8/25,26 幸せのロケットを飛ばそう 伊座敷
鹿児島県伊座敷 シビ瀬から高瀬・尾長瀬を臨む
北のおぼっちゃまのご機嫌はいかに。
最近、釣りを計画するとき、釣行の予定を立てる条件が増えた気がする。以前は、天候・潮回り・資金・家族の了解などであった。
ところが、最近は地震もその条件に加わりつつある。事実、この釣行の数日前にも鹿児島で地震があった。釣りに行こうとすると必ず地震が起こっているような気がする。
ところが、ここに更なる新しい条件が現れた。大陸間弾道ミサイルの成功に喜ぶ北のおぼっちゃまである。
彼は、大国アメリカに対抗して、自国の人民がどんなに貧しい生活を強いられようと、軍備を増強し相変わらずの瀬戸際外交を繰り広げている。
こんなおぼっちゃま相手にするなよ、と言いたいところだが、お金儲けのためにミサイルエンジンの開発に手を貸すとぼけた某ウクライナという国もあるらしい。
おかげでグアムを標的にしているミサイルは日本上空を通るという計画まで出ているという。
北のおぼっちゃまのこんなお遊びのために、日本上空はいつ北朝鮮の故障したミサイルが落ちてくるかわからない状況になったと言える。釣りをしているときに、もし上空からミサイルが落ちてきたら。釣り人たちはいつの間にかこんな冗談とも言えないような新たな北朝鮮のミサイルという脅威にさらされているのだ。
同じ遊びなら、釣りに興じればいいのに。北の将軍もTランプさんも仲良く釣り糸を垂らして頭を冷やせばいいのに。
今はとりあえず、両国の緊張が小康状態になったこの8月になんとか釣りに行かねば。
さて、どこに行くかだが、対象魚であるシブダイを釣るためにはホームグラウンドである硫黄島が最有力である。しかし、今年は開幕から日ムラ・瀬ムラが大きく、イスズミ歩兵軍団とマツカッサー元帥の動きも例年になく活発で中々成果を上げられないでいた。
そんな中、黒石会会長さんからこんな提案があった。
「船間に来ませんか。シブダイ釣れますよ~。」
これは意外な提案だった。それは、大隅半島の情報をあまり知らなかったことが一番の原因だったが、海に県境があるわけでもないからと冷静に考えると、船間という釣り場は大いにありだと考えた。
しかも、8月中旬に、会長さんは船間でシブダイを2桁釣り。クーラーに入りきれないほどの釣果に恵まれたとのこと。
これは、硫黄島にこだわらず、新たなポイントを開拓すべきではないかな。ということで、会長さんを頼って船間への釣行を持ち掛けた。
船間は水深があり、フカセ釣りよりかご釣りがメインであること。タナは深く、竿4本くらいになることを覚悟しておくこと。また、かごは天秤と一体型がよいとか、撒き餌はオキアミのみがよく集魚剤やパン粉は混ぜない方がいいとか。たくさんのアドバイスをいただいた後で
「kamataさん、そういえば、船間は伊勢エビ漁が始まるので、瀬渡しが禁止になります。」
これには思わずずっこけた。会長さんはその後「間泊」というポイントを進められたが、同行者であるuenoさんの予定からすると、どうしても午後3時出航の間泊の渡船に間に合いそうもない。せっかくの会長さんの申し出だが、ここはあきらめるしかなさそう。
そこで、佐多岬の手前のポイント「伊座敷」に行くことにした。ここなら鹿屋から1時間程度で港に行けそうだし、ブログでお世話になっている佐多岬愛士会さんが数日前50upのシブダイを釣った実績があるからだ。
早速、佐多岬愛士会さんに連絡を取ってみる。
「自分はフカセでしたよ。エサはオキアミボイルです。魚がめっちゃいますよ。」
電話口から明るい声が飛んでくる。話しているとこちらまで楽しい気分にさせてくれる方だ。早速、渡船「海希丸」さんを紹介してもらった。
あとは同行者の確保だ。この時点で思い当たるのは釣りの師匠であるuenoさんしか思いつかなかった。
「uenoさん、夜釣り行きましょう。」
「どこに行くね。」
「伊座敷はどがんですか。」
「うん?伊座敷?そこは釣るっとな。」
「はいっ、この前50cmのシブが上がったみたいですよ。」
「おっ、ほんとな。」
「シブだけじゃなくイサキも狙えるみたいですよ。」
「そらよかな。その伊座敷に行こうか。」
Uenoさんは、シブダイ釣りだけでなく、イサキ釣りも大好きだ。また、久しぶりにかご釣りをしたいという気持ちもあったようだ。Uenoさんはまんまとおいらの策略に引っかかったようだ。
かくして、人吉盆地の釣りバカ二人は、鹿児島県大隅半島の最南端に近い伊座敷というポイントへの初釣行が決定したのだった。
まずは、エサの確保から。オキアミボイル1角、オキアミ生3角、赤アミ半角を用意。付けエサとしてきびなごも準備した。
かご釣りがメインとなると思うが、フカセ釣りの準備をしていた方がよいと考え、次のようなタックルの装備となった。
遠投かご釣り用
竿はメガドライ遠投4号、8号道糸、天秤かご、ウキはケミ蛍を装着できる15号、ハリスは8号と6号の仕掛け。
フカセ釣り用
竿はがま磯アテンダー2.5号、道糸6号、ウキは小型棒電気ウキ(大)、ハリス8号と6号の仕掛け。
二人とも久しぶりのかご釣りで不安いっぱいだが、新しい釣り場に心を躍らせた。朝出航を確認した後、午前11時半ごろ人吉ICを出発した。
九州自動車道を南へ下り、加治木JCTで東九州自動車道へ。最近、鹿屋まで高速道が通ったため、驚くなかれ鹿屋までわずか1時間半だった。
鹿屋から整備された農道を通ってようやく海岸に出た。ここから海岸通りを過ぎると目指す伊座敷漁港が待っている。
更新されていないカーナビゲーションに惑わされながらも、なんとか初めての港に到着した。約束の時間より30分早い到着にほっとしながら、あたりを見回した。港としてはかなり小規模で船の数も少ない。我々は渡船を見つけて道具を船に積み込む準備をした。
とにかく暑い。港のコンクリートからの照り返しが肌に突き刺さる。中国大陸へ上陸した台風の残り香なのか湿気を伴った風が体にまとわりついてくる。気温は34度を超えているだろう。荷物を車から降ろすだけで汗びっしょりだ。
しばらくすると、船長がやってきた。思ったより若い船長だ。ほかの2人組の釣り人と協力して荷物の積み込みを終えると、早速、船は伊座敷漁港を離れた。
港を出ると、異変に気付いた。今日は確か1mの波予報だったが。
「kamataさん、うねりのあるね。」
と、uenoさんも不安視。中国大陸に上陸した台風の影響だろうか、西風が思いの他強くうねりを伴って瀬渡し船としては決して大きくはない海希丸は波に翻弄されながらも前に進んでいる。
あとから船長に聞いたことだが、この海域では凪の予報でも、午後から夕方にかけて風が強くなり波が高くなるそうだ。だから、夜釣りなのに出航が午後3時と早いんだそうだ。
沖は、錦江湾の対岸の指宿、そして薩摩富士と言われる開聞岳が頂上に雲を纏った姿が見える。その向こう側には、あこがれの離島黒島・硫黄島・竹島がかすんで見えたり、見えなかったりしている。
錦江湾といえどもここは湾口。太平洋の接点でもある。もう、ここは湾内というより黒潮の支流も接岸する外海である。海の色が離島そのものの感じだ。
左側は断崖が続く。さて、どこにポイントがあるのだろう。前方を見ると、小さな沖磯群が見え始めた。
「kamataさん、あそこかもしれんバイ」
高い磯、低い磯が集まっているように見える。あそこのどこかに乗せられるな。2組しかいないから、ポイントは選び放題である。
磯ほどよい距離になったところで、エンジンがスローとなった。
「kamataさん。」
いきなり船長から呼ばれた。早速、渡礁準備を始めた。海希丸が目標の磯にロックオン。ごつごつした岩肌にとても平らな場所があるとは思えない巌に見えた。
船が磯と接岸した。先に乗って荷物を受け取る。平らなところがなく荷物の置き場に困った。何とか渡礁を済ませ、船長へポイントを尋ねる。
「そこの正面と、水道。うらもポイントやがね。」
詳しいタナなど聞きたかったが、船はそそくさと次のポイントへと進んでいった。目の前の一番大きな瀬のとなりのやや低めの瀬に渡礁。後で聞いたが、我々が乗ったポイントは「シビ瀬」といい、もう一組が乗ったポイントは「尾長瀬」というらしい。
渡礁を済ませほっとするが、とにかくこの日は暑かった。このシビ瀬は西日を遮るものがなく、太陽光線をまともに受ける場所だ。すぐに、クーラーから飲み物を取り出して、乾いたのどをまず潤した。
「ぬっか(暑い)なあ。ちょっと休憩しょい。」
Uenoさんもこの暑さに閉口しているようだ。
しばらく休憩した後、磯の全体像をつかむ作業に入る。夜になると、暗くて見えなくなるので、ポイントや危険な場所をあらかじめ確認するためだ。
それともう一つ必ず確認するのが、携帯が通じるかという問題だ。何かあったときに、連絡が取れるのかどうかを確認しておくのは大事なことであると考えている。ありがたいことに、携帯は通じるようだ。
さて、ポイントはどこだろう。まずは、年長者であるuenoさんの希望を聞く。Uenoさんは、案の定、南向きの一番平らな場所を見つけ、そこにピトンを打ち込んだ。
さて、自分はどうしよう。Uenoさんの右隣の船着けの場所を選択した。ここは足場が悪いが釣りができない状況ではないし、迷ったときは船着けという原則をただ単に守っただけのことである。
タックルの準備をして、メジャーなSNSであるLINEを開く。そして、シビ瀬から高瀬を臨む画像を送信した。何の目的もなくただ伊座敷にきていることを仲間に伝えたかった。
すると、なんとLINE仲間の会長さんから返信が来た。
「シビ瀬でしょうか。後ろを見た方がポイントかと。」
えっ、後ろ?ここは本命釣り座じゃないってこと?一体どこがポイントなんだ。ここは、正確な位置を会長さんに御指南いただこう。2枚目の画像は、シビ瀬裏(東側)を送った。
「最初の写真の左方向ですね。2枚目の右手かな。」
そして、親切にも釣り座の画像を送ってくれたのである。わかったよ、会長さん。ありがとう。会長さんが教えてくれた釣り座は、uenoさんの左隣で、左前に船長が進めていた水道があり、正面の左側に低い瀬が見えるところだ。まるで、yahoo知恵袋を使っているようだ。リアルタイムで、釣りのポイントを教えてもらえることに感謝しつつも、現代のSNSの威力を改めて見せつけられた格好だ。
すぐさま、ピトンを教えられた場所に打ち込み、準備を始めた。でも、なんかuenoさんには悪い気がして、この情報は伝えずにいた。
ポイントはわかった。後問題なのはタナである。フカセでもそうだが、かご釣りでタナ調整がうまくいかないと全く釣れないことがあるからだ。
船長の事前情報では、シビ瀬表の水深は、15,6m。裏で7、8m。フカセもできるポイントなので結構浅い場所のようだ。
タナを竿3本弱にして、浮力調整を見るために試しに仕掛けを投げてみる。いい何時で遠投羽ウキが着水。しかし、ウキは寝たままだ。どうやら、もっと浅くしなければならないらしい。仕掛けを回収して、浅くして再び仕掛けを投げた。この繰り返しで、竿2本半から始めることを決めた。まだ明るかったが、何か喰ってくるかもしれないと、遠投4号竿を振りかぶり仕掛けを投げた。きれいな放物線を描いて仕掛けは、無事着水。まず、潮の流れをみることに。
ウキがどんどん手前にあたってきた。この潮は、左手前の水道を通り地磯へと流れている。結構速い潮だ。手前は浅いかもしれないと感じ、仕掛けを回収しようとすると、早くも根がかりをやらかしてしまった。
何やってんだよ。まだ始まったばかりだというのに。どうもこの場所は釣り座がデコボコであることから底根が荒いことが予想される。これ以上トラブルが起こっては釣りができないと、タナを竿2本に浅くして安全に釣ることにした。
さっきまで左へと流れていた潮が、今度は手前にあたってくると右へと走り出した。上げ潮は南から北へと流れるのが基本のようで、その方向が変わることで、潮が右に行ったり左に行ったりしているようだ。
しかし、潮が少しでも変わると、遠投羽ウキが一気に視界から消えた。このウキの消し込みを見るのが遠投かご釣りの醍醐味である。
「なんか食ったぞ」
手前に引き寄せて振りあげると、手のひらサイズのクロとイスズミが2本バリの両方に喰いついていた。とにかく、魚の活性があることがわかりほっとしながら、魚をリリース。
「よかなあ。こっちはぜんぜんあたりのなかバイ。」
Uenoさんがぼやく。まだ、始まったばかりだ。これから、これから。
それから、仕掛けを打ち返すものの、潮は相変わらず手前にあたってくる。根がかりしては大変と、早めに仕掛けを回収。ハリをみると、エサはとられている。エサ取りの活性が高いようだ。
エサだけがとられる原因を考えてみた。ウキは15号で錘が10号。もしかすると、浮力調整が必要では。久しぶりのかご釣りなので、ウキと錘の関係がつかめていない。食い込みをよくするためには、浮力調整だと、錘を10号から12号に変えた。
さらに、仕掛けをもう一度考えてみた。入れ食いになるような状況なら2本バリもありだと思うが、魚が食って来ない状況を考えると、ここは1本ハリにして、違和感を少しでも小さくして魚の食い込みをよくすることが大切では。こういう考えで、8号の1本バリ仕掛けに変更した。しかし、
仕掛けを打ち返すが、相変わらずエサを取られてばかりであった。
ついに、夜を迎えた。本格的な夜釣りの開幕だ。暗くなって2投目くらいだった。ゆらゆらと妖艶にうごめいていたウキが一気に海中に消えた。
よっしゃあ。これこれかご釣りの醍醐味は。いつウキが消し込むかもしれないという期待感は、かご釣りならではだと言っていい。合わせを入れて近くに寄せるも、残念なことに魚が小さいようだ。
魚を簡単に浮かせることに成功。慎重に抜き上げる。ちょっと長い魚に感じたが、イサキではなさそう。いったい何が釣れた?夜釣りでは、何が釣れたかキャップライトを当てないとはっきりとはわからない。これも夜釣りならではの面白さである。
釣れた魚は、意外なことにグルクンであった。伊座敷でグルクン釣れるんだあ。しかも夜釣りで。時計を見ると午後7時半を回っていた。本命ではないが、食べられる魚が釣れてほっとする。一応お土産は1匹確保できた。
「よかなあ。こっちはなんも反応せんバイ。」
Uenoさんはややいら立っているようだった。
「タナは?」
「竿2本ですよ。」
タナは大体uenoさんも同じみたいだ。
今日は、9時半ごろが満潮。潮どまりになるまでに何とか本命を釣りたい。
午後9時ごろだった。潮が釣り座からまっすぐ沖に動き出した。この釣り初めての潮だ。何かが変わるかもしれないと思って凝視していたウキが一気に視界から消えた。
「来たっ!」
すぐさま大合わせを入れる。メガドライ4号が見事な放物線を描いていた。これは、本命か準本命に違いない。とにかく重たい引きだ。コンコンと竿先で魚信を感じることができた。何とか、底を切ることに成功したようだ。
ばしゃ、ばしゃ
何とか足元で浮かせることに成功。魚のサイズを見て、抜き上げ可能とみて慎重に抜き上げた。さあ、何が釣れた?キャップライトを当てる魚を確認して、思わずガッツポーズ。
赤ピンク色の魚体に黄金のひれ、背中に見える白い点は、正しく磯夜釣り師あこがれのメインターゲットであるシブダイ(フエダイ)であることを示していた。しかも40を超えるサイズ。
「uenoさん、シブ釣れましたよ。」
興奮しながら冷静にuenoさんに釣果報告。
「よう釣ったな。よかサイズたい。」
と、uenoさんは祝福してくれた。
早速、SNSでシブダイの画像を送信。
「いいぞ、いいぞ」「うえーい」「すげー」「すぎょい」「かまちゃん、スゲェー」
「こまめにタナを調整した方が良いですよ。」
仲間からのありがたい返信に楽しさは倍増。夜釣りは暗闇の中一人で、または二人で静かにことを行うイメージがあったが、このLINEでのやりとりで、まるで大人数でにぎやかに釣りをしているような感覚になった。
釣れて改めて分かったことがあった。それは、夜釣りにおける赤アミの効果である。赤アミは抜群の集魚効果からエサ取りを寄せてしまうという問題点もあるが、夜の海中で光るという性質を持つ。
実は、かごに詰めるのは、オキアミ生のみであったが、この時持ってきていた赤アミを少し混ぜてみたのだ。この釣れた1匹のおかげで、今回の釣りの赤アミの効果と、タナと、釣れる潮という3つのキモを手に入れることができた。
「あれ、潮の変わったバイ」
しかし、そう簡単にはいかないのが釣りというもの。ハリスがざらざらになっていたため新しい8号ハリス1本バリ仕掛けを付けている間に、さっき釣れた潮は変わってしまった。まあ、いつか潮は変わるものチャンスをものにするためにも、エサは撒いておかなくちゃ。
満潮潮どまりを迎え潮が再び沖に向かって流れだした。仕掛けを回収すると、エサが残っている。えっ、これは本命の第1次接近遭遇かも。
かごにオキアミ生とボイル少々、そして、赤アミを多めに詰め、えいやあっと投げた。きれいな軌跡を描いたロケットウキが目標地点に着弾した。かごをしゃくってエサを出す。10くらい数えて、もう一度しゃくって残りのエサを出した。
いい感じだ。もしかして。
ウキがなんと期待通りに、一瞬で漆黒の海中へと消えてしまった。
「よっしゃあ~」
無意識に声が出ていた。気が付いたら魚とのやり取りを始めていた。これも中々の手ごたえだ。脳からは脳内モルヒネのドーパミンがはじけた。ぼくはもう魚を釣るためのAIになってしまった。慎重に手前に寄せて魚を確認。今度は暗くても分かった。間違いない。シブだ。
「よいしょ」
抜きあげられた魚は磯でぴちぴちはねている。生まれてこの方海中で平和に暮らしていたシブダイちゃんがいきなり対流圏にお目見えしてしまったのだから、驚くのも無理はない。さっきと同じサイズ。43㎝。時計を見たら午後10時前だった。なんだ下げでも釣れるじゃん。
「すごかなあ。Kamataさん。こっちはぜんぜんバイ。おかしかなあ。タナは一緒だし。かごもkamataさんとあまり変わらんとバッテン。何が違うとだろか。」
あせるuenoさん。
「ウキはなんば使いヨットね」
「15号です」
「錘は?」
「12号です。」
「えっ、12号な」
Uenoさんは実はおいらに、ウキ15号に対して錘は10号でよかばいとアドバイスしてくれていたが、おいらがそれを裏切って12号の錘を付けていたことにたった今気づいたようだった。
「なるほど。12号ね。」
どうやら、uenoさんの仕掛けは、ウキと錘の調整がうまくいってなかったようだった。早速、錘を12号にして、釣りを再開。
「きたっ」
ようやく、uenoさんにも魚からの便りが届いたようだ。
「がんばれ!uenoさん!」
Uenoさんの竿の剛力で魚はあっという間に水面を割った。
「なんやこれ。オジサンバイ。」
がっくりするuenoさん。すぐさまリリース。落胆するuenoさんだったが、伊座敷にはこんな話があるという。
それは、伊座敷で釣れるオジサンの中には、白身で脂がのっためちゃくちゃ美味しい種類がいるらしい。リリースした魚がその幻の魚でないことを祈るばかりである。
「よしゃあ」
また、uenoさんにアタリが来た。抜き上げるuenoさん。今度の魚もuenoさんを落胆させた。
「フエフキ! こらいらんバイ。」
フエフキダイはフライで美味しいのでいただくことにした。頑張っているのに結果が出ないuenoさんに何とか釣ってほしい。そして、再び、
「来た!」
今度こそシブだろう。Uenoさん、また、抜き上げた。結構な良型だ。ライトを当てて三度uenoさんずっこけた。
「でた~~~、イス。」
Uenoさんはイスズミ歩兵軍団のことを愛着を込めて「イス」と呼び捨てにする。硫黄島と比べて圧倒的に数が少ないここ伊座敷でイスズミを釣ることになるなんて。今日のuenoさんはとことんついてない。
そうこうしているうちに、おいらは2つめのかごを失ってしまった。かご釣りをしに来たのにかごがなくては釣りはできない。フカセ釣りを始めるもまったくエサが持たない状況にしびれを切らし、波の音を子守歌に仮眠をとることにした。
どれくらい時間がたっただろう。時計を見ると午前2時45分。いかん、いかん、完全に寝坊してしまった。Uenoさんもすでに起き出して釣り始めていた。
「よしっ」
Uenoさんが魚の動きをとらえた。今度こそ。抜き上げた魚は、シブダイではなかったが、uenoさんが大好きな魚だった。
「やった、イサキばい。よかったあ。」
Uenoさんはすこぶるイサキがお気に入りで、磯夜釣りでいつもイサキば釣りたいと言っていたことを思い出した。
さらに、もう1匹イサキを追加して、少し機嫌がよくなった。
「kamataさん、やっぱり沖に潮が動いたときに喰ったバイ」
時計は午前4時を回った。夜明けまで1時間余り。ここからがシブダイのゴールデンタイムとなるだろう。エサも余らせてもしょうがないと、撒き餌を釣り座左前の水道付近にドカ撒きした。タナを竿1本半にして深いタナを攻めることに。
その時、uenoさんの竿が見事な孤を描いた。また、uenoさん魚をかけたなとよそ見をしていたとき、竿を持っている左手に強烈なアタリが襲った。Uenoさんになにが釣れたか全く覚えていない。とにかく、竿をひったくった相手との真剣勝負を始めなくちゃ。
崩された体制を何とか立て直し、初動の相手の突っ込みをアテンダー2.5号がしっかりと吸収し、最初の動きを止めた。最初の動きを止めたらこっちのもの。尾長グレでない限り取れるはず。案の定、相手は水面にぬうっと現れた。玉網ですくって手前に引き寄せる。
「シブだ。しかも今日一番のサイズ」
早速、メジャーを当てた。50㎝来たか。いや、そこまでないみたい。サイズを測ったら体高がある美しい魚ではあったが47cmどまりだった。しかし、船長の言う通り、この水道もナイスポイントであったことと、多くの撒き餌、タナ竿1本半というキモを見つけることができた。もう、こんなに釣れるとは正直思わなかった。8月の後半にこのサイズを釣ったのは初めてだった。
その後は、さしたるドラマもなく、あっさりと夜が明けてしまった。回収は午前6時と早い。薄暗いうちから少しずつ片づけを始めた。
時間通りに海希丸が回収にやってきた。もう一組の方に釣果をお聞きすると、本命のシブダイやイサキは釣れず、クロが何枚か釣れたとのこと。
夜中までは、時折一発波が来るなどうねりが心配だったが、朝のこの時間にはもう凪になっていた。伊座敷は西向きにあるため、朝日を直接拝むことはできないが、控えめな朝焼けとさわやかな磯風が疲れた体に心地よかった。
なんという清々しい瞬間だろう。かご釣りがこんなに楽しいなんて知らなかった。それはuenoさんも同じ気持ちだった。またいつの日か、この伊座敷を訪れてかご釣りをしたいと切に願った。
この日の朝、北のおぼっちゃまはまたわけのわからぬロケットを飛ばしたらしい。おぼっちゃまのお遊びとしてはあまりにも下品ではありませんか。
そんなことよりもっと幸せになれることがたくさんあるよ。ロケットを飛ばすよりかごを飛ばした方が幸せになれるのに。
きな臭いこの最近の米朝の情勢に不安を覚えながらも、ぼくはこれからも夢とロマンを乗せた幸せのロケットウキをまたとばしたいと思いながら港を後にするのであった。
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![]() 今回お世話になった 海希丸さん 船は南へ進みます 名礁 シビ瀬に渡礁
足場の悪かなあ~ 暑かったです この日の気温34度 裏はフカセ場みたいです 最初の釣果 何のドラマもなく陽は落ちていきます この正面の灯台の灯りに向かって仕掛けを投げます 夜釣り最初の釣果は意外なグルクン でました 43cm かご釣りで初めての釣果です 下げに入って 43cmが釣れました 仮眠していると 早くもuenoさんが釣っていました uenoさん執念のイサキゲット! フカセでも釣れましたよ~♪ この日最大魚47cm 神々しい姿です 夜が明けてしまいました この正面がポイント この水道でシブが釣れました ウキフカセで ありがとう シビ瀬 名残惜しや ああ 楽しかったなあ 本日の釣果 ハマフエフキのお造り シブダイのお造り シブダイの握り寿司 ハマフエフキのフライ シブダイの手こね寿司 フエフキダイのぶっかけ飯 |