとりで、船長がどの船とやりとりをしているのかがわかった。おいらが好きでないあの瀬に客を乗せようとする船は、阿久根港発の第3海交に違いない。

これで状況がよくわかった。本日からの2日釣りで、宇治群島遊漁船組合の中で船を出しているのは、サザンクロスと第3海交の2つであることが判明。

つまり、2つの船は無線を使ってやりとりをしながら現場で瀬割をしているのだった。広大な釣り場があり、凪の予報のため磯は選び放題のはずだ。

最初の渡礁から、更に船が長く走り続けた。北東から南西へ長く延びる宇治群島で、広範囲に渡礁させるためには、行きだけでも30分かかる場合がある。

名前が呼ばれるまであわてる必要はない。ゆっくりしていると、再びエンジンがスローになった。ここでも何組か渡礁させた後、再び船が長く走り始めた。

そろそろ自分たちの出番だと、キャビンの外に出ることにした。

kamataさん」

名前が呼ばれたのはそんなときだった。

震える手で磯靴を履き、荷物を船前方へ運び始める。

目の前に圧倒的で巨大な巌が出現している。

「ここはどこな」

Uenoさんが不安げに尋ねてくる。先客を渡礁させて船が磯から離れていくと島の全体像が明らかになった。

宇治群島最南端に位置する尾長グレと鮫とが共存する島「鮫島」である。

kamataさん次行きましょうか」

目の前には、角張った幾何学的な形状をした磯が見える。鮫島本島に寄り添う子どものような位置にいるものの、出で立ちはどっしりと安定した足腰をしている。それは、まるで石垣を伴った中世の山城を彷彿させる男性的な奇巌城のようだ。鮫島の中でも絶好のポイント

「小鮫」である。

船はなんと、いつも見ているだけの憧れの名礁「小鮫」に近づいているではありませんか。天空に突き出た角錐形の磯に船がゆっくりと近づく。タイヤが一度磯場に接触し、その勢いのまま更に上の部分に接岸した。

今だ!

迅速に渡礁し、荷物を受け取る。荷物をできるだけ平らなところに置く。遠くからみれば、足場が悪そうな場所だが、結構平らなところがあり、夜釣りにはもってこいだ。

「水道とそこの先端をねらって」

こう簡単にアドバイスをしたかと思えば、魚の釣り方とは違うアドバイスを繰り返した。

「水温が下がっているから、鮫はそれほど気にならないと思いますけど、釣った魚はリリースしないでください。鮫の喰うスイッチが入りますから」

鮫島ならではのアドバイスを熱心に受けて、さあ尾長狙いの最初のトライアルの準備に入った。

しかし、準備をしようとしたときは、周りは白々とし始めていた。

kamataさん、もう朝バイ。夜釣りはあきらめよい。今夜にかけよい。」

もっともな提案だ。焦って仕掛けを作っても撒き餌もしてないし、よい釣りはできないだろう。昼釣り用にゆっくりと仕掛け作りに入った。

竿は、いつものがま磯アテンダー2.5号に道糸4号。ハリス4号の仕掛け。4号ハリスだけ食い付いてくる口太だけをねらい、尾長グレが回ってきたとき何とか対応できるようにという仕掛け。ウキは、この波ならプロ山元ウキG2で大丈夫だろう。ハリはグレ針7号を結んだ。

撒き餌は、口太用にオキアミ・パン粉・集魚材を混ぜたものに。

すっかり明るくなった午前6時過ぎ。いよいよ宇治での1泊2日釣りがスタートした。

kamataさん、口太ばあんまり釣ってもしょんなかバイ。ぼちぼち釣ろい。」

と言っていたuenoさんだったが、朝からのいきなりの42cm口太から始まった入れ食いに、「あんまり釣っても」「今日は尾長一本ねらいで」の言葉がかすんでしまった。

無理もない。仕掛けを入れるだけで口太が面白いように釣れるんだから。おいらも今日は尾長一本狙いと決めていたのに、いつの間にか口太釣りに参戦してしまった。

鮫の姿は確認できない。しばらくすると沖にナブラが見えた。クロのナブラのようだ。釣果が2桁を超えた頃、魚の食いが悪くなってきた。いつもならここで仕掛けを落とすところだが、今日は尾長グレ狙いと決めている。仕掛けを落とすことは全く考えていなかった。

8時半頃、強烈な当たりがあった。2度の突っ込みをうまくかわしたかと思ったが、すうっと軽くなった。ハリはずれか。

久しぶりのいいアタリだったのに。仕掛けをチェックすると、ハリが曲げられていた。口の堅い魚にやられたらしい。この正体が見られなかったのが残念だ。竿を叩くかにではなかったのでイスズミではなさそう。

今度は。Uenoさんに強烈な当たりが来た。

「うお〜〜〜」

魚は手前に一気に突っ込んでいる。

uenoさん、強引に〜〜」

しかし、uenoさんは久しぶりのよいアタリにかなり慎重になっている。

そうこうしているうちに、魚は磯際を横に走り出した。

「おいおい、こら強烈ばい。」

Uenoさん、魚の突然の横走りに動揺しながら何とか耐えている。魚に主導権を握られてしまったようだ。魚は仕掛けを切って、命からがら磯際へ脱出に成功した。

がっくりするもアドレナリンが全身を駆け巡るuenoさん。これで自分もかなりやる気モードにさせられた。

これからの釣果に期待一杯だったが、再び口太の海となっていた。時折、クロのナブラが近づいては、撒き餌が近づくと遠くに行ってしまうという相変わらずの動きで、我々も休憩が多くなってしまった。

11時頃、サザンクロスが見回りにやってきた。

「どうですか。」

尾長は釣れてないことを話した。そして、魚がたまったドンゴロスを持って船に乗っていくと、

「昼はあんまり頑張らないで、休憩して夜に備えてください。」

と船長が声をかけてくる。

昼間の釣りで体力を消耗しないようにという心遣いだが、釣果よりも体力を温存することが尾長を釣るために大切なことであることはよくわかっているつもりだ。

しかし、こう目の前に口太がいるので、どうしてもがつがつ釣ってしまう。煩悩の赴くままにいる自分を反省しながら、磯に戻った。

昼間にかけて気温がかなり上昇してきた。

「暑かバイ。」

Uenoさんが、厚手のウエアを脱ぎ始めた。湿気は少ないものの気温は28度以上を超えているようで、暑さ対策を余儀なくされた。暑さに比例して、我々はまた休憩が多くなってしまった。

海を見つめていると、何か黄色い物体が浮いてきた。ウミガメである。のんびりと泳いでいる。かと思えば、ウミヘビが泳いでいる。ソウシハギが撒き餌の残りを探して動き回っている。

一見するとのどかな平和な世界である。その中に割って入ってくる我々釣り人は、彼らにとってはインベーダーに違いない。

「安心しな。今回は尾長狙いだから、君たちを困らせるつもりはないんだよ」

こんなことを妄想しながら、遅い昼食をとっていた。

その時だった。

黒く鋭角的な鰭を持った輩が我々の手前を横切ったような気がした。

えっ、あんな尾長やウミガメがいるわけない。今日は鮫がいないと思っていたけど。いやな予感がした。

しばらくすると、再びやつが現れた。

uenoさん、鮫ですよ。鮫!」

Uenoさんは、鮫に全く気づく気配がなかった。釣りに没頭しているようだ。

3回目のやつの巡回の時、uenoさんに鮫の存在を知らせた。今度は、ようやく鮫を気にするようになった。

「太かな。でもおとなしかごたっばい。」

確かに、そうかもしれないが、一度スイッチが入った鮫は恐ろしい。釣りにならないなんてことはよくある話だ。

そう言えば、口太の食いが上げ潮になって急に落ちてきた。そりゃそうだ。あんな用心棒がいたんじゃ、オキアミを食べる意欲が減退するに決まっている。食欲より生きることが最優先になるのは、どの生物も同じなのだ。こうして、鮫の活性化に比例して口太の食いが止まるだけに、これからの釣りは要注意だ。

今日は鮫がいないみたいですね。午前中はこんな会話を楽しみながら、いけないとわかっていてもイスズミなどの外道をリリースしていた。

「鮫を刺激しないでくださいね。そのためには、釣った魚をリリースしない方がいいですよ

こんなアドバイスを船長から受けていたことを思い出した。

「鮫は、尾長や口太が好きなんですよ。まあ、鮫がいると言うことは、尾長がいるということなんですけどね。イスズミには見向きもしないんですよ。クロの時だけ、釣り人が喰わせた魚めがけて突進してきます。気をつけてください。」

元気なうちにリリースしていたが、わずかな魚の血液が海に流れ出ただけでも、100万分の1に薄めた血液でも反応してしまうほどの臭覚を持つ鮫には、もはや手遅れか。

鮫が2匹、3匹と現れてきた。この小鮫の磯周りを回っているようだ。

もう魚がまったく口を使わなくなってしまった。沖でナブラを形成していたクロの群れに黒くて鋭角的な鰭を持つフィッシュイーターが突進している。いるかではなく、鮫だろう。やがて、釣り人の心を躍らせていたクロのナブラは消えていき、もう二度と姿を見せることはなかった。

我々は、それでも何とか尾長を釣りたいという欲望を抑えきれなかった。鮫の巡回の隙間をねらって仕掛けを打ち返すが、喰ってくる魚はイスズミだけという時間帯になってしまった。

イスズミを食わせると、鮫がどこからともなくやってくる。しばらく磯を休ませる。再び磯に立つ、イスズミを食わせる。鮫がイスズミに突進し、すんでの所でシカトする。また、磯を休ませる。

午後からは、こんな退屈なロールプレイングゲームのような展開が待っていた。口太や尾長は警戒心が強いから、こんなとき喰ってくるとは思えなかった。

夜釣りに備えて、鮫を磯から放すために、完全に釣りを休んで鮫がいなくなるのを待つことにした。

「ぶるん、ぶるん」

サザンクロスが、この日最後の見回りにやってきた。弁当を受け取るためだ。そして、夜釣り用の餌を船から持ってこなければならない。

「船長尾長のポイントは?タナはどれくらい?」

「そこの水道の奥に根があるんですよ。そこが通称『オナガの巣』と言われています。」

「そこに流すとオナガが食ってきます。タナは、1本から2本です。」

立て続けに船長がナイスなアドバイス。

磯に戻り、夜釣りの仕掛けを作ってから、早い夕食をいただいた。船長から支給されたまだあたたかいご飯に、冷たいレトルトのカレーをかけて食べる磯カレーだ。これがなかなかうまい。磯で食べるカレーライスは最高だ。

竿は、尾長グレを釣ったときと同じダイワメガドライ遠投4号−53。道糸8号にハリス8号。ウキは、棒ウキ3B。ハリは最近お気に入りの喰わせ青物9号。タナは竿1本から始めることにした。

少しずつ昼から夜になっていく、釣り人にとってはわくわくする瞬間。午後からずっと釣りをやめていたこともあって、鮫の気配も感じなかった。

釣り座は、水道の入り口側にuenoさん、奥においらが構えた。釣り座が高く、玉網が届きそうもない。取り込みはかなり難儀しそうだ。しかし、足下にはワレがあり、いかにも尾長が食い付いてきそうな雰囲気だ。

撒き餌は、オキアミ生と赤アミだけを混ぜたもの。尾長一本ねらうためだ。

電気ウキが鮮やかに光り始めた午後7時過ぎ、妖艶に光る電気ウキが暗黒の海に放たれた。

潮はよい感じでオナガの巣めがけてゆっくりと動いている。撒き餌が効けば、魚が喰ってくるはず。

しばらくすると、uenoさんが何かを釣ったらしい。

「マツカサバイ」

活性が少ない中、時折マツカサが訪問するという退屈な展開。

おいらの竿には、イスズミが時折絞り込んだ。タナをめまぐるしく変えた。竿2本以上入れてもみたが、魚の活性は今ひとつ。

午後9時、10時、11時と時間が経過すればするほど、魚の反応が消えていった。

時間はすでに真夜中を迎えていた。

瀬際に落としていた仕掛けに生命反応が見られたので、合わせるとググッツと乗ってきた。

手元に来る感触は、40そこそこの魚ではない。本命のような手応え。よっしゃあ、ようやく喰わせたぞ。

しかし、しばらくすると、それは尾長グレではないことがすぐにわかってしまった。

尾長らしきシャープな引きではなく、何か動きの鈍い重々しい引きだ。ウミガメかとも思ったが、こいつは沖に走ることもない。

一体何が食い付いたのだ。とにかく、重たいやつだ。ようやく浮かせた。いったい何者だ。

君は。

uenoさん、玉網ですくえますか」

おいらのただならぬ雰囲気を感じたuenoさんがありがたいことに助っ人に入ってくれた。

キャップライトを当てて、魚の正体を視認した。

そいつを見て、思い切りずっこけた。

「なんだこりゃ」

おいらの仕掛けに食い付いたのは、まるでジュゴンのような姿をした鮫?のような生き物だった。体長が1mくらいはありそうな魚体。

kamataさん、こら玉網にいるっとは無理バイ」

Uenoさんが何とか魚を玉網かけようと試みてくれるものの魚がでかすぎて入らない。こまった、こまった。仕方がないので、リールのところから道糸を切るしか方法がなかった。魚いや鮫もどきは、命からがらわたしから逃げることができた。わたしのお気に入りの電気ウキを付けたまま。

そいつはしばらくこの場所にいた。眠っていたらいつの間にか口元に餌が見えたので食い付いたら、それには仕掛けが付いていたということだったのだろう。

寝ぼけた鮫は、おいらの電気ウキをつけてしばらくは小鮫周辺を泳いでいたようだった。緑色の電気ウキの光がしばらくの間、鮫島本島との水道を行ったり来たりしていた。

「おらもう寝るバイ」

突然、uenoさんが、おいらの釣り座の更に奥にある天然のベッドにやってきて横になった。

一度も本命らしきアタリに遭遇できないuenoさんに、突如として強烈な睡魔が襲ってきたようだ。睡魔とともに風も強くなってきた。この強風で船付けの釣り座は波で洗われている。

もう向こうの釣り座で釣りをするのは厳しそうだ。

こちらも眠くなってきた。一眠りして次なる釣りに備えよう。

「ぶるん、ぶるん。」

目が覚めたのは、強烈な光を伴ったエンジン音が近づいてきたときだった。

まるで、

「こら、起きなさい!寝ている場合じゃないぞ。」

と言われているよう。

そそくさと釣りを再開した。サザンクロスの船長の激励のエンジン音ですっかり目が覚めてしまった。

時計をみると、午前3時を指していた。

一応頑張ってみるものの、ただでさえ魚からの反応がなかったこの場所に、撒き餌が切れた時点で、期待できる反応を求めるのは酷というものか。

朝まで頑張ってみるものの、全く反応がないまま朝を迎えてしまった。

期待の朝まずめだったが、昨日とは状況が激変していた。口太の反応がない。

たまに、イスズミが竿を絞ってくれたが。

口太や尾長の反応が消えてしまった原因がその後明らかとなった。

釣り座の近くを3mはあろうかという黒い潜水艦のような物体が泳いでいた。その黒い潜水艦は、こちらが魚を掛けるとものすごいスピードで突進してくるという厄介な性質を持っていた。

しかし、奇妙なことに体の自由を奪われた釣られた魚を喰ってしまうことは潜水艦くんには造作もないことのはずだが、喰う寸前になって突然魚を食うのをやめてしまう。

釣り師をおちょくっているのだろうか。

魚を掛けると必ずやってくるこの黒い鮫に、ほとほと困っていたのだが、一つだけよいことがあった。

それは、鮫に必ずもれなく付いてくるコバンザメを釣ったことだった。鮫にとってコバンザメを釣られると、まるで付き人を失うような感覚かもしれない。こちらは、ウエルカムだ。

なぜって、キャッチアンドイート派のおいらには、極上の刺身が食べられる最高級に近い食材と思えたからだ。

コバンザメがおいしいといううわさを試す絶好のチャンス。早速、クーラーに入れた。

そして、黒い潜水艦がなぜいままで釣った魚をねらっているはずなのに、すんでの所でシカトする意味がわかった。

午前8時頃だっただろうか。久しぶりに魚をかけたときだった。がんがん竿先を叩かないシャープな引きだった。最初の引きで口太を確信した。

ところが、また黒いあいつがやってきた。今度は、今までとは全く近づくスピードが違っていた。あっという間に水面が盛り上がったかと思うと、一気においらがかけた魚を奪って逃走してしまった。

わかった。黒い潜水艦は、イスズミには目もくれず、メジナだけをねらっていたのだ。

「もう、やめよい。釣れんもん。」

Uenoさんと同時に釣りをやめた。

宇治群島での鮫の餌付けショーの終演だ。

午前10時前にサザンクロスが迎えに来た。小さくなっていく鮫島を眺めながら、全く成果を上げられなかった今回の釣りを振り返った。

満足いく成果を上げられなかったが、磯釣りの醍醐味は十分に堪能できた。釣り人の心をとらえたのは、尾長グレではなく鮫の乱舞だったが。

しかし、遠ざかる船内で自然と笑みがこぼれてしまうのが不思議だった。その笑みの理由を考えてみた。また、この釣りができる未来があるという充足感。そして、この釣りで得た最大の収穫が、鮫はイスよりクロが好き。つまり、鮫にも餌の好き嫌いがあるということがわかったという理由だったのだ。


夢とロマンの前線基地


いつの間にか 鮫島に来てました


渡礁に時間がかかってしまいました


憧れの小鮫に渡礁


さあ 仕掛けば作ろい


水道側


思わず手を合わせました




昼釣り用撒き餌


釣りスタート



奇巌な小鮫


早くも入れ食いか



クロが面白いように釣れます



何者かにハリを曲げられました



もう クロはいらんバイ 尾長ばねらおい




尾長はどこに?


これはおいしいからキープ



となりは瀬替わりしていきました



右が向島 左が雀島


夜釣りに備えて体力温存


昼釣りのポイント


うれしいご飯のサービス


水道が尾長ポイント


おいらの釣り座


気合いを入れましょう


たまにこんなのが釣れるだけ


まったく 当たりなし


朝が来てしまったよ


だめやったバイ


お土産を少し釣りましょう


鮫の多かバイ


食べる分だけお持ち帰り



鮫が凶暴化してました


イスズミには見向きもしません


はよ迎えに来てくれい


楽しい2日間でした


ありがとう 小鮫


小鮫の裏


鮫島のハナレ


鮫島全景


名残惜しや 鮫と尾長グレの島


右がコバンザメ 左がムロアジ










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