11/13 お久し鰤です  鶴見一帯

「いいですよ。3時集合です。」

佐伯港を基地とする「松風」の船長から電話が入った。

実に2カ月ぶりの釣り。左心房の鼓動の高まりはもはや抑えられる状況ではなくなった。気がつくと退勤中のドライブの中でガッツポーズをしていた。

大分県鶴見沖は、日本でも有数の釣り場である。マグロ以外の主な食用魚は、ほぼこの地元でとれると胸を張る佐伯の人々。その
魚影の濃さは、漁師だけでなく、釣り師の間でも話題となっている。

瀬戸内海と太平洋が出会う場所。底根が荒く、たくさんの魚が居ついている。複雑な潮流と年間を通して水温の変化が少ない環境のためたくさんのプランクトンが生息する。そのプランクトンを捕食するためにたくさんの魚がいるということだ。

その鶴見に今年も鰤が来襲したことを携帯サイト「Turi navi」が伝えている。鰤は通常秋になるとたくさんの餌を求めて、日本全国の沿岸や内湾にまで回遊する。

昨年の九州では、ヤズ(鰤の幼魚)が大量にとれるという異変に見舞われた。地球温暖化に端を発する水温の上昇の影響かと心配していたが、九州でも10月ごろからか鰤の回遊が見られ始めた。

ところが、その鰤の回遊の数が大分県沿岸部では他の地域に比べて格段に多い。鰤釣りの専門の船がたくさん出ることからもそのことがうかがえる。

毎年、大分県のリアス式海岸を利用した養殖いけすに秋鰤が群れをなして接岸するのだ。生けす周りにゼンゴと呼ばれるアジの幼魚やイカナゴが付き、それを捕食するために鰤が今年もやってきたというわけだ。大分県の鰤は渡り鳥ならぬ渡り魚なのだ。

「今年の群れは大きいですよ。ブチブチ切られてます。ハリスは18号以上でお願いしてるんですよ。ハリはムツの19号です。普通のヒラマサ鈎では折れてしまうんでね。」

この鶴見の鰤は大きくても5キロくらいであとは2キロサイズやヤズが多かったが、(また、サバなどが居つくこともある。)今年の群れは総じて大きいとのこと。小さくても3キロ7キロ以上は当たり前、それ以上のデカ版もいるらしい。(切られるため型見できないそうだが)今年は、気合を入れないとやられてしまうかも。早速、準備に入った。



ここに来るのにえらい苦労しましたわ

竿は、ダイワHOKAGE120号、道糸PE6号の天秤フカセ。ハリスは16〜20号3mを用意。おもりは100号の半月天秤仕掛け。またデカ版に備えて、クッションゴム4mmを購入した(これ以上の太さのものは売っていなかったのだ)。

11月13日(土)小潮回り。夜になり上弦の月が妖しく光る中、午後8時に自宅を出発。九州自動車道を北上。熊本ICで降り、国道57号線を東に向かってひた走ると、4時間弱で松風が待つ佐伯港に到着する予定だった。

ところが、午前1時ごろ、佐伯市の手前の弥生町の国道で警察に止められた。何事かと説明を聞いていると、「さっきこの先で事故がありまして、これから先はいけませんから、Uターンしてください。」

おいおい、あと数百メートルで釣具店というところでのこの説明は納得できない内容だった。しかも、迂回路の説明もなしにである。しかし、警察のいうことは絶対である。やむなく引き返し、動物的感を頼りに何とか1時半ごろにいつもの釣具店に到着。

この釣具店は、大量の大分の磯釣り師飲み込むに余りある駐車場を持っている。餌も鹿児島に比べると安価で手に入る。広々としたアスファルトスペースに解凍のために並べられたオキアミを観るのは壮観のなにものでもない。

オキアミには○○様と名前が書かれた札が置かれている。まるで魚市場のような光景だ。その中で、せわしくオキアミや集魚剤を舟と呼ばれる箱で混ぜている釣り師。好むと好まざるにかかわらず、もはや高額納税者と呼ばれている煙草をくゆらせる釣り師。缶コーヒーを飲みながら高まる緊張をほぐしている釣り師。ここはもはや、真夜中のローカルロードではない。磯釣り師たちが夢の舞台へと旅立つ舞台裏なのだ。

その中を冷静な面持ちで、仕掛けづくりのアイテムを探す。しかし、どう探してもムツ鈎の19号を見つけることはできなかった。仕方がないので、ムツ18号をゲット。クッションゴムの4mmは何とか見つかる。

店を出て改めて気が付いたことだが、この釣具店はあまりにもまぶしい光の中にある。この明るい中で仕掛けづくりをさせてもらうことにした。

ムツ18号がメインになりそうな予感。それは、魚の口元に近い方から神経を研ぎ澄ませないといけないと思うからだ。ムツ18にハリス18号を結びつけようと試みる。しかし、何とも耳の部分が狭く、18号を巻けることはできるものの、デカ版の一発にいかにもほどけそうな感じ。

これならいくらハリスを太くしたって、ほどけたら意味がない。ムツ鈎18号を巻ける最大は16号に思えた。ここで、船長のアドバイスと違う16号をつけて仕掛けを作ることを決意。不安を覚えながら5つほど作って釣具店を後にした。


1年ぶりの電動リール 調子わるっ!

「ププププ」と携帯が鳴った。いかんいかん、いつの間にか眠ってしまっていたようで、船長の携帯のコールで目が覚めた。時計を見れば集合10分前だった。集合場所の港には午前2時前に到着したのだが。

 車から降り、戦闘服に着替え、磯の時とはまた違うテンションで、船長に挨拶をする。「kamataさん、手前のこっちの船に乗ってください。」
松風は客の多い時は2隻体制をとる。この時期での2隻体制から、ここ最近は釣れているなと直感した。

 とても愉快で客を飽きさせない腕のよい船頭は、松風の船長より遅れること20分。午前3時40分ごろ、早速、佐伯港を離れた。漆黒の海に進む船。

久しぶりの潮風に当たりながら、今ここにいる幸せをかみしめた。今日の鶴見の海は私にどんな答えを用意してくれるのだろう。

1匹釣ればいいか。いや、潮風にあたるだけでもよいではないか。波高予報は1mで、ゆれない船内でうとうとしていると、4時半ごろ釣り場に到着。

 すでに、他の遊漁船が多数来ている。ゆっくりと、船を生けすに近づける。生けすのロープにひっかけて生けすから船が離れないようにする。この作業をやって初めて釣りができる。

出港時に随分と待たされた釣り師のフラストレーションという殺気は、船頭に作業終了後すぐに「はいっ、どうぞ」と言わせた。


第1投から来てくれた3kgサイズ

餌は、青魚の切り身。今回はサバではなくヤズっぽかった。チョン掛けにして仕掛けを落とす。「タナは20mですか」と聞いて、仕掛けを落ち着かせる。

これまでの経験では、ある程度撒き餌をして魚を寄せてからアタリが来るというものだった。まだまだこれからさと電動リールのスイッチをONにした瞬間、HOKAGEがお辞儀した。何と第1投からゲットかな。船頭さんが気付いてくれて、玉網を準備してくれている。

「鯛かな?いやこんなに引く鯛はおらんわなあ。がはははは」と冗談をいいつつ玉網をかけてくれた。3kgクラスの小ぶりなサイズだが、第1投でのこの釣果はかなり先進的にもアドバンテージだ。


いきなりの時合い到来に忙しい釣り師たち

この私の合図であちこちで鰤が当たりだした。キター、こっちもキターとこの釣りは思いのほか忙しい釣りだ。釣り場についてすぐの入れ食い。「みなさんのクーラーは小さいかもしれませんよ」
      

2匹目もちょっと小ぶりでした


ここのところよく釣れているからか 遊漁船がいっぱい


6kgクラスの大きな鰤も釣れています

しかし、入れ食いの時間はほんの30分ぐらいで終わり(その間はタナが16mくらいにまで上がっていたが)、あとはポツリポツリ拾いながらの釣りとなった。

暗い間に4本をゲット。しかし、どれもサイズが今一歩だったので、数はいらない型ねらいと、38mという船頭のアドバイスを無視して42mまで仕掛けを落とした。

午前7時を過ぎ、納竿が近付いている。そんな焦りが出始める中、いきなり竿が強烈な引きこみに見舞われた。竿を守るため、竿を適当な角度になるように起こす。今までにはない大きさのようだ。しかもこの横走りは鯛ではない。

上がってきたサイズは、納得のサイズだった。「こりゃ、5キロアップだね」の船頭の言う通り、80cm、5.5kgの自己記録だった。

この後、すぐに納竿の7時半がやってきた。楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもの。鰤釣りの醍醐味を堪能できた今回の釣行を海に家族に感謝し、竿をたたんだ。

豊の国の海よ。今日もありがとう。今日は、海にいるだけでよかったんだけど。あなたの秋の使者を遠慮なくいただくことにするよ。

船にいつまでもまとわりつくうるさいカモメが、今日は私との別れを惜しむ大切な人々のように思えるのだった。


午前7時半に納竿 楽しい時間はあっという間だ


たくさんのカモメが見送ってくれました


静かな晩秋の佐伯港に無事帰還


本日の釣果 2.5〜3.5s4本 5.5kg1本


自己記録更新のうれしい1尾


釣りの帰りに紅葉を楽しめるのも秋の釣りの醍醐味


さばくのに苦労しました


3枚におろすと脂ノリノリの身が


新鮮だから味わえる絶品ホルモン炒め


釣ったその日はやはり鰤カマでしょう


皮は捨ててはいけませぬ


メインディッシュは鰤シャブで まいうw

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