2/18 19 宇治へピクニック 宇治群島


 
1日目のポイント ビロウ湾

「出航するよ。」

 

「マジっすか。」

 

いつものように多忙な1週間が終わり、心身共にへとへとになっていた金曜日の夕方。携帯の向こう側で伝えてくれたuenoさんの情報に思わずこのように問い返してしまった。

 

「俺もびっくりしたっタイ。昼頃サザンクロスから連絡のあったモン。そしたら、出るげなバイ。」

 

「へええ・・・。」

 

「ずっと前から、土日の予報は時化やったもんなあ。だけん、絶対で出らんと思うとった。びっくりバイ。」

 

この大逆転の展開。どこかで体験したことがあるぞ。そうだ、年末の紅白歌合戦。会場のNHKホールに集まった観客、地上デジタル波の向こう側にいる視聴者のだれもが、いや司会者の有村架純ちゃんまでが、白の勝利を信じて疑わなかった。ところが、最終判断となった会場審査員の票が投じられた瞬間、信じがたい結末に。しばらく、開いた口がふさがらなかった。例えるなら、こんな展開だろうか。

 

ようやく、出航するという予想外の結果から、シャットダウンしてしまっていた脳の辺縁系の組織が少しずつ立ち上がり始めた。

 

「どうする?出らんと思っとったけん。なんも用意しとらんとばってんなあ。」

 

ここで、熟考に入った。信頼できる船長が出ると言うから大丈夫だと思うが、こんな条件で果たしてよい釣りができるだろうか。しかし、今シーズンは時化続きで、土日に出撃できないこれまでのことを考えると、これを逃すと、もう尾長ねらいの釣りを今年はあきらめなければならないかもしれない。

 

いくら準備不足とはいえ、キャンセルはあり得ないよ。すぐに、uenoさんに同行する意思を伝えた。しかし、次のuenoさんの一言でその意思が再び揺らいだ。

 

「どうする?餌が6個しかないバイ。」

 

気持ちを切り替えていたuenoさんはすでにオームセンターニシムタにいた。そこで、餌を物色していたところそのような異変に気付いたそうだ。

 

6個ということは、6÷2=3、つまり一人当たりオキアミ生3角で離島の1泊2日釣りをしなければならないということになる。尾長ねらいの1泊2日釣りで昼+夜+昼の計3回の釣りのチャンスがある。その店のオキアミを買い占めてもその3回のチャンスにそれぞれオキアミ生1角ずつということになる。

 

これでは少なすぎるということは、夜尾長釣りをしたことのある人なら容易に想像がつくだろう。この2つめの難題には、集魚剤ジャンボサイズを2袋とパン粉で何とか増やすという対策を考えた。

 

「行きます。オキアミ買っておいてください。」

 

「わかった。11時集合だけん、8時には出発せんばんな。」

 

こうして、相撲で言えば土俵際のうっちゃりで、宇治群島への出撃が決定した。ことの顛末はどうであれ、憧れの島宇治群島に行ける喜びをかみしめながら、大急ぎで釣行準備を始めた。

 

今回は、ueno号にてサザンクロスの待つ串木野港を目指した。車中でお互い急な釣行であること。餌の準備を含め明らかに準備不足であること。波がどれくらい高いか、また、釣りができるところがあるかなど考えても結論が出ないことをああでもないこうでもないと語り合いながら楽しく港を目指した。

 

釣り当日の気象は、金曜日にやってきた低気圧が、土曜日には日本列島を去り、お決まりの北西の季節風が吹き荒れる予報。夜中くらいから風が収まり、翌日の日曜日には波が収まるという。潮周りは小潮1日目・2日目。北西の季節風を避けられる風裏が今回の釣りの舞台となりそうである。

 

午後11時前、串木野港に到着。すでに多くの釣り師が集結していた。大型船サザンクロスが自身のLEDライトを早くも輝かせて釣り師を今か今かと迎えている。

 

いつもの暗闇の串木野港における渡船風景だが、今回はちょっと違っていた。係留されている船がことごとく揺れているのだ。沖からのうねりが湾内まで入ってきているようだ。

 

「磯に下ろさないクーラーから乗せてください。」

 

船長のその一言で荷物の積み込みが始まった。釣り人の動きが静から動に変わる瞬間である。釣り人は、餌などが入っているどでかいクーラーを船に積みこんでいる。船長にあいさつを済ませると、今回の釣りで最大の心配事をぶつけてみた。

 

「波が高いでしょうねえ。」

 

「そうですね。でも、楽しみましょうよ。」

 

笑顔でこう答える船長。出港を決めた責任を背負いながらも、釣り人を安心させようとする配慮を忘れない。出港を決めた船長の判断をもとに出撃を決めたのは自分だ。彼に命を預けることにしよう。荷物の積み込みが終わると、キャビン後方の地下1階のスペースに潜り込む。

 

もう、ほとんどの釣り人が横になって出航を待っていた。

 

「宙に浮くかもしれんなあ。」

 

と苦笑いしながら談笑する釣り師たち。波に不安を持っているのは自分たちだけではないようだ。

 

午後11時45分、30名近い人数の釣り人をのせたサザンクロスは、暗闇の串木野港を出発した。どれくらいの波があるのだろう。覚悟をしていたが、沖に出てすぐは揺れたが、後は心配するほどの揺れではなかった。ほっとすると、急に睡魔が襲ってきた。いつの間にか眠りに落ちていて、気が付いたときはエンジンがスローになっていた。

 

「〇〇さん」

 

早くも渡礁が始まった。さて、いつ名前が呼ばれるかなとライフジャケットを羽織ったとき、

 

uenoさん、準備して」

 

何と、2番目に声がかかった。あわててキャビンの外に飛び出す。風が結構吹いている。波が踊っている。風裏のこの場所でこれなら沖はかなり時化ているだろうなあ。

 

「ここどこね。さっぱりわからん。」

 

二人とも宇治に通い始めて数年が経つが、全くどこかわからない。大きな島の地磯であることは間違いないようだが。最初の組の渡礁が終えると、いよいよ自分たちの番になった。

 

「前に出て! 真ん中を空けて」

 

ポーターさんの指示に従いながら、渡礁を待つ。サーチライトを照らした先に洞窟が見えた。乗ったことはないが、誰かが渡礁するのをみたことはあるぞ。

 

ホースヘッドのタイヤが接岸する場所を探している。一度接岸して、再び浮き上がったところで渡礁しやすい場所にタイヤは到達した。

 

「さあ、乗って」

 

船長の優しいバリトン声の合図で、渡礁開始。荷物を確認しながら受け取り、船長のアドバイスを待った。

 

「ポイントは船を付けたところと左側のワンド方面をやってみてください。うねりに気を付けて。」

 

あとで聞いたが、この場所一帯をビロウ湾と言うらしい。

 

「やっぱ、ちょっと時化とったね。」

 

Uenoさんが呟いた。かなりの時化を予想していたが、それほどでもなかったことに安堵した。風がかなり吹いているが、釣りが困難な状況ではないようだ。時計を見ると午前3時半を指していた。

 

早速、最初の1角目のオキアミ生と集魚材デカサイズ、パン粉1kgを混ぜて餌を完成。タックルの準備に入った。

 

竿は、ダイワメガドライ4号−53、道糸8号ハリス10号。ウキは浮力Bクラスの電気ウキにハリは夜尾長10号。タナは、2ヒロから探りアタリがあるところを探ることにした。

 

Uenoさんは、船付けに釣り座を、わたしは洞窟があるワンド側に釣り座を構えた。仕掛けを投入して瀬際に落ち着くようにする。表層の潮は動いていないが、仕掛けが手前に当たってきている。これは、瀬際釣りを基本とする尾長釣りに好都合の潮だ。

 

2ヒロで釣り始めるがアタリがないので、3ヒロにして瀬際を探る。このポイントに餌が入るのは久しぶりだったのだろう。餌がそのままで帰ってくる。撒き餌が効き出すまで、タナを深くする必要はないな。餌を間断なく入れながらウキの灯りを凝視し続けた。

 

5投目ぐらいだっただろうか。餌がとられ始めた。生命反応があり反応良好か。次の仕掛け投入の後、ウキがゆらゆら揺れ始めた。そして、ゆっくりと消し込んだ。鋭く合わせを入れると、乗った。「うん、軽いね。」

 

抜き上げたのは、30cm弱のカサゴ。唐揚げには最高の食材だが、離島釣りでキープするには小さすぎるよね。

 

「アタリあるね。こっちは餌もとられんバイ。」

 

Uenoさんが首をかしげながら釣りをしている。確かに、いつもなら夜釣りの税金、レッドデビルことナミマツカサがいないね。

 

心配していたが、マツカサがしばらくすると釣れだした。ようやく本来の宇治群島になり始めたようだ。まあ、1泊2日釣りだから焦る必要はないね。初めての磯で不安はあったが、瀬際ぎりぎりをねらい続けた。

 

5時前に、強烈な当たりがおいらの仕掛けを襲った。竿を立てて応戦。よっしゃあ、尾長かも〜〜と思ったところで、竿が天を仰いだ。くやしいバラしだった。初動の引きからして、尾長っぽいアタリだっただけに悔しい。

 

その数分後、「うお〜〜〜」

 

Uenoさんが魚とのやり取りを始めた。4号竿が容赦なくつの字に曲がっている。これは尾長かも。しかし、これも瀬ズレによるバラし。

 

「太かったバイ。」

 

「尾長ですかね。」

 

「わからん。」

 

そして、その数分後、おいらにまたアタリが。しかし、これはとんでもないアタリで一瞬にしてサルカンの部分から切られてしまった。

 

この連続のアタリは、釣り人に大いに期待を持たせたが、その後、アタリは遠のき夜明けを迎えてしまった。後で聞いたが、この朝の時間に宇治群島数カ所で尾長のアタリが集中したそうである。返す返すもばらしが悔やまれる。

 

さあ、朝まずめの釣りに備えてタックルを準備。竿は、ダイワインプレッサ2号―53。道糸2.5号にハリス2.5号。ハリはグレ針7号をチョイス。ウキはB浮力2ヒロの半遊導で始めた。

 

撒き餌が効いていないのか、魚からの反応が鈍い。まずは、足下から出てくる口太をねらうことにした。瀬際に仕掛けを落ち着かせる。サラシの外側をねらう。ウキにわずかな変化が出た。道糸を張ってみると、コンコンという魚からの反応が。

 

竿を立ててやり取りを始めた。始めはあまり引かなかったが、相手は次第にパワフルになってきた。やつは一気に左の足下へ一直線。浅い根があるようだ。そうはさせじと強引に浮かせにかかる。

 

白いしっぽが見えた。ぬうっと魚体が水面を割った。でかい!最近見たことのないサイズ。魚が暴れないように慎重に抜き上げた。最近、釣った中ではでかいサイズだ。メジャーを当ててみると46cm。やったね。幸先いいスタートだ。時計を見ると午前7時。まだ薄暗い中でのボウズ逃れは、釣り人を大いに安心させた。

 

その直後、uenoさんに渾身のアタリが。

 

「うおおおお〜〜」

 

魚が大暴れし、横に走り出した。なんだろう、尾長かも。何度も突っ込む相手をわたしは尾長グレを確信した。しかし、竿を叩いている節もあり、期待感とは裏腹な魚が浮いてきた。

 

「なんだこりゃ。」

 

浮いてきたのは、50cmは裕に超えるサンノジだったのだ。落胆を隠せないuenoさん。これが尾長グレなら間違いなくヒーローインタビューだったのに。

 

時合いだろうか。集中して釣るが、魚からの反応は芳しいものではなかった。しばらくして、ようやく、2尾目を掛けることに成功。浮かせるとこれも中々のサイズ。慎重に抜き上げる。先ほどの大きさには及ばない42cmのクロだった。

 

このまま魚のアタリがぽつぽつ続けばいいと思っているが、やはり今日の宇治はおかしい。このまま入れ食いになるはずなのに。その後、uenoさんのクロの初釣果の後は、完全に沈黙の海となってしまった。

 

「おかしかなあ。餌がとられんバイ。なんか釣れる気のせんごとなってきたバイ。」

 

Uenoさん、午前8時を過ぎた頃からすでにあきらめムードに。こちらも必死にタナを深く入れたり、浅くしたりといろいろやってみるものの反応が見られない。時間が経てば経つほど、魚からの交信が途絶えていった。

 

竿1本半くらい入れてみると、突然、ギュイーンとアタリが。って取れるわけないよ。この引き。強すぎるよ〜ありゃあ、ブチッ。ああ高切れだ。2000円以上するウキがゆらゆら自由の旅へ。パラソルを装着し、素早く投入。ウキの救出に向かう。

 

10投くらいするが、時折突風を伴う季節風に、中々ねらいを絞りきれない。ようやくウキを回収することに成功。ウキを回収しただけなのに、まあ何という満足感だろう。ウキ回収に思わず満面の笑みがこぼれてしまった。それくらい今日の釣りは厳しかった。

 

釣果だけでなく、天候も釣り人に味方してくれない。沖はどんどん白波が大きくなり始め、風裏ではあるものの風が回ってきている。時折、爆風が襲ってくる。立っているのがやっとという時間帯も。

 

「ぶるん、ぶるん、ぶるるん」

 

そんな時だった。サザンクロスが見周りにやってきたのは。

 

「どうですか。尾長は。」

 

もちろん、ダメのサイン。」

 

「口太はどうですか。」

 

しまった、口太かよ。まだ答えられるはずがない。

 

「どうします。変わります?」

 

「変わります。」

 

この船長の一言にいち早く反応したのが、uenoさんだった。確かに、魚からの反応が皆無に近くなり、瀬替わりしたい気持ちはよく分かる。でも、この渡礁場所が限られた中で、ここより良い場所があるとは思えない。だから、瀬替わりの意思はあっても躊躇してしまっていたのだ。

 

しかし、uenoさんは違っていた。とにかく、ここから抜け出したい。そんな思いなのだろう。あわてて片付けて竿をそのまま持ち込んで船に飛び乗る。

 

沖に船が出ると、船は高波の中にいた。我々がいた向島から北に位置する家島の南向きの場所に進んでいる。2つの島の間の水道はまともに風の影響を受け波も一際高くなっている。しかし、そこは、最大クラスの高速船サザンクロス。造作もない航行を見せてくれている。

 

船は、ようやく家島の南へとやってきた。エンジンをスローにして、渡礁場所を確認している。

 

「ここなら大丈夫と思ったんですけどねえ。」

 

ここは新岬一帯の地磯だ。完全に風裏になるはずだが、うねりが予想以上のようだ。この場所に見切りを付けた船長は近くの地磯に向かった。

 

「う〜ん、ここも厳しいですね。さっきのところへ行きましょうか。」

 

さっきの地磯に渡礁して、クーラーと磯バッグを受け取った直後だった。

 

uenoさん、やっぱり他へ行きましょう。夜も結構(風が)吹くからねえ。」

 

再び船に呼び戻され、さっき渡った隼人の水道を引き返し、ビロウ湾を過ぎて江波岬までやってきた。この一帯は磯釣り師がひしめいていた。普段乗せない場所にもたくさんの釣り師がいた。

 

今度は、江波岬の磯に乗せられた。狭い磯で船付けの足下か隣の磯との水道がポイントだという。やれやれ、ようやく、行き先が決まったと準備をしていると、

 

「ぶるんぶるん」

 

また、サザンクロスが近づいてきた。

 

uenoさん、替わりましょう。もっと釣りやすいところがありますから。」

 

そして、最終的に我々は、かけ上がりに渡礁した。

 

「右のワレのところ(サラシのあるところ)がポイントです。でもうねりがあるから、船付けでがんばってください。夜9時頃までは風が強いけど、それからは凪できますから。うねりには気をつけてください。」

 

こう言い残して船は去って行った。サザンクロスの船長の迷走からも、この日の天候が難しい判断を余儀なくされるものであったことがわかる。しかし、何とか客に良い釣りをしてもらいたいという接遇を徹底して行う船長の心意気がうれしかった。

 

「ここは、足場のよかなあ。」

 

Uenoさんも満足気である。前方に2回ほど乗ったことのあるかけ上がりの離れが見える。この磯がまるで滑り台のように平面の磯が斜めに傾いている。海からみればかけ上がり状になっているからこの名が付いたのであろう。

 

早速、釣り始めるuenoさん。しかし、自分はえさもないし、夜釣りにかけるならば、ここは休憩するのがセオリーだろうと休憩することにした。

 

午後3時過ぎに、自分も竿を出すが、イスズミやタカノハダイなどうれしくない外道のオンパレードで夕まず目の釣りを終えた。

 

太陽が水平線に近づいてきた。辺りがだんだん暗くなってきた。冬は日暮れが早い。気温も心なしか下がってきたようだ。暗くなる前に、やることやっとかなくちゃ。

 

さあ、夜釣りに備えて、撒き餌の調合とタックルの準備。そして、腹ごしらえだ。離島の1泊2日釣りでは、弁当のサービスがある。配給を受けたときは、温かかったのだろうが、今はすっかり冷たくなっていた。しかし、この場所でこの時間帯での白飯は、五臓六腑に染みわたるおいしさだ。

 

今回の釣りでは、荷物を極力少なくした。もちろん人間の餌も控え目。だから、この食糧配給は、本当にうれしかった。分かっていることだが、空腹が最高のスパイスであることを改めて感じられた。

 

腹ごしらえが終わると、もうすっかり日が暮れていた。さあ、いよいよ夜尾長釣りだ。タックルは、竿がダイワメガドライ遠投4号−53。道糸8号にハリス10号。ウキは尾長グレが違和感なく食い込んでくれる小サイズの小型電気ウキに、ハリは夜尾長11号を結んだ。

 

メインの釣り座は、uenoさんが陣取っているので、おいらはメインの釣り座の左の高台から釣ることにした。真っ暗になった夜の磯に赤い妖艶な光が揺らめいている。

 

潮はあまり動いていない。どちらかと言えば手前に当たってきている。Uenoさん最大級の集中力で瀬際を探るっていたときだった。

 

「よしっ。」

 

Uenoさん、会心の当たりだ。「うお〜〜〜」結構強い引きみたい。しばらくやり取りしていたが、魚を浮かせるときに成功。無理と思ったが、抜き上げた。

 

「尾長ですか。」

 

暗くて魚が視認できない。あわててライトを当てるuenoさん、「尾長のごたる黒いな。いや違うバイ。どっひゃあ」期待された魚だったが、50cmクラスのイスズミだったようだ。

 

期待された夜釣りだったが、強風は相変わらずで釣れる魚と言えば、サンノジなどのうれしくない筋トレ軍団だけで、それらに翻弄され、夜10時過ぎには寝袋に潜り込んでしまうのだった。コールマンのシュラフはマイナス7度の気温でも耐えるため、この強風の寒い中でも快適だ。向こう(かけ上がりの離れ)も釣り人の活性は極めて低く、釣りをやめてしまったようだ。「ああ気持ちのよい夜だ」オリオン座が眩しい夜空を見ながら、波の音を子守唄にいつの間にか眠ってしまった。

 

風がいつの間にか収まっていた。そう言えば、波の音も静かになってきたような気がする。向こうのかけ上がりの釣り人も竿を出してはいない。時計を見ると午前3時前だった。

 

ゴーッ、船のエンジン音が聞こえてきた。あわてて寝袋から飛び出して、夜釣りの準備を始めた。船はやはりサザンクロスだった。

 

エンジン音がだんだん大きくなってきた。輝かしいLEDライトをまとったサザンクロスがだんだん大きく見えてきた。そして、近くまで来るといきなり手前の磯かけ上がりの離れに瀬付けを始めた。

ぶるん、ぶるん。こらあ、起きろ〜。

 

サザンクロスが寝ている釣り人をたたき起こすような勢いでやってきたようだ。あわてて動き出す釣り師たち。

たくさん瀬泊まりしていた釣り人が3人ほど荷物と共にサザンクロスに吸い込まれた。船はそのまま南へと去って行った。あれほど荒れていた海もいつの間にか穏やかになっていた。あれほど強かった爆風もそよ風に変わっていた。どうやら船は鮫島方面へ瀬替わりに向かったようだ。

 

さあ、朝方は尾長のチャンスタイム。撒き餌をしながら、夜釣りを再開した。Uenoさんもようやく起きだして釣りに参戦。二人で瀬際を探り始めた。最大級の集中力で尾長との出逢いを期待したものの、海は恐ろしく活性がなく、何も釣れないままあっという間に夜明けを迎えてしまった。

 

水平線が紫からオレンジ色に染まり、朝がやってきた。朝まずめのタックルに持ちかえて尾長グレはあきらめ、昨日から気になっていた船長お薦めのワレのポイントを探ることにした。

 

夜釣りの船付けとは反対方向に一段上がってかけ上がりになっているところを歩きバッカンを置いた。釣り座から見るといい感じのサラシができている。いかにもクロが潜んでいそうなポイントだ。

 

時計を見ると、午前7時前だ。「10時に迎えに来ます」という船長の声からして、釣りができるのはあと2時間だろう。何とかお土産を持って帰らなきゃ。

 

撒き餌も前日から大切につかっていたからか、バッカンに半分ほど残っていた。撒き餌もそこそこに朝まずめの釣りを始めた。潮は右から左にほどよい速さで流れている。仕掛けを流して回収。餌がとられていた。2ヒロのタナを少し浅くする。第2投も同じく餌がとられていた。

 

朝から入れ食いを期待していたが、どうも反応が悪い。まあ、ずっと餌が入っていなかったから、魚の食い気が立つまで時間がかかるのかもしれない。魚からの反応はあるのだが、どうしても喰わせきれない。

 

ウキをBからG2に変え、サラシの横をねらうことにした。ウキが気持ちよく消し込んだ。道糸が見事に走り、魚からの心地よい引きを味わうことができた。白いしっぽの魚がこちらに向かってくるのが見えた。慎重に抜き上げた。40cm弱のクロが磯の上で跳ねていた。白い液体をふいている。宇治なので少し痩せているが、なかなかの美しい魚体だ。

 

このあと、ぽつぽつ退屈しない程度に魚が喰ってくれ、前日の沈黙の海とは違いほどよい魚からの反応を楽しんだ。Uenoさんもとなりでそこそこの魚の引きを楽しんだようだ。よかったね。

 

ドンゴロスには10匹の魚がたまり、時間も予定の9時になったので納竿とした。片付けを終えて沖を見ていると、昨日のあれもようの海とは大違いの凪が待っていた。そよ風が相変わらず肌に心地よい。

 

撒き餌が2日間で生3角というピンチだったが、何とか釣りができたのは尾長が釣れずに残念というよりむしろ幸運だったと言った方がよさそうだ。

 

回収の船に乗り込み、宇治の断崖を見つめていると、ようやく帰ることができると安堵すると同時に、ここを離れるのが惜しくなってきた。ありがとう。宇治の島々よ。また、来るからね。その時は尾長グレを呼んでおいてくれよ。

 

前日の白ウサギの代わりに、白カモメが見送ってくれる宇治の海に深々とお辞儀をしてサザンクロスのキャビン内に潜り込むのだった。



尾長グレに餓えた男たちが集結






いよいよ渡礁です





無事渡礁完了















船付けとワンド側でねらってください



早速 仕掛け作り



尾長らしきアタリが・・・



チャンスをものにできず 夜が明けてしまいました






uenoさんもチャンスを逃しました







ふとかったバイ








よっしゃあ 喰わせたuenoさん












これは期待できる!





どっひゃあ サンちゃんでしたTT







朝まずめで 46cmゲットボウズ脱出









2尾目は42cm






ここに海溝が走っているそうです















餌がとられなくなってきたね







釣れんなあ



時化始めましたよ


もう ここはだめバイ


釣れるのは こんなのや


こんなのばっかりです


深くいれるとこうなります



むなしく ウキは海面付近を漂うばかり



釣れる気がせんなあ




瀬替わりしましょうか



ありがとう ビロウ湾 ここを離れるのがちょっと心残り



黒瀬一帯は波の下



一度 この江波岬付近の磯に 足場が・・・



結局 かけ上がりに渡礁しました


ここに渡礁しました



夕まずめはこんなお魚さんでした



さあ どきどきの尾長タイムが



今日はなぜかサンちゃんばかり釣れます




離島ならではのうれしい白ご飯のサービス 




この瀬際をねらい続けます



魚からの反応が乏しいですね




船のエンジン音で目が覚めました




uenoさんも尾長をねらって瀬際を攻めます



魚からの反応ナッシング




会心のアタリだとおもったらこいつでした



夜が明けてしまいました



残念 無念



さあ 2時間限定のお土産ゲット作戦



口太ポイントのワレへ移動



クロば釣って帰らんばねえ



ぽつぽつ釣れました




40cm近い魚も釣れました



沖はもうすっかり凪になっていました



そろそろ片付けますか



磯で食べるゼリーは最高においしかったです




美しい断崖 ここを離れるのが残念です



お疲れ様でした〜〜〜〜〜^^




また 来たいなあ かけ上がり一帯



さあ 帰りましょう



46〜32cm 12尾



クロの造り 白子の刺身




白子ポン酢和え





クロの握り寿司




クロの中華風炒め



クロのニラ天















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