3/21 尾長グレに逢いたくて 鹿児島県宇治群島



鹿児島県宇治群島雀島・鮫島の尾長グレ釣り

夜自宅でふと携帯の画面を見ていると、着信履歴が。師匠uenoさんからの連絡だった。

「kamataさん、宇治にいかんな。尾長が釣れだしたごたるよ。3月がよく釣れるけん。おいが連絡しとくな。」

uenoさんからの宇治群島行きの誘い。実は、あまり気が進まなかった。

昨年の5月のGWにせっかく宇治に行ったものの、尾長の気配もなく、口太の食い渋りに、鮫のアタックにうなだれて帰還した苦々しい思い出がよみがえったからだ。

しかし、冷静になってみると、離島の釣りは、天候の条件や自分の仕事の都合、家族の理解や釣りの資金など様々な壁を越える必要があるが、この時期を逃せば、そのチャンスはまた来年ということになる。ここは、uenoさんの誘いに乗っかることが肝要と考え、密かに準備を進めることにした。

釣行の数日前、当日の天候は1日目はよかったが、2日目は荒れてくるという予報。

これは、残念。今回は見送りかと思いきや。


「kamataさん、出るげな。でもね、午後8時出航で早めの回収になると思う。こがんこと前もあったもんな。」


不本意なスケジュールだったが、uenoさんの声は上ずっていた。そして、その興奮は釣り餌が売っているホームセンターにuenoさんを即座に行かせた。

「kamataさん、餌ば買いに来たとばってん。赤アミのなかったい。川内の釣具店に電話してみっで。」


人吉球磨地区は熊本県南の内陸部に位置しており、大型の釣具店がない。また、渡船基地である串木野港までの道程で餌を手に入れる釣具店はない。だから、釣りが決まったらまずは餌を確保しなければならない。

だから、uenoさんの行動もうなずける。そして、川内に釣具店があることを調べ餌を確保するのだった。

赤アミが品薄なのが気になる。このところのパンデミックの影響で赤アミが日本に入ってくるのが困難になったのかもしれない。

「kamataさん、集魚材はまぜんごとしよい。尾長はその方がよからしかけん。」

uenoさんは、どこで調べてきたか分からないが、そのようにボクに指示。その方法が尾長釣りに最適であるという確証はないが、uenoさんが今回の釣りに相当入れ込んでいることは理解できた。


夕方4時半に人吉を出発。いつものように九州自動車道を南へ下り、横川ICで降りて一般道へ、釣具店のある川内で餌を買い、串木野港に入ったのは午後7時になっていた。

どっぷり陽も暮れて、暗闇の中の串木野港でいつもの場所にサザンクロスがいないことを知り、移動先を教えてもらい、慌てて漁協前の蝶栄丸が止まる場所に行く。

コロナ渦の最中、釣り人の人数が気になったが、18名とこの厳しい環境の中でまずまずの人数。
1時間前に到着したのに早くも荷物の積み込みが始まっていた。

ぶるん、ぶるん、

サザンクロスのエンジンが長い眠りから目覚める。震える手で乗船名簿を書き、キャビン内へ潜り込んだ。

尾長グレの聖地宇治群島へ誘ってくれるサザンクロスは、午後8時過ぎに串木野港を出発。いつもより4時間も早い出航だ。

沖はうねりが残っているだろうと
船底の揺れを身体全体で感じてみるが、思ったより波はなさそう。安心したのかいつの間にか眠りに落ちていた。

エンジンがスローになると、釣り人の動きがいきなり活発に。ライジャケをつかみ釣り人たちは我慢できずに次々にキャビンの外に出て行く。

「・・・・その標識のところまで渡って釣ってください。・・・・」 

出航から3時間半で家島のガランの標識から渡礁を開始した模様。サーチライトを当てられ、明るく磯が照らされて、磯のくぼみまで鮮やかに見ることができる。その明るい場所を釣り人が躍動する。まるでスポットライトを浴びたスターのようだ。 

その後、落石・幼稚園など次々に釣り人を渡礁させる。 

まだ、名前は呼ばれない。しばらく走ると、今度はたぶん南のハナレに釣り人を瀬上げ。 

そして、再びしばらく走ってようやく名前が呼ばれた。

「uenoさん、準備してください。」

荷物を船首部分に持っていき、渡礁の準備をすすめる。

真っ暗でここはどこだかさっぱり見当がつかないよ。独立礁ではなさそうな大きめの島が二つ暗闇の中から忽然と現れた。左の島影の磯に2人組を瀬上げする。

「先週一番釣れたところです。」 

と、船長がさりげないプレッシャーをかけ檄を飛ばした。 

そして、我々の番が。 

隣の島の比較的足場の良い磯に乗せてもらった。たぶん、ここは乗ったことがないな。どのあたりだろう。やはり全く見当がつかない。 

「そこの船着けと右の方に歩いて行ったところもいいです。左の方にも釣るところがあります。午前中に迎えに来ますから。」

そう言い残して船は鮫島方面へと走って行った。

後で船長に聞いたがここは「雀島の南」という場所らしい。

早速、磯の全体像をつかむ作業に入った。今日は、上り中潮初日。階段状に落ちていく感じの形状の磯だ。磯釣り師の直感でどうも右側は避けた方がよさそう。サラシが激しく瀬も低いためこれから潮が満ちてくるだけに危険と判断。

また、船付けも瀬が張り出しており、どうも釣りづらい。2人とも左側の釣り座をチョイスした。uenoさんが船付けに近い方、ボクがワンドの奥に近い方に陣取った。

竿は、ダイワメガドライ遠投4号。道糸8号にハリスも8号。ハリは尾長グレ8号。ウキはZAXISの棒タイプウキBの半遊動で、タナは2ヒロから始めた。

午前1時半頃から夜釣り開始。しばらくすると、

「引っかかった~。根掛かりしたバイ」

uenoさんはどうやら釣り開始から根掛かりに悩まされているよう。暗くてはっきりとは分からないがuenoさんの足下は階段状に落ちていく形状で瀬際はかなり浅いのではないかと拝察する。

尾長グレねらいのために、瀬際に仕掛けを落ち着かせる必要があるのだが、それがやりづらい状況みたいだ。 

こちらの釣り座では、瀬際に仕掛けを落ち着かせることができた。初めはうまいことにアタリ潮で瀬際をうまく探れたが、本命の気配はなく、ナミマツカサ、フエフキの子と、こんなのばっかり。uenoさんもイスズミに翻弄されている。

夢中で釣っていると、水平線が紫色になり朝日が東シナ海の向こう側からやってきた。明るくなるまで、尾長ねらいを続けたが、魚からの反応が消えたので、夜釣りを終え、昼釣りの準備をすることにした。

「朝迎えに来るって何時頃やろか。まあ、昼釣りの準備ばしょい。」

昼釣りのタックルは、ダイワインプレッサ2号、道糸2.5号にハリス2.5号。ウキは0号の全遊動仕掛け。ハリはグレ6号で。離島だからもっと太仕掛けでいきたいところだが、前情報で食い渋りが予想るので、とりあえずこの辺で手を打つことに。

朝焼けの美しい空に放物線を描きながらウキは宇治の海へ飛び込んだ。まずは、竿一本先くらいから攻めてみよう。

サラシの延びた先を漂うウキが、ゆっくりシモリ始めた。これはやる気のある入り方だ。道糸が走りやりとりに入った。さすがに宇治。第1投から魚からの反応が。これは小魚ではなさそうだが。

喰った後一気に横走りするので、何かなと思いきや。それは予想だにしない魚だった。鮮やかなベラ系の魚が磯場に横たわった。

まずは、キヌベラのお出迎え。この魚は根魚で、離島でたまに釣れるのでお馴染みだ。

第2投はちょっと遠投してみる。また竿引きのアタリだ。今度は軽いぞ。釣れたのはギンユゴイ。えっ、こいつは群れでいるのでこの釣り座は潰れてしまっているかも。以前、宇治群島のガランのハナレに乗ったときに彼らの猛攻になすすべがなかったことを思い出した。uenoさんもギンユゴイの猛攻を受けているようだ。

さらに、海をみていると驚いたことに、鉛筆のような細長い生き物が縦横無尽に餌を追っているのが見える。小型のダツの群れである。草垣群島の磯で大量発生して釣りにならなかったことを思い出した。

これは、早めに仕掛けが落ちるようにしなくてはと、ガン玉G7をつけてみた。すると、

ギュィーン

よしっ、うまくいったぞ。ところが竿を叩いている。浮いてきたのはぎんぎらぎんにさりげないイスズミだった。時間が経つとさらにダツの数が爆発的に増え早めに沈めてもダツが喰ってくるようになった。

バケツに水汲んで触ってみる。生暖かい。飛沫があったかいと思っていたが、後で船長に聞いたところ22℃に激上がりしていたとのこと。餌取りの猛攻にしばらく磯を休ませ遅い朝食タイムとした。

これはあちこち撒き餌をしたらこのポイントは潰れるな。

そう感じた自分は、餌を足下にだけかぶせることにして、ウキの周辺には極力撒き餌をしないことにした。

すると、結果がでた。遠投していたウキが、ゆらゆらと前アタリの後、一気に海中に消えた。久しぶりの手元に重量感が。魚の引きから本命を確信。35cmクラスの口太を抜き上げた。

「魚はいる。いれば釣れる」

「ウキは何号?ハリスは?」

すぐさま、uenoさんに情報提供。ふたりとも状況がよくなることを願いながら釣りを続けた。

しかし、上げ潮が終わった満潮間際に最も活発になった餌盗りだったが、その余波は続き、餌取りを釣りながらたまに本命を釣るという展開で、uenoさんが口太2枚、ボクが3枚というところで船が迎えに来た。

この日はベタ凪だが、次第に南風が吹き天候が崩れ、夜中には雨が降る予報。 

風裏なら家島の磯に乗せられるのではと思いきや。 

船は、南へと向かう。 

南と言えば。そう、尾長グレが乱舞する鮫島である。 

ホタテ岩のような鮫島の島影を興奮を抑えきれない中でじっと見つめる。その向こうには草垣群島が蜃気楼のように見えている。 

20分走ると、もう一組の瀬替わり組を鮫島の離れに乗せた。 

「uenoさん、次です」 

船は、ゆっくりと鮫島の南を航行。
 
15分ほど走り、隣の2人組を鮫島のハナレに乗せて鮫島本島回った。三段、ヒナダン、壁、鮫の水道、小鮫と釣り人は満員だ。どこに乗せるつもりだろう。

すると、船は、なんと名礁「小鮫」に向かっている。確かに、ここなら南西の風を避けることが可能だ。ここにいた釣り師は、他船の釣り人らしい。

尾長グレの気配のする名礁小鮫に無事渡礁。
ここは、年末サバイバルスペシャルで話題となったあのナスDさんが冒険し鮫と格闘した場所。 

ここで尾長グレと勝負できると思うと、自ずと身体が震えてくる。 

この地に足を踏み入れただけで、身体の内側から湧き上がってくる感動にしばらく浸っていた。 

さて、これからここでどんなドラマが待っているのだろう。

小鮫に乗ったのが午前11時。 

ここに乗るのは2回目だ。 

他船で来られていた釣り人と情報交換を行う。 

「45cmくらいの尾長が何枚か釣れたよ。夕まずめしかクロは喰わんよ。我々が撒き餌しといたから」 

前日は、時化模様で、釣り座の高いここくらいしか乗れるところがなかったとのこと。 

2人組の釣り人を見送って、いよいよ自分たちの番だ。

と思いきや、潮も動かず待ったりとした時間が。 

我々は、慌てずに、ゆっくりとタックルの準備を行う。 

昼釣りタックルは、ダイワインプレッサ2号、道糸2.5号にハリス2.5号。針はグレ針9号、尾長針8号などを結ぶ。ウキは、0号の全遊動で勝負。 

高いところに上って海の中を眺めてみる。魚は何も見えない。見えるのは、プルシャンブルーのどこまでも蒼い海。 

水面に浮いているなまこのような生命体を発見。 

コウイカかと思いきや、よく目をこらしてみると、それはハリセンボンだった。 

1匹、2匹、・・・20匹くらいは、いるね。彼らが平和を謳歌しているということは、鮫島のギャング鮫が近くにいないことを意味している。 

昼のまどろみの中にいたり、時々餌を撒いたりして釣ったりしながら、勝負の時間の夕まずめまで自由に時間を過ごした。 

湖のような海には、本命の尾長グレはそう易々とは現れないよね。uenoさんが頑張って釣るが、釣れてくるのは、イスズミ、ナンヨウカイワリ、そして、グルクンだった。 

陽も少しずつ傾き、午後4時を回った頃、サザンクロスがやってきた。 

離島釣り名物ご飯のサービスを受け取り、船長の声に耳を傾けた。 

「午前5時回収です。これから南風が強くなります。もし、天候が早めに崩れるようでしたら、回収に来ます。頑張ってください。」 

穏やかな果てしなく東シナ海。この時点で海が荒れるなんて到底考えられなかった。 

ボクは、夕まずめの勝負に備えて、ご飯にレトルトカレーをかけて早い夕ご飯をいただき英気を養った。 

さあ、もうすぐ夕まずめ。勝負だ!

船長が今夜は南西の風が吹くからと、風裏になる「小鮫」を勧めてくれた。 

釣り座は、船付けとその右、鮫島との水道方面の高場に一つ。そして、船付けの左の高く狭いところでも釣りができそうだ。 

uenoさんは、船付けの右をいつものようにいち早くゲット。ボクは船付けで様子を見ることにした。 

激しく手前に当たっていた潮がだんだん緩み、水道へと流れ出した。この潮では、uenoさんはそのまま右奥の根へと流せるが、こちらは、無理なので、流れの上流にやや遠投してuenoさんの釣り座の足下を狙うことにした。 

「今日は鮫がおらんですねえ」 

「じゃんなあ(そうだね)」 

前回乗ったとき、鮫の猛攻を食らった経験がよみがえる。 

そんな会話をしていると、漂っていたウキがさすが離島だと思わせるような消し込みを見せ道糸がピンと張った。

もしや尾長では、最大級の集中力で魚とのやりとりを始めたが、手応えが違うね。 

この宇治群島での平均サイズ35cmの口太だった。

口太は、このところ不調で釣れないと思っていたのでちょっと驚きだ。 

時計を見ると、午後5時を過ぎていた。この場所はやはり夕まずめがチャンスか。 

渡礁当初は、ほとんど動かない潮で、しばらくすると動いたが手前に強烈にあたってくる潮、そして、複雑な動きだった。ところが、この時間帯は、表層の流れと目印の入り具合から底潮の流れがよい関係性を保っているようだ。 

何かが変わると予感していた午後5時半。ウキが最近見たこともないようなものすごいスピードで消し込んだ。道糸の張りから反射的に竿を立てる。身体にスイッチが入り、やりとりに入った。 

ところが、相手は今までと違う動きをする。竿2本先で掛けたのに、どんどん手前に寄ってくるのだ。 

「ヤバい!そこは根が張りだしている」 

私の足下に少し張り出している根があり、魚はそこに突っ込むと思われたが、意外なことにそのエリアをスルー。 

その根の隣にあるワレの部分に突っ込みだしたのだ。まるで自分の住処に帰るように。 

竿が強烈に絞り込まれる。インプレッサ2号が根元から曲がっている。こりゃ口太じゃないな。 

こちらも竿を右に倒して応戦。磯壁に張り付こうとする魚をできるだけ磯際からはなそうと試みる。 

「ギュイーン」 

魚のパワーは圧倒的だ。ここで弱気な心が頭をもたげる。このままじゃ切られてしまう。そう思った瞬間、レバーブレーキから指を放してしまった。糸を出して竿の体勢を立て直す。それでもやつの突進は止まらない。3回ほど糸を出してようやくやつの最初の突っ込みを止めた。 

このシャープな引き、手前に走ってくる習性、そして口太とは違う圧倒的なパワー。今対峙している魚は尾長グレしか考えられなかった。 

竿を少し立てて体勢を立て直すと再び突っ込みを開始した。むむむ、切られてなるか。また、弱気になり1回糸を出してしまった。しかし、2回目も止めた。これはうまくやりとりをすれば、魚の突進を2回止めたことだし、取れるぞ。 

そう考えた瞬間、3回目の突っ込みが待っていた。竿先が海中に引き込まれた。 

ああ、ヤバい! 

その瞬間、ふっと竿からのテンションが消えた。急いで仕掛けを回収する。道糸の根元が瀬ズレをしており、ハリスがスイベルのすぐ下で切れてなくなっていた。 

ああ、取れたと思ったのに。痛恨のバラし。

同じ時間帯に、uenoさんにも謎のアタリがあった。 

そして、悲しいことに、同じアタリがその後2回続き、どれもなすすべなく魚に先手を取られバラしてしまった。 

この時間帯にそこまででかいのが来ると想定していなかった。また、すぐさまがま磯アテンダー2.5号にタックルチェンジが正解だったかも。ハリス3.5号で釣っていたuenoさんにもアタリがあったので、今回はハリスの太さは関係なかったようだった。 

この後、6枚ほど口太を追加して夕まずめの釣りを終え、いよいよ本命の夜釣りに突入することになった。

特に、5時から6時半までに3回尾長グレらしきアタリを3回ともものにできずバラしてしまったことが悔やまれてならない。

3回とも右手前のポイントで喰わせたのに、魚は一気に左手前の根に一直線。

2号竿と2.5号の道糸・ハリスでは太刀打ちできなかった。

数度の締め込みをダイワインプレッサ2号が何とか持ちこたえていたのだが。

最後に瀬でハリスを切られてしまいました。

最初の突っ込みに驚いたのか、レバーブレーキを使って糸を出してしまった。

そのことで魚に先手を取られてしまい、バラしにつながったと思う。

ボクに技術があれば、おそらく取れた魚だったと思う。

この3匹の魚のおかげで脳内モルヒネがそれこそ脳内でビッグバンを起こしていたに違いない。

まるで薬常習者のように、魚釣りを無意識のうちに時間を忘れてやっていた。

悔しいバラしの後、クロを7枚ほど逮捕して夜の帳が降りた。 

この夕まずめのクロの入れ食いなら、夜釣りも期待できるというもの。 

準備していたタックルで早速釣り始めた。 

竿は、ダイワメガドライ遠投4号。道糸ナイロンの8号にハリスが8号。ハリが尾長グレ8号などを結ぶ。 

ウキは、熊本県八代郡氷川町にある小さな工場で作られるZAXISというウキ。 

棒ウキタイプだが、潮乗りが良く感度も抜群。お気に入りのウキ。今回の浮力は2Bを選択。瀬際を中心に狙うことにした。

夜尾長釣りは瀬際ねらいがセオリー。 

ところが潮の関係で瀬際に落ち着かせることが難しかった。 

uenoさんが何かを釣った。 

ぎらっと光る魚だ。 

「でたあ、イスッ!」 

uenoさんから厄介者扱いされたイスズミは命からがら海へと帰っていった。 

生命反応はあるようだね。タナを2ヒロの半遊動で瀬際から3mほど離れた地点に仕掛けを落ち着かせていたときだった。 

ウキが突然海中に沈んでいき、道糸が走った。 

さっき、尾長グレらしきアタリに負けてしまったが、今度は4号竿だ。絶対取ってやる。 

初めは重量感を感じたが、後から魚のパワーがなくなった。 

抜き上げてのバラしはいやだったので、赤色のライトを照らして玉網入れ完了。 

手元に引き寄せた魚は、小さいが本命の尾長グレだった。45cmの小ナガ。 

「uenoさん、小さいけど尾長釣りましたよ。」 

ほっとしてクーラーに入れる。瀬際でなくても釣れるんだね。

これは時合いだチャンス。ほどなくuenoさんにもアタリが。 

「なんか喰ったバイ。うおおおお」

「やったあ、こっちも尾長バイ」 

やりましたね。あれっ、uenoさんこれ口太ですよ」 

ボクも尾長だと思い込んでいたが、uenoさんの釣った魚は口太の47cm後半だった。uenoさん残念。 

磯場では、魚からのコンタクトに盛り上がってきたが、その口太が釣れてから魚からの反応は全く途絶えてしまった。 

タナを変えたりするも餌も盗られない時間帯が続いた。 

やがて、星空を眺めたりする時間が多くなってしまった。 

しかし、まったりとした時間はこの辺りまでで、この後自然の脅威にさらされることになるのだった。

魚からの反応が2時間ほど途絶えてしまい、睡魔が最高潮に。 

翌日の運転もあることだし、午前11時頃から磯の上で仮眠することに。 

星空を眺めながら、波の音を子守歌にいい気持ちで夢の中へ。 

どれくらい経っただろう。起き出して携帯で時間を確認。午前1時を回ったところだった。 

「なんか風の強うなってきたな」 

uenoさんも起き出して釣りを再開。 

確かに、ueno何の言うとおり風が強くなってきた。ビュービュー音がするように。 

空を見上げるといつの間にか星は消えていた。 

うねりが出てきたようで波が磯にぶつかっている音がする。 

「波も出てきたな。曇ってきたし」 

そのうち、 

ポツポツ 

と雨は降ってきた。 

「やっぱ降ってきたな。風が強くなったけん。」 

ますます風が強くなり、波は益々大きく成長。手前はサラシで真っ白。 

「こら回収の早くなるかもしれんバイ」 

案の定、ドッカーンと波飛沫が釣り座まで上がってくるようになった。 

比較的高い場所にある小鮫の釣り座に波飛沫が上がってくるということは、かなり海況が思わしくないようだった。 

まだ、時間は午前2時。かなりヤバい状況では。 

これは釣りをやっている場合ではないかも。 

いつでも船が回収に来てもいいように、2人とも片付けることにした。 

これから2人で雨と強風に耐え、波飛沫を時々浴びながら、回収の船を待った。 

早く迎えに来てほしいという我々の哀願は、いくどとなく波の音なのに船のエンジン音と聞き間違える幻聴を体験させた。 

早く来てくれ~~^^ 身体が冷えて寒いよ。 

すると、遠くで 

ぶーん 

という甘美な麗しい音が聞こえ始めた。 

「kamataさん、船の音じゃなかんね」 

uenoさんも思わずつぶやく。 

その音は波が磯にぶつかる音の合間からだんだんクレッシェンドしてきた。 

この待ちわびた音は、ウィーンフィルの奏でる音楽よりも美しく思えた。 

間違いない!サザンクロスだ。時計を見ると、午前4時。 

小鮫の反対側からついに現れた。サーチライトが照らされる。 

その明かりでかなり時化てきているのが分かった。 

潮が速く、中々うまく近づけないが、2回の瀬着けで我々のところへホースヘッドがやってきた。 

雨の中の回収。とにかく、時間がない。 

安全にしかし急いで荷物を受け取ってもらい無事に船に乗ることができた。 

鮫島方面からの回収を手伝った後、ようやく濡れた衣服を袋に入れてキャビン内に入った。 

ああ助かった。 

船長によると、風向きが変わり時化てきたので早めの回収になったとのこと。 

船長の早い決断に感謝だ。

腕がないのでこの結果は仕方がないのですが、魚からたくさんのおみやげをもらったような気がする。

港に帰るころには、夜も明けていた。あの時化が嘘のようにおだやかな串木野港が待っていた。 

この日は、尾長を釣る人57cmくらいを筆頭に10枚釣った人もいた。 

シブダイも上がっていた。 

折角のチャンスだったのに、あの3発のバラシがくやしい。 

途中で時化てきてあれだけ港へ帰りたがっていたのに、 

再びチャレンジしたいと考えている自分にあきれて自嘲気味に思わず笑みがこぼれるのだった。

全身ずぶ濡れになりながら、無事にできたことが素直にうれしかったです。ほっとしました。

これでまた釣りに行けると。

宇治群島で尾長グレに惨敗したり、緊急回収で命の危険を体験させてもらったことで、再び釣りへの情熱が宇宙への拡散膨張が加速したのだった。



今回の行き先 雀島から鮫島へ




最初のポイント 雀島の南



瀬変わりは 名礁 小鮫






出航場所が変わったサザンクロス









雀島の南に渡礁















最初の夜釣りは不発でした

































まずは キヌベラの訪問




















イスズミとダツとギンユゴイの猛攻に苦戦











餌盗りを避けて遠投したら来ましたよ









餌盗りをかわすのが大変でした
















なんと尾長グレで熱い鮫島へ瀬替わり











ナスDさんが冒険した小鮫に渡礁













ハリセンボンがわいとるバイ























夕まずめに尾長グレらしきアタリ 3連発





















おいにも尾長っぽいアタリあったバイ










夕まずめは口太が入れ食いに











































小さいけど念願の尾長グレ












直後に uenoさんにも でも口太46cm















強風と激流で釣りを断念









今回の釣果 尾長1 口太10










今回の尾長グレ料理


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