7/19 潮がいかなきゃただの岩 硫黄島

3人での釣行ねらいはミジメ瀬
「いいよ。ただね、このところ水温が上がってね。急に上がったもんだから、シブはあまり釣れてないよ。」釣れてないなんてそんなことは関係ない。1学期の仕事が一段落となったこの時期の3連休、硫黄島に行かない理由は見当たらない。その思いはuenoさんにとっても同じだ。7月初めの野間池釣行で、5.4kgのフエフキダイをフカセで釣ったuenoさんの次なる目標は、南海の赤いモンスター「アカジョウ」だ。「アカジョウば釣りたかなあ。」これが最近のuenoさんの口癖だ。アカジョウに逢うためには、硫黄島が最短距離である。今回は、uenoさんの息子も一緒だという。夜釣りは3人ぐらいのほうが楽しいし、OK。uenoさんの話によれば、Jrはフカセ釣りがしたいとのこと。3人で、ブッコミ、フカセ釣りも楽しめ、初心者でも安心の磯。そして、釣果も安定している磯と言えば、ミジメ瀬がいいのではないか。前日の「3時過ぎに来てください。」の船長からの電話で釣行成立と相成った。



今日は磯が3組 後は船釣り

ミジメ瀬をあきらめうねりを避けられる平瀬へ
当日になり、枕崎港に着くと、黒潮丸の前に置かれているトロ箱を確認。何と4箱しかないではないか。今日は、磯釣りが3組に後は船釣り師が多数乗る模様。磯釣り師が少ないということは、ポイントが選び放題ということではありませんか。ふっふっふ、しかし、不安もある。風が強い。桜島上空の風12mとのこと。肝心の風向きは西だ。ミジメ瀬は西磯だ。不安は的中。「kamataさん、ミジメ瀬は昨日も波を被ってたからね。今日は無理ですわ。浅瀬で、6、7kgのアカジョウが出たよ。浅瀬でもいいし、平瀬か鵜瀬あたりでもいいよ。」船長のまえあたりに、悩むおいらたち。悩むにはこんな理由があった。

平瀬、鵜瀬と言えば、硫黄島の中で、石鯛やクロ、尾長釣り場としても1級ポイントだが、夏の夜釣りのポイントとしても有名だ。特に、平瀬は「アカジョウの魚影は平瀬がぴか一だな。」とか、「シブダイが群れでやってくるよ」と船長も絶賛の磯場だ。昨年も、鵜瀬、平瀬を中心に、かなりの数のシブダイ、アカハタ、アカジョウ、スジアラなどの夏魚が仕留められている。平瀬に乗れるならこの上ない幸運と言うべきだ。ところが、今年の硫黄島では異変が起こっていた。それは水温である。7月上旬に入っても、23,4度とかなり低めだ。そのためか魚の動きがぎこちない。それが先週末から急に水温が上がったんだそうだ。(28度)また、鵜瀬、平瀬あたりでは潮の動きが釣り人の思いとかけ離れているようで、ボウズもありの貧果に終わることもあったそうな。いわゆる「眠れる獅子」状態。しかし、平瀬、鵜瀬ブランドをそうやすやすと手放すことはできずに、「船長、平瀬でお願いします」とお願いすることにした。「平瀬低場なら風を背中にしょって釣りができるからな」と船長に内諾をもらった。

黒潮丸は、いつものように枕崎港を午後3時半前に出発。枕崎沖堤防を過ぎてからの海の状況を船底の揺れ具合で確かめる。風の強さとうねりを心配していたが、それほどでもない。冬場のクロ釣りの本格シーズンのそれとほぼ同じ感じだ。「硫黄島は初めてなんですよ。」一緒に船底で時を待つ釣り師から声を掛けられる。「アラ狙いですか」「そうなんですよ。中々釣れないけどね。野間池にいくつもりだったんですけど、西風が強くて船をだせないからということでこっちに来たんですよ。」なるほど、西風が強いのか。硫黄島で西風が強いということは、ミジメ瀬、立神を初めとする西磯が使えないということか。「西側がだめでも釣るところはたくさんありますよ。」と声を返す。釣りを楽しくするためには、後ろ向きより前向きのほうがいい。西磯が乗れなくても東側があるさ。今回は、これで行こう。


本州は大雨 でもここは別世界 今回はueno,Jrも参戦

90分きっかりに黒潮丸はエンジンをスローにした。キャビンの外に出ると、見慣れた低いでこぼこした岩の群生地が見える。夏の夜釣りで最も釣り師の心を萌えさせる平瀬が見えていた。こりゃ急がなくちゃ。船首付近へ近付く。先客がいるようだ。2人組の磯釣り師。幸運なことに平瀬の高場に乗れるようだ。しかし、船長が気になる一言を、「○○さん、撒き餌は暗くなってからね。」う〜む、ということは餌取りがすごいということかな。今度は我々の番だ、満潮まで後1時間というところ。平瀬低場の一番高いところにホースヘッドをつける。素早く3人が渡礁。荷物を受け取り、船長のアドバイスを待つ。「後1時間で満潮だからね。下げ潮になったら、そこの一番高いところとその左側に。そこのワンドもいいよ。上げ潮になったら高場側を向いて釣って。6時半回収です。」船長のアドバイスは短く且つ的確でなければならない。釣り師によっても言葉をうまく選んで使い分ける。そこには当然後ろ向きの言葉はない。みんな夢を追いかけに来ているからだ。

いよいよ夕まず目のアカジョウねらいへ
早速、磯の全体像をつかむ作業に入る。今回で4回目となる平瀬だが、まるで初めて乗る磯のようだ。なぜって、磯は季節によって、時間帯によって、そして、釣り師の心理状態によってもイメージが変わるものだからだ。この磯はこんなに狭かったっけ。初めのイメージはこうだった。まもなく満潮を迎える低い磯場に、うねりが時折やってきては、岩肌を洗っていく。できるだけ高いところに荷物を集めて仕掛け作りに入った。



釣り師憧れの平瀬に渡礁 早速アカジョウねらいを

「まだ上げ潮が残っているといいけどなあ。ピトンを高場とのワンド向きの地点に打ち、早々とアカジョウねらいの仕掛けを作り、サンマの1匹掛けを硫黄島本島向きにぶっ込んだ。幻覇王の竿先を見ながらえさ作りだ。アカジョウねらいの仕掛けを入れているときは決して目を離してはいけない。前回の教訓を実行にうつした。すると、前回のそれと同じく、幻覇王のやわらかい穂先がこんこんとまえあたりの後、ぐぐっとお辞儀をした。今だ。竿を握り渾身の力を込めて竿を立て、体全体を後ろへのけ反らせてやつの疾走を止めに掛かった。何とも重々しい引きだが。運よくやつの疾走を止められた。この勝負勝った。アカジョウならば、底を切れるかどうかが勝負。少しずつ浮いてくるやつの動きから早くも勝利を確信した。

「uenoさん、釣りましたよ。でかいです。」早くも魚とのやり取りをしている自分を見て驚くuenoさん。「まだ何も用意しとらんよ」と苦笑。さあ後は浮かせるだけだ。とごりごり巻いているとおかしいぞ。やつは、どういうわけだか、沖へと鈍い早さで動き出している。アカジョウにはあり得ない動きだ。もしかすると・・・。そう、もしかするとだ。そいつは、ヒレがない。昔、浦島太郎で活躍したとされる敬虔なイメージがある一方で、そのすさまじい雑食性から南海の磯釣り師から恐れられている奴だ。奴を見たら魚が釣れないと疫病神扱いの生物。その名前は、ウミガメさんだ。


だ〜れだ ウツボくんなんか釣ってるのは

釣り開始早々、竿を折られてたまるか。冷静になって道糸を切ってウミガメを自由の身にすることにした。「ギャフを用意してやったのに」と苦笑するuenoさん。恥ずかしやら、悔しいやら、苦笑いしながら仕掛けを作り直した。

仕掛けを完成させたuenoさん、張り切って釣り始めるも、釣れてくるのはいろんな模様のウツボくん。「こらっ、おとなしくしろっ、てめえ、危ない。」こんな声が隣の釣り座から聞こえてくる。そんなuenoさんを見て笑っていると、来た来た自分にもウツボが.。満潮の潮どまりを迎え潮が動いてないからしょうがないと考えていたが、下げ潮の時間になっても一向に潮は動く気配がない。ueno.Jrもフカセでイスズミでもなんでも釣ってやれという釣りを展開するものの、何とか喰わせるもののハリ外れが多く、魚の喰いも疑問府を描かざるを得ない展開になってきた。


アカジョウ釣りに執念を燃やす uenoさんだが


高場の釣り師も奮闘中 船釣りのポイントは平瀬沖

夜になって辺りが暗くなり、アカジョウタイムはあっけなく終了。なあに、潮が動けば、魚は喰ってくるさとそれほど心配していなかった。ところが、夜になって、状況は最悪に近かった。潮が動かない。餌取りがわんさかいて、つけ餌が持たない。仕掛けが着低と同時に喰われてあっという間になくなる。サンマの頭の固いところだけ残して帰ってくる。つれるのはウツボのみ。そんな状況が干潮の11時半ごろまで続いた。

いよいよ本命の上げ潮だと気合を入れるが、潮は一向に走る気配がない。動いても沖に向かって左へと動く下げの潮だ。いらいらが募る中、uenoさんは小さめのシブダイとアカハタを2枚ずつゲット。下げ潮のポイントで足下を丹念に攻めたことが功を奏したようだ。ただ、カメが釣れるときはろくなことがないというジンクスは生きていたようで。真夜中に、磯で聞きたくない音が聞こえた。「ボキッ。ああ〜っ。」ueno,Jrくんがどうやらuenoさんの竿を折ってしまったようだ。しかし、uenoさんはこのおかげで、フカセ釣りをあきらめ、あまり気が進まないブッコミをやり、魚をゲットしたそうな。おいらは、最後まで餌取りに翻弄され、たまに掛けてもウツボだったようで、根にはいられて仕掛けを失う釣りが続いた。ため息と、あ〜あという吐息が夜の硫黄島にこだまする中、夜はあっという間に明けてしまうのだった。


kamataさん釣れましたか? 回収の時になっていい潮が・・・

朝方に若干上げ潮が動いたかと思うと、その後すぐに下げ潮の激流が走り始める。万事休す。6時半の回収の時間に間に合うように片付けを始めるのであった。見事な完敗。平瀬に完敗。餌取りに屈した硫黄島での釣り。硫黄島は、自分に釣りの腕前をさらに磨くようにという宿題を背負わされた気分で回収の船に乗り込んだ。


あばよ 平瀬のカメにウツボくん

港に帰って釣りを振り返った。「水温が急に上がってね。28度。餌取りがすごかったでしょう。潮もおかしかったしね。平瀬はここ5回連続で上げ潮がまともに流れてないよ。上げ潮が動けば、シブが群れでやってくるんだけどね。まあ、こんなこともありますわ。」船長がボウズのおいらをなだめてくれた。しかし、悔しい。このままでは終われない。無意識のうちに早くも次の硫黄島釣行を決めるのだった。

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