9/14 東風吹かば 鹿児島県枕崎のシブダイ釣り



鹿児島県 枕崎のシブダイ釣り

東風吹かば においおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ

ご存知平安時代の政治家で右大臣までのぼりつめた菅原道真の句。藤原氏の陰謀により太宰府に左遷され失意のうちに亡くなった彼の心情はいかばかりか想像に難くない。

早春の時期の東風は、なんとなく暖かみのある語彙だが、時期と立場が違えば情景は全く異なる。

硫黄師にとっては、迷惑極まりない東風。シブダイの実績の高い、鵜瀬、平瀬、浅瀬、タジロ、そして、洞窟などに乗れないという憂き目にあってしまうのだ。

東風吹かば 臭い起こせよ硫黄の花 主なしとて シブな忘れそ ※シブとはシブダイの意

こんな釣り師としての思いを掻き立てるような昨今の天候。統計学を完全に無視した土日を狙った天候は、梅雨前線、台風、秋雨前線とエンドレスで釣り人を苦悩に陥れた。

もうこの仕事やめようかと思う取ります。

とある離島専用の渡船屋の船長の嘆き節が電話口からため息混じりに聞こえてくる。

これだけ、土日に時化が続くのも釣りを初めて記憶にない。今流行りの何十年に一度の状態なのであろうか。

当然、6月の下旬に奇跡の天候回復により出撃できたあの日以来、硫黄島の磯に、7月、8月、そして、9月になっても立てないでいた。

月夜の大潮と決して条件はよくない9月14,15にも硫黄島にと考えていたが、原因不明の低気圧の影響で?東からの風とうねりで出航は秋の夜のつゆと消えた。

しかし、そんな中でも、シブダイ釣りに情熱を傾ける方々がいることをFBで察知。この方々の計画に相乗りすることにした。

まずは、北九州からのN会長である。九州の北のはしから、南のはしまでやって来るという強者。毎年この時期に枕崎の沖堤防でシブダイ釣りに興じるという。しかも、もうかれこれ20年も足しげく通っているという。たかが魚のために往復800kmを走破してやってこられるというからその情熱は半端ない。

それから、会長さんが連れてこられた方々もユニークだ。大企業ばりの相談役という方がおられて、さらに、バディという異名をもつ方もおられた。なぜ、バディなんだろう。ゴルフじゃあるまいしバーディーじゃないし、バディシステムのことだろうか。どうでもいいことかもしれないが、気になってしかたがなかった。

ここまでが堤防組で、もう一組は磯の組である。Sさんという鹿児島のシブダイ釣りの名人とうたわれている方とイケメンの連れの方である。Sさんは、南薩をホームとしシブダイを釣りまくっている凄腕釣り師である。いつか御一緒したいと思っていたが、早くも念願が叶った形になった。

今日は、東からの風とうねりで磯は厳しいかもしれないとのこと。船長も渋い顔だ。最後の客のお一人様が到着して全員集合。最後の方は、先日ベスプロコンサートでお世話になったリュート奏者にそっくりだった。

集まった釣り日人は総勢8人。荒磯フィッシングの船がなぜか小型に進化していたのが気になったが、エンジンに火が灯され、港を離れた。

港を出るとすぐ沖にコンクリート製の延べ棒が現れた。波長の長いうねりが堤防を洗っている。もちろん、沖堤防の釣りには支障のない状態だ。エンジンがスローになり、各々の体からアドレナリンが噴出された。海の男のスイッチが静から動へと変わる。

西側にN会長と相談役さん、東側にリュート奏者とバディさんが乗った。荷物が多い。シブダイ釣りを心から楽しもうとする意気込みがふつふつと感じられた。

無事に荷物を渡し終えて船は枕崎の西磯めがけてひた走る。小さくなっていく沖堤防。そして、枕崎のシンボルである立神を抜けて西エリアに突入した。さあ、果たして乘れる磯はあるのか。実は事前に船長から

長瀬に行きましょうか

と言われていた。ここは、20年近く前にクロ釣りで一度乗ったことのある磯だったが、今となっては全くどんなポイントだったか記憶に残っていなかった。

もうどこでもいいや、釣りができるところならば。

途中、Sさんとシブダイ釣りについて話した。すると、有り難いことに、Sさんが持参した餌を分けていただいた。

kamataさん、餌は何ですか。

サンマですと答えると、

kamataさん、これ使ってみてください。もらったのは予想だにしなかった○バだった。これは初めての餌だ。引き出しが増えたので有り難く受けとることに。

船は、立神からすぐのワンドに入ってエンジン音を弱めた。

赤瀬といっていたような、そういうでこぼこした巌に船をつけた。

なれた手つきで荷物を受けとるお二人。

頑張ってください\(^^)

さあ、今度は我々の番だ。このタイミングで船長に呼ばれる。

kamataさん、長瀬と思ってましたが、あそこは正面から風を受けます🎵 あそこなら、風を瀬に受けて釣りができますよ。どうしますか。

船長が夜に満潮を迎え、うねりや風向きを心配しての申し出。赤瀬らしき磯からワンドを挟んで対岸の磯を強烈に勧めた。事前の予報では、夜中に向けてだんだん風が強まるとのこと。迷わず安全策だ。

船長、あそこでお願いします🎵

意を決した船長は、対岸の瀬に接岸。ゆっくりと渡礁を済ませ、船長のアドバイスに注意する。

こっちに(ワンド向き)向けてと沖向きに投げてみてください。回収は6時です。

そういい残すと、船は去っていった。さあ、とにもかくにもここで勝負だ。汗だくになりながら、荷物を一番高いところに集め、磯の全体像をつかむ作業にはいる。

ワンド向きは、右の地寄りは確実に浅くなっており、シブダイはそこからは出てこないのではないかと予想。釣るなら沖向きだと直感を働かせてポイントを予想する。

ここでいいですか。

幸いM中さんが、地寄りのポイントを選択してくれたので好都合だった。

今日は、枕崎の夜釣りが20年ぶりくらいということで、ブッコミとかご釣り仕掛けの両方を準備した。

竿はダイコーの海王口白にナイロン道糸20号、丸太オモリ30号に、ハリス20号、針は鋼タルメ22号。

かご釣りタックルは、竿はダイワメガドライ遠投4号に道糸8号、ウキは遠投ウキ15号、かごは12号のオモリと天秤つきのものを。針は小さめの尾長バリ9号を結んだ。かご夜釣りでは、/B.Qボイルが基本となるが、オキアミ生と赤アミを混ぜる。ボイルはどうしても浮いてしまう傾向にあるため、オキアミ生を混ぜ、集魚効果とともに、光で餌をアピールできる赤アミを混ぜるのが定番となっている。

時間があるため、ゆっくりと準備して、夜の帳を待った。

周辺がだんだん暗くなり、いよいよ夜釣り突入の合図だと、ケミを装着し釣り開始。

名人Sさんの話では、このところ南九州の海域では、好い潮が流れず、厳しい釣果が続いているとのこと。

下げの片潮らしいんですよ。甑島の漁師がダメだったと言っていたくらいですから。

状況は最悪に近いらしい。天候も不安定な中、さらに潮も芳しくない前情報に船にいる頃から早くも後悔をし始めていた。しかし、釣りの準備をしている中で、そのことを忘れるほど久し振りの磯釣りに前頭前野が踊っていた。

まずは、かご釣りから。かご釣りは、タナ取りが命。測ってみると大体竿2本ほど。練習でM中さんが根掛かりをやらかしていたことから、手前は浅く根が点在していると結論付ける。

えい、やあっと仕掛けを投げる。いい感じでロケットは翔んでいく。狙った地点に着水だ。

潮はあまり動いていない。右にいったり左にいったりフラフラ漂っている。

しばらくして回収だ。餌が取られている。魚からの反応がゼロでないことにほっとする。

2投、3投と仕掛けを投げる。潮が動けば必ず食ってくるはずだ。久し振りのかご釣りの感触に心を踊らせる。

水平線の彼方にわずかにオレンジ色の光が残る頃、ユラユラとした前アタリの後、ケミホタルが一気に視界から消えた。これだよ、これ。ウキがずぼっと消し込む面白さは、かご釣りならではの醍醐味だ。

慎重に足元に寄せる。ありゃ、なんか竿を叩くし、最後まで抵抗するぞ。そうこの手応えはイスズミ歩兵軍団だ。抜きあげると案の定、イスズミがウンコたれてピチピチ跳ねていた。

イスズミの表敬訪問でこの状況は最悪ではないことがわかった。このまま釣りを続ければ、そう遠くない時間帯で本命シブダイの顔を拝めるかも。

あっ、しまったそう言えば。あわててブッコミタックルに行く。かご釣りに夢中でついついブッコミとの二刀流でという作戦を忘れていた。

枕崎の磯では全く情報がなかったので、かご釣りとブッコミ両方をやってみて、釣れる方の釣り方がわかったところでその釣りに集中するという作戦。

ブッコミ本命、かご釣りは保険といったところか。

M中さんは、ブッコミを忘れてかご釣りに集中していたようだ。たまに、竿を曲げるも、釣れてくる魚は、イスズミかイトフエ。そして、でたあ~と大声をあげるので視線を向けるとウツボの波状攻撃を受けていた。

こちらは、たまに、竿先に魚信が来るものの、これといったドラマはなかった。サンマでは厳しいかもしれない。そこで、Sさんからいただいた○バを使うことに。一匹がけにしてドボン、丸太オモリが落ち着いた27m地点でアタリを待った。

餌を変えると途端に魚からの反応が出始めた。アタリが出るところで勝負せよの鉄則通り、27.8m地点を探った。

何かが変わると感じた午後8時前、コンコンと 前アタリの後、竿先が一気にお辞儀した。反射的に竿を握り背中を海老ぞりにして底を切る。

ぐぐっと左手に心地よい重量感が襲う。これだこれを待っていたんだ。手応えから、40はある感じだ。竿も叩かないから、タバメではなさそう。

さあ、近くに寄せようとリールを巻くものの、中々寄せられない。て言うか、魚の動きでジリジリと道糸が少しずつ出ていくではありませんか。

そうか、釣具店で道糸を交換してもらったとき、ドラグを緩くしてあった模様。こんな大切なときなのになんてこったい。ドラグを閉めながら何とか足下まで寄せてきた。抜きあげようとした瞬間、竿先のテンションがふっと 軽くなった。やらかした。アタリが少ないこの場所での痛恨のバラシ。

ちゃんと道具の確認をしておくべきだった。後悔してももう遅い。覆水盆に帰らず。前半戦のチャンスタイムはこうして逃してしまった。

それからというもの、釣れてくるのは、外道のイスズミ歩兵軍団(軍団と呼べるほど数が多いとはいえないが)、ナミマツカサ、イトフエなどが釣り人をおちょくりに来た。

また、ここのウツボは元気だ。M中さんは、見事にウツボ4連発の偉業を達成した。ボクに釣れたウツボもあまりとぐろを巻くことなく、お行儀よく餌を離して自分で海に帰っていった。あまりのアタリの少なさに、思わずウツボをクーラーにいれようかと考えたが、シブダイを釣るんだと、リトルボクがボクを思いとどまらせた。

アタリが少なくなると休憩が多くなる。空を見上げれば満点の星。夜釣りの醍醐味に星の観賞ができることにある。

この時期のこの時間、真上を見上げると、丁度、明るい星が3つ輝いて三角形を形作っている。白鳥座のデネブ、こと座のベガ、ワシ座のアルタイル。夏の大三角が見える。今日は満月でことのほか明るい夜だ。星の観賞会としては今一つの条件だが、それでも注意して空を見上げればなんとかなるもの。あれが北極星、その近くに、北斗七星が。カシオペア座ははっきりとは見えないな。アンタレスはあんなに低いところに。そして、夜中を過ぎると、東の空から、冬の星座の代表格オリオン座が見え始めていた。この時期にオリオンを楽しむことができるなんて、夜釣りならではだよね。

天然のプラネタリウムを自分で自分に解説しながら楽しんでいた。

いかんいかん、ボクは釣りに来たんだった。遊んでいる暇はない。何としてもシブダイを釣らなきゃ。 そう思い直して、かごを飛ばし、オモリをかっ飛ばすものの、時間がたてばたつほど魚信は途絶えてしまった。午前1時頃から、朝まで全く餌を取られることもなく釣りは終わりを迎えた。

夜明け前に、M中さんの釣ったタコ(もちろん逃げられたが) が二人のなかでの注目すべき事件となり、最後まで黄金の高級魚シブダイを釣ることはできず、午前5時半となったため、竿をたたむことにした。

回収の船で名人Sさんの釣果を拝見。スカリの中には、2キロクラスのシブダイほか数匹のシブダイがアカハタ混じりで釣れていた。この厳しい状況で。さすがだと感服。

今度は堤防組の回収でやはり。数匹のシブダイがご用となっていた。

イトフエがそこらじゅうにいて大変だったよ。夜が開けてから、シブが釣れた。この前もだった。

と、N会長さんも厳しい中で釣果をあげておられた。

清々しい惨敗だったが、シブダイの釣果を見せつけられて益々シブダイを釣りたくなった。

今度は、東風吹かない時に、硫黄島に行って思う存分シブダイ釣りをしようと心に決めた。

主なしとて、シブダイを忘れそ(忘れるなよ)と言われているのはまさしく自分に他ならないと確信し、帰りの船の上で次の釣りを決めるのだった。























































































































潮もうごかんし きびしいね





月見団子が必要な夜でした










ブロ友さんたちと



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