11/17 魅惑の磯酒場放浪記 大分県鶴見のアジサバ釣り



大分県 鶴見

最近、日頃テレビを観ない自分に魅惑の番組ができた。BSで毎週月曜日に放映される「吉田類の酒場放浪記」である。

 

この番組は、主人公の酒場放浪詩人が都会の雑踏から逃れ、路地裏にある素晴らしい酒場の世界を巡り、酒場で店主と語り合いながら酒を汲み、食を堪能する。最後はその心境を、俳句を詠んで締めとする番組である。

 

中高年の男なら、酒場巡りを電波を通してではあるが疑似体験できることに、どういうわけだか魅惑を感じてしまう。田舎者の自分にとっては、この遠くてあまりに身近な話題に不思議と一日の疲れを忘れさせてくれるのだ。

 

昭和を生きてきた自分にとってこの番組は、例えば水戸黄門などここで印籠を出してストーリーが完結することが分かっていても期待で胸が一杯になりながら観てしまう、という類いのパターン化された構成に感じるのである。こういうものを子どもの頃からブラウン管で観てきたから、この番組にハマるのは必然だったのかもしれない。

 

すべて新しいものに、初見のものに、珍しいものだけに価値があるのではないと思う。もしそうであるならば、クラシック音楽、演劇、歌舞伎など様々な芸術は成り立たない。交響曲で言うならば、ここで木管楽器のファゴットがこの主題を演奏ことは分かっているのだが、思わず身を乗り出して聞き入ってしまうのを、どう説明するのか。

 

話がちょっと脇道にそれてしまったが、それほど、とにかく酒場放浪記は面白いのだ。

 

ところが、酒場放浪記で紹介されている優良酒場より優れた究極の酒場があることを、釣り師のだれもが知っている。

 

それは、磯酒場である。磯釣りでは、よせばいいのに、磯泊まりして昼釣りだけでなく夜釣りも成就しようとする。ときに、夜釣りは中々成果を上げられないのが世の常である。

 

腕が悪いのはさておき、潮が悪いとか、魚がいないとか、難癖付けて宴会モードに入ろうとする。筆者はこの類いの輩である。そして、お腹が満たされると、いつの間にか釣りを忘れてしまい、寝袋に体を委ねるのである。

 

しかし、そんな輩が多い中、釣りと磯酒場の二刀流をやってのける磯のメジャーリーガーが存在する。やなちゃんの紹介で知り合った、八女クロ釣行会のトモさんである。

 

これまで釣りの二刀流とは、上物と底物と考えていたが、考えを釣りと磯酒場に変えなければならない。釣りクラブの会長を務め、トーナメントに出場するほどの釣りの腕前がありながら、磯宴会をこよなく愛する釣り師である。

 

そのトモさんから、

 

「こんばんは。時間があれば、鶴見のサバ釣りに来られませんか?」

 

と、うれしいお誘いの言葉が。

 

これは行くしかないでしょう。サバ釣りなら夜釣りだから、2日間体を空けられるのが自分は11月中旬の休みしかない。その期日でよいかトモさんに尋ねると、

 

「行きましょう。鶴見の当番瀬を押さえました。」

 

という返信が。

 

おかげで釣行日までの仕事を猛烈な勢いで片付け連絡を待った。

 

釣行日前日

 

「出ます。かわの釣具店で待ち合わせしましょう。」

 

という文字が立ち上がり、小さくガッツポーズを。

 

九州自動車道を北上し、熊本ICで降り、国道57号線を東に向けてひた走る。4時間半の道のりでかわの釣具店に到着。トモさんを待った。

 

午後1時ごろ、ワゴン車からどこかで拝見したことがある人物が降りてきた。トモさんだ。すかさず挨拶を。

 

「よろしくお願いします。」

 

同業者であるトモさんと打ち解けるのはそう時間はかからなかった。

 

「えさは、ここでは買いません。私についてきてください。」

このように言い残すと、車で鶴見半島方面へ。15分ほど走ったところでとある釣具店に到着。ここで、餌を買うという。釣り雑誌などで名前だけは知っていたが、ここがかの有名な鶴見崎フィッシングであることがわかると逆に驚いた。こんなに小さな釣具店だったのか。

 

店構えは、一見頼りなさげな小さな釣具店だが、中身は違った。オキアミの安さとクオリティーは、ピカイチという。釣り人にとっての魔界は、芭蕉が詠んだ中尊寺の「ふり残してや光堂」に値すると思った。

 

ここを後にすると、いよいよ渡船基地へと出発だ。峠を越えると地図で仮想体験した通りの入り江が現れた。右に大分を代表する釣り場米水津を仰ぎながらハンドルを左に切ると左手に見慣れた情景が見えてきた。

 

鶴見半島の北側の海岸道路を走ること15分で目的地に到着。今回お世話になる海翔丸さんの看板が見えた。丹賀浦港に午後2時過ぎに到着。早速、船長に挨拶して荷物を取り出した。

 

「うねりがはいっちょるよ。風は収まってくるとおもうけんど。」

 

船長が大分の言葉で状況を簡単に説明。トモさんはここの常連さんのようで、当番瀬を押さえるのは造作もないようだった。潮風が肌に心地よい。

 

kamataさん、これから行くところはサバが釣れてないようです。残念ですがクロを釣りましょう。」

 

トモさんが残念そうに声をかけてくれた。いやいや、釣れなくても大丈夫。この大分鶴見の磯の全体を味わいに来たのだから。

 

荷物の積み込みが終了。午後2時45分、いよいよ船はゆっくりと港を離れた。結構風が吹いているが、驚くほど凪である。

 

トモさんと釣友のFさんの3人でキャビン内に入り、磯を目指した。大島との狭い水道を過ぎると豊後水道が開けた。さて、今回は一体どんな磯が相手をしてくれるのだろう。

 

船の針路は南へと変わった。太陽がまぶしい。波のしじまに日光が反射し、先ほどまでのプルシャンブルーとはうって変わり、ダイヤモンドをちりばめたような海面に。その宝石の海をしばらく走ると、低くて細長い独立礁が見えてきた。3人は、キャビンの外に出て渡礁準備を始めた。

 

釣り人が一人回収の準備を慌ただしく進めていた。昼釣りの客と入れ替わるためだ。渡礁を無事に済ませる。夜釣りだから、荷物が多いねと一人苦笑する私。11月中旬とは思えない暑さ。3人で荷物を高い場所にあげる。かなりの重労働だ。

 

kamataさん、ここは突端東といいます。上げ潮がいい場所です。Kamataさんはここで釣ってください。うねりがあるから気をつけてください。」

 

トモさん、なんと自分に低いが最も実績の高いであろう鼻のようなポイントを譲ってくれたのだった。初対面なのに感謝である。

 

「上げ潮がいい感じで流れていますね。今のうちに昼釣りと夜釣りの準備をしましょう。」

 

今回の昼釣りタックルは、がま磯アテンダー1.2-53に道糸1.75号、ハリス1.5号。ウキはトモさんからいただいたジャイロ0α。浮き止めなしの全遊動。ウキゴムはフリーとし、極小サルカンに、道糸にG6のガン玉1個。ハリはグレ針の5号を結んだ。

 

仕掛け作りを終え先端の鼻付近を見るとトモさんがルアーで何かを狙っているようだ。突端の鼻の右は溝になっていて、うねりでこれでもかとサラシができている。

 

ヒラスズキねらいだな。トモさんは、釣りの守備範囲が広い方のようだ。私はルアー釣りはやらないから高みの見物と行こう。

 

すると突然、リールを巻いていた腕が止まり、まるでボクサーがカウンターを食らったようにトモさんの腰が一瞬落ちた。どうやら、魚を食わせたらしい。

 

「喰った。タモ!」

 

Fさんがトモさんの元に駆け寄る。尋常ではない獲物らしい。

 

しかし、無情にも竿先が天を仰いでしまった。

 

「でかかった。メーター級だった。明日、夜が明けてから、またやります。」

 

悔しいそぶりを見せずに、トモさんは夕まずめの釣りの準備を始めた。

 

さあ、夕まずめの釣り開始だ。潮は、いい感じで沖に向かって左へと流れている。まずは、撒き餌を撒いて様子を見る。熱帯魚系の小魚がぽつぽついるくらいで、餌取りの猛攻はなさそうだ。撒き餌を2,3度放ちいよいよ第1投。後ろに軽く振りかぶり、ジャイロは紫紺の海へと突き刺さった。

 

よい潮だね。これが硫黄島ならアカジョウが食いついてきそうな、そんな期待をもたせてくれる。仕掛けを回収すると、餌はとられていない。第2投、これも餌をとられない。この潮では、仕掛けがうまくなじまないのでは。

 

G6のガン玉をハリスに噛みつけて再開してみた。ようやく仕掛けが馴染み始めた。仕掛けが竿1本くらい入ったところで、餌がかじられるようになった。クロがいるらしい。海中は見えないが、クロが上から落ちてくるオキアミをついばんでいる様子が目に浮かぶ。

 

今度は、もう一つG6のガン玉をハリスに追加。何かが変わると思ったそのとき、道糸がピンと走った。

 

喰ったぞ、喰った。しかし、これは軽い。浮いてきたのは、手のひらサイズの尾長。小さなサイズだったが反応があったことに安堵。魚は海にお帰り願う。

 

今度も喰った。これも同じサイズの尾長グレ。ガン玉を追加したことで、魚との距離を縮めた気がした。3尾目は、足裏サイズの尾長。これは塩焼き用にお持ち帰り。

 

魚からの反応が出始め、俄然やる気がみなぎってきた。このジャイロというウキはすごい。魚に違和感を与えない感度のよさは、釣り人にダイレクトにアタリを知らせてくれる。

 

ほどなく、4回目のアタリを捉えた。今度は、今までの引きとは手応えが違う。ハリスが細いから慎重にやつの突っ込みをかわし浮かせにかかる。ウキが見えた。同時に尾っぽの白い魚がぬうっと現れた。

 

やった本命だ。1.2号だから無理はできない。久しぶりの玉網入れ、慎重に魚を掬った。よっしゃあ。はやくもボウズ脱出。予想通りの口太。サイズは35cmくらいだが。刺身サイズには間違いない。トモさんから祝福のジェスチャーが。さらに、同じパターンで2尾目をゲット。ややサイズアップ。時計を見ると午後5時を過ぎ暗くなり始めていた。

 

そして、3回目の本命のアタリを捉えた。これはでかい!慎重に魚の動きを感じながら、少しずつ浮かせにかかった。中々浮いてこない。だが、アテンダーの力を吸収するしなやかさのために徐々に浮いてきた。尾っぽの白い魚が見えた瞬間だった。別に油断したつもりはないのだが、魚が手前に急発進。

 

たまらず竿先が海中に突っ込む間に、信じられないタイミングで竿が天を仰いでしまった。

 

「なんで? あっヤバい。ウキが」

 

どうも道糸が瀬に当たってしまったようで、高切れ発生。ジャイロが自由な世界への旅立ちを始めていた。

 

もらってすぐのウキを失ってなるものか。すぐさま、ウキ取りパラソルを装着し投げる。しかし、左に動き始めた下げ潮にのってみるみるうちに遠ざかっていく。

 

「竿貸して!」

 

このピンチを救っていただいたのが、トモさんだった。トモさんは慣れた手つきでウキを難なく回収。感謝である。

 

ところが、仕掛けを作り直して釣りを再開した時には、残念ながら魚の食いは止まってしまった。潮も手前に当たってくる潮に変わってしまった。

 

魚からの反応が消えると、集中力が散漫に。同時に夜の帳が降りてしまったので休憩した。

 

「9時頃から上げ潮が始まります。それまで宴会しますか。」

 

やったね。早くも磯酒場の開店のようである。

 

Fさんが、できるだけ平らなところを見つけ、慣れて手つきでバーナーをセット。お湯を沸かし熱燗を準備。ホルモンやミニ豚足など、ガラスの50代の大好物ばかりを並べられたからタマラナイ。

 

「乾杯~~~www」

 

風もそれほど気にならないので、冷えたビールが五臓六腑に染み渡る。波の音をBGMに釣り談義をしながら飲むビールは最高だ。

「そろそろ、暖まったでしょ」

 

Fさんがセットしてくれていた熱燗がいつでも出撃OKに。日本酒にホルモン、豚足。最高の組み合わせだ。懐かしい福岡の言葉を操るお二人とお話ししていると、なんだかここがまるでふるさと福岡の屋台のように思えてきた。

 

目を閉じると、おでんが並ぶ中にブリキの熱燗入れが鎮座している情景が浮かぶ。湯気の向こうに無骨だが人の良さそうな店主の顔が見え隠れする。人肌になった頃に取り出し、おちょこに入れてくいっとやる。このときの酒は高級な大吟醸酒でなく、2級酒がいいね。

 

私ももってきた芋焼酎を空けて振る舞うことに。ビールに焼酎に日本酒のちゃんぽんでほろ酔い加減に。ああ、磯宴会最高だね。こんな演出をしてくれたトモさんに感謝である。

 

おっと、この後の釣りがあるので、宴会もここまでと1時間ほどで切り上げて、期待の上げ潮での釣りを開始することにした。

 

夜釣りでも先端の鼻の釣り座を譲っていただいた。感謝である。竿は、がま磯アテンダー2.5号-53、道糸3号にハリス3号。ウキはBの電気ウキ。ハリはチヌ針3号で様子を見ることにした。

 

サバが当たらないなら、デカグロ狙いだ。

 

kamataさん、サバが回遊するときは、その水道で当たってきますよ。」

 

ナイスなアドバイスが。ただ、もうそろそろ上げ潮が流れても良さそうなのだが、一向に潮は動かず、どちらかと言えば下げ方向に動いているようだ。

 

餌は、全くとられない。魚がいる雰囲気がしない。餌をとられるまでタナをどんどん深くしていく。竿2本まで入れるが、中々餌が取られない。

 

潮が流れ始めると、魚からの反応が出始めた。ウキが魚のアタリを知らせてくれるようになった。そんなとき、右に流れていったウキが、餌取りのそれとは明らかに違うスピードで沈んでいった。間違いないアタリだ。

 

強いあわせを入れる。乗った。それほど手応えはないが、本命らしき引きだ。アテンダーの力で魚があっという間に水面に浮いた。なんだ?クロではなさそうだが。

慎重に抜き上げる。ライトを当てると、30cmを少し超えたイサキが磯の上でピチピチはねていた。本命ではないが、まともな魚の訪問にほっと胸をなで下ろす。

 

しかし、冷静に考えるといくら活性が低いからといって、竿2本でサバが食ってくるはずはないよね。今回のターゲットはイサキではなく、サバだったはず。磯釣り師というもの、ここはやはり初志貫徹が肝要かと。その後は、タナを浅くしてチャンスが来るのを待った。

 

午後9時過ぎ、待望の上げ潮が流れ始めた。何かが変わると思ったそのとき、ウキがスペースシャトルのような速さで暗闇へ消えていった。同時に道糸が走った。

 

その勢いのわりに軽い引きだったが、横走りするこの魚はサバらしかった。浮かせて一気に抜き上げる。ライトを当てると、35cmくらいだったが、本命のサバだ。

 

「やったあ。いたね。サバ。」

 

今日は、サバは釣れないと思い込んでいたが、この1尾は全くの想定外の出来事だった。サバが釣れたことが分かると、磯場が一気に活気づいた。タナはこのとき竿1本半。

 

しばらくすると、トモさんに強烈な当たりが来た。トモさんの3号竿を襲っている。この引きはサバではないね。青物のように横走りを繰り返している。さあ、玉網入れだ。どんな青物だろうと近づくが、魚を見てずっこけた。どっひゃあ~白尾長だ><

 

1匹サバは釣れたが続かない。今日はやはり厳しいのか。それともタナが合っていないのか。

 

答えはすぐ出た。トモさんがサバを釣ったからだ。

 

kamataさん、サバ釣れました。タナは、浅いですよ。2ヒロ。そんなに遠投しなくても大丈夫です」

 

アドバイス付きで、重要な情報が飛んできた。

 

それからというもの、一投ごとに魚からの反応があり、サバが入れ食いになってきた。サバの群れがこの磯に接岸した模様だ。トモさんも入れ食い。40を軽く超える良型もゲット。上げ潮が本格的に流れ出した途端に魚の食うスイッチが入ったようだ。瀬際でもサバが食いつくようになった。

 

「もう、休憩しましょうか。」

 

楽しい時間がしばらく続いたが、だんだん飽きてきた。サバは傷みやすい魚であるため、たくさん釣っても仕方ないと、食いが渋くなってきたところで、本日2回目の磯酒場の開店となった。

 

「乾杯~~~w」

 

釣り談義を肴に飲む磯ビールの味はまた格別だ。しばらくすると、本物の肴が出てきた。圧倒的な手際の良さで、あっという間にトモさん特製の磯鍋が完成。

 

豚肉、豆腐や野菜を煮立てたところで投入された白味噌がなんとも表現しがたい旨さ。夜釣りでの温かい料理は、堅苦しいフルコース以上のおいしさだ。あまりのおいしさに釣りを忘れてしまう。

 

そして、いつの間にか子どもの頃愛唱していた「雪山賛歌」のメロディーが浮かんできた。

 

磯よ岩よ 我らが宿り

おれたちゃ街には住めないからに

 

バッカン下ろして サラシの岩場

輝く水面(みなも)に磯風そよぐ

 

狭い磯でも 黄金の御殿

早く釣ろうよ エメラルドの瞳・・・

 

この歌の原曲は、ゴールドラッシュにわいた19世紀のアメリカで、娘を失った父親の心情を歌った曲であることを知ったのは、ここ最近のことだった。脳の古い皮質が奏でる伴奏にマイクを握りたいところだが、ここは磯場。二次会はなし。楽しかった磯酒場も午前1時過ぎには閉店。満腹感の後にやってくる睡魔には勝てず、寝袋にくるまった。波の音を子守歌にいつの間にか眠ってしまった。

 

どれくらい時間がたっただろう。気が付くと、夜の帳が解かれようとしていた。うつろな時間を楽しんでいると、トモさんがごそごそと起き出してこられた。時計をみると午前5時を過ぎていた。

 

明るくなったところで、トモさんが早速ルアーでサラシを探っておられたが、魚からの反応がなく、夜明けとともにクロ釣りを再開することにした。

 

午前10時前から期待の上げが流れる予定。潮はハナレとの水道を突端西方面に向かって川とまでは行かないものの速く流れている。昨日と同じ仕掛けでガン玉をハリスに2つ噛みつけ竿1本先に投げて流し続けた。

 

さあ、下げ潮というテーゼに対して、朝まずめというアンチテーゼが成立するか。この仕掛けにかかっている。魚からの反応はある。これはいけるかも。

 

潮が若干緩んだ時だった。ウキがシモって視界から消えていたとき、道糸がピンと張った。反射的に竿を立てた。

 

アテンダーが見事な弧を描いている。これは間違いなく本命の予感。手前の瀬に潜られないように慎重に且つ強引に魚との距離を縮めた。

 

尾っぽの白い魚がぬうっと現れた。クロだ、クロ。朝まずめに分があったね。玉網で慎重に掬って手元に引き寄せる。35cmほどのまるまるしたクロ。朝からテンション上がるね。これから期待をもって釣りを再開するものの、もう1尾同じサイズを釣ってこれからというところで潮が止まってしまった。

 

「上げに入ると、チャンスですよ」

 

しかし、一旦止まってしまった潮は上げ潮の時間帯になっても動くことはなかった。

 

「11時半には片付けましょう」

 

の約束通り、片付けることにした。クロは数は釣れなかったが、満足度はクーラー満タン。たくさんの荷物を鼻の部分に集めて船を待った。

 

海翔丸がやってきた。午後0時丁度。時間に正確な船だ。無事に回収してもらった。トモさんはこの辺に詳しいため、いろいろ磯を紹介してもらった。ガイド付きで大分鶴見の海をクルージングできた感じだ。

 

夜釣りのサバ釣りでやってきた今回の釣行。サバは期待できないと思われたが、結果的にはよく釣れ、クロのお土産もできた。豊かな鶴見の恵みをクーラーにつめて凱旋できる喜びは格別な思いがある。それに、鶴見の磯を紹介してくれただけでなく、磯酒場という素晴らしい世界を体験させてくれたトモさんとFさんにただただ感謝である。

 

酒場放浪記ならば、ここで俳句が出てくるところだが、吉田類のように俳句が詠めないことに苦笑しながら鶴見の港を後にするのだった。






ここには質の良い餌があるそうです

























今回お世話になったトモさん











突端東に渡礁























まずはトモさん ヒラスズキをねらいます














































































































































































































































































































脂のりのり 鶴見のクロ




サバすき







大分のサバはうまいです


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