2月27日、ぼくは1週間前のときと全く同じ門川の磯に立っていた。
26日は学校をあげての学習発表会。その次の日が代休となるため、磯釣り師である私は当然のごとく釣りの予定を入れた。
先週は、宮崎県の門川に行き、一度釣った魚を再び海に落とすという失態を演じたが、47cmのクロを手にし目標は一応達成した。
しかし、門川は今年に入って2回目であり、もうクロ釣りも終盤戦ということで何としても離島に行きたいと願い釣行場所を探った。
ところが、平日となると離島便は厳しい。
平日に離島に行く釣り人は少ない。
よって、当然、宇治群島、草垣群島、硫黄島などの離島便は客が集まらない。
今回も離島に行けないのかと思いきや、あった。この平日でも離島に出航してくれそうな船が。
その名は、フリースタイル翔である。この船は、離島便としては小さな船だが、少人数でも出航するという。
HPを見てみると、月曜日は丁度「鷹島行き〜♪」と出ているではありませんか。
前々回の鷹島釣行の無念を晴らすチャンス。すぐさま三角船長に連絡を入れる。
「いいですよ。この日は甑島に行きます。」
鷹島が甑島に化けてしまったが、それでも離島は離島。甑島に行けることを楽しみに三角船長からの連絡を待った。
ところが、
「kamataさん、実は一緒に行く予定の方が甑島なら行かないと言ってるんですよ。タイラバにしませんか〜〜〜♪」
この三角船長の一言にタイラバの中毒になりかけているおいらにとっては悪魔の誘いだった。
オオモンハタや大鯛か、クロちゃんの白子か。スローなごり巻きか、ウキフカセの妙か。このある意味究極の選択に即答は難しいと悩んでいたら、
「kamataさん、気が変わったらまた電話してください。」
と三角船長はこんなセリフを投げかけて電話を切った。
これは、今回も離島ではない沿岸の磯にしなさいというお告げなのかもしれない。
この時、頭に浮かんだ磯は門川しか思いつかなかった。気が付いたら、前回お世話になった功丸に連絡していた。
「5時半にはきちょってね」
と返事が返ってきた。
ということで、今回の釣りも門川ということになったのだった。
九州自動車道から宮崎自動車道に入り、東九州自動車道を経て門川功丸の待合所についたのが、午前1時過ぎ。また、おいらが一番乗りだ。
気温3度だったが、快適な車内で仮眠をとり、午前5時過ぎに目が覚めた。
次々に車が入ってくる。門川サイズを釣りたくてたくさんの磯釣り師が今日もやってきた。
一時期の爆発力はないものの相変わらずデカ口太が釣れているようで、今日も15,6人の釣り人が集まった。
午前6時ごろ荷物を協力しながら積み込む。船はゆっくりと岸壁を離れ、反転し沖磯へと向かった。
暦の上ではもう春。今日はデッキに出て潮風に当たりながら沖磯をめざした。
早春の冷たい潮風が肌に心地よい。
「今日は東が吹くみたいだから、いつものポイントは使えるかな。」
「風が強いと釣りにくいからね。」
釣り人はみな今日の風向きを心配していた。
案の定、ビロウ島に近づくとうねりが強くなってきた。
釣り人の会話から今回の最初の瀬付けは「ハチガササレ」からということがわかった。
他の船乙島丸、清栄丸などがやはりビロウ周りに近づいてきた。
さあ、午前6時半が経過。いよいよ一斉に瀬付けが始まった。功丸は、ハチガササレに瀬付けを開始した。3名の釣り人が無事に上礁。
そして、これから、まるでボートレースのような瀬付けが始まる。まず、タンポ下に2名の釣り人を。更に、乙島丸との競争に勝ちゼンコーの2か所をゲット。
更に船はブリバエに向かった。ぼやぼやしていると、ビロウ周りに乗れないかも。
「3人組の方、ブリバエ行こうか。」
ブリバエの東向きに3人組の方が無事上礁。
「船着けはおらんかなあ。2人組の人は?」
ところがその2人組の釣り人は躊躇していた。
この磯は先週乗ったところと全く同じところやら。
ううむ、どうしよう。明らかに1人で上礁の自分は最後に回されることは確実に思えた。これはチャンスかもしれない。何の根拠もなく、突然
「行きます。」
と絶妙のタイミングで立候補してみた。この私の立候補に、船長が乗ってくれた。
「じゃあ1人の方どうぞ。」
よしっ、2人の釣り人の気持ちが変わらないうちに荷物を船首部分へ。無事に、ブリバエの船着け、つまりこういう経緯で先週と全く同じ磯に上礁を果たしたのだった。
迷っていた2人組の釣り人も結局このブリバエに渡礁。西向きの先端に移動していった。
北風や東からのうねりで先週に比べ海面ががちゃがちゃしている。これは、先週のG2のウキではつらい。3Bのウキを選択して、仕掛け作りに入った。
竿はメガドライM2・1.5−53.道糸2号、ハリスは朝マズメだけ1.75号(すぐに1.5号に変更)2ヒロ半から釣り始めた。
うねりで、右手前のワレの部分はサラシで真っ白。潮はこの前と違い、ビロウ島を見て左に動いている。
磯は同じだが、状況が違いすぎる。とりあえず仕掛けを作りながら20分ほど撒き餌して、第1投。餌は盗られない。今日も静かな立ち上がりだ。
そのうち餌が盗られ始めた。釣り始めて1時間が経過した8時過ぎ。
ウキを沈めて魚の走りを待っていたところに道糸が走った。竿を立てる。
心地よい引きが左腕に伝わる。コンコンと軽く首を振っているがクロ独特のシャープな引きだ。
よしっ、幸先いいぞと思いきやふっと竿が軽くなった。先週と同じく悔しいバラシからのスタート。
ハリ外れだ。立ち上がりは4号バリと使っていたが、喰いが悪いため3号、2号まで落としていた。2号まで落とすと確かに喰いはよくなるが、バラシも多くなる。
釣りはまず喰わせなければ始まらないとここ門川ではここ最近小バリを使うことが多くなった。
硫黄島をホームグラウンドとする自分にとって小バリまで使って魚を釣りたくはないのが正直なところ。
しかし、これも魚にあわせないといけないので仕方がない。東の鼻と西向きのポイントではポツリポツリとクロが釣れているもよう。
自分はまだノーホーラ。焦る気持ちを抑えながら沈んだウキを見つめながら道糸を張り気味にしていると道糸が再び引き込まれた。
すぐにやり取りに入る。今度は何とかバラシはなさそう。だが、残念なことに引きはそれほどでもなく。
あっさりと魚が水面に現れた。この時期としては珍しい30を少し超えた口太だった。
小さくても本命は本命と大事に玉網ですくった。これでボウズ脱出。
ほっとするとともに更なる獲物を求めてさっきアタリのあったポイントに仕掛けをなじませた。
再び、本命と思われるアタリ。奴が走るのを粘り強く待っていると、道糸に違和感を感じた。
試しに合わせてみると、心地よい重量感が竿を通して左手に伝わった。ばらさないように慎重に浮かせにかかる。
浮いてきたのは、さっきよりややサイズアップしたクロだった。これも慎重に玉網をかけて2匹目ゲット。
時合い到来と、再び最大級の集中力で魚との距離を詰める。しかし、この後は、喰いが悪くなり、再びまったりとした時間がやってきた。
そのうち、風とうねりが強くなり始め、中々魚を喰わせきれない時間帯が続いた。
残念ながら、その後、釣り人を喜ばせたのは、10時ごろに釣れたやせ気味のバリとやはり30ちょいのクロだけだった。
今回は、門川サイズのクロちゃんは姿を見せてはくれなかった。残念。
しかし、これが釣り。そう簡単によいサイズのクロが釣れるはずはない。
釣れないからこそまた釣りに行きたくなる。
もっと楽しみたいから次の釣りを考える。磯場を流して回収に来た船に乗りすがすがしい気持ちでこの磯場を後にした。
ひょんなことから、今シーズン硫黄島に一度も行かずに3回も釣行してしまった門川。
自称離島釣り師でありながら、近場の磯での釣りを心行くまで楽しんだ今回の釣行。
離島にはない魅力にどっぷりつかりながらも、帰りのドライブの中では離島への憧憬が再び沸々とわきあがってくるのを感じるのだった。
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